今の子どもはデジタルネイティブだから何でもできる…は間違い!|AI時代に子どもを守る「情報リテラシー教育」とは?安藤未希さんが解説しました
生まれた時からスマホが当たり前にあり、学校の授業や宿題ではタブレットを使いこなす小中学生たち。「今の子どもはデジタルネイティブだから何でもできる」とも言われますが、大きな間違いだそう。
AI時代に子どもを守る「情報リテラシー教育」をテーマにした講演会が高知市内で開かれました。
登壇したのは「インフォハント」代表の安藤未希さん。「ディープフェイク」「フィルターバブル」「ファクトチェック」など、親が知っておきたいデジタル用語を挙げながら教えてくれました。
今の子どもたちはどんな感じでインターネットを使っているのでしょうか。詳しくご紹介します。
目次
安藤未希さんは、ファクトチェックの専門家。情報の真偽を見極めるメディア情報リテラシー教育の授業を、高知県内をはじめ全国の小中高校で行っています。総務省の「地域情報化アドバイザー」も務めています。
2 月 4 日には新著「スマホを持つ前に知っておきたい 情報との上手な付き合い方」(かんき出版)が発売されます。
今回の講演会「AI 時代の子どもを守る 情報リテラシー教育最前線」はNPO法人「GIFT」が主催。2026 年 1 月 18 日に高知市旭町 3 丁目のこうち男女共同参画センター「ソーレ」で開かれました。
この記事では、親が知っておきたい情報リテラシー教育のポイントを、デジタル用語とともに紹介します。
【フィルタリング】「子どもは突破する」を前提に
安藤さんがまず紹介したのは「情報モラル」と「メディア情報リテラシ-」。同じような意味で捉えられる傾向にありますが、「全くの別物です」。
- 情報モラル…「著作権を守る」「誹謗中傷しない」など、ネットを使う上でのルールや道徳
- メディア情報リテラシー…「検索方法」「情報の確認方法」など。メディアを活用する上で必要なスキルや知識
「リテラシー」とは、ある分野に関する知識や能力を活用する力のこと。「メディアリテラシー」は、メディアから得られる情報を適切に評価し、活用する力となります。
インターネットやSNSのリスクから身を守るための大前提がこちら。

大人からすれば当たり前ですが、小学校の授業で話すと、「えっ?!」と驚かれるそう。
「ネットとリアルは別物と考えている子が一部にいます。『つながっているんだよ』と伝えることが大前提です」
なるほど、そこから要確認なんですね。
わが子にスマホやタブレットを持たせる際にやっておくべきことの一つが「フィルタリングの設定」です。
- フィルタリング…違法、有害なウェブサイトへのアクセスを制限する機能
子どものスマホやタブレットに設定すると、アダルト系サイトやギャンブル系サイトなどが見られなくなります。
設定しておけば安心…かと思いきや?

フィルタリングは設定しますが、突破されるのを前提に、「なぜ必要なのか」を伝えるといいそうです。
「『危ないから』だと子どもはピンとこないので、『情報には対象年齢がある』と伝えてください」
ゲームや映画に年齢制限があるように、アプリにも年齢制限があります。例えばインスタグラムやTikTokは 12 歳以上ですが、肝心の大人がそもそも知らない…なんてことも。
「子どもに『ルールを守ろう』と言う前に、大人がルールを知る必要がありますよね」。確かに。
スマホやタブレットは、子ども用に新たに契約する場合は、店頭でのフィルタリングが義務化されています。親のお下がりを持たせる場合は抜かりがちなので、ご注意ください。
【誹謗中傷】「受けた人の気持ち」を想像させましょう
ネットやSNSでの「誹謗(ひぼう)中傷」の定義はこちら。もちろん、ネット上に限ったことではありません。
- 誹謗中傷…特定の個人や企業などに対して、悪口や根拠のないうそを書き込み、人格を否定したり、社会的評価を低下させたりすること。
被害を受けた側は「情報開示請求権」によって、発信者を特定できます。名誉毀損罪や侮辱罪などで発信者を訴えたという報道もされています。
誹謗中傷を行う理由について、安藤さんはこう語りました。

