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「子どもは家で甘やかしていいよ。どうせ叱っちゃうんだから」「みんな、嫌なことを我慢する努力をしてない?」|水曜どうでしょう・藤村忠寿さんが「子育て」「仕事」を語りました

「子どもは家で甘やかしていいよ。どうせ叱っちゃうんだから」「みんな、嫌なことを我慢する努力をしてない?」|水曜どうでしょう・藤村忠寿さんが「子育て」「仕事」を語りました

父親が仕事と子育てを両立するこつは?水どう・藤村Dが腹を割って話しました

「水曜どうでしょう」といえば、北海道の人気ローカル番組で、俳優・大泉洋さんの出世番組。番組内では「藤やん」こと藤村忠寿さんとの掛け合いが人気です。

番組のチーフディレクターを務める藤村さんは、家庭では 3 児の父。働き方にまつわる書籍を多数出版しています。

そんな藤村さんに、父親が仕事と子育てを両立するこつを聞くオンラインセミナーが開かれました。

わが子との関わりは「甘やかして全然いいよ」。仕事は「みんな、嫌なこと我慢する努力をしてない?」。藤村さんのトークをたっぷりお届けします。

 

オンラインセミナーは 2023 年 10 月 28 日に開かれました。日本新聞協会と、父親向けの子育て雑誌「FQ JAPAN」の企画で、タイトルは「腹を割って話そう!『水曜どうでしょう』の藤村Dが語る父親の仕事と子育て」。「腹を割って話そう」は、「水曜どうでしょう」で藤村さんが大泉さんに絡んで生まれた名言です。

藤村忠寿さん(写真はいずれも主催者の提供です)
藤村忠寿さん(写真はいずれも主催者の提供です)

藤村さんは現在、北海道テレビ放送コンテンツビジネス局でクリエイティブフェローを務めています。「水曜どうでしょう」のディレクター・嬉野雅道さんとの共著に「仕事論」(総合法令出版/朝日文庫)、「週休 3 日宣言」(烽火書房)などがあります。

セミナーは「FQ JAPAN」の編集長・林憂平さんとの対談形式でトークが進みました。

【仕事と家庭の両立】「水曜どうでしょう」は家庭優先!大泉のメシより、娘のプール!

最初のテーマは、仕事と家庭の両立です。テレビなどのマスコミは「長時間労働」のイメージが強く、さらに「水曜どうでしょう」は海外ロケも多く、両立は難しそうですが…?

藤村さん
「水曜どうでしょう」は家庭優先。ロケよりも運動会が大事。“家庭臭”を出していきました。

 

「テレビマンは家庭的な問題を持ち出さない。『仕事なんだから』『仕事ってそういうもん』というのにまず、風穴を開けようと考えた」と藤村さん。「番組のロケよりも、子どもの運動会が大事」と考え、「子どもの行事の日はロケを入れない」「正月休みはしっかり取る」を徹底したそうです。

「サイコロの旅」「ヨーロッパ 21 カ国完全制覇」など国内外のロケは「1 カ月に 1 回で、期間は 1 週間。われわれは 1 週間で、2 カ月分くらい撮るんですよ」。藤村さんの妻は「だんなさん、忙しいから家にいないでしょ?」と周囲から言われたそうですが、「意外といた」そうです。

番組内では“家庭臭”を積極的に出していきました。「ロケよりも子どもの行事が大事」と番組内で公言したり、ロケで大泉さんが料理に手間取った際には「大泉がメシ作るのが遅いから、娘をプールに連れていけないじゃないか!」とツッコミを入れたり。「『われわれもあなた方と同じなんですよ』というのが、視聴者に支持されたんだと思います」

仕事と家庭、両立のこつは?
仕事と家庭、両立のこつは?

想像よりも家庭で過ごす時間が長かった藤村さんですが、家庭内の家事分担は「気を使った」そう。

「私は掃除も料理も好きなんだけど、奥さんは専業主婦なんで、私が手を出すと、『ごめん、私がやってなかった…』ってなっちゃう。逆に手を出さないようにしてました」

そんな経験もあり、夫婦の家事分担の議論については「分かりやすい問題だなー」。

「どっちがやるか?やりなよ!(夫が)やらないんなら、奥さん、どやしつけていいよ!」

【週休3日宣言】「休み」とは違う1日を持ち、人間力を上げる

藤村さんと嬉野さんとの共著は「週休 3 日宣言」。日本でも週休 3 日制を取り入れる大企業が出てきました。

藤村さん
コロナでみんな分かったんじゃない?「この会議、必要なかった」とか「会社に行かなくても仕事は回る」とか。完全に会社に行かない日って大事。

 

「週休 3 日宣言」で藤村さんたちが主張するのが「完全に会社に行かない日が大事」。「休みが 2 日だと、ちょっとどこかに出かけたら終わる。3 日あると、『何をする?』となって、目的意識が必要になる」

週休 3 日のうちの 1 日は「休息とは違う 1 日」。「自分の成長のための 1 日ですね。運動でも何でもいいんです。人間として生きる力、人間力をつけるための時間です」

「週休 3 日宣言」刊行のきっかけになったのが、「水曜どうでしょう」の「北海道で家、建てます」という企画。森の中に自分たちで建てた家にこもったという藤村さん。「草刈りしたり、環境を整えたり。えらい楽しかったです」

【転職はあり?】賃金が安いなら、楽しく働かせろ!

トークテーマは「転職」に。子育て世代はわが子のために安定した職に就いておきたい気持ちの一方で、経験を積み、新たなステージに飛躍したい時期でもあります。

藤村さん

「お金のために働く」は組織を信用してないとできない。賃金が安いなら、楽しく働かせろ!

