わが子を上手に褒めるこつは?
「子どもを叱りすぎてはいけない」。分かってはいるけれど、なかなかうまくいかないのが子育て。忙しさに追われて、子育ての禁句と言われる「早くしなさい!」「ちゃんとしなさい!」を連発してしまうこともありますね。
上手に褒めるこつは「子どもの好ましい行動にのみ注目し、行動を始めたらすぐに、具体的に褒める」だそうです。ご家庭で実践してみませんか?
わが子をどう褒める? 好ましい行動に注目 子どもを認め、自信を育もう
(高知新聞 2017 年 7 月 7 日朝刊より)
子どもは上手に褒めながら育てましょう―。最近の育児書では「たくさん褒めて自己肯定感を育む」ことが大切だと紹介されているが、「困った行動ばかりで褒めるところがない」と悩むお父さん、お母さんは少なくないのでは。高知市でこのほど開かれた子育て支援者向けのセミナーから“上手に褒めるこつ”を紹介する。
具体的、肯定的に
セミナーは「上手にほめて楽しい子育て講座」の進め方を学ぼうと、県立療育福祉センター発達支援部が主催。発達障害のある子どもの親を対象にした「ペアレント・トレーニング」を参考に同部が企画した講座で、チーフの野々宮京子さんは「発達障害に関係なく、全ての保護者に楽しい子育てを伝えたい」と話す。
子どもを褒める前段としてまず必要なのが、子どもの「性格」ではなく「行動」に注目することという。例えば食事中に席を立つ子ども。親は「うちの子はじっとできない、困った子」と性格で捉えがちだが、「食事中に椅子から立ち上がり、動く」と行動で捉えることで、その子の全てを否定的に評価するのではなく、個々の行動に即して対応できるようになる。
行動は見聞きしたことを、「○○する」と客観的に捉えることがポイント。例えば「いつまでもだらだらする」という表現は抽象的なので、「お風呂に入らずに、ソファでごろごろしている」と具体的に言い換える。その上で、「好ましい行動」「好ましくない行動」「許しがたい行動」の三つに分ける。
セミナーでは参加者がわが子の日常を思い出して分類した=表参照。「人を傷つけたり、危険な行動は意外にないことに気づいた」との声も上がった。
「当たり前」から
では褒め方は? ポイントは「好ましい行動だけを見る」「行動を始めたらすぐに、段階を追って具体的に褒める」の二つ。
野々宮さんは着替えを例に挙げた。「着替えが終わるまで待つのではなく、洋服を持ったら『お着替えするがや! すごい!』と褒めましょう」。その後も、袖に腕を通せたら「お手々出たね」、ズボンを履いたら「すごい! 上手に履けた」。途中経過を“実況中継”することで、「お母さんがちゃんと見てくれている」という安心感が子どもに生まれるという。
とはいえ、いつも素直に動いてくれるわけではない。着替えが嫌で悪態をついたり、遊びだしたりすると、親もついいらいらする。
そんな時は遊びや悪態には見て見ぬふりをし、着替えだけを褒める。好ましい行動のみに注目することで、子どもは「お母さんが喜ぶことをしようかな」と気持ちが変わるそう。野々宮さんは「親が叱ると子どもは反抗し、さらに叱って…と悪循環。褒めることを増やすと、必然的に叱ることが減ります」。
「わが子に好ましい行動がない」という人は「当たり前にできている行動」から褒めるといいという。「朝起きた、おはようと言えた、ご飯の前に手を洗った。お子さんが成長しているからできている行動なんですよ」
「ありがとう」
指示は近づいて、目を見て、穏やかに伝える。「ちゃんとしなさい」は分かりづらいので、「椅子に座ろう」と具体的に。指示を聞かない時は少し待ち、また指示することを繰り返す。
「親の指示に従うか従わないかは子どもの意思で、義務ではない。『協力してくれてありがとう』という気持ちを忘れずに接しましょう」
好ましい行動を褒めることで、子どもは「自分はこれでいい」と自信を持ち、「もっと頑張ろう」とやる気になる。「褒めることで育まれる自己肯定感は子どもの心の基盤になり、困難を乗り越える力になる」と野々宮さんは語る。
「親も褒めることを繰り返すと気持ちが軽くなり、親子関係が安定します。ぜひ取り入れて、子どもとのコミュニケーションを楽しんでください」(門田朋三)