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親が子どものよさを伸ばす「10のヒント」とは?|子育てに取り入れたい関わり方を、高知大学大学院教授・岡田倫代さんが紹介しました

親が子どものよさを伸ばす「10のヒント」とは?|子育てに取り入れたい関わり方を、高知大学大学院教授・岡田倫代さんが紹介しました

子どもへのイライラ、実は他に原因がありませんか?子どもと温かい関係を育むために、まず自分をチェックしてみましょう

「早く起きて」「宿題して」「何回言ったら分かるの?」。子どもにイライラしたくないけれど、感情をうまく抑えられない…と悩んでいませんか?

高知大学大学院の教授で臨床心理士の岡田倫代さんが「子どものよさを伸ばすための 10 のヒント」というテーマで講演しました。

親が子どもに上手に関わるには、まず親が自分自身を振り返り、理解していくことが大事だそうです。

自分チェックの方法と、10 のヒントを紹介します。

 

岡田さんは高知大学大学院で子どものメンタルヘルスを研究しています。研究者になる前は香川県内で高校教員を務め、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも紹介されました。

著書に「セルフコントロール力がつく自己理解・他者理解のワークブック(小学校版、中・高校版)「 2 分でできる子どものメンタルヘルスチェックシート」などがあります。

岡田倫代さん。高校教員を経て、高知大学大学院で研究を続けています
岡田倫代さん。高校教員を経て、高知大学大学院で研究を続けています

講演会は高知県心の教育センターの令和 5 年度子育て講演会として、2023 年 6 月 11 日にオーテピア高知図書館で開かれました

【イライラの原因】自分のイライラを、子どもにぶつけていませんか?

皆さんは子育てをしていて、どんな場面でイライラを抱えてしまいがちでしょうか。講演では岡田さんが次の場面を挙げました。

【わが子にイライラしがちな場面】

子どもが朝からイライラしています

機嫌が悪く、私が「おはよう」と言っても無視することが多いです

何が気に入らないのか分かりませんが、ムスッとしています

きょうだいにちょっかいを出し、けんかが絶えません

 

岡田さんはこの文章を提示し、「『子どもに非ありき』で見ていないですか?」と投げ掛けました。

目の前の状況を、一歩引いて見てみましょう。

【わが子にイライラしがちな場面】

子どもが朝からイライラしています→あなたは朝からイライラしていない?

機嫌が悪く、私が「おはよう」と言っても無視することが多いです→あなたはどんなあいさつをしている?

何が気に入らないのか分かりませんが、ムスッとしています→あなたはムスッとしていない?

きょうだいにちょっかいを出し、けんかが絶えません→あなたはちょっかいを出すのをちゃんと見ていた?一方的に決めつけてない?

 

このように一歩引いてみると、「子どもへのイライラには他の原因があるかもしれない」という気付きにつながります。

「子どもに対して、実は自分のイライラをぶつけてしまっていることに気付くと、もしかしたら改善の方法があるかもしれません」

子どもへのイライラについて、落ち着いて考えてみましょう
子どもへのイライラについて、落ち着いて考えてみましょう

「状況を一歩引いて見る」とは、「自分を、もう 1 人の自分が見る」ということで、「メタ認知」と言われます。

「すごく暑い日、うちわであおいだり、洋服を 1 枚脱いだりしますよね。これもメタ認知で、『私は今、暑いと感じている』と自分を客観的に捉え、行動しています」

メタ認知能力が発達するのは、年長児から小学校高学年にかけてだそうです。

小さい子はメタ認知ができないので、暑くても何もできなくて、わーわーと泣いてしまいます。大人が理解して対応してあげることが大事です」

【自分チェック】自分の気持ちを「お天気マーク」で把握していきましょう

「子どもに関係のないことでもやもやしていると、とばっちりが子どもに行ってしまう」と岡田さんは語ります。仕事や人間関係など、ストレスフルな現代において、自分の気持ちを把握しておくことはとても大切です。

岡田さんがおすすめしたのが「夜の一行日記」です。

「気持ちお天気」を毎晩書いてみましょう(講演スライドより)
「気持ちお天気」を毎晩書いてみましょう(講演スライドより)

