「子どもと遊んであげる」ではなく、まず大人が遊びを楽しんで|保育士さん3人が「こうちあそびマルシェ」を始めました
2022 年 11 月、高知市内で「遊び」をテーマにした活動が始まりました。保育士さん 3 人による「こうちあそびマルシェ」。「おもちゃの広場」というイベントを開き、親子がおもちゃで遊びながら交流しました。
代表の浜田奈央さんは「おもちゃコンサルタント」。親子で遊ぶ際、「子どもと遊んであげる」のではなく、「まず大人が遊びを楽しむ」ようにするといいそうです。
子どもへの関わりで心掛けておきたいことを紹介します。
おもちゃに没頭したり、次々と変えたり…思い思いの子どもたち
「こうちあそびマルシェ」は保育士の浜田奈央さん、高橋留美さん、山崎美加さんが立ち上げたグループです。
初めて企画したイベント「おもちゃの広場 in あさくら」は 2022 年 11 月、高知市朝倉戊の朝倉総合市民会館で 2 回開かれました。
ココハレ編集部が訪ねた 11 月 10 日の回は平日とあって、0~2 歳の子どもとお母さん 7 組が参加しました。
用意されていたのは高知県産木材を使った木のおもちゃや、手作りのおもちゃ。おもちゃと遊びの専門家が選んだ「グッド・トイ」のおもちゃも並んでいます。
この日は浜田さんと高橋さんが親子を迎えました。ぽかぽかと暖かい室内で、子どもの反応を見ながら、新しいおもちゃを手渡していきます。
一つのおもちゃに没頭する子もいれば、次々と変えていく子どもも。興味の赴くままに楽しんでいました。
お父さんが参加できる場をつくりたかった
3 人は普段、高知市内の地域子育て支援センターで働いています。支援センターは平日のみの開所が多いため、訪れるほとんどが子どもとお母さん。お父さんに会うことはめったにないそうです。
「お父さんと話してみたいな、お父さんが気軽に来られる支援センターのような場所をつくりたいなと思いました」。浜田さんはそう振り返ります。
狙い通りではない遊び方に、わくわく
「お父さんが参加できる場づくり」とつながったのが、「おもちゃ」でした。
浜田さんは小学 4 年の長男を子育て中。夏休みの宿題では、親子で一緒に木工作品を四つも仕上げるほど、何かを作ることが大好きです。
支援センターでも手作りおもちゃを作っていて、「おもちゃについて学び、自分の子育てや保育士の仕事に生かしたい」と考えるようになりました。
浜田さんが目指したのは「おもちゃコンサルタント」という資格です。東京都内で東京おもちゃ美術館を運営するNPO法人「芸術と遊び創造協会」が養成している、おもちゃの専門家です。
養成講座では、赤ちゃんの成長・発達から高齢者のリハビリまで、幅広い視点でおもちゃを捉え、活用方法を学んでいきます。
「新聞紙だったら、棒状にして指と指で押さえたり、折り畳んだり。一つのおもちゃで何通りもの