「学校に行けない」「何をやってもうまくいかない」…悩む子どもにどんな言葉をかけますか?|不登校ジャーナリスト・石井しこうさんが著書「学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること」を出版しました

不登校で「人生詰んだ」と思った時に欲しかった言葉とは?20年以上の取材を基に、当事者の悩みに答えました
「学校に行けない」「普通って何?」「何をやってもうまくいかない」…我が子にそう打ち明けられたら、あなたはどんな言葉をかけますか?
不登校ジャーナリストとして活躍する石井しこうさんが著書「学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること」を出版しました。不登校の子どもたちからの質問や悩みに、20 年以上の取材を基に答えています。
子どもたちに語りかける言葉は、石井さん自身が不登校になって「人生詰んだ」と感じた時に欲しかった言葉だそう。ココハレ編集部がインタビューしました。
目次
不登校の小中学生は全国で34万人以上…当事者に直接声を届けたい
石井さんは 1982 年、東京都生まれ。中学受験を機に学校生活が徐々に合わなくなり、中学 2 年から不登校となりました。
フリースクールに入会し、19 歳からは「不登校新聞」のスタッフに。不登校の子どもや若者、保護者、著名人ら 400 人以上を取材しました。

現在は不登校ジャーナリストとして講演や取材を行い、「不登校生動画甲子園」などのイベントも運営しています。
2024 年には高知市内で講演。ココハレで紹介しています。
子どもが不登校に…親はどう対応すればいい?心が回復するまでの道筋は?|「人には不登校が必要な時もある」。不登校ジャーナリスト・石井しこうさんが講演しました
石井さんの最新刊が 2025 年 5 月 12 日に出版された「学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること」(大和書房)です。

執筆のきっかけは、近年の不登校の増加です。2023 年度の文部科学省の調査では、小中学校で 30 日以上欠席した不登校の児童生徒は全国で 34 万人を超え、過去最多となりました。
「人数だけでなく、増加率も過去最多でした。さらに、不登校にカウントされないけれど、教室に入れない『保健室登校』『放課後だけ登校』の子どももいます。孤独感、孤立感を抱える人が増えているであろう中で、当事者に直接届けたいと考えました」
「学校」「不登校」「家族」「自分自身」「勉強」「進路」…質問や悩みに答えました
「学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること」では、子どもの質問や悩みに石井さんが答える形で構成されています。
質問や悩みは以下の六つに分かれています。
- 学校のこと
- 不登校生活のこと
- 家族のこと
- 自分自身のこと
- 勉強のこと
- 進路のこと
例えば、「学校には行きたくないけど、休んでもダメだと思うからつらい」という悩みに、石井さんは「不登校したいわけじゃない、勉強もがんばりたい、でもどうにもならないんだと、気持ちが引き裂かれそうなんですよね」と寄り添います。
自身の経験を踏まえ、「大人になった今は『不登校でも大丈夫です』とあなたにも言えますが、そう言われてもあなたは困ってしまうでしょう」と語りかけ、「『仮病』を使って休んでみませんか?」と提案しています。

石井さんが今回執筆したもう一つの理由は「不登校で絶望していた当時の自分に言えそうな言葉が見つかってきたから」でした。
「不登校になってから続けてきた取材テーマは『不登校の私がどうしたら生きていけるのか』です。たくさんの方々に話を聞き、背中を押してもらい、今があります」と石井さん。
「不登校になって『人生が詰んだ』と感じている子どもたち、『将来がある』と聞いても信じられないという子どもたちに、『それでも道があるんだよ』と伝えたいと考えました」
「普通って何?」「普通になれない」の答えがようやく見つかりました
紹介されている質問や悩みの中には、親目線で見ると驚かされるものや胸の痛むものもあります。
「先生が自宅に来るのがいやすぎるんですけど」
「学校がいやな気持ちを、親がわかってくれない」
「週 1 登校」で、やたらホメられるのがつらい
何をやってもうまくいかない。「僕はバカだからしかたがないよね」
まともな大人になれる気がしない、不登校だった「黒歴史」は消せませんよね?

不登校の子どもたちからの相談では「さんざん失敗しましたし、子どもと関係が途切れたこともありました」。試行錯誤しながら目の前の子どもに応え、本人の気持ちが楽になった言葉や考え方を著書では紹介しています。
「この本でも紹介している『普通って何?』『普通になれない自分が悔しい』という悩みはよく聞きます。自分も悩みましたけど、『普通になりたい』と思うほどドツボにハマるんですよね。『普通』に悩む人にかける言葉が 30 年かけて見つかったのは、自分の中では大きかったです」
行き渋りが始まったら…すぐに離職せずに休暇をフル活用してください
不登校の子どもの親からは「子どもが不登校になるまで全く気づかなかった」と悔やむ声が多く寄せられてきました。
「最初は体調不良から始まり、だんだんと具合が悪くなり、登校できなくなります」と石井さん。「不登校の始まりはそもそも分かりづらいですし、どの子にも起こり得ることです」

石井さんらが参加した調査では、不登校の保護者の半数以上が「気分の落ち込み」を経験。約 5 人に 1 人が離職していました。
もし、わが子に行き渋りや不登校が始まったら?石井さんは保護者に「まずは親御さん自身が仕事を休んで、情報を取りに行ったり、相談したりしてほしい」と訴えてきました。
「困って仕事を辞めざるを得なかったという親御さんが多いんですが、例えば不登校を理由に介護休暇を使える場合があります。離職を考える前に、制度をフルに使ってみてください。親御さんが支援とつながり、不安が和らぐと、家庭もかなり楽になると思います」
「学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること」には、不登校を経験した著名人からもメッセージが寄せられています。
さらに、昼夜逆転の生活を送る子どもたちに向けて、夜中に作れる「ひきこもり飯」を伝授するというユニークな企画も。くすっと笑える漫画やイラストも多く、肩の力を抜いて読み進められました。

「紹介している質問や悩みは、子どもから本当に聞かれたことなのでリアルですし、『質問じゃなくて社会へのクレームですよね』というものもあります。子どもたちの本音が透けて見えると思うので、ココハレ読者の皆さんもぜひ、子育ての参考にしてみてください!」

「学校に行かなかった僕が、あのころの自分に今なら言えること」は単行本、電子書籍で販売されています。
- 発行所:大和書房
- 体裁:A5 判 144 ページ
- 価格:1650 円
- 公式サイト:https://www.daiwashobo.co.jp/book/b10131683.html
ココハレでは高知県内の支援情報をまとめています。石井さんらが行った不登校の保護者への調査についても紹介しています。
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