教えて!吉川先生「新型コロナウイルス感染症」 |マスク着用は?療養の注意点は?5類移行後の対応を紹介します
子どもの病気やけがについて、ココハレかかりつけ小児科医・吉川清志先生が解説します
子どもの急な発熱に「さっきまで元気だったのに…」と焦ったり、病気やけがについてインターネットで調べて、「本当に正しい情報なの?」と迷ったりした経験はありませんか?
「教えて!吉川先生」では、高知県内でたくさんの子どもたちを診察してきた小児科医・吉川清志(きっかわ・きよし)さんが「ココハレかかりつけ小児科医」として、子どもの病気やけがについて解説します。
今回のテーマは「新型コロナウイルス感染症」です。2023 年 5 月に 5 類に移行し、「個人の判断」に委ねられることが増えました。症状や療養期間、マスク着用、ワクチン接種などについて、あらためて紹介します。
目次
コロナの症状は「軽い風邪」から「インフルエンザに似た症状」まで
新型コロナウイルス感染症の主な症状は発熱、咳、倦怠(けんたい)感など風邪のような症状です。加えて、頭痛、嘔吐(おうと)、下痢、筋肉痛が起こることもあります。オミクロン株では味覚障害、嗅覚障害は少なくなりました。
診察していると、「喉が痛い」といった軽い風邪のような症状から、「高熱が出てしんどい」というインフルエンザに似た症状までさまざまです。
コロナなのか、インフルエンザなのか、いわゆる風邪なのか、症状だけでは区別できません。
5類になって、受診のタイミングに迷います
受診のタイミングは、その人が置かれた状況によります。次に当てはまる人には、早い受診をおすすめします。
【もしかしてコロナ?早く受診した方がいい人】
- 高齢者や基礎疾患のある人など、重症化リスクのある人
- 重症化リスクのある人と同居している人
- 病院や介護施設などに勤めている人
- 病院や介護施設などに勤めている人と同居している人
- 周囲にコロナ感染者がいる人
当てはまらない場合は、インフルエンザや風邪と同じ対応でいいでしょう。「高熱が出てしんどい」「咳が止まらず苦しい」などの症状がある場合は、受診してください。
「風邪の症状はあるけれど、元気に過ごしている」という場合は、少し様子を見てよいでしょう。
ただし、症状がおさまらなかったり、「高熱が続く」「けいれんが起きた」「意識がおかしい」などの症状が出た場合は迷わず受診してください。
感染した場合の療養期間は?
5 類になり、療養期間はインフルエンザと同じ対応となりました。
学校の出席停止は「発症から 5 日間が経過し、かつ症状軽快後 1 日を経過するまで」となりました。
同じように、発症の翌日から 5 日間は外出の自粛が推奨されています。
6 日目以降も感染リスクがあるため、10 日間はマスクの着用などの感染対策をしながら生活してください。
感染した場合の治療方法は?
重症化リスクのない人は、対症療法になります。高熱の場合は解熱鎮痛剤、咳が止まらない場合は咳止めが処方されますので、自宅療養をしてください。
重症化リスクのある人には抗ウイルス薬が処方されます。
コロナの検査は患者全員に行っていますか?
5 類になり、感染者の「全数把握」はなくなりました。高知県内では、高知県と高知市が指定する 44 の医療機関(内科と小児科)による「定点把握」となりました。
定点把握で出される報告数は、1 定点医療機関当たりの患者数となります。例えば 6 月 19~25 日の週では「5.09」でした。インフルエンザの流行の目安である「1」を超えているので、毎週の報告数を見ながら、感染の状況を判断していきます。2023 年 6 月現在、高知県の感染者は少しずつ増加しています。
検査は現在、コロナの症状や年齢および周囲の流行状況などから医師が判断して行っているので、患者さん全員にしているわけではありません。
重症化リスクのある人や医療・介護関係者、その家族には検査を行った方がよいと思いますので、医師に伝えてください。
マスクは着けるべき?外すべき?
マスク着用は「個人の判断」となりました。外している人もいれば、着けているという人もいるでしょう。
不織布マスクは感染予防には有効です。不織布マスクを着けた場合と、マスクを着けない場合とを比べると、自分から出る飛沫を 20 %までカットし、吸い込むのを 30 %までカットするそうです。
マスクの着用は場面やその人の置かれた立場で考えればいいと思います。密になる場面では着用し、人との距離が取れる場面では外すなど柔軟に考えましょう。医療機関や高齢者施設ではマスクを着けましょう。
コロナに限らず、感染症が流行してきた場合も着用を考えるといいでしょう。
大事なのはマスクを着ける・着けないという個人の判断を尊重することです。自分とは反対の判断をした人を批判するのは避けていただきたいです。
ワクチン接種はこれからも必要ですか?
コロナの第 8 波までは、ワクチン接種が積極的に呼び掛けられました。感染拡大を防ぐ上で重要な取り組みでした。
重症化リスクのある人には今も接種をおすすめしています。そうでない人は、インフルエンザのワクチンと同じように考えるといいでしょう。二つの考え方です。
【予防接種の考え方】
- 発症や重症化を防ぐため、後遺症や周囲への感染を少しでも減らすために予防接種をする
- 「発症すれば重症化や後遺症のリスクが一定割合ある」と理解した上で、接種しない
コロナのワクチンは「副反応が心配だから接種しない」という判断もあり得ます。
お子さんの場合は発症しても軽くすむことが多いですが、まれに重症化や死亡する場合もありますので、日本小児科学会はお子さんへの接種をこれまで通り推奨しています。
どちらを選ぶか、ご家庭でしっかり考えてください。
お父さん、お母さんへ
コロナが 5 類となり、これまでのような行動制限はなくなりました。マスクの着用も個人の判断となり、「感染症にかかりやすい環境に戻った」と言えます。
つまり、「ある一定数はコロナに感染する」という前提で、この期間を適切に乗り越えていきましょうということです。感染を繰り返すことにより集団免疫ができ、将来的にはインフルエンザや風邪と同じ感染症になることを期待しています。
コロナ以降、マスクの着用で先生や友達の表情を把握できないことが、特に幼少期の子どもに影響するのではと指摘されてきました。
現在の感染状況と、子どもの発達とを考えた場合、保育園や幼稚園、学校ではマスクを外して過ごしていいと、僕は思います。今まで我慢をさせてきた分、密になってたくさんの思い出をつくっていってほしいです。それが子どもの成長にとって一番大切です。
一方で、コロナはなくなってはいません。お子さんが風邪を引いて体調を崩した際は、親御さんの気付きがとても大切です。「症状がおさまらない」「いつもと様子が違う」と感じたら、迷わず受診してください。