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「子どもはいつから1人で寝てくれる?」「叱って通じるのは何歳から?」「よく泣く子で困ってます…」|乳幼児期の子育ての疑問、困りごと…小児科医・吉川清志さんに聞きました

「子どもはいつから1人で寝てくれる?」「叱って通じるのは何歳から?」「よく泣く子で困ってます…」|乳幼児期の子育ての疑問、困りごと…小児科医・吉川清志さんに聞きました

高知のお父さん、お母さんと専門家をつなぐ「ココトーク」。第3回は「健康」「叱る」「自分らしさ」をテーマに開催しました

高知のお父さん、お母さんと専門家をつなぐココハレ企画「ココトーク」。第 3 回はココハレの「教えて!吉川先生」でもおなじみの小児科医・吉川清志さんが講師を務めました。

今回は「子どもの健康」「子どもを叱る」「自分らしさを育てる」をテーマに、参加者から質問を募集。ココハレ編集部員が代表して吉川さんに質問しました。

「子どもはいつから 1 人で寝てくれる?」
「叱って通じるのは何歳から?」
「よく泣く子で困ってます…」

お母さん、お父さんの悩み、困りごとへの回答を、ざっくばらんなトークからご紹介します。

ココトーク第3回の先生は小児科医の吉川清志さん

ココトークは高知で活躍する子育ての専門家を講師に招くココハレ企画で、少人数の子育てセミナーを開催しています。

第 3 回は小児科医の吉川清志さんとコラボし、2025 年 11 月 22 日に高知新聞社(高知市本町 4 丁目)で開催しました。

吉川さんは岡山県倉敷市出身で、岡山大学医学部を卒業。高知県立中央病院(現在の高知医療センター)での勤務が縁で、1989 年に高知に移りました。

県立中央病院では高知の小児科医療の発展に力を注ぎ、産婦人科医と小児科医の連携や新生児搬送、複数の病院の先生が夜間交代で対応する「輪番制」などの礎を築きました。高知医療センターの院長を経て、現在は土佐希望の家医療福祉センターのセンター長を務めています。

小児科医の吉川清志さん
小児科医の吉川清志さん
ココハレでは「教えて!吉川先生」でおなじみです(イラスト・岡崎紗和)
ココハレでは「教えて!吉川先生」でおなじみです(イラスト・岡崎紗和)

今回は乳幼児の親子 10 組が参加。子どもたちを横で遊ばせながらのトークとなりました。

親子で一緒に聴ける子育てセミナーとして開催しました
親子で一緒に聴ける子育てセミナーとして開催しました

【子どもの健康】睡眠時間よりも「日中、元気に過ごしているか」をチェック!

今回のココトークは参加者から質問を募り、ココハレ編集部員が代表して吉川さんに質問するトーク形式で行いました。

「子どもの健康」についての質問がこちら。

参加者

2 歳児です。夜なかなか寝てくれません。21:00 には寝かしつけを始めますが、22:00 になっても元気いっぱい。23:00 まで起きていることもあります。付き合うのがつらいです。

 

参加者

4 歳児です。早寝早起きをさせたいのですが、親が家事を終え一緒に寝るまで、寝てくれません。自分ではうまく寝つけないように感じています。年齢ごとに、自分で上手に寝る「セルフねんね」のこつはありますか?

 

多かったのが「睡眠」の悩みや困りごと。そこで、吉川さんにこんな質問をしてみました。

  • 子どもはいつから 1 人で寝られるようになる?
  • 「睡眠時間が足りない」と感じた時はどうしたらいい?
子どもはいつから1人で寝られるようになる?
子どもはいつから1人で寝られるようになる?

――吉川先生、子どもっていつから 1 人で寝られるようになるものですか?

