「一緒に過ごす時間」「睡眠時間・就寝時間」「食物アレルギー」「花粉症」の傾向は?|ずっと、ぎゅっと!第3部・高知のエコチル調査より②
高知のエコチル調査の基礎データから見えてくる子どもたちの姿と、子育てのアドバイスを紹介します
環境省の「エコチル調査」(子どもの健康と環境に関する全国調査)は、化学物質が子どもの成長に及ぼす影響などを調べる調査です。
連載「ずっと、ぎゅっと!」では、高知の子どもたちの生活に関する基礎データを紹介しています。第 3 部では 5~7 歳のデータを中心に、エコチル調査高知ユニットセンター(高知大学医学部内)からのアドバイスを交えてお届けします。
この記事では「一緒に過ごす時間」「睡眠時間・就寝時間」「食物アレルギー」「花粉症」をテーマに傾向を紹介します。
目次
【一緒に過ごす時間】親子の時間はだんだん減っていきます
3 歳、4 歳、5 歳 6 カ月の調査で、お子さんと一緒に過ごしている時間を聞きました。
どの年齢の子どもも、睡眠時間を除くと「 4~6 時間」が多いことが分かります。
「 3 時間以下」という家庭は、3 歳では 8.6 %だったのが、5 歳 6 カ月になると 13.4 %と増加しています。今後、お子さんが小学校に入学すれば、一緒に過ごす時間はどんどん短くなっていくと思います。
目を見て話すことを気に掛けてみましょう
成長とともに、一緒に過ごす時間の長さではなく、その中身が重要になってきます。子どもの年齢が上がると、小さい時のように一緒に公園に行ったり、おもちゃで遊んだりなど、親と一緒に何かをすることが減ってきます。
その代わり、子どもとの会話が大切になります。
1 日の中で子どもの目を見て話をしたり、話を聞いたりする時間がどれくらいあるか考えてみてください。案外、目を見て話すことは少ないかもしれません。
子どもとの会話は楽しいものばかりではありません。叱ることもありますし、お互いがうまくいかない時間も含まれるでしょう。
それでも、親と子どもが真剣に向き合った体験は子どもの心に強く残ります。一緒に過ごす時間がだんだん短くなっていく中で、目を見て話すことを少し気に掛けてみてください。
(監修:公認心理師、臨床心理士・小森香さん)
【睡眠時間・就寝時間】睡眠不足のサインに注意しましょう
6 歳の調査で、平日の平均的な睡眠時間と就寝時間を聞きました。
睡眠時間は「 9~10 時間」が 59.5 %と最も多く、 「 9 時間未満」は 18.5 %でした。
就寝時間は、33.7 %のお子さんが 22 時を過ぎていました。
忙しい毎日の中、多くのご家庭で「本当はもう少し早く寝かせた方がよいのだろうけど難しい」と思っておられるのではないでしょうか。
アメリカの国立睡眠財団(National Sleep Foundation)で推奨されている 1 日の睡眠時間は次の通りです。
- 3~5 歳…10~13 時間
- 6~13 歳…9~11 時間
必要な睡眠時間には個人差も大きく、推奨される睡眠時間はあくまで目安です。少なめの睡眠時間でも早起きして日中元気に過ごせる子もいれば、長い睡眠時間が必要な子もいます。
睡眠、生活リズムを整えましょう
2 歳以上のお子さんでは、睡眠不足の兆候として次の項目が挙げられています。
- 午前中、眠気がある
- 休日の朝寝坊が 2 時間を超える
- 極端に寝つきがよい
このような場合は、お子さんの睡眠や生活リズムについて見直してみる必要がありそうです。
朝の光を浴びる、昼間しっかり活動する、規則正しい食事や排せつ、過剰なメディア接触を避ける、夜は照明を暗めにしてリラックスするなど、生活全体を整えてあげましょう。
(監修:小児科医・満田直美さん)
【食物アレルギー】診断を受けた子どもは4.4%。鶏卵、乳製品などで症状が出ています
6 歳と 7 歳の調査では、4.4 %のお子さんが食物アレルギーの診断を受けた、あるいは治療中であるという結果でした。
