乳幼児、小学低学年に読み聞かせしたい絵本は?図書館司書さんに聞きました
高知子どもの図書館の元館長・古川佳代子さんがおすすめする乳幼児向け15冊、小学低学年向け14冊
図書館や書店にたくさん並んでいる絵本。「子どもにどれを読んであげたらいいのかな」と迷うことはありませんか?
親子におすすめの絵本を紹介する講座がこのほど、高知市内で開かれました。講師は高知こどもの図書館の元館長、古川佳代子さん。絵本選びのポイントや読み聞かせで心掛けたいことも語りました。
乳幼児向けに 15 冊、小学低学年向けに 14 冊紹介しています。
目次
絵本講座について
絵本講座は「いのちつなぐ」の主催で、乳幼児向け、小学低学年向けに分けて開かれました。
講師の古川佳代子さんは、高知こどもの図書館で 20 年以上、子どもたちと関わってきた絵本選びのプロ。現在は土佐町の地域おこし協力隊員として、町内の図書事業に携わっています。
乳幼児向けの絵本15冊
古川さんが乳幼児向けにおすすめした絵本は 15 冊です。
- 「じゃあじゃあびりびり」(作・絵:まついのりこ、偕成社)
- 「ぽぱーぺぽぴぱっぷ」(絵:おかざきけんじろう、文:谷川俊太郎、クレヨンハウス)
- 「ととけっこう よがあけた」(案:こばやしえみこ、絵:ましませつこ、こぐま社)
- 「まてまてまて」(案:こばやしえみこ、絵:ましませつこ、こぐま社)
- 「おててがでたよ」(作:林明子、福音館書店)
- 「きゅっ きゅっ きゅっ」(作:林明子、福音館書店)
- 「くつくつあるけ」(作:林明子、福音館書店)
- 「ころ ころ ころ」(作:元永定正、福音館書店)
- 「わにわにのごちそう」(文:小風さち、絵:山口マオ、福音館書店)
- 「ねずみのいもほり」(作:山下明生、絵:いわむらかずお、ひさかたチャイルド)
- 「おつきさまこんばんは」(作・林明子、福音館書店)
- 「ねんね」(文:さえぐさひろこ、アリス館)
- 「パン どうぞ」(作:彦坂有紀・もりといずみ、講談社)
- 「ケーキ やけました」(作:彦坂有紀・もりといずみ、講談社)
- 「がたん ごとん がたん ごとん」(作:安西水丸、福音館書店)
乳幼児向けの絵本選びのポイントは?
講座では古川さんが実際に読み聞かせをしながら、絵本選びのポイントを説明していきました。
乳児期は視力がまだ十分に発達していないので、色鮮やかで輪郭がはっきりした絵がいいとのこと。意味や物語性がなくてもリズムのいい言葉が並ぶ絵本おすすめです。
「ぽぱーぺぽぴぱっぷ」は詩人の谷川俊太郎さんが文を手掛けています。言葉自体に意味はないそうですが、「ぱぴぷぺぽ」の音感と不思議な絵で想像力が刺激されます。
1 歳前後からは、身近な物や生活をテーマにした絵本を選びましょう。
着替えに興味が出てきたら読んであげたいのが林明子さん作の「おててがでたよ」。子どもは絵本の中で、着替えを疑似体験して楽しみます。
「まてまてまて」はハイハイする子どもをお母さんがつかまえるお話。こちらも、実際に「まてまて」をしてもらった子どもに読むと、「追いかけられる楽しさ」と「つかまえてもらった安心感」が得られるそうです。
小学低学年向けの絵本14冊
小学生向けの講座で紹介されたのは次の 14 冊です。幼児期から大人まで幅広く楽しめます。
- 「わたしのワンピース」(作:にしまきかやこ、こぐま社)
- 「たかいたかいらいおん」(文:八木田宜子、絵:長新太、徳間書店)
- 「しろくまちゃんのほっとけーき」(作:わかやまけん・もりひさし・わだよしおみ、こぐま社)
- 「むしむしでんしゃ」(文:内田麟太郎、絵:西村繁男、童心社)
- 「つきよ」(作・絵:長新太、教育画劇)
- 「どれがぼくかわかる?」(文・絵:カーラ・カスキン、訳:よだしずか、偕成社)
- 「おへそのあな」(作:長谷川義史、BL出版)
- 「ふしぎなナイフ」(作:中村牧江・林健造、絵:福田隆義、福音館書店)
- 「11ぴきのねこ」(作:馬場のぼる、こぐま社)
- 「おたすけこびとのにちようび」(文:なかがわちひろ、絵:コヨセジュンジ、徳間書店)
- 「まっくろネリノ」(作:ヘルガ・ガルラー、訳:やがわすみこ、偕成社)
- 「ちょろりんのすてきなセーター」(作・絵:降矢なな、福音館書店)
- 「あぶくたった」(構成・絵:さいとうしのぶ、ひさかたチャイルド)
- 「いしゃがよい」(作:さくらせかい、福音館書店)
小学生向け絵本選びのポイントは?
幼児期の後半から小学生は、長い物語を楽しめるようになります。子どもは耳で物語を聞きながら、集中して絵を眺めるそう。古川さんは「身近なことがらを発展させた物語や、想像力や創造力を育む土台となる絵本」をすすめました。
「しろくまちゃんのほっとけーき」は誰もが知る名作。幼児向けのイメージですが、小学生も楽しんで聞いていました。「子どもたちは知っていることを何度も体験するのがうれしい」と古川さん。「ぽたあん」から始まるホットケーキを焼く過程は何度でも読んであげましょう。
「おへそのあな」はおなかの中の赤ちゃんが外の世界を見ている物語。子どもが自分が生まれた時のことに興味を持ったタイミングがおすすめです。
「ふしぎなナイフ」はリアルに描かれたナイフが曲がったり、ちぎれたり、ほどけたり。発想の面白さを楽しみながら、語彙(ごい)も増えていくそうです。
絵本に載っている対象年齢はあくまで目安。「年齢やジャンルはあまり気にせず、迷ったら長く読み継がれている本を選んでください」
読み聞かせで大事にしたいこと
絵本の読み聞かせには「物語を楽しむ以上の意味がある」と古川さんは語ります。
「大好きな人の声を聞くこと、親が自分だけに向き合ってくれる心地よさを得ること、そして、自分が反応したことに対して親が反応してくれるという安心感です。これは読み聞かせのCDやアプリでは得られないものです」
だからこそ、「読み聞かせを『やらなきゃいけないもの』と義務にせず、余裕がある時に楽しんで」と呼び掛けました。
子どもは気に入った本を何度も読みたがります。「『この間も読んだ』『もっと役立つ本を』と否定せずに、繰り返し読んであげてください」
「読み聞かせはいつまで?」という疑問には、「小学生になって字が読めるようになっても、子どもが『読んで』と持ってくる限りは続けてほしい」と答えました。
「生身の人間の声は、安心感や信頼感、親が子を思う気持ちなど、たくさんの“善きもの”を子どもの心に届けます。いつか必ず『もういい』と卒業する日が来ます。その時まで、親子で豊かな本の世界を楽しんでください」
11月29日は小学高学年向け講座、ノンフィクション絵本講座
講座では折り紙やわらべ歌遊びも楽しみました。紹介された絵本の一部は、「高知 蔦屋書店」で購入できます。
11月29日(日)には「小学高学年と楽しむ絵本の世界」と「楽しいノンフィクション絵本」の講座が開かれます。詳細はこちらから。