吉川さん:その子によりますね。わが家は 1 人で寝る時期は全然決めてはいませんでしたけど、子どもが 5 人いたので、ある程度大きくなると、別の部屋で寝てもらう形にはしました。お母さん方がしんどいのは「寝かしつけをしなきゃいけない」ということですよね。

――乳幼児期は大なり小なり、寝かしつけには苦労します。

吉川さん:今は共働きの家庭も多いから、子どもたちは園で頑張って過ごして、夜やっとお父さん、お母さんに会える。

――そうなると、夜はテンションが上がります。

吉川さん子どもにとっては、お父さんとお母さんとの時間が大切ですから。アメリカの基準では推奨される睡眠時間は「 3~5 歳で 10~13 時間」。でも、日本はずっと短いままやってきていますから、無理に世界標準に合わせなくてもいいと思いますよ。

今回のココトークはトーク形式で行いました
今回のココトークはトーク形式で行いました

吉川さん:お父さん、お母さんと遊ぶのがもう楽しくて、眠いんだけど我慢して起きていようとする子もいます。それでも寝かせるには儀式が必要。読み聞かせとかね。儀式が終わったら、子どもがいくらごちゃごちゃ言っても、お母さんは反応しない。

――なるほど。あと、質問にあった 2 歳児さんはいわゆるショートスリーパーでしょうか。

吉川さん:そういう体質の子もいます。それ以外にも「とにかく元気に遊びたい」という気持ちが強い子はいますので、「寝かせなきゃ」って頑張るよりは、「そんなに楽しいんだったら、どうぞ楽しく過ごしましょう」と。

――(笑)

吉川さん:親が付き合い切れなかったら、安全を確保した上で 1 人で遊ばせててもいいんじゃないかと思います。次の日の朝起きられて、昼間の活動が普通にできてたら、まぁ大丈夫。

――なるほど。「睡眠時間」よりも「日中、元気に過ごしているか」をチェックしていけばいいんですね。

吉川さん:推奨される睡眠時間に縛られ過ぎると、ものすごくしんどくなります。とはいえ、睡眠時間が足りないと体の成長には良くないですので、「元気に過ごしているか」を見てあげてください。

「睡眠時間」よりも「日中、元気に過ごしているか」
「睡眠時間」よりも「日中、元気に過ごしているか」

【生活リズム】ポイントは朝ご飯!高い目標は立てないように

「子どもの健康」にちなみ、生活リズムについても聞きました。

  • 子どもの生活リズムはどこまで気にしたらいい?
  • 生活リズムに関して、就学前にやっておくべきことは?
夜更かしは楽しい!
夜更かしは楽しい!

――子どもの生活リズムって、どこまで気にしたらいいんでしょう?園や学校では「生活リズムチェックカード」というのが定期的に配られます。「早起きできた」「早寝できた」などをチェックするという。

吉川さん:へぇ、そんなのがあるの。

――そうなんです。小学校に入ると、「9 時までに寝たら 2 点」といった感じで点数化され、「生活リズム名人」を目指します。親としては「あぁ、また来た…」というプレッシャーが(笑)

会場:(「そうそう」とうなずく方、多数)

――わが家は私の帰りが遅く、目標の時間に間に合わない日が多いので、「時間通りにはいかなかったけど、気持ちは頑張った!」みたいな感じで点数を付けています。

吉川さん:いや、それでいいと思いますよ。点数を完璧にクリアしようとすると、親がしんどくなりますから、もっと気楽に。

「高い目標は立てないことです」
「高い目標は立てないことです」

吉川さん:生活リズムの一番のポイントはね、園に間に合う時間に起きて、朝ご飯を食べたら、それでよし!

――それだけでいいんですか?!

