保育園に預ける場合はミルクに切り替えた方がいい?「母乳メインの混合授乳」ってどう進める?卒乳のタイミングは?|授乳の疑問について、助産師・森木由美子さんに聞きました
赤ちゃんを育てる上で、困ったり、悩んだりすることの多い「授乳」。
保育園に預ける場合は、母乳からミルクに切り替えた方がいい?
母乳メインの混合授乳にしたいけど、進め方が分からない。
卒乳ってどのタイミングでするものなの?あまり泣かれたくないんだけど…。
授乳にまつわる疑問について、助産師の森木由美子さんに聞きました。母乳の方もミルクの方も混合の方も、参考にしてみてください。
目次
ココハレ編集部が質問したのは、助産師の森木由美子さん。土佐市の出張助産院「はぐはぐ」を拠点に、訪問型の育児支援を行っています。産後ケア事業にも携わっています。
授乳支援のほか、日本ベビーウェアリング協会の抱っこの専門家として、抱っこやおんぶの講座なども行っています。
授乳にまつわる疑問について、Q&A方式でご紹介します。
母乳育児はどのように進めたらいいですか?
母乳は、赤ちゃんにおっぱいを吸われる刺激によって、母乳を作るホルモンが刺激されて分泌されます。つまり、赤ちゃんがおっぱいを飲めば飲むほど、母乳は湧いてきます。
ですが、出産後は、母乳はにじむくらいしか出ません。でも、赤ちゃんの胃も小さいので、最初は心配いりません。赤ちゃんの胃の大きさは 1 日目がサクランボの大きさ。生後 1 カ月でもLサイズの卵ぐらいです。
母乳育児を進めたい方は、産後早期には、赤ちゃんが欲しがるたびに飲ませる「頻回授乳」を行ってください。赤ちゃんは胃が小さいので、頻繁におっぱいを欲しがります。
頻回授乳の回数をよく聞かれます。母乳の量を増やすには、例えば 3 時間おきに飲ませる「1 日 8 回」では足りなくて、「 12 回」「 20 回」とさまざまです。ポイントはこちらです。
この過程を繰り返すことで、だいたい 3 カ月ほどたつと、母乳の量は安定します。
赤ちゃんを産んで、「母乳を飲ませたい」と思うのは、とても自然なことです。本来なら、赤ちゃんが生まれてすぐから同じ部屋で過ごして授乳するのが一番いいのですが、病院の方針で難しい場合もあります。ミルクを足していく病院もあります。
母乳育児を考えている方は、できるところからで構いませんので、頻回授乳を行ってください。退院後はなるべく早く、母乳外来や産後ケアなどで、授乳支援をしてくれる助産師などを見つけてください。
「母乳メインの混合授乳」はどのように進めたらいいですか?
「母乳メイン」が実は一番難しい!個別ケアが必要です
最近、「混合栄養で育てていきたい」というお母さんによく出会います。「母乳メインで育てたいけれど、人に預けたいので哺乳瓶にも慣らしておきたい」という方が多いです。
「母乳メインの混合栄養」というのが、実は一番難しいんです。母乳は赤ちゃんが飲みたい分だけ作られます。赤ちゃんが吸って母乳が外に出ると、「もっと作る必要がある」と体が判断します。反対に、母乳が乳房にたまると、乳汁の分泌を抑制する成分が働き、「作らなくていい」と体が判断します。
こういった体の働きがあるので、ミルクを飲ませると、母乳の分泌量は減ります。母乳が減ると、ミルクが増えるので、さらに母乳の分泌量が減り…という負のループが起こりがちです。
「母乳メインの混合栄養」は専門家による支援が必要です。授乳の様子や赤ちゃんの体重などを見ながら調整していきますので、ぜひ支援を求めてください。
混合栄養を考えている人は、こちらをぜひ覚えておいてください
パパも授乳するため、混合栄養にしたいです
最近は育休を取るパパが増えてきました。「完全母乳だとパパが預かれないので、ミルクでも授乳したい」という相談も増えています。
男性の育休がメディアで取り上げられる時に、パパが哺乳瓶でミルクを飲ませている映像や写真がよく流れます。
「パパの育児=ミルク授乳」でしょうか?
実は、パパのミルク授乳の影響で、母乳の量が減ってしまったり、乳腺炎などのおっぱいトラブルを招いたりというケースもあるんです。
おっぱいを飲みながら、眠ってしまう赤ちゃんはとてもかわいいですよね。「パパも授乳をしたい」という気持ちはとてもよく分かります。でも、母乳育児を考えているなら、ぐっと我慢を!
私がご夫婦におすすめしている育児分担が「パパの抱っこ」です。抱っこひもを使い、密着して安定した抱っこをする「ベビーウェアリング」をパパが覚えると、授乳に頼らなくても有意義なスキンシップができます。寝かしつけも楽にできます。
パパが赤ちゃんを上手に抱っこしてくれると、ママには時間と余裕ができます。授乳の合間にティータイムを取ったり、1 人でお買い物に行ったりできると、気分転換にもなりますね。抱っこで、母乳育児をサポートしてあげてくださいね。
授乳したのに、赤ちゃんがすぐに泣く…母乳、ミルクが足りてない?