今日 1 日でうれしかったことや、子どもを叱ってしまったことなどを振り返り、自分の気持ちを『晴れ』『曇り』『雨』などのお天気マークで表します。「明日はこうしてみよう」という対応策を書き込むのもいいそうです。

『気持ちお天気』を付けていくと、自分の気持ちが何に左右されているのかが客観的に分かります。自分自身を振り返ってみるのはとても大事で、自分自身の成長にもつながります」

毎晩、自分自身を振り返ってみましょう
毎晩、自分自身を振り返ってみましょう

また、鏡で自分の表情をチェックする「簡単セルフモニタリング」もおすすめだそうです。

「目は笑っているか、昨日のイライラを引きずっていないか、子どもには関係のないことでもやもやしていないかを振り返ります。鏡の中の自分に向かって『あなたは大丈夫!』と唱えて、自分を褒めてあげてください」

講演ではこのほか、自分の長所と短所を書き、「自分はどんな人か」を把握するワークも行われました。

【子どもとのコミュニケーション】「子どもはメタ認知ができない」を頭に置いて接しましょう

子どもと温かい関係を育んでいくため、次に考えていきたいのがコミュニケーションです。

「コミュニケーションは人間関係の基本です。安心や思いやりがなければコミュニケーションは取れないし、取りたくない。お互いに理解し合えず、メンタルヘルスにも影響します」

子どもとコミュニケーションを取る場合に頭に置いておかないといけないのが「子どもはメタ認知ができない」という点です。

子どもと関わる前に、大人が自分自身とコミュニケーションを取れているでしょうか。親のイライラが子どもに移るということがあります。まずは大人が自分とコミュニケーションを取った上で関わっていきましょう」

【子どものよさを伸ばす10のヒント】上手に褒める・叱る、「あいまい言葉」を封印する

自分自身をチェックし、効果的なコミュニケーションを考えた上で、岡田さんが「子どものよさを伸ばす 10 のヒント」を紹介しました。

①子どものサインを読み取る

子どもが出しているSOSに、大人は気付けているでしょうか。子どもが発した言葉の裏には、実は別の出来事や気持ちが隠されているかもしれないと考え、推測していきましょう。

【子どもの言葉を考えてみましょう】

  • Aちゃんにいじめられた→「ママ、私にかまって!」のサインかも
  • ママなんて大嫌い!→「ママ、私のこと嫌いなんでしょ?」という不安の裏返しかも
  • マジ、むかつく→「悲しい!つらい!」のSOSのサインかも
  • ウザい…「今は 1 人にして!」というサインかも
  • 死ね…「どうして私の気持ちを分かってくれないの?」というサインかも

 

このほか、「勉強めんどくさい」という言葉の裏には、「勉強が分からない」という困った状況があることが多いそうです。「高学年になると、『分からない』と言えなくなるので、注意しましょう」

SOSのキャッチは「いつもと様子が違う」という気付きから始まります。「いつも元気だけど、元気がない」だけでなく、「いつも元気がないけど、元気」など反対の状況にも注意していきましょう。

②上手に褒める

褒める際は行動を具体的に褒めましょう。

【適切な褒め方】

  • 表情…にっこりして、うれしそうに
  • 声…やや高く、明るい
  • 言葉…「食器を流しまで持って行ってくれてありがとう」など、具体的に

「人前で大げさに褒める」「歯が浮くような心にない褒め方をする」「きょうだいなど他の人と比較して褒める」はNG。

さらにもう一つ気を付けたいのが「子どもをうまく操るために褒める」だそうです。親が望んだように行動させようとするのはやめましょう。

③上手に叱る

岡田さんによると、「叱る」と「怒る」の違いは感情が入っているかどうか。注意する、指摘するために叱ることは必要です。

【上手な叱り方】

  • 表情…怒った表情よりも悲しい表情の方が効果的
  • 声…やや低く
  • 言葉…危険な時は「ダメ!」「やめなさい!」と短い言葉で制止する。「見たままの状況」を伝え、必ず褒めて終わる