「相手が有名人だから」「みんな言ってるから」という理由で安易に書き込んだり、正義を振りかざしたり。見かけると心が痛みますし、げんなりもしますよね。
誹謗中傷にならない対応として、安藤さんは「クラスの友達の発表が早口で、声も小さく、分かりづらかった」という例を子どもたちに示しています。
- 誹謗中傷…「早口で聞き取りにくくて、発表が下手。あいつの発表は聞く価値なし」
- 声かけ…「もっとゆっくり、大きな声で言ってくれたら、聞き取りやすくなるよ」
【ディープフェイク、性的ディープフェイク】生成AIで作ったフェイク…人権侵害です
最近よく聞くようになったのが「ディープフェイク」や「性的ディープフェイク」です。
- ディープフェイク…「ディープラーニング」と「フェイク」を合わせた造語。生成AIで作った偽物の画像や動画など。
- 性的ディープフェイク…ディープフェイクのうち、性的な偽物画像、動画のこと。
性的ディープフェイクでよく報道されるのが「卒業アルバムの顔に別人の体を組み合わせた」というもの。声も作れるそうです。
今年に入り、Xの生成AI「Grok(グロック)」を使うと、Xに投稿された画像を無断で性的に加工できるようになり、問題となりました。
中高生の被害の半数は、同じ中学、高校の生徒が加害者となっています。小学生への被害も報告されています。
残念ながら、こうした悪質なフェイクは「これからも絶対になくならない」と安藤さんは断言しました。

なるほど。「残念ながら作れてしまう」と伝えた上で、「作ってはいけない理由」をきちんと考えさせるんですね。
親として注意したいのが、子どもの顔が分かる画像や動画の投稿です。「実名を出していなくても、後ろの背景からどの辺に住んでいるかが特定できる」とのこと。

【子どもの検索行動】一番上に表示される情報を「正しい」と信じます
そもそも、子どもはネットをどのように使っているのでしょうか。安藤さんは小学校で行っている授業から、「子どもの検索行動」を教えてくれました。
授業のお題はこちら。
「ロイロノート」とは授業で使われているアプリです。
多くの子どもは検索窓に「ドラえもん」と入力し、「画像」をクリックします。
試しにココハレ編集部員が自分のパソコンで検索してみた画面がこちら。
授業では、ほとんどの子どもが画面の左上の画像を選ぶそうですが、選んだ理由は子どもによって違います。
安藤さんが「どうしてこの画像を選んだの?」と尋ねると…?

なんと無邪気な!多くの子どもは「一番最初に出た情報が一番正しい」と信じているそうです。
一方で、こう答える子どももいます。

「テレビ朝日が放送しているから、『テレビ朝日』というクレジットがある画像が正しいだろう」という考え方ですね。しっかりしてる!
「ドラえもん 公式」と入力し、同じ画像にたどり着いた子どももいるそうです。
つまり、「同じアウトプットでも、検索のプロセスや選択理由は違う」と安藤さん。情報リテラシーを身につけるためには、情報にたどり着くまでの過程が重要なんですね。
ここで、参加者も検索にチャレンジしました。お題は「カモノハシの赤ちゃん」です。
ココハレ編集部員もチャレンジしました。
はいはい、カモノハシの赤ちゃんね。カモノハシ…あれ?そもそもカモノハシってどんな動物だっけ?
ドラえもんと違い、「カモノハシ 赤ちゃん」で検索すると、いろんな画像が出てきて困惑しました。
授業で選ばれるのは、こちらの画面の右側に表示されている、手のひらサイズの赤ちゃん。会場でも選んだ人がいました。
この画像は実は樹脂で作られた作品なのですが、検索順位でトップに表示されるため、選ぶ子どもが多かったそうです。
はじめは「一番に表示された」という理由で選んだ子どもたちも、グループで検索方法を話し合うと、やり方を変えていきます。
「動物園でカモノハシの赤ちゃんが生まれました」というテレビのニュース映像から探したり、「カモノハシはオーストラリアに生息している」と調べてオーストラリアの動物園のサイトから見つけたり。
より適切な検索方法にたどり着くそうです。
ちなみに、安藤さんは「今の子どもたちに『画像を探して』と指示すると、『すべて』ではなく、『画像』をクリックします。大人からすると、びっくりするんですけど…」と語っていました。
驚いた編集部員が帰宅後、小学 4 年生の長女に尋ねると、やはり。「画像を探す時に文章が出てきたらじゃまだから」とのこと。「文章がじゃま」って、文章を読んで確認したりしないのか…。
「子どもの検索行動は過程を知ることが大事」と、身をもって理解できました。
【フィルターバブル、エコーチェンバー】私たちは情報を“選ばされて”います
私たちが検索する時に使うGoogleやYahoo!は「プラットフォーム」と呼ばれています。プラットフォームとはこの場合、ウェブ上で提供されているサービスのこと。SNSも含まれます。
検索すると表示されるサイトや画像の順番は、そのプラットフォームが作った「検索アルゴリズム」という基準に基づいています。ここで知っておきたいポイントがこちら。

