高知の多胎児サークル「ツインズ プチポワ こうち」|双子育児、三つ子育児の大変さ、楽しさを共有しています
赤ちゃんが 1 人でも大変な子育て。双子、三つ子など「多胎児」の子育ては、子どものお世話にかかるお父さん、お母さんの負担が大きく、金銭面などの悩みもまた違っています。
多胎児育児の大変さ、そして楽しさを共有し、支え合っていこうと、子育てサークル「ツインズ プチポワ こうち」が高知市で活動しています。
サークルを立ち上げたお母さんたちは「子どもを見守るには複数の大人が必要」「子育ての苦労を笑い話にできる場がありがたい」と語ります。ココハレ編集部が取材しました。
目次
双子、三つ子育児は妊娠期から大変!情報を必死に調べました
「ツインズ プチポワ こうち」は 2021 年 3 月に誕生しました。活動を始めたのは 5 人のお母さん。今回は 3 人にお話を聞きました。
- 杉原香織さん…年長の双子(女の子)のお母さん
- 高橋礼子さん…小学 2 年の双子(女の子)のお母さん
- 西森千春さん…小学 2 年の男の子と、年長の双子(男の子)のお母さん
代表の杉原さんは、初めての子育てが双子育児となりました。
多胎児を妊娠すると、早産のリスクが高まるため、日常生活も制限されます。おなかが早く大きくなり、動きづらくもなります。
杉原さんは医師から「妊娠ライフは楽しめないと思っていてください」と告げられ、双子育児の情報を必死に調べました。
出産前に管理入院となった病院で出会ったのが、同じように管理入院していた西森さんでした。
「西森さんは 2 回目の出産だったので、子育ての先輩。出産前にいろいろ話を聞いてもらって、すごく助かりました」
杉原さんと西森さんは同じ日に双子を出産しました。
心の支えだった双子サークルが活動終了。「自分でやってみたら?」という声に後押しされました
出産後の杉原さんは、授乳、おむつ替え、寝かしつけと、2 人分の育児に追われる毎日。「 1 人をやっと寝かしつけできたと思ったら、もう 1 人が泣いて起きる生活。自分の睡眠は 1 時間とか 1 時間半とかでした」
最初は「自分がやらないと!」と気合で頑張りましたが、半年ほどたち、体にこたえてきました。
「双子、三つ子のお母さんが疲れてしまい、わが子を死なせてしまう事件が起こりますよね。私も紙一重で、いつ自分がなってもおかしくないと感じました」
過酷な状況の中、杉原さんの支えになったのが「相談できる相手がいる安心感」でした。
杉原さんが妊娠、出産した頃、高知には双子サークルがありました。杉原さんも参加し、LINEグループのやりとりを見ては助けられました。
しかし、ほどなく、双子サークルが活動を終えることになりました。
「心の支えだったのに、なくなっちゃうのか…と。『誰かまたサークルを立ち上げてくれないかな』と思っていました」
その後は子育て支援センターに通い、双子を育てるお母さんがいたら話をしてきた杉原さん。そんな姿を見守ってくれていた助産師さんが、背中を押してくれました。
「双子サークル、杉原さんがやってみたら?できると思うよ」
公園にみんなでおでかけ!トイレ、見守りが楽になりました
高橋さん、西森さんたち双子育児仲間に声を掛け、5 人で立ち上げた多胎児サークルは「ツインズ プチポワ こうち」と名付けました。
「プチポワ」はフランス語で「さやえんどう」という意味。房の中で仲良く並んでいる豆から、「双子&三つ子ちゃんたちが仲良く」「双子&三つ子ちゃんママたちが仲良く」などの思いを込めました。
子育てのセミナーを開いたり、ママブランチを企画したり。公園やミカン狩りなど、外遊びも取り入れました。
双子、三つ子育児は、子どもが乳児期を過ぎても大変さが続きます。
高橋さんは「子どもが動きだしてからは、命を守るので精いっぱいでした。駐車場では 2 人が別々の方向にばーっと走りだしたり」。
西森さんも「2 歳上にお兄ちゃんがいるので、1人をおんぶして、残りの 2 人は手をつないで、とにかく離さないようにしました」と振り返ります。
サークルでの外遊びは、子どもを見守る負担を分担できます。
「双子を 1 人で連れていると、トイレ問題があるんです」と杉原さん。みんなでおでかけをすると、子どものトイレの間、もう 1 人の子を他のお母さんに見てもらえるそう。
公園ではすべり台、ジャングルジムなど、遊具ごと、エリアごとに担当のお母さんを置けるので、見守りがはるかに楽になりました。
さらに、ボランティアさんにも協力してもらい、子どもたちは思い切り遊んでいます。
お母さん同士のおしゃべりで、子育てのカオスを笑いに昇華!
ママブランチでは、双子、三つ子育児トークで盛り上がっています。
西森さんの家庭では、3 人の子どもたちがまだ小さかった頃は“カオス”な状態でした。
「毎日、常に誰かのお世話をしている状態で、とにかく手が足りませんでした。多胎児育児はお父さんも大変です。わが家も一生懸命やってくれていましたが、私もすぐ当たってしまって…」
ある日、夫婦げんかで爆発し、夫が押し入れを「バン!」と殴ってしまいました。
その出来事をお母さん同士のおしゃべりで打ち明け、「分かる分かる」と共感してもらった西森さん。
「わが家のカオスを笑って話して、受け止めてもらえる場があって、本当に癒やされました」
多胎児育児には長い支援が必要!行政と連携しながら、自分たちでも支え合っています
杉原さんたちが出産した頃に比べると、現在は多胎児育児への支援が増えました。
高知市は「多胎家庭支援事業」として、育児、家事、外出などを無償で支援しています。当初は 0 歳児のみが対象でしたが、2022 年度に 2 歳児まで拡大。2023 年度は支援時間が計 50 時間から 60 時間に増えました。
「ツインズ プチポワ こうち」は高知市が開く多胎の集い「さくらんぼ」に先輩ママとして参加しています。
支援は少しずつ拡充していますが、杉原さんたちは「子どもが 3 歳になったからと言って、多胎児育児の負担が減るわけではない」と感じています。
「多胎児の子育てには『 3 歳未満まで』『未就学児まで』とひとくくりに区切りを付けずに、幅を持たせていただきたいなと思っています」
行政と連携し、支援の必要性を訴えながら、自分たちでも支え合っています。
「ツインズ プチポワ こうち」のLINEグループには現在、約 60 人が参加。子どもの年代やきょうだい構成によってグループがさらに分かれていて、それぞれの悩みを共有しています。
「振り返ってみると、妊娠期から制限ばかりで、楽しめなかった」と杉原さんは後悔しています。
「多胎児ならではの分からないことや大変さはありますが、その分、子育ての喜びは 2 倍以上あります。高知で楽しく子育てができるように、双子、三つ子育児の輪を広げていきたいです」
「ツインズ プチポワ こうち」の活動はインスタグラムで発信しています。2023年度は「つむサポ」の活動にも参加しています。
高知市の「多胎家庭支援事業」とは
高知市の多胎家庭支援事業は、育児サポーターを派遣し、家事や育児、外出などをお手伝いする事業です。多胎児が 3 歳の誕生日を迎える前日まで利用できます。詳しくはこちら
高知市は年に 4 回、多胎の集い「さくらんぼ」を開いています。妊娠中の過ごし方や産後の育児について、先輩ママから話を聞いたり、保護者同士で情報交換をしたりしています。専門職への相談もできます。次回は 9 月 22 日(金)10:00 から、高知市保健福祉センターで開かれます。詳しくはこちら