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災害時の「プライマリー・ヘルス・ケア」とは?住民の“共助”が命と健康を守ります|「女性防災プロジェクト」講座を受けてみた④

災害時の「プライマリー・ヘルス・ケア」とは?住民の“共助”が命と健康を守ります|「女性防災プロジェクト」講座を受けてみた④

「災害に備えなきゃ」と思うだけでは…。こうち男女共同参画センター「ソーレ」の5回講座をココハレ編集部員がレポートします

南海トラフ地震、台風、豪雨…ご家庭で災害への備えはできていますか?子育て中は毎日忙しく、「しなきゃいけない」と思いつつ十分にできていないという人もいるのではないでしょうか。

こうち男女共同参画センター「ソーレ」で毎年開催されている「女性防災プロジェクト」講座。備えたい気持ちに行動が伴っていないココハレ編集部員で 2 児の母・門田が全 5 回を受講し、感じたこと、学んだことをレポートします。

第 4 回講座は 2022 年 8 月 27 日に開かれました。テーマは「住民主体のプライマリー・ヘルス・ケア」。「災害時は誰かが助けてくれる」「避難所に行ったら何とかなる」。そんな受け身の姿勢の対極にあるのが“共助”。なぜ必要なのかを、これまでの講座を振り返りながら考えました。

災害時に必要な支援とは?応用力が大事です

「女性防災プロジェクト」ではこれまで、ゲームやロールプレイなどのワークを中心に講座が開かれてきました。しかし、第 4 回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、講義のみに。講師の神原咲子さん(神戸市看護大学教授)がこれまでの内容を振り返りました。

自分自身が被災した時、必要なのは次の三つの行動でした。

【災害が起きたら必要なこと】

  1. 災害から逃れる
  2. 命と健康を守る
  3. 取り巻く生活環境を立て直す

 

どの災害でもこの三つの行動は大前提。その上で、神原さんは過去の災害での健康ニーズを紹介しました。

2018 年の西日本豪雨で、岡山県倉敷市の看護師が直面した健康ニーズがこちら。

そして、こちらは 2014 年に起きたフィリピンの台風被害での健康ニーズです。

日本でも海外でも、当たり前にあった衣食住が奪われると、たちまち命と健康がおびやかされるという構図は同じ。その上で、災害の規模や被災地の環境、被災者の性別や年齢構成など、さまざまな要因が絡み、健康ニーズは変わることが分かります。

時間とともに刻々と変化するニーズに対し、支援者には「応用を利かせること」が求められるそうです。

「災害弱者」とは「情報弱者」?

「災害弱者」についても、あらためて考えました。一般的には、自力での避難が難しい人、具体的に高齢者、妊婦、乳幼児、障害のある人…などとされています。

これまでたくさんの災害現場で支援活動に携わってきた神原さんは「情報のある人に物資が届く」という場面を何度も見てきました。

「東日本大震災では『仙台市に近いと情報はあるが、それ以外にはない』『情報が男性中心のグループのみで共有されていて、女性に届いていない』という事例がありました」

「情報があり、コミュニケーションが取れていれば、災害弱者にはならない。『災害弱者=情報弱者』と言い換えてもいいのではと考えています」

災害現場では「情報のある人に物資が届く」ということが起こるそう
災害現場では「情報のある人に物資が届く」ということが起こるそう

「災害関連死」とは?認定基準に合わないような生活はできる?

