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子宮頸がん検診、受けていますか?|20代から増え、30~40代に多い子宮頸がん。HPVワクチンの定期接種は小学6年~高校1年の女の子が対象です

子宮頸がん検診、受けていますか?|20代から増え、30~40代に多い子宮頸がん。HPVワクチンの定期接種は小学6年~高校1年の女の子が対象です

若い女性のがんを防ぎたい。産婦人科医・木下宏実さん、子宮がん経験者・阿南里恵さんが語りました

「がん」には「中高年の病気」というイメージがありますが、子宮の入り口にできる「子宮頸(けい)がん」は若い女性に多いがんです。20 代で増え始め、30~40 代で最も多くなると言われています。

子宮頸がんを予防する「HPVワクチン」は、小学 6 年から高校 1 年の女の子なら公費で接種できます。でも、子どもに受けさせるとなると、副反応が心配…。

そんな声に応えるセミナー「わたしたちのがんスタディDAY」が高知市で開かれました。産婦人科医の木下宏実さんと子宮頸がん経験者の阿南里恵さんが「若い女性のがんを防ぎたい」と語りました。

 

「わたしたちのがんスタディDAY」は 2024 年 6 月 23 日、高知市秦南町 1 丁目のイオンモール高知で開かれました。高知県健康対策課の主催で、子宮頸がんの無料検診などが行われました。

「子宮頸がん&HPVワクチン啓発セミナー」には国立病院機構高知病院産婦人科科長の木下宏実さん、子宮がんの経験を全国で語っている阿南里恵さん(京都市)が登壇しました。

子宮頸がんで毎年約3000人が亡くなっています

子宮頸がん検診は、妊娠すると必ず受ける検診の一つ。内診があり、特に妊娠前の女性からは「できれば受けたくない」と言われる検診でもあります。

高知県健康対策課によると、市町村による検診と事業者などが行う職域検診の受診率は 20 代が 8.2 %、30 代が 17.3 %、40 代が 23.5 %でした( 2022 年 3 月末に算出)。

セミナーでは、木下さんが「子宮頸がんとは」から解説しました。

産婦人科医の木下宏実さん
産婦人科医の木下宏実さん

日本では、女性に最も多いがんは「乳がん」。5 位が「子宮がん」です。

子宮がんには 2 種類あり、このうちの一つが子宮頸がんです。

  • 子宮頸がん…子宮の入り口(子宮頸部)にできるがん
  • 子宮体がん…子宮の奥にできるがん

子宮頸がんの原因となるのが「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスへの感染です。HPVは「ごくありふれたウイルス」と木下さん。主に性的接触で感染し、性経験のある人の 80 %以上が一生に一度は感染するそう。

「ほとんどの人はHPVに感染しても、自然に排出されます。ごく一部の人が何らかの理由で感染し続け、がんになります」

ちなみに、HPVは男性にも感染の可能性があります。中咽頭がんや陰茎がんなどの原因になることがあるそうです。

セミナーには高校生の年代の女性たちも参加しました
セミナーには高校生の年代の女性たちも参加しました

子宮頸がんは 20 代で患者が増え始め、30~40 代で最も多くなります。日本では毎年、約 1 万人が発症し、約 3000 人が亡くなっています。また、約 1000 人が治療のため、30 代までに子宮を摘出しています。

「女性の 20~30 代は人生の転換期。仕事を始めて、彼氏ができて、結婚や出産を考える時期です」「結婚や出産を自分で決めて『しない』のと、がんのため『できない』のは違う。がんになる若い女性を減らしたいと思っています」

23歳で子宮頸がんと診断されました

続いて、阿南さんが自身の経験を語りました。阿南さんは大阪出身。子宮頸がんと診断されたのは 2004 年。まだ 23 歳になったばかりで、関東で一人暮らしをしながら好きな仕事にまい進していました。

「自分で働いて、好きなおしゃれをして、彼氏もいて。すごく楽しかった。20 代は思い切り働いて、30 代で子育てをしようと、漠然と思っていました」

子宮頸がんの経験を語った阿南里恵さん
子宮頸がんの経験を語った阿南里恵さん

子宮頸がんが見つかったのは、突然の出血から。その 5 カ月前に受けた検診では「異常なし」と告げられていたそうです。

「生理の周期は狂いがちだったし、仕事も忙しいので様子見してたんですが、出血がどんどん増え、色もにおいもおかしい。レディースクリニックを受診しました」

がんはすぐに見つかり、総合病院へ。治療が長く続くため、大阪に帰ることを提案されました。

「治らないかもしれない病気にかかったことがなかった。がん宣告を受け、母は『私が悪いんです』『もっと早く気づいてあげられていたら』と泣き崩れました」

がんの告知を受ける前の阿南さんは「仕事」「おしゃれ」を楽しむ毎日でした
がんの告知を受ける前の阿南さんは「仕事」「おしゃれ」を楽しむ毎日でした

がんが大きかったため、まず抗がん剤をがんを小さくした後、手術で子宮を摘出し、放射線治療を行うことになりました。

つらい治療を頑張る阿南さんは「自分が死ぬかもしれない」「命が助かったとしても、子どもが産めなくなった女性に生きていく価値はあるのか」と苦しみます。

抗がん剤で髪の毛がごっそり抜けた時は「おしゃれができなくなるかもしれない」という恐怖で、笑えなくなりました。

「古い、小さい美容室を探して『髪をそってください』とお願いしました。この頭を見て、母は何て思うだろう…と思いました」

阿南さんの頭を見た母は、こう言いました。

「いやー!坊主がおるー!」

「母が笑ってくれて、私も『お店の人が女の子の髪をそるの初めてやからって、1000 円負けてくれてん』と返しました。母からは『あんたが明るい子でよかった』と言われました。私も家族もがんと必死に闘っていました」