 

藤村さんはバブル期最後の世代。「いい大学を出て、いい会社に入ったら、年功序列でいい給料がもらえた。でも、今はそうじゃない。今、会社や社会の仕組みを信用するのはどだい無理だよね」

だから、転職に関しては「あり」。ただ、「辞めるにしても、何をやりたいかを持ってないといけないよね」。

「辞めるという選択肢は、ありですよ」
「辞めるという選択肢は、ありですよ」

働くモチベーションとして「お金のため」というのは、「組織を信用してないと駄目だから。ブラック企業なんてざらにあって、賃金が高くても続かないでしょ?」。

というわけで、藤村さんの働くモチベーションは、楽しく仕事ができるかどうか。「賃金が安いなら、楽しく働かせろ!」と話していました。

【父親と子どもの関係】不自然に関わらなくても、家が「安心できる場所」ならいいんじゃない?

わが子への関わりについて、お父さんならではの悩みが上がりました。セミナーでは、「親子の対話が減った」と感じるようになるのは、小学 4~6 年生ぐらいからというデータが提示されました。

藤村家では?

藤村さん
父親が急に「キャッチボールするぞ」とか、子どもは嫌でしょ。家が安心できる場所ならいいんだろうな。

 

藤村さんは子どもと一緒にご飯を食べることは少なかったですが、子どもとのコミュニケーションがなかったというわけではなく、「大事なのは、もっと大まかな部分かな」。家が「安心できる場所」になるように心掛けていたそうです。

「私は反抗期がありました。両親が仲良くなくて、不安だったのかな」
「私は反抗期がありました。両親が仲良くなくて、不安だったのかな」

父親としては、「会社から必ず楽しそうに帰ってくる」を実践したそう。

「昔のドラマで疲れた感じで帰ってくる父親がいたけど、あれはやだなと。『ただいまー。今日も楽しかったなー』と帰ると、子どもたちは必ず抱きついてきた。『社会に出たら楽しい』となってくれたら、親も子もハッピーだよね」

コミュニケーションでもう一つ。わが子には優しい言葉を掛けているのに、パートナーにはきつくなっていませんか?

「そうそう、それは反省だよ」と藤村さん。パートナーとの関係性も、家を安心できる場所にするためのポイントですね。

【子どもを叱る】甘やかしていいと思う。バランスは取れるから

「子どもをどう叱るか」についてもトークが広がりました。

藤村さん、お子さんを叱ってきましたか?

藤村さん
親が子どもを叱るって、自分の気持ちを抑えるため。できれば叱りたくない。でも、たまに叱ることがあって、後で反省ですよ。

 

「叱る」という行為を「子どもの教育のため」とする意見には「終わってるよね」とばっさり。「子どもが親の思いと違うことをした時に、親は自分の気持ちを抑えるために叱ってるんだよね」

「子どもは家では全然甘やかしていい」が藤村さんの持論。「甘やかすって難しいし、『おい、ここぐらいは…』というのが絶対出てくるから。それでバランスが取れると思うよ」

「正しい叱り方?ないですねぇ」
「正しい叱り方?ないですねぇ」

子どもができていないことを指摘するのは簡単で、「親の特権を使って言ったら、嫌な上司と一緒」。

「『子どもと親』じゃなくて『人対人』。わが子でも、自分に合わない子は合わない。『親だから』というより、人として接したらいいんじゃないかな」

【仕事を楽しむ】安直に受けると、「苦しさをどう乗り越えるか」という論理になる

トークの後は、視聴者からの質問に答えました。

藤村さん、仕事で成長するために行っていることはありますか?

藤村さん
「どうやったら楽しくできるか」「どうやったら楽にできるか」。この 2 点を常に考えています。

 

いわゆる「与えられ仕事」もまだまだ多い子育て世代。藤村さんは「仕事は言われた通りにすると、楽しくない。やり方を根本的に変えないといけない」と語りました。

「仕事は安直に受けると、苦しい。苦しいから、『苦しさをどう乗り越えるか』という論理になっちゃう。サボるのも全然あり。相手をだましながら、相手からのオーダーをどうこっちに変えていくかですよ」

「言われた通りにするのは、楽しくないよねぇ」
「言われた通りにするのは、楽しくないよねぇ」

藤村さんの「仕事を楽しむ」は、「水曜どうでしょう」の作り方にも表れています。

「例えば 3 日間、アメリカに行くとします。あそことあそこへ行って、○○さんのインタビューを撮って…と 2 週間のオンエア分のスケジュールを組むと、ハプニングが起きた時に焦っちゃう」

「水曜どうでしょう」はむしろ、ハプニング待ち。「行かなきゃいけない」という場所をつくらずに旅をします。

「そうすると、何が起きても仕事が楽しくなる。リスクばっかり考えると、つまんない。僕の場合は、ですよ。自分が楽しくなるように仕事を考えていくのが大事」

「常に、自分が楽しくなるように考えています」
「常に、自分が楽しくなるように考えています」

「『毎日、どうやったら楽しくなるか』を考えるのは難しい」と藤村さん。「難しいから、みんなめんどくさがって、嫌なニュースで心を癒やしてるんじゃない?嫌なことを我慢する努力をしてない?」と語り掛けました。

藤村さんのトークには、仕事や家庭に向き合う上でのヒントがたくさんありました。「有名人だから特別」と受け止めるのではなく、「楽しくする」「楽にする」を自分なりに考え、生活に取り入れていきたいと感じたセミナーでした。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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