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DVは相手を思い通りにする「支配」が目的…子どもは「受動虐待」の被害を受けます|DVをしない・されない関係とは?「デートDV」を提唱した山口のり子さんが講演しました

DVは相手を思い通りにする「支配」が目的…子どもは「受動虐待」の被害を受けます|DVをしない・されない関係とは?「デートDV」を提唱した山口のり子さんが講演しました

「DV」とは「ドメスティック・バイオレンス」のこと。夫婦間やパートナー間の暴力が典型で、相談者の 8 割が女性です。

DVはなぜ起こるのでしょうか。日本で「デートDV」を提唱した一般社団法人「アウェア」の代表理事・山口のり子さんは、DVの目的を「相手を自分の思い通りにする『支配』」と語っています。

家庭内でDVが起こると影響は子どもにも及び、山口さんは「受動虐待」と呼んでいます。

「誰もがDVの加害者、被害者になり得る」と警鐘を鳴らす山口さん。こうち男女共同参画センター「ソーレ」で開かれたDV防止啓発講演会から紹介します。

 

DV防止啓発講演会「それってラブラブ?~束縛は愛かそれともDVか~」は 2025 年 11 月 8 日、高知市旭町 3 丁目のソーレで開かれました。香南市ののいちふれあいセンター、四万十市役所でもライブ配信されました。

DV防止啓発講演会は11月の「女性に対する暴力をなくす運動」に合わせて開かれています
DV防止啓発講演会は11月の「女性に対する暴力をなくす運動」に合わせて開かれています

講師の山口のり子さんは一般社団法人「アウェア」の代表理事。2002 年にアウェアを開設し、DV加害者向けの教育プログラムを始めました。

2003 年には「デートDV」を提唱し、若者向けの防止教育も開始。DVの根絶に向け、DVへの介入、予防・防止教育、プログラム実施者の養成に取り組んでいます。

著書に『愛を言い訳にする人たち―DV加害男性 700 人の証言』(梨の木舎)、『愛する、愛される―デートDVをなくす・若者のためのレッスン 7 』(梨の木舎)、共著に『おうちジェンダー平等 はじめよう―非暴力の子育ての手引き』(アウェア発行)などがあります。

山口さんの著書『愛を言い訳にする人たち―DV加害男性700人の証言』
山口さんの著書『愛を言い訳にする人たち―DV加害男性700人の証言』

夫に家事を頼む時に何て言う?「ジェンダーバイアス」に気づいていますか?

山口さんはこれまで、800 人ほどのDV加害者と面談を行ってきました。このうち、アウェアのDV加害者プログラムを受講したのが半数ほど。加害者プログラムには、加害者が生まれない社会を目指すための被害者支援として取り組んでいます。

プログラムを受講した男性からは「交際を始める前にDVについて知っておきたかった」という声が寄せられているそうです。

「加害者を生まない社会にすることは、被害者支援の一つです」
「加害者を生まない社会にすることは、被害者支援の一つです」

DVはなぜ起こるのでしょうか。DVを知るための一歩が「ジェンダーを知ること」と山口さんは語りました。

ジェンダーとは、社会的、文化的、歴史的につくられた性差のこと。「女らしさ、男らしさ」や「性別役割」のことです。

性別役割についての思い込みや偏見は「ジェンダーバイアス」と呼ばれています。ジェンダーバイアスは、知らず知らずのうちに「当たり前のこと」として人々に根付いているそうです。

自分の中の「無意識の偏見」に気づくため、講演ではジェンダーバイアスの例が示されました。一部がこちら。

  • 夫に家事を頼む時、「悪いけど」とまず言う
  • 女性が仕事をしていても家事育児をしっかり、というのは仕方のないこと
  • 子どもの学校への書類の保護者欄には子どもの父親の名前を書く
  • 夫は普段からごみ出しなどの家事手伝いをしている
  • 公衆トイレで女性用にばかり人が並ぶとしても、それは仕方のないことだ

 

家事を頼む時の「悪いけど」はお願いする時の声かけとして違和感なく使いますが、そもそも対等な夫婦関係において「家事をお願いする」という意識がおかしいとのこと。言われてみれば…。

「一つでも当てはまる項目があったら、ジェンダーバイアスを持っているということ」と山口さんは語りました。

自分の中の「ジェンダーバイアス」に気づくことから始まります
自分の中の「ジェンダーバイアス」に気づくことから始まります

「男性はこうあるべきだ」「女性はこうあるべきだ」というジェンダー規範は、人の振る舞いや態度、行動、価値観、選択などあらゆることに影響を与えます。

「人生を左右するほどなのですが、多くの人が気づいていません」。性別役割の決めつけは「ジェンダーギャップ」という男女間格差を生み出していて、「人権問題であり、社会の公正さ、倫理の問題である」と語られました。