吉川さん:はい、もうそれだけ。お子さんがぐじぐじ言ったとしても、何とか間に合って登園できたらいいんじゃないかな。

――朝ご飯はやはり大切んなんですね。

吉川さん:大切です。朝、脳が活動を始めるにはエネルギーとなるブドウ糖が必要。ご飯で炭水化物を取るといいですが、大変だったらパンだけでもバナナでもいい。とにかく、高い目標は立てないことです。

【子どもを叱る①】叱られようと、怒られようと、やりたいことをやるのが子ども

続いてのテーマは「子どもを叱る」。寄せられた質問がこちらです。

参加者

5 歳児と 4 歳児です。余裕がない時に子どもが思うように動いてくれないと、怒ってしまうことがよくあります。子どもが反省し、成長してくれるような叱り方を教えてください。

 

参加者

なるべく伸び伸びと、自己肯定感の高い子になってほしいと願っていますが、どうしても時間のない時はガミガミと言って子どもをせかしてしまい、「分かってる!」と言われてしまいます。子どもの自尊心を損なわない叱り方を知りたいです。

 

参加者

5 歳児と 2 歳児です。子どもが同じ失敗をすると、ついきつく言ってしまいます。

 

どれも「分かる!」という質問。吉川さんにはこちらを聞いてみました。

  • 「叱る」と「怒る」の違いは?
  • どういう時に「叱る」べき?
  • 「叱る」は何歳から通じる?
親だって、できれば叱りたくないんです…(イラスト・岡崎紗和)
親だって、できれば叱りたくないんです…(イラスト・岡崎紗和)

――「子どもを叱る」については一番多く質問が寄せられました。

吉川さん:「怒る」と「叱る」の違いってね、頭の中で考えることだと僕は思います。親に余裕がなかったら、叱ろうとしても怒っちゃう。僕は子どもが言うことを聞かなくて、子どものおもちゃを川に捨てたことがあります。

――えっ?! 先生が川に捨てたんですか?!

吉川さん:なぜ捨てたかはもう覚えてないんですけど、多分、「片付けなさい」と言っても片付けなかったからでしょうか。今はもう絶対いかんですけど、お尻ぺちっとか。

――先生のご長男は私と同い年の 47 歳でいらっしゃる。昭和の子育て、でしたよね。

吉川さん:はい、許してください。親御さんが冷静だったら叱ったらいいと思うんですけど、余裕がなかったら、かっかとなってがーっと怒りますよね。それも悪くないと僕は思ってます。専門家は「冷静に子育てを」と言いますが、そんな冷静に子育てはできない。

吉川さんから衝撃の事実が…!
吉川さんから衝撃の事実が…!

吉川さん:子どもは「お母さんはこうすると怒る」「お父さんを怒らせないためにはここがポイント」と学んでいく。そうやって家のルールができていくし、その延長に社会生活がある。その枠の中でちゃんとやれてたらいいわけで。

――うちの子は小学生で、だいぶ賢くなってきました。「お母さんはこの段階までなら、無視しても平気」みたいに設定しているようです。だから、優しく「ほら、着替えて」と声をかけても着替えなくて、最終的に「着替えなさい!!!」と怒鳴る羽目に…。

吉川さん:そういうお母さんのパターンには慣れてるし、お母さんにバレないようにきょうだいで協力したりもする。うちの子たちは見張り役を立てて、隠れてゲームしていたそうです。家庭は人生をうまく過ごしていくための一番の基本の場、社会勉強の場なんです。

「家庭の中で社会勉強をしているんですよ」
「家庭の中で社会勉強をしているんですよ」

――なるほど、社会勉強。親が考え方を変えるのがいいんでしょうか。

吉川さん:そうそう。親が怒る姿を見せるのはいいと思うし、皆さん、お子さんがいいことをした時には褒めるでしょ?