アレルギー症状が出るため食べていない食材は「鶏卵」「乳製品」が最も多く、「果物」「ピーナッツ以外のナッツ類(木の実)」(くるみ、カシューナッツなど)、「甲殻類」「小麦」「魚」「ピーナッツ」「大豆」「そば」「ごま」の順になりました。
鶏卵、乳製品のアレルギーの場合は、成長とともに食べられるようになることが多いですが、どのようにして耐性を獲得していくのか十分に分かっていない食物もあります。
食物アレルギーの症状は、かゆみや発赤、じんましん、目の充血や唇の腫れ、鼻水・鼻づまり、せき、呼吸困難、腹痛・嘔吐(おうと)・下痢、血圧低下、脈の乱れ、意識もうろうなど、さまざまです。症状が出た場合には、食べたものや症状を記録し、早めに医療機関を受診しましょう。
食物除去は医師の指導のもとに行いましょう
不要な食物を除去しないように、正しく診断してもらうことが重要です。除去は医師の指導のもとに行い、成長に必要な栄養が不足しないようにしなければなりません。
除去の解除は、定期的な血液検査や皮膚の検査を参考にし、実際に食べてみる「経口負荷試験」を行いながら進めます。除去中は、加工食品の食品表示をよく確認し、成長に合わせてお子さん本人も確認する習慣を身に付けるといいでしょう。
間違って食べてしまうことへの恐怖や、お友達と異なる給食など、親御さんもお子さんも大変だと感じる場面があるでしょう。しかし、以前に比べると、この病気への理解は進んでいます。周囲の協力を得ながら、長い目でお子さんの成長を支えていきましょう。
(監修:小児科医・大石拓さん)
【花粉症】年齢が上がるとともに、花粉症の子どもも増えています
エコチル調査では毎年、これまでに花粉症になったことがあるかどうかを聞いています。
3 歳で 4.0 %だったのが、7 歳では 29.2 %と、年齢が上がるとともに花粉症のお子さんは増えています。
花粉症の全国調査では 1998 年以降、約 10 年ごとに 10 %ずつ花粉症の患者が増加していることが分かっています。
2019 年の有病者率は全国で 42.5 %、高知県は 41.9 %でした。高知県は全国平均に近いようです。
不便なマスク生活、花粉症の予防には役立った?!
コロナ禍では、普段マスクを着ける機会が増えました。福井大学の先生が「マスク着用には、花粉症の新規発症予防効果があるのではないか」と考えて調査しました。
マスク生活をしていた 2021 年の小学生のスギ花粉症の新規発症率は、コロナ禍以前と比べて半分以下に減少したとの報告があります。普段からマスクを着けることで、花粉症の発症を減らすことができるかもしれないとのことです。
既に花粉症を発症している人にもマスク着用は有効です。マスクを不便に感じる人も多いと思いますが、花粉症予防や症状緩和に役立っているかもしれないと考えることで、マスク生活が少しだけ利点に思えたらいいなと思います。
(監修:公認心理師、臨床心理士・小森香さん)
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エコチル調査について
エコチル調査は 2011 年に始まった追跡調査です。全国から 10 万組、高知県からは約 7000 組の親子が参加し、年 2 回の質問票に答えています。
調査期間はお母さんの妊娠期から、生まれた子どもが 13 歳になるまでの予定でしたが、18 歳まで継続されることになりました。
高知県内のエコチル調査は、高知大学医学部内にあるエコチル調査高知ユニットセンターが行っています。
第 3 部で紹介するデータは、2022 年 6 月時点の高知県内の回答に基づく暫定的な結果です。データは四捨五入しており、加算値が 100 %にならない場合があります。
ココハレの「エコチル調査」で「ずっと、ぎゅっと!」を掲載しています。