「人生がこんなに変わってしまうのなら、がんになっちゃいけない」

治療が終わり、阿南さんは「元の職場に戻りたい」と強く望みました。しかし、治療によるダメージは大きく、「15 分歩いたら息が上がる」という状態で、退職を余儀なくされました。

その後、別の仕事を探して就職しますが、今度はがんの後遺症であるリンパ浮腫に苦しめられて働けず、職を転々とします。

プライベートでは結婚を望み、出会いもありましたが、相手の男性からは「子どもを産めないことを受け入れられない」と伝えられました。

「職を転々とする自分が嫌いでした」
「職を転々とする自分が嫌いでした」

「『何のために生きるんだろう。ただ命があるだけだ』『みんなと同じように結婚したい、子育てしたい』と何年も悩みました」

「人生がこんなに変わってしまうのなら、がんになっちゃいけない」

そう考え、5 年の経過観察が終わった 28 歳から、講演活動を始めました。その後、「人生を諦めたくない」と向かったイタリアで出会いがあり、結婚。40 代となった現在は京都市を拠点に、日本語教師をしながら講演活動を続けています。

「ここまでにとても長い年月がかかりました。がんの後遺症との付き合いは一生だし、どんなに頑張っても、社会が変わらなければ実現できないこともあります。今は子宮頸がんを防ぐHPVワクチンがあります。未来を変える選択肢の一つとして考えてみてください」

HPVワクチンの定期接種は「小学6年~高校1年相当の女子」が対象です

木下さんによると、子宮頸がんの予防は「HPVワクチン接種」と「検診」の両輪で行うそうです。

HPVにはたくさんの種類があります。子宮頸がんを起こしやすいウイルスの種類(型)に対応する数によって、ワクチンは「2 価」「4 価」「9 価」とあり、最近は 9 価が主流です。

「9 価ワクチンで防げるHPV感染は 90 %くらい。2 次予防として検診も受けてもらいたいです」

HPVワクチンは小学 6 年から高校 1 年相当の女の子を対象に定期接種が行われていて、無料で接種できます。

HPVワクチンの公費助成と接種方法(高知県健康対策課提供)
HPVワクチンの公費助成と接種方法(高知県健康対策課提供)

「接種後に慢性疼痛などの症状が見られる」との報告があり、2013 年 6 月~ 2022 年 3 月まで「積極的勧奨」が中止されていました。

接種のお知らせが届かず、接種機会を逃してしまった女性のため、現在は「無料キャッチアップ接種」が行われています。1997 年 4 月 2 日~ 2008 年 4 月 1 日生まれの女性が対象で、16~26 歳になります。

「キャッチアップ接種は 2025 年 3 月までです。9 月までに 1 回目を接種しないと、3 回全てを公費接種で受けられなくなりますので、ご注意ください」

セミナー終了後、阿南さんと女性たちが語り合っていました
セミナー終了後、阿南さんと女性たちが語り合っていました

ワクチンには副反応があります。HPVワクチンで接種した部分の痛みや腫れ、発熱、めまいなどが報告されています。まれに、体の感覚が鈍くなる、倒れるなどの症状が出る場合があります。

「副反応は非常にまれですが、ゼロではありません。HPVワクチンは子宮頸がん予防に有効ですが、100 %予防できるわけではありません。接種のメリット、デメリットを考えて選択してください」

「2年に1度、子宮頸がん検診」を子どもにも教えて

セミナー終了後、木下さんにお話を聞きました。女の子を育てる保護者としては「子宮頸がんからわが子を守りたい」という思いと、「副反応が心配」という思いがあります。

「誰もが『自分ががんになる』とは思っていません。子宮頸がんの内診に抵抗がある方もいると思いますが、子宮頸がんは自覚症状がほとんどなく、進行がんで受診する方は検診を受けていないことが多いです」と木下さん。

「副反応がどうしても心配という方は、必ず検診を受けるようにしてください。20 歳になると、行政から検診の通知が届きます。子宮頸がんによって将来の選択肢を狭めないように、『 2 年に 1 度、子宮がん検診を受けよう』お子さんにも教えていただけたらと思います」

子宮頸がん検診で座る内診台。カーテンで仕切られ、医師や看護師と顔を合わせることはありません
子宮頸がん検診で座る内診台。カーテンで仕切られ、医師や看護師と顔を合わせることはありません
検診では医師が専用のブラシなどで子宮頸部をこすり、細胞を採取します
検診では医師が専用のブラシなどで子宮頸部をこすり、細胞を採取します

イベントでは、検診の内診台を見学できるコーナーもありました。事前に見て、どんな検診を受けるのかを学んでおくと、「怖い」という気持ちが少し和らぐのではと感じました。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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