――そうですね。

吉川さん:いつも怒られてばかりだと「自分は駄目な子なんだ」となりますが、お母さんやお父さんが褒めることによって、「自分をちゃんと見てくれてる」という絆ができます。

――私たち親は「怒る」「叱る」に注目しがちですけど、「褒める」もしている。

吉川さん:そう、しっかり褒めていると、親に怒られて反論したとしても、心の中では「自分もちょっと悪かったな」と思うはずです。

――「褒める子育て」って「何でもかんでも褒めるだけの子育て」と誤解されているように感じます。褒めることと叱ることが大事だと。

吉川さん:やっぱり叱らんといかんですね。厳しさと優しさの両方が必要で、優しいだけではつぶされてしまうかもしれない。駄目なことは駄目ですし、危険な時は強く伝えないといけません。親御さんに余裕があれば、「どうしてそんなことをしたの?」と聞いてみたらいいでしょう。

――「子どもを一切怒りません」という子育ては…。

吉川さん:あり得ないでしょう。

――そうおっしゃっていただけると、ありがたいです。

「子育ては厳しさと優しさの両方が必要」
「子育ては厳しさと優しさの両方が必要」

――「叱る」って何歳くらいから通じるものなのでしょうか。

吉川さん:お子さんによりますが、1 歳や 2 歳でも危険な行動に対して「駄目!」と強い言葉で言ったら、「これはいかん」と手を引っ込めます。でも、やっぱり面白そうだから、そのうちまた手を出しますよね。

――同じことを何度も繰り返すから、親はイライラして怒ってしまいます。

吉川さん:それは当たり前なんです。結局、子どもって面白いことなら、お母さんに叱られても、隠れてでもやるわけですから。親子の駆け引きです。

――駆け引き。うちの 1 年生は「やったら駄目よ」と言ってもやるし、「やっていいよ」と言ったら当然やるし。何をどうしてもやるじゃん、という。(笑)

吉川さん:そんな感じですよ。だから、例えば「ぐちゃぐちゃにしてもいいから、やってみなさい。その代わり、この時間になったらやめますよ」とメリハリを付ける。やりたいことをある程度やらせつつ、危険なことや絶対やってはいけないことは止める。「子どもはある程度の年齢になるまでは、叱られようが、自分がやりたいことをやる」と思っていてください。

【子どもを叱る②】きょうだいげんか、友達とのけんかは「成長の糧」

「子どもを叱る」ではきょうだいやお友達との関係についての質問も寄せられました。

参加者

4 歳児と 0 歳児です。赤ちゃんとの遊び方が分からず乱暴な遊び方になってしまいます。怒らず、脅さず、泣かさずに注意する声かけや工夫を知りたいです。

 

参加者

4 歳です。保育園でお友達ともめると、すぐに手を出したりするので、ついきつく叱ってしまいます。

 

自分の気持ちを相手に言葉でうまく伝えられない時期に、親はどう関わっていけばいいでしょうか。

きょうだいとは、もめるもの…
きょうだいとは、もめるもの…

――子どもが単独で危険なことをする場合と違って、相手がいるトラブルは気を使います。きょうだいや友達をたたいた、引っかいたとなると、「何とかしたい」と思います。

吉川さん:子ども同士の間では、大人が想像している以上にいろんなことが起こっていると思います。きょうだいげんかで、すごく強くたたいてしまうこともあるでしょう。きょうだいげんかの場合は、激しくなり過ぎたら仲裁には入るんですけど、親が予防し過ぎると、子どもが成長する機会がなくなります。

――トラブルを予防し過ぎると、トラブルから学ぶことができなくなる。

吉川さん:そう。「転ばぬ先のつえ」と言いますが、転んで学ぶこともあります。

――相手に乱暴なことをしてしまった時は…。

吉川さん:相手に対する力が強過ぎたということは教えてあげなきゃいけませんけど、「どうしてそんなことしたの?」と聞いてあげてほしいですね。お兄ちゃんと赤ちゃんだったら、お兄ちゃんが叱られやすいから。

「転ぶ経験も必要です」
「転ぶ経験も必要です」

吉川さん:でもね、「相手への力を抑えなきゃ」という力がつくのは年齢が上がってからですよ。私たち親は子どもに過大に求め過ぎてるところがあります。

――耳が痛いです…。

吉川さん:園での子ども同士のドラブルでは、テンションが上がりやすい子どももいるし、子ども同士の相性が良くないこともあります。だから、大人がどれだけ冷静に、分かるように話したとしても、また同じことが起こる。

