子育て
アイコン:子育て

「男性の育休」って本当に必要?パパとママ2人で親になるために知っておいてほしいこと|「ゆるりとHappy子育て」⑧助産師・森木由美子さんが子育てを楽しめる知識、技術を紹介します

「男性の育休」って本当に必要?パパとママ2人で親になるために知っておいてほしいこと|「ゆるりとHappy子育て」⑧助産師・森木由美子さんが子育てを楽しめる知識、技術を紹介します

「子育てを楽しみたいけれど、うまくいかない」「かわいいはずのわが子が、かわいく思えない」。そんな思いを抱えていませんか?

コラム「ゆるりとHappy子育て」では助産師の森木由美子さんが「これを知っておくと子育てがもっと楽しめる」という知識や技術を紹介していきます。

この数年で当たり前になってきた「男性の育休」。一方で、「男性の育休って本当に必要?」という声もまだまだあります。パパとママが 2 人で親になるために必要なこととは?産後ケアに取り組む助産師さんの目線で紹介します。

「ゆるりとHappy子育て」はこちらから

「誰かがいないと育児が回らない状態」になることも…

赤ちゃんが生まれてすぐの時期は、ママと赤ちゃんが一つのリズムを探りながら過ごしていく。そんな時間だと私は感じています。

おっぱいを飲んで、泣いて、眠って――。その繰り返しの中で、赤ちゃんは少しずつこの世界に慣れ、ママは“母親としての自分”を見つけていきます。

この数年で、育休を取得するパパがずいぶんと増えました。

男性の育休は間違いなく必要な制度です。

核家族化が進み、地域や家族の支えが得にくくなった今、赤ちゃんとママを支える存在として、パパが家庭にいることの意義はとても大きくなっています。

おっぱいを飲んで、泣いて、眠って。赤ちゃんは少しずつこの世界に慣れていきます
おっぱいを飲んで、泣いて、眠って。赤ちゃんは少しずつこの世界に慣れていきます

一方で、「男性の育休って本当に必要?」という声を耳にします。

子育て世代でも感じ方はさまざまで、「夫がいてくれて助かった」という声もあれば、「正直、気を使って疲れた…」という本音もちらほら。

男性の育休は制度として整いつつある一方で、「男性が育児にどう関わればいいのか分からない」「何が正解か分からない」といった戸惑いが、現場ではまだまだ残っているのが現実です。

パパとママがうまくいっているようで、気になるご家庭もあります。

例えば、授乳時間を“シフト制”のようにパパとママで分担するご家庭。授乳アプリをパパが記録し、抱っこ紐も 2 人で交代で装着しています。

一見とても協力的に見えますが、ママが「1 人でできる感覚」を持てないまま、「誰かがいないと育児が回らない状態」になることも。

パパが仕事に戻ったとたん、「赤ちゃんが泣いたら何もできない」とママが戸惑い、家庭全体が不安定になることもあるのです。

「男女平等=パパとママは同じ役割」でしょうか

育児はパパとママが 2 人で取り組むもの。けれど、そこには父と母、それぞれの役割の違いがあります。

よく「男女平等」と言われますが、「平等=全く同じ」ではないと私は思います。

赤ちゃんが最初に出会い、リズムをつくるのはやっぱりママ。特に母乳育児では、授乳の積み重ねがホルモンや感覚を整え、ママとしての自信や育児の軸を育ててくれます。

そこにパパが対等に関わろうとしすぎると、かえって授乳がうまくいかなかったり、ママが「誰かがいないとできない状態」にとどまってしまうことも。

赤ちゃんが最初に出会い、リズムをつくるのはやっぱりママ
赤ちゃんが最初に出会い、リズムをつくるのはやっぱりママ

だからこそ、パパには違う形の関わり方が求められます。

授乳後にパパが抱っこを代わって寝かしつけをしたり、家事を引き受けて洗濯をしたり、ご飯を炊いたり。

凝った料理でなくても、おみそ汁とご飯があれば、ママの心に余白が生まれます。

私自身も子どもたちが小さい頃、夫が出張で不在の時に自然と“ワンオペ育児”になる場面が何度もありました。

子どもが泣いていても、ご飯を作り、お風呂に入れ、寝かしつけまで 1 人でこなす日々。

決して楽ではなかったけれど、「 1 人でできるかできないか」ではなく、自分がやるしかない状況の中で、少しずつ「自分でもやっていける」という自信が育っていったように思います。

「育児は大変だけど、豊かだった」と思えるように

出産・育児が大変なのは、当たり前のこと。

「大変だからなんとか楽にしなきゃ」とだけ捉える風潮に、少し違和感があります。

以前、現場でこんな言葉をもらったことがあります。

「育児は大変だけど、豊かだったと、後から思えるように」

その言葉に、私はとても救われました。

今、私たちに必要なのは「育児の大変さを否定しないこと」。大変さの中でこそ、親としての軸や、家族のリズムが育っていくのだと思います。

大変さの中で育っていくものがあります
大変さの中で育っていくものがあります

ちなみに、ドイツでは妊娠期から、2 人で親になるための準備が当たり前にされています。両親学級は保険適用で 14 時間、出産後も最大 36 回まで助産師(ヘバメ)の訪問があり、家族で育児をスタートする支援体制が整っています。

日本にはそこまでの制度はありませんが、「産後ケア」という仕組みがあります。

パパ育休と合わせて産後ケアを活用することで、まずママが体を休め、赤ちゃんとのリズムを整える時間を確保できます。

その後、パパと一緒にお世話を練習したり、家事分担を話し合ったり、「共同の育児練習の場」として活用することもできます。

「パパが育休を取っているので、産後ケアは利用しない」というご家庭があります。でも、実はママが無理をしていたり、パパが「何が正解なのか分からない」と悩んでいたりします。

2 人で育てていくために、上手に活用してほしいなと思います。

 

育児は完璧じゃなくていい。むしろ、うまく手を抜けることが大事。

育児に“ちょうどいい塩梅”があるとしたら、それはきっと、「 2 人の間で育てるリズム」のことかもしれません。

赤ちゃんが泣いたら抱っこして、笑ったら一緒に笑って、うまくいかない日は「まぁ、いっか」。

パパとママがそんなふうに肩の力を抜いて、「やれることから、ぼちぼちでいこう」と思える子育てが広がるといいなと思っています。

 

 

「男性の育休」について高知県が企業向けに開いている「未来のパパママ 共育て講座」を取材しました。森木さんの講演を紹介しています。

「男性の育休」はなぜ必要?夫婦で育休を取るメリットは?職場復帰後に活用できる子育て支援制度とは?|高知県の「未来のパパママ 共育て講座」に参加してみた

「ゆるりとHappy子育て」はココハレの「コラム」で連載しています。

この記事の著者

門田朋三

森木由美子

鹿児島市生まれ。総合病院や個人病院で助産師、看護師として勤務。結婚後、高知県へ移住しました。
自分自身の出産、子育てを通して、産前産後のケアの重要性を痛感し、2015 年に助産院はぐはぐを開業。出張での産後ケアに取り組んでいます。
2 児の母。趣味はピアノ、クラリネット演奏。

関連するキーワード

LINE公式アカウントで
最新情報をチェック!

  • 週に2回程度、ココハレ編集部のおすすめ情報をLINEでお知らせします。

上に戻る