DV被害の8割は女性…「嫌なら別れたらいいのに」は心ない言葉です

男女間の社会的、文化的な格差である「ジェンダーギャップ」が大きいと、女性への暴力が起こりやすくなります。

女性への暴力にはDVやデートDV、セクハラ、性暴力などが含まれます。山口さんは「国際社会では女性への暴力を『ジェンダーに基づく暴力』と定義している」と説明しました。

DVはLGBTQ+の間でも存在しているそうです。女性から男性へのDVも起きていますが、2023 年の警察庁の統計では、相談の約 8 割が女性からでした。

「女性からの相談が圧倒的に多く、被害は甚大で深刻です。DVは男女が不平等な社会、男性中心の社会が生み出す構造的な暴力なんです」

「DVは男性中心の社会が生み出す構造的な暴力です」
「DVは男性中心の社会が生み出す構造的な暴力です」

DVの目的は「支配」だと、山口さんは語りました。

「相手を自分の思い通りに支配したいんですね。力は支配するための手段です」

アウェアではアメリカの司法省のサイトから、DVを次のように紹介しています。

DVとは、年齢や性、結婚している、同居している、同棲している、婚約している、デートしているなど、その形態に関わりなく、親密な関係の相手に対して力と権力をもつことで優位に立ち、支配する関係をつくり、それを維持するために繰り返し行うあらゆる威圧的行為

 

DVの加害者は相手を支配をするため、ジェンダー規範、年齢差、経済力、地位、学歴、身体能力・腕力などを駆使します。

「DV加害者は相手を殴ったり首を絞めたり、外出しないように閉じ込めたり、土下座させて謝らせたり。外で赤の他人にしたら通報されますよね」と山口さん。「家庭内やデートDVだから見えないだけで、人権侵害犯罪と呼ぶべきものです」

ソーレが配布している「それってラブラブ…?」。若者向けにデートDVを啓発しています
ソーレが配布している「それってラブラブ…?」。若者向けにデートDVを啓発しています

内閣府の 2023 年度の調査によると、DV被害を受けた女性のうち、「相手と別れた」という人は 20.1 %。「別れたい(別れよう)と思ったが別れなかった」が 46.7 %、「別れたい(別れよう)と思わなかった」が 23.9 %。合わせて 7 割が「別れない」を選択しました。

こう紹介されると、「DVを受けたのなら別れたらいいのに」と思ってしまいますが、特に既婚女性にとって「別れる」という選択はハードルが高いのが現実です。

経済的な問題に加え、周囲からは「それくらい我慢しなさい」「好きで結婚したんでしょ?」「もっと夫をうまく操縦しなさい」「お母さんでしょ?」などと心ない言葉を浴びせられることもあるそうです。

「女性に対する暴力をなくす運動」のシンボルはパープルリボン。ソーレでは毎年、ツリーにメッセージを飾っています
「女性に対する暴力をなくす運動」のシンボルはパープルリボン。ソーレでは毎年、ツリーにメッセージを飾っています

さらに、子育て家庭でのDVは子どもにも深刻な影響を与えます。自分の目の前で、母親が父親に身体的、精神的暴力を振るわれているのを目の当たりにすると…。山口さんはその影響を「受動虐待」と呼んでいます。

「たばこの煙にさらされる受動喫煙と同じように、DVを見せられることで受動虐待が起こります。『DVという毒』で汚染された空気を子どもが毎日吸っている。DV加害者の 8 割がDV家庭で育っているというデータもあります」

DV加害者はどんな人?「病気ではなく、学んだことです」

では、どんな人がDVの加害者になるのでしょうか。一般的に抱かれるイメージがこちら。

  • 冷酷で凶悪
  • すぐ暴力を振るう
  • 社会性がない
  • 何をするか分からない
  • 見るからに危険
  • 不気味

800 人ほどの加害者に会った山口さんは「どれも違います」。加害者は「普通の人」だそうです。

「アウェアとつながった人に限られますが、きちんと仕事をしているし、社会的地位が高い人も多い。周囲からは優しくていい人だと思われています。年齢は 18 歳から 79 歳までと幅広く、職業や学歴もさまざま。どんな人でも加害者になる可能性があると分かります」