「見たままの状況」とは、例えば子どもがドアを開けっぱなしにした場面だと、「ドア、開いてるよ」のみ。

「『また開けっぱなし!』『閉めなさいって言ってるでしょ?何回言ったら分かるの?』と言いたくなりますが、言わなくていいです。『ドア、開いてるよ』と指摘し、子どもが閉めたら、『閉めてくれてありがとう』で十分です

「人前で叱る」「親の気分で叱ったり、叱らなかったり一貫性がない」「きょうだいなど他の人と比較して叱る」はNG。「バカじゃないの?」「お前なんかいらない」など、子どもの自尊心を傷つける叱り方もやめましょう

「10のヒント」に熱心に耳を傾けました
「10のヒント」に熱心に耳を傾けました

④見方を変えてみる(リフレーミング)

誰しも短所はあります。短所を「短所」とするのではなく、「長所」と捉え直してみませんか?

【見方を変えてみましょう】

  • 短気→情熱的
  • わがまま→正直、感情豊か
  • 暗い、陰気→おとなしい、よく考える
  • 未熟→可能性を秘めている
  • 感情的→自分に素直
  • せっかち→素早い
  • 勝手気まま→マイペース

短所を長所と見ると、実はとってもすてきな人間だと分かります。お子さんの短所もぜひリフレーミングしてみてください」

⑤あいまい言葉の封印

「早くしなさい」「いい加減にしなさい」などを代表とする「あいまい言葉」。使うのはよくないと分かっていても、使ってしまいますよね。岡田さんが上手な言い換えを教えてくれました。

【あいまい言葉を封印しましょう】

  • 勉強しなさい→計算ドリルを○ページやってみよう
  • 早くしなさい→○時までにできるかな?
  • 何でできないの?→何だったらできるかな?

「あいまい言葉」を封印するには、②の「上手に褒める」のように具体的な行動で伝えます。

さらに、「走らない」ではなく「歩きましょう」、「よそ見しない」ではなく「こっちを見て」というふうにネガティブ言葉をポジティブ言葉に言い換えるといいそうです。

封印は難しそうですが、ここは親が頑張ってみましょう。

⑥本音トークの心掛け

親が先走って一方的に話してしまうと、誤解が生じるかもしれません。例えば、子どもの帰宅がとても遅かった時に言ってしまう「いい加減にしなさい!何時だと思ってるの!」。心配するからこそ、怒ってしまいますね。

この場合は、怒りの部分ではなく、「あなたの帰りがあまりにも遅いから心配していたんだよ」という本音の方が子どもには伝わるそうです。

もう一つ気を付けたいのが「ダブルバインド」です。ダブルバインドとは、二つの矛盾したメッセージのことです。

「でかけるから早く宿題をしなさい」と伝えておいて、子どもの回答が間違っていると、「どうしてミスするの?落ち着いてやりなさいって言ってるでしょ」と伝えるのはダブルバインド。

ゲームをなかなかやめない子どもにイライラしながら、「もういい。好きなだけゲームをしなさい」と伝えるのもダブルバインドだそうです。

⑦マイナスからプラスへの循環に

「ゲームばかりしている」など、大人が子どもの問題行動に注目し、注意していくと、「子どもが反抗する」「子どもの自己肯定感が下がる」「親はイライラを募らせていく」などマイナスの循環になります。

「いきなり問題行動自体を変えようとすると、マイナスの循環になります」と岡田さん。問題行動を一度横に置いておき、好ましい行動に注目して褒めていくと、プラスの循環に変わります

「『ゲームばかりしている』ではなく、『ゲームの前に宿題をする』という行動に注目し、『ゲームの前に宿題ができたね』と褒めてください。『褒めてくれてうれしい』『もっと褒めてくれることをしよう』というプラスの循環に変われば、問題行動は減っていきますよ」