――同じ事を繰り返すのは当然のことと…。

吉川さん;そう。繰り返すうちに、「これはやっぱりいけないことなんだな」という抑止力がついてきて、行動に移さないようになります。1 回伝えただけでやめるわけないし、行動が変わるわけはないんです。

――では、気持ちを言葉でうまく説明できない時期はなおさら…。

吉川さん:そうですね。幼児期だと、言葉の早い子がばーっと言ってきて、それに腹が立ったけど反論できないから、ばーんとたたいちゃうということもあるでしょう。「どうしてたたいちゃったの?」とその子の気持ちは聞いてあげて、「分かった」と受け止める。

――その上で、「たたくのは駄目だよ」と説明しても…。

吉川さん:子どもに通じてるかどうかは分からないですよね。通じていても、きっと繰り返します。だから、「けんかして仲良くなる」という気持ちをベースに持っていてもらいたい。けんかは成長の糧です。

「褒める」とは「ちゃんと見ているよ」というサイン

トークでは「褒める」についてのお話もありました。

吉川さん「褒める」というのはね、「あなたをちゃんと見ているよ」と子どもに伝えることなんです。子どもが普通にできてること、例えば食べた後にお皿を運んだら、「お皿を運んでくれてありがとう」。これが「お母さんが僕をちゃんと見てくれてる」となります。そういう積み重ねで絆が生まれます。

――なるほど。「褒める」とは「見ているよ」というサインなんですね。

吉川さん:そうそう。親子の絆を太くしていくことが、子育ての一番の基本です。

――「褒めるのが苦手」という親御さんって結構いて、私もその 1 人なんですけど、ちょっと気持ちが楽になります。

吉川さん:お母さん方もお父さん方も自分なりの子育てのやり方がありますよね。隣の芝生は青く見えるかもしれませんが、自分に無理のないようにね。

【自分らしさを育てる】「恥ずかしがり屋」「よく泣く」…家で気持ちを発散できていたら大丈夫

最後は「自分らしさを育てる」。吉川さんに一つ一つ聞きました。

恥ずかしがり屋なので心配です

参加者

4 歳児です。ものすごく恥ずかしがり屋です。幼稚園ではしゃべっていないようで心配です。どのようにアプローチすればいいでしょうか。

 

吉川さん恥ずかしがり屋でも、親しい人とは話ができるのであれば、見守っていていいですよ。人前でしゃべるのが苦手なのに「しゃべりなさい」と指摘されてもしんどいですし。運動会で元気に踊って、劇でも大きな声でせりふを言って…というのが理想かもしれませんが、「この子はこの子のペースで」と思っていたら、本人も親御さんも楽ですよね。

――運動会のダンス、「お友達はちゃんと踊ってるのに、うちの子はたたずんでたな…」と、ちょっといたたまれない気持ちになりますが。

吉川さん本人も「できなかった」と落ち込んでるはずなので、親が「どうして踊れなかったの?」なんて上乗せしたら駄目です。「頑張って練習したね」とか、そういう声かけでいいんです。不登校の子も「みんなと同じようにできない」と引け目を感じていることがあります。子どもは子どもなりに、表現はしていないけれども、心の中でいろいろ考えているから、親御さんはお子さんを信頼して、そのままを受け止めてあげてください。

よく泣く子なので困っています

参加者

6 歳児です。よく泣く子です。泣くことでストレスを発散しているようです。「泣いてもいいよ」と言ってきましたが、来年は小学生。このまま「泣いてもいいよ」と言い続けていいでしょうか。「我慢しようね」と言った方がいいでしょうか。

 

