「ブレスト・アウェアネス」を知っていますか?|乳がんは子育て世代、働く世代に多いがん。自分の乳房の状態に関心を持ちましょう
「がん」は高齢者に多い病気ですが、乳がんは私たち子育て世代、働く世代の女性に多いがん。乳がん患者の半分が 65 歳までに罹患(りかん)しています。
乳がんの早期発見にはマンモグラフィー検査が有効ですが、最近はもう一つ、「ブレスト・アウェアネス」が提唱されています。
「ブレスト・アウェアネス」とは、自分の乳房の状態に日頃から関心を持つこと。乳房を意識して生活することが乳がんの早期発見につながるそうです。
乳房を意識した生活とは?高知市内で開かれた市民公開講座を取材しました。
目次
ココハレ編集部が今回取材したのは「第 35 回日本乳癌検診学会学術総会」の市民公開講座。2025 年 11 月 29 日に高知市本町 4 丁目の高知県立県民文化ホールで開かれました。
日本乳癌検診学会では、乳がんの早期発見を通して死亡率の減少を目指しています。今回の学術総会の会長は乳腺外科医で、近森病院乳腺センター長の杉本健樹さんが務めました。
市民公開講座では、杉本さんと、近森病院乳腺センターの看護師・藤原キミさんが登壇しました。
【乳がんとは】日本人女性の9人に1人が罹患しています
杉本さんははじめに、乳がんの基礎知識を紹介しました。
国内の乳がんの罹患者数は 2021 年で 9 万 7882 人でした。統計では、日本人女性の 9 人に 1 人が乳がんに罹患している計算で、「近く、8 人に 1 人となる」と予測されています。アメリカ、ヨーロッパと同じ水準に近づいているそうです。
一方で、死亡数は患者数の増加ほどは増えておらず、2024 年で 1 万 5869 人。乳がんは他のがんよりも生存率が高いのが特徴です。
年齢分布では他のがんと比べて、40~60 代が多いのが特徴。就労年齢( 20~65 歳)で見ると、死亡数が最も多いがんとなっています。
杉本さんは「乳がんは働く世代、子育て世代の女性に多いがん。治療では生活基盤をどうするか、子育てや妊孕(にんよう)性、美容面など、考えておくべきことがたくさんある」と語りました。
【乳がんの治療】「早期発見」で「より小さな手術」「最小限の治療」が可能に
杉本さんによると、乳がんの治療方法は乳がんがどのタイプかで変わるそうです。乳がんのタイプは腫瘍の大きさ、リンパ節などへの転移、乳がん細胞が持つ遺伝子の特徴(サブタイプ)などから決まります。
乳がんの治療は進化しており、いわゆる「早期乳がん」の範囲が広がっています。
以前は大胸筋ごと乳房を取る手術が主流でしたが、「現在は大胸筋の温存は普通になり、さらに 4 割の患者さんは乳房温存手術を受けています」と杉本さん。乳房の再建などの美容面もさらに進化しているそうです。
乳がん患者の 5 年生存率は、2009~2011 年のデータで 92.3 %。手術に放射線治療や薬物療法(抗がん剤治療)を組み合わせることで、生存率が高くなっています。
「乳がんは早期発見と適正な薬物治療によって、より小さな手術、副作用も医療費も減らせる最小限の治療が可能となりました。高い治癒率を保持できています」
【ブレスト・アウェアネスとは】自分の乳房を知る→「ちょっとおかしいな」で受診
では、乳がんを早期発見するにはどうしたらいいのでしょうか。続いて、藤原さんが登壇しました。
藤原さんが紹介したのが「ブレスト・アウェアネス」です。何やら聞き慣れない横文字…。
それもそのはず。高知県が 2025 年 2 月に行った調査によると、ブレスト・アウェアネスを「聞いたことがある」という人はわずか 7 %だったそうです。
藤原さんによると、ブレストは「胸」で、「アウェアネス」は「自覚」「意識」「認識」という意味。ブレスト・アウェアネスはこう説明されています。
【ブレスト・アウェアネス】