「問題行動」ではなく、「好ましい行動」に注目していきましょう
「問題行動」ではなく、「好ましい行動」に注目していきましょう

⑧子どもと一緒にトラブル解決シート

「○○ちゃんがお友達とけんかして、お友達をたたいたんです」。園や学校からこんな連絡があると、親として対応を迫られます。

「お友達をたたいたらダメ」は伝えるべきことですが、岡田さんは「たたく前に何があったの?」と子どもに聞いてほしいと呼び掛けました。

「お友達がボールを貸してくれなかった」という理由があれば、「じゃあ、けんかしないようにするにはどうしたらいい?」と子どもに問い掛け、方法を考えさせます。

【けんかしないための方法】

  • 「一緒にボール遊びしよう」とお友達に言う
  • お友達がボールを貸してくれるのを待つ
  • 他のことで気を紛らわす
  • 「明日は僕が先にボールで遊ぶね」と約束し、先生に伝えておく

いくつか提案した中から、子どもが自分で対応策を選びます。日付を記入してメモとして残しておくと、自分がどんなことでよくトラブルを起こすのか、誰とトラブルを起こすのかが客観的に理解できるそうです。

⑨子どもと2人っきりのデート

きょうだいの関わりに悩んでいる人や、「普段、わが子をなかなか褒めてあげられていない」という人におすすめなのが、内緒のデートです。親と子が 1 対 1 で、その時間は全力で子どもに向き合います。

ルールは三つです。

【子どもと 2 人っきりデートのルール】

  1. 秘密のお約束
  2. 「ママは、あなたが一番好き」
  3. 1 週間、子どものいいところをメモに記しておいて、一気に褒める

きょうだいのいる子どもは「私とお姉ちゃん、どっちが好き?」と親に聞いてきます

親からすると、きょうだいの中で誰か 1 人を選ぶことはできませんが、「デートの時は別」と岡田さん。「 2 人っきりの時間には『あなたが一番好き』とぜひ伝えてあげてください」

⑩子どもと交わした約束は必ず守る

これも子どもと信頼関係を築く上で大切です。「安易な約束はしない」「どんな小さな約束でも、した約束は守る」「守れない約束はしない」を心掛けましょう。

【上手に叱れなかった時は?】子どもを抱きしめながら、子どもの気持ちを言語化しましょう

会場からはたくさんの質問が上がりました。

子どもを上手に叱れなかった時はどうフォローすればいいですか?

関わり方を学んでも、実行していくのは難しいですね。

「その子の年齢にもよりますが、まずは抱きしめる。抱きしめながら、『うまくいかなかったら、おもちゃを投げたんだね』など、子どもの気持ちを言語化してあげましょう」

 

子どもと 2 人でいてイライラした時の気分転換は?

一番は「親がその場から離れる」だそうです。無理に関わろうとせず、いったん気持ちを落ち着かせましょう。

 

「あいまい言葉」を封印するために、岡田先生はどうしましたか?

岡田さん自身、「早くして!」を子どもによく言ってしまったそうです。

「言いそうになった時は、ごっくんと飲み込みながらプラスの言葉を探すといいですよ」本当に水と一緒に飲み込んだりしたそうです。

 

ネガティブな言葉掛けは、子どもの心に蓄積されますか?

これは「子どもによる」そうです。子どもにいつもと違った様子があれば、ケアが必要です。

「日々、適切な関わりができていれば、少々のことは大丈夫です。子どもの様子に気を付けながら、ポジティブな言葉を心掛けていってください」

会場からはたくさんの質問が寄せられました
会場からはたくさんの質問が寄せられました

子どもを伸ばすための 10 のヒント、いかがでしたか?子どもと関わる際は「一方的な大人の価値観で判断するのではなく、子どもの話をゆっくりと聴く姿勢が必要」と岡田さんは話していました。

10 のヒントはいきなり全部やろうとするものではなく、「自分が子どもとどんな関係を築いていきたいかを考え、『これならできそう』というものから始める」といいそうです。参考にしてください。

 

ココハレの「お悩み」では岡田さんの講演をご紹介しています。
子どもへのイライラを減らしたい!叱り方を見直したい!|子どもの心を理解するため、大人が身に付けたい「セルフコントロール力」とは

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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