吉川さん泣いたらいいですよ。小学生になると、「周りがあまり泣いてないから、泣くのはちょっと恥ずかしい」と感じる時が来ると思います。泣くのには「悔しい」「頑張りたい」という気持ちもあるでしょうから、その気持ちはそのまま出してもいいんじゃないかな。

――そのうち泣かなくなるでしょう…と。

吉川さん:大人になっていく中でいろんな制約を受けます。自分がやりたいことも「このぐらいにしておかないと、社会で通用しない」と理解して、行動するようになるわけじゃないですか。その中で「泣く」という行為でないストレス発散方法がその子の中で見つかるでしょう。

――イヤイヤ期に床でひっくり返って泣くのも、そのうちしなくなりますもんね。

吉川さん:そうそう。イヤイヤ期は自分の気持ちをどうしても今ここで発散したいから、バタバタする。

――でも、うちの子は小学生になっても、家ではひっくり返るみたいにして怒ってます…。

吉川さん:家と外で違うのは当然です。親は腹が立つかもしれませんが、家でちゃんと発散できてるのはいいこと。いつでもどこでも「いい人」であることはできませんし、嫌な感情も起こるのが人間ですから、「自分はこうあるべきだ」をもう少し緩やかにしてあげてください。

「親も気持ちを緩やかに」
「親も気持ちを緩やかに」

言葉が少ないようで気になっています

参加者

1 歳児です。言葉が少ないようで、気になっています。

 

吉川さん:言葉の発達では、1 歳児はだいたい 1 語文とされています。「まんま」とか「ぶーぶー」ですね。2 歳児で「まんま、ちょうだい」「ぶーぶー、きた」と 2 語文になります。言葉というのは、耳で聞いて、内容を理解した上で出ます。言葉が出なくても、いて理解できていれば大丈夫です。

――言葉が出なくても、ですか?

吉川さん:そうです。「ご飯食べようね」と言って、食卓に近づいたり、いすに座ったりできたら大丈夫。言葉が出ない理由として、言葉があまりいらない環境になっている可能性があります。

――周りが先回りしていろいろやってくれるから、子どもとしてはしゃべらなくても困らないんですね。

吉川さん:そう。内容が理解できていないとなると、聴力に問題がある可能性や自閉スペクトラム症の可能性なども考えられますから、他に問題がないか見ていく必要があります。

「見逃さないで」というサインはある?

参加者

心の問題に関して「これくらい大丈夫」と思ってしまうことが多いです。「これは見逃さないで」という子どもからのサインはありますか?

 

こちらのお父さんは子どもを怒り過ぎてしまった時、子どもに「どうせ僕が悪いんでしょ」と返されるそう。「申し訳ない」と思いつつ、「それがこの子の手かもしれない」とも考えています。「どうせ僕が悪いんでしょ」はスルーしてもいいのでしょうか。

吉川さん:お子さんにとっては「お父さんの言うことは分かるけど、抵抗もしたい」ということなのかもしれませんね。お父さんに一矢報いたいというか。

――なるほど。スルーしておいてもいいんでしょうか。

吉川さん普段、お子さんと楽しく遊んだり、過ごせたりしていたら大丈夫です。お父さんがお子さんに対して「これは駄目だ」と怒ること、つまりお父さんが大切にしていることは貫いたらいいですよ。

――子どもを怒り過ぎると、罪悪感を抱きます。仕事で思うようにいかなかった日は、子どもを冷静に叱るはずだったのに、つい上乗せして八つ当たりみたいになって…。そんな時に「私が悪いんでしょ」と言われたら、「ごめん」という気持ちになります。

吉川さん:親がそこで反省するのはいいことです。でも、反省しても、また八つ当たりしちゃうでしょ?