「DV加害者は普通の人。どんな人も加害者になる可能性があります」
「DV加害者は普通の人。どんな人も加害者になる可能性があります」

DVの原因には、仕事などのストレスやアルコールなどが挙げられますが、山口さんは「DVのきっかけにはなりますが、原因ではない」と語ります。

「精神的な病や心理的病理である」との指摘に対しては、「加害者がDVをする対象は親密な関係の人だけ。つまり、相手を選んでやっているので、病気ではありません」。

「DVは病気ではなく、学んだこと」というのが山口さんが至った結論です。

「加害者は大きなジェンダーギャップのある社会で、男性中心のジェンダー規範を学びます。女性差別や男女間の不平等が凝縮されて、個人的な、親密な関係の中で起こる暴力がDVです」

どんな言動がDVに当たるのか。参加者同士で話し合いました
どんな言動がDVに当たるのか。参加者同士で話し合いました

山口さんは講演で、夫婦間の会話の例を示しました。外出しようとする妻に、夫が声をかけています。どこがDVに当てはまるか、皆さんは分かりますか?

夫:どこへ行くんだ?

妻:友達とランチ。言ったでしょ、忘れたの?

夫:うちにはそんなことに使うお金の余裕なんてないんじゃない?

妻:あなただって友達と飲みに出かけるでしょ?私もランチくらいいいじゃない。

夫:そうやっていつも僕が働いている間にお気楽にランチして楽しんでいるんだ…。

妻;そんな!いつもなんて言わないで。それに私だって働いてるよ!

夫:パートだろ?偉そうに言うのは僕ぐらい稼いでからにして。

 

ここまで山口さんの話を聴いてきたので、「相手の行動を制限しようとする時点でDV」だと分かりました。この後、夫は離婚までちらつかせて、妻に外出を諦めさせました。

夫の発言からは「妻は夫の言うことを聞くものだ」「正規雇用でより多く稼いでいる自分が上で偉いから、自分が優先されるべき」という価値観が伺えます。

夫は価値観は明らかにゆがんでいますが、「あなたの考えは間違っている」と言えないのがDV被害の深刻なところ。被害者は身体的、精神的暴力で力を奪われ、「これ以上嫌なことを言われないように、ランチに行くのをやめよう」と我慢することを選ぶそうです。

「DVは相手から笑顔や普通の生活、自分らしさを奪い、恐怖心や無力感、劣等感、自責の念などを抱かせます。DVは相手の人生を搾取する『魂の殺人』であり、その先には関係の破綻、崩壊しかありません」

男女間に上下関係はありません!

DVをしない・されない関係を築くにはどうしたらいいでしょうか。山口さんは最後に、中高生に伝えている三つを紹介しました。

  • 2 人の関係は対等であり、平等である…男女間に上下関係はありません
  • ジェンダーフリー…性別役割から自由になり、相手を縛り付けない
  • 相手を尊重する

「相手を尊重するとは、話を聞き合い、気持ちに共感し合うこと。自分のことは自分で決めて、2 人のことは 2 人で話し合って決めることです」

「好きになった相手を束縛することも、好きになった相手の言うことを聞いてしまうことも、『ラブラブ』ではありません。人権を尊重する社会の基本はジェンダーの平等であると知っておいてください」

 

「ジェンダーバイアス」は生きてきた中で知らず知らず身についているものだと、あらためて気づかされました。山口さんは「DVについて知識があれば、夫やパートナーに『それはDVだ』と指摘できる」とも語っていました。一人の人間としてジェンダーやDVの知識を得て、親として子どもたちにも伝えていかねばならないと感じた講演会でした。

 

ソーレではDVやデートDVに関する相談も受け付けています。相談は無料で、秘密は守られます。

面接相談は予約制ですので、まず電話で相談してみてください。

ソーレではDVやデートDVに関する相談を受け付けています
ソーレではDVやデートDVに関する相談を受け付けています

ソーレ・女性のための一般相談

  • 時間:9:00~12:00、13:00~17:00(最終受け付けは16:00)
  • 相談員:ソーレ相談員
  • 方法:電話、面接
  • 相談室直通電話:088-873-9555
  • 休館日:第 2 水曜日、祝日、年末年始( 12 月 29 日~ 1 月 3 日)
  • ウェブサイト:https://www.sole-kochi.or.jp/info/consult.php

 

山口さんが代表理事を務める一般社団法人「アウェア」では被害者を支援するため、「DVをやめたい」という意識を持つ人向けに加害者プログラムを行っています。

一般社団法人アウェア

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小学生ママです。長女は思春期の入り口にさしかかった4年生、次女はピカピカの1年生です。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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