授乳をしても、赤ちゃんがすぐに泣いてしまいます。母乳(ミルク)の量が足りていないのでしょうか?
授乳後、赤ちゃんに泣かれたら、「母乳やミルクの量が足りてないのでは?」と不安になりますね。周囲から「足りてないのでは?」と指摘されることもあると思います。
産後早期の頻回授乳では「赤ちゃんが泣いたら、母乳を飲ませる」をしてきました。ただ、母乳の量が落ち着いてきた段階や、ミルクを飲ませている場合は、赤ちゃんの様子を見てください。
赤ちゃんは、おっぱいを欲しがる時に泣きます。同じように、おなかがいっぱいなのに飲まされても泣きます。おっぱいには全然関係なく、「眠たいのに眠れない」「抱っこして」と訴える時も泣きます。
「赤ちゃんが泣く=おっぱいが足りていない」と判断すると、負のループが起きるかもしれません。
「おっぱいが足りているサイン」がこちらです。
- 体重が増えている
- おしっこがしっかり出ている。1 日に紙おむつで 5~6 回、布おむつで 6~8 回、しっかりぬれている
- 体にお肉が付いてきた
- 表情が生き生きしている
ミルクの缶には月齢とミルク量の目安が書かれていますが、よく食べる人と小食な人がいるように、赤ちゃんの哺乳量にも違いがあります。
おっぱいが足りているサインがあれば、数字にとらわれなくて大丈夫です。赤ちゃんの様子をよく見てくださいね。
保育園に預ける場合は、ミルクに切り替えた方がいい?
「母乳育児をやめない選択肢」もあります。おっぱいタイムが親子の癒やしになりますよ
年度替わりの時期に多い質問です。職場復帰を前に「母乳育児をやめなきゃ」と思っているお母さんが多いですが、やめない選択肢もあります。
母乳育児を続けるかどうかを決めるのは、お母さんとお子さんです。お母さんとお子さんの気持ちが一番大事で、「保育園に預けるなら、母乳育児をやめてください」と他の人から強制されるものではありません。
日中は保育園に預け、朝と夜は母乳を飲ませているお母さんもいます。生活リズムが変わっても、親子に無理のない授乳ができていきます。
哺乳瓶を嫌がるお子さんには、カップ授乳などの方法もあります。ご自身がどうしたいかを考えてみてくださいね。
私からは、職場復帰後の母乳育児のメリットをご紹介します。
- 1 歳を過ぎても、母乳には栄養も免疫成分もあります
- 感染症にかかった時、水分や栄養の補給が手間なくできます。重症化を防ぐメリットもあります
- 帰宅後のおっぱいタイムは、親子のスキンシップや、オン・オフを切り替える癒やしの時間になります
卒乳はいつすればいい?
母乳をやめようとすると泣くのは、「まだおっぱいが必要」というサインかもしれません
昔は「 1 歳になったら母乳をやめましょう」と言われ、「断乳」がすすめられていました。断乳とは母乳を母親が主体的にやめることを指します。
断乳に対し、赤ちゃん主体で母乳をやめることを「卒乳」といいます。赤ちゃんが自然に母乳を欲しがらなくなるまで授乳を続けます。母乳をあげ続け、ある日お子さんから「おっぱいはもう要らない」と告げられた、気がついたら欲しがらなくなっていた、などのケースになります。
言葉の定義で言うと、「職場復帰して保育園に入るので、それまでに卒乳したい」というのは、厳密に言えば「断乳したい」ということですね。
母乳をやめようとして、お子さんに泣かれるのは、「まだ卒乳は早いよ」「おっぱいが必要だよ」というサインかもしれません。
とはいえ、職場復帰を控えているお母さんや、寝不足で困っているお母さんから「夜の授乳回数を減らしたい」「卒乳させたい」という相談をたくさん受けます。そう考えるのは、悪いことではありません。
他の人の意見よりも、まずは「自分はどうしたいのか」という気持ちと、お子さんの様子を一番に考えてみたらいいかもしれません。
もう離乳食が始まっている時期でしたら、「授乳回数を減らす」よりも、「離乳食を進めていく」をメインに考えてみてください。赤ちゃんにとって授乳は、栄養を取ることです。食べることができる体を育んでいきましょう。
親子それぞれに合ったおっぱい卒業の仕方が尊重されたらいいなと思っています。お母さんの気持ちとお子さんの気持ちを大事にしてくださいね。
母乳育児に困った時の相談先は?
母乳育児で困った時、どこに相談すればいいですか?
「高知県おっぱい相談マップ」を活用してください
母乳育児は最初からうまくいく人ばかりではありません。思うように母乳が出なかったり、赤ちゃんがうまく吸い付いてくれなかったりというのは普通のことです。
ですが、今は出産後、母乳育児が軌道に乗る前に退院するケースが多くなりました。退院後も、母乳育児支援が、必要としている全ての人に届いていない現状があります。
お母さん 1 人で頑張って、うまくいかなくて、疲れてしまわないように、私たち支援者を頼ってください。授乳のSOSは早めに出していただくと、解決への道のりも早く見通しがつきやすいです。
高知県助産師会では「高知県おっぱい相談マップ」を作っています。県内で母乳相談や育児相談などができる開業助産所や病院、診療所、市町村の窓口を紹介しています。ぜひ活用してくださいね。