検索アルゴリズムには、その人の興味や関心などの個人情報も反映されています。例えば、卵料理を作りたいなと思って検索すると、しばらくの間、卵料理が頻繁に表示される…といった現象が起こりますよね。
プラットフォームのこうした仕組みを知っていないと、知らず知らずはまってしまう“落とし穴”がこちら。
- フィルターバブル…ネットから得られる情報が自分の見たい情報や意見ばかりになってしまうこと
- エコーチェンバー:SNSで自分と似た興味関心を持つユーザーをフォローしてコミュニケーションを繰り返した結果、自分の意見が一般的で正しいと勘違いしてしまうこと
情報が正しければいいですが、間違っている場合、誤情報ばかりが表示され、それを信じる人とSNSでつながってしまいます。
コロナ禍の時にファクトチェックの仕事をしていた安藤さんは「私のXのタイムラインは陰謀論だらけになりました」と振り返っていました。
【フェイクの見抜き方】うそはびっくりするし、誰かに言いたくなる!
間違った情報は「偽誤情報」と呼ばれます。「フェイクニュース」とは、本当ではない記事などのこと。偽誤情報の一つで、「だましてやろう」という意図があります。
ディープフェイクと同様、悪意のあるフェイクニュースや詐欺広告の類いも、今後なくなることはありません。
安藤さんは最後に、偽誤情報やフェイクから身を守るためのチェック項目を教えてくれました。

例えば、「闇バイト」の募集はSNSで「ホワイト案件」などと回ってきます。なぜSNSなのかというと、「普通の求人広告に出せないから」。
Xなどで流れるデマやフェイクはよくできているので判別が難しい場合もありますが、こんな視点も大事です。

「事実」「正しいこと」の多くは、驚くことも楽しいこともないため、「いいね」が伸びません。一方で、「うそにはびっくりさせられますし、誰かに言いたくなるので、拡散される」とのこと。
なるほど…納得です!
あやしい情報を見た時に取りたい行動がこちら。
- スルーする…調べてもきりがないので、「そんなこともあるかもね」と思っておく。
- ちょっと考える…投稿者はなぜ、その情報を発信してる?発信することで得することはある?
- 調べる…投稿者について調べる。過去の投稿をチェックする。リポストや「いいね」は自分の信頼に関わるので慎重に判断する。
偽誤情報やフェイクニュースを間違って拡散してしまった時の対応は「伝えた人に訂正する」「SNSに訂正情報を投稿する」「間違えた投稿を削除する」の三つ。
「ネットとリアルは同じ一つの世界」が大前提ですね。
間違った情報の波に飲み込まれないようにするために、安藤さんは「ネットでも、ネットでなくても、『自分がどこからその情報を得たか』を確認することを癖付けておくといいですよ」と語っていました。
ネットやSNSのリスクから子どもを守る前に、親自身がフィルターバブルやエコーチェンバーにはまっていないか、その時々で確かめる必要がありますね。デジタルの世界はカタカナ語が多くてちょっとうんざりもしますが、新しい情報には敏感でいようと思います。
この記事の著者