「災害関連死」についても振り返りました。

阪神大震災では建物の倒壊、東日本大震災では津波による「直接死」の割合が大きかった一方で、中越地震、熊本地震では「間接死」の割合が増えました。

間接死、つまり「災害関連死」には次の認定基準があります。神原さんは「この基準に合わないような生活ができないと、関連死が起こり得る」と呼び掛けました。

【災害関連死の認定基準】

  • 病院機能停止による初期治療の遅れ
  • 治療の中断(服薬を含む)による既往症の悪化
  • 交通事情等による治療の遅れ
  • 社会福祉施設等の介護機能の低下
  • 避難所等への移動中の肉体的・精神的疲労
  • 電気、ガス、水道等の途絶、避難所等生活の肉体的・精神的疲労
  • 地震、余震、津波のストレスによる肉体的・精神的疲労
  • 原発事故のストレスによる肉体的、精神的負担
  • 救助、救護活動等の激務
  • 多量の塵肺(じんぱい)の吸引

 

認定基準とあって、硬い言葉で書かれています。目を引くのが「肉体的・精神的疲労(負担)」という言葉です。

神原さんによると、健康とは次のように定義されています。

【「健康」の定義】

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること

 

「病気じゃないから健康」ではないそう。心身ともにすこやかで、社会ともつながっている状態を維持していくことが、災害から逃れた後、命と健康を守り、生活環境を立て直す上で大事になるそうです。

日本は災害に強い?それは建物だけかも…

「日本は災害に強い国」と言われています。ですが、神原さんは「建物は耐震工事などで強くなっていますが、健康面では脆弱(ぜいじゃく)な状況」と現状を語りました。

身近なところで、皆さんは次の三つについていかがですか。

  • スマホがあればコミュニケーションが取れるけれど、なかったら?
  • 家族の携帯番号を覚えていますか?
  • 何でもスマホで検索できる反面、細かい情報を覚えていないということはありませんか?

 

なるほど…。私も電話番号は自分の携帯、実家の番号、会社の部署の番号ぐらいしか覚えていません。スマホがなくなった、充電が切れた、電波が入らないなどの状況でたちまち困ります。

さらに、新型コロナウイルスが「災害時の避難」を一変させました。

  • 「コロナなので密を避けます。避難所の定員は 4 分の 1 にします」→では、残りの 4 分の 3 はどこへ?
  • 「コロナの感染拡大防止のため、県外からの支援の受け入れをストップします」→外部支援を当てにしていたら、立ち行かなくなるかも

 

「私たちの生活スタイルは変わったし、コロナで感染症対策も考えないといけなくなりました」と神原さん。「過去の災害に学びながら、最新の情報をキャッチし、常に考えていくことが求められます」

住民主体でできることは?“共助”としてのプライマリー・ヘルス・ケア

被災した時のことを想定すると、課題が多過ぎて「どうしたらいいんだ」と頭を抱えますし、「今は考えるのをやめよう」とふたをしたくもなります。

女性防災プロジェクトの講座でも、「そこまで考えるのはちょっと無理かも…」と感じる場面があります。それでも自分と家族の命を守るため、備えなければなりません。

神原さんは「災害関連死はある程度、予防できる」と語りました。その鍵を握るのが、住民同士の共助で取り組む「プライマリー・ヘルス・ケア」です。

【プライマリー・ヘルス・ケアとは】

  • コミュニティーの中で住民が主体となって助け合い、支え合い、利用できる住民の健康保持のための取り組み
  • 住民主体で、病院がない時に自分たちでできるケア

 

「支援がすぐには来ないことを前提に、今暮らしている地域でお互いが生き延び、生活を立て直していくためにどう動くのか」を考える上で欠かせない取り組みだと、講座を聞きながら理解しました。

第 5 回講座では「災害時の健康を守る公助・共助・自助」について考えます。

 

 

女性防災プロジェクトの記事はこちらから

南海トラフ地震、水害…災害後の自分と家族の生活、イメージできていますか?|「女性防災プロジェクト」講座を受けてみた①

避難所運営ゲーム「HUG」で“窮地”を体験。命の大切さを意識しました|「女性防災プロジェクト」講座を受けてみた②

被災者と支援者を演じる?!ロールプレイから、防災力を高めるコミュニティーを考えました|「女性防災プロジェクト」講座を受けてみた③

 

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小1と年少児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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