――そう。学ばないんです。あれ? 子どもと一緒ですね(笑)

吉川さん:大人にも個性も気持ちもありますからね。親御さんも自分のありのままを受け止めて、許してあげてほしいですね。「私、子育ても一生懸命やってるし、仕事も頑張ってるし、そりゃイライラもするわよ!」と(笑)

――(笑)

吉川さん「いい親になろう」「いい大人になろう」としても、なかなかそうなれませんからね。人生、気楽に行きましょう。

「悩みながら精いっぱい生きている親の姿」を子どもに見せてください

トークの後、吉川さんによる講演も行われました。お父さん、お母さんに向けて紹介したのが「枠」という考え方です。

人は社会生活を営む上で、定められた規範やルールを守る必要があります。これが「社会生活において守るべき枠」です。その外側にもう一つ「大きな枠」があります。この「大きな枠」を外れると、非行や犯罪につながると考えます。

外側の黒枠の中に収めるために試行錯誤するのが子育てです
外側の黒枠の中に収めるために試行錯誤するのが子育てです

「守るべき枠」と「大きな枠」の間にある余白は調整部分。その人の個性や特性、年齢に合わせて必要な配慮や、その家庭の教育方針が当てはまります。「外では駄目だけど、家ではOK」というように時と場合によって許されるものなども入ります。

「その子に合わせて試行錯誤しながら、枠内に収めていくのがしつけであり、教育です。子どもや家庭によって、そのバランスはさまざまで、正解はありません」と吉川さんは語りました。

子育てで知っておきたい「枠」という考え方
子育てで知っておきたい「枠」という考え方

トークでも触れましたが、子育てでは「理想ばかりを追い求めない」ことも大切です。吉川さんがお母さん、お父さんに呼びかけてきたのが「良い加減」です。

「子どもに『寄り道せずに早く帰ってきなさい』と言いますけど、ゆっくり寄り道することが子どもにとっては面白い。『頑張りなさい』と言うと、頑張り過ぎる子どももいます。だから、『良い加減』が大事。これもバランスです」

子育てではともすると、子どもの「ないもの探し」をしてしまうとのこと。

「親は子どもの悪いところを見つけて良くしようとしがちですが、短所は長所にもなりますから。物事には常に二面性があると考え、今あるものを大切にしてほしいです」

子育てとは「良い加減」をその都度、見つけていくこと
子育てとは「良い加減」をその都度、見つけていくこと

スマホやゲームなど、子どもとメディアの付き合いについては「学校でもタブレットを 1 人 1 台持つ時代になり、『スマホを子どもに一切見せない』というのはもう難しいのかな」と切り出しました。

その上で、「スマホに全面的に子守を頼むのは違うということをベースに子育てをしてほしい」と呼びかけました。

スマホやゲームへの依存を防ぐには、それ以上に親子で一緒に楽しめる時間をつくることです。

「乳幼児期はやはり外遊び。近視を予防する上でも、外遊びをご家庭でも取り入れてください」

「スマホに全面的に頼るのは違います」
「スマホに全面的に頼るのは違います」

吉川さんは最後に、こんなメッセージをお母さん、お父さんに贈りました。

「子育てに正解はありません。親も悩みながら精いっぱい生きていることを、子どもに見せればいいんですよ」

子育てをしていると、「予定通りに進まない」「思い通りにならない」ことの連続です。

「子育てはコスパ、タイパが悪いと言われます。子どもは汚すし、食べないし、寝ないし、お金がかかる。確かにコスパもタイパも悪いですが、人生には無駄も大切です」

私たち親に持っていてほしいのは「何があろうと、この子を引き受けるという覚悟」。その覚悟は「子どもにも絶対伝わる」と語りました。

「覚悟を持った上で、親も人ですから。自分を褒めてほしいですし、余裕がなくて怒ってしまうなら緩めてほしい。『親の生活を全て子どものために』というのは疲れますから。親子で一緒に遊んで、楽しんで、食べる。豊かな感情を共有してほしいと思います

 

 

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小学生ママです。長女は思春期の入り口にさしかかった4年生、次女はピカピカの1年生です。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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