自分の乳房の状態に日頃から関心を持ち、乳房を意識して生活すること
乳がんを早期発見するため、これまでは「自己触診」が大切だと言われてきましたが、自分の胸を触ってしこりを探すのは実はとても難しいそう。正しい知識や技術が必要な上、日常生活で続けることも難しいことから、ブレスト・アウェアネスへと変わりました。
「自分の乳房の状態を知る、意識することで、『ちょっとおかしいな』と感じた時に受診行動につなげることがブレスト・アウェアネスの目的です」
ブレスト・アウェアネスは次の四つの方法で身につけていきます。
①自分の乳房の状態を見て、触って、感じて、知っておく
入浴やシャワー、着替えの時などに乳房の大きさ、硬さ、月経の周期に連動した変化などを確認します。
②乳房の変化に気をつける
「しこりがある」「乳頭に血がにじんでいる」「乳輪部がただれている」「乳房の皮膚が陥没している」などに注意します。
③乳房の変化を自覚したら、なるべく早く医療機関を受診する
乳房の変化に気づいたらすぐに受診することが、乳がんの早期発見、診断、治療につながります。
④40歳を過ぎたら定期的な検診を受ける
セルフチェックのみでは乳がんは早期発見できません。セルフチェックと検診を組み合わせましょう。
藤原さんによると、ブレスト・アウェアネスは乳がん検診の対象とはならない若い世代での早期発見にも大切とのこと。女の子を育てる親として、わが子にも伝えなければと感じました。
【マンモグラフィー検査】40歳からは2年に1度検診。超音波検査との組み合わせがおすすめ
最後に乳がん検診について、杉本さんが解説しました。
患者が乳がんに気づくきっかけは、半数以上が自己発見。つまり、何らかの自覚症状があった状態でした。自覚症状のなかった人は検診で発見されていて、割合は 3 割程度となっています。
杉本さんによると、「がん検診とはそもそも、症状のない人が受けるもの」。「健康だから受けない」というものではありません。
人間ドックなどで受ける「がん検診」には、検診を行うことでそのがんによる死亡が確実に減少し、検診のメリットがデメリットを上回ると判断された検査が導入されています。乳がん検診ではマンモグラフィー検査です。
マンモグラフィー検査とは、乳房専用のX線検査(レントゲン検査)です。透明な板で乳房を挟んで薄く伸ばして撮影すると、しこりなどの異常があれば白く写ります。
「40 歳になったら 2 年に 1 度受けましょう」と呼びかけられていて、自治体からも「受けましょう」と通知が届きますが、受けてみると、痛い…。
市民公開講座では会場から、「痛くて検査をちゅうちょする人がいる」との声も上がりました。実際、日本の乳がん検診の受診率は 40 %台にとどまっているそうです。
「検査で痛い思いをする」のはマンモグラフィー検査のデメリットですが、杉本さんは「乳がんの死亡率減少効果が科学的に証明されているのはマンモグラフィーだけなんです」。つまり、痛さよりもメリットの方が上回るんですね。
ただし、マンモグラフィー検査だけでは見つけられないがんもあるそうで、杉本さんは「40 歳代の女性では超音波検査と併用するのがおすすめ」と話していました。
乳がん発症のリスクの一つに、家族の罹患歴があります。アンジェリーナ・ジョリーさんが乳がんを予防するために乳房を切除したことで広く知られるようになりました。母親や姉妹らに乳がんの罹患者がいる場合は、遺伝子検査が保険適用で受けられるそうです。
市民公開講座では、会場の女性が手を挙げ、こんな話をしてくれました。

乳がんは子育て世代の女性にとって怖い病気ですが、早期発見する方法、リスクを減らす方法がきちんと確立されていることがよく分かりました。自分の命のため、大切な家族のため、皆さんも「ブレスト・アウェアネス」を始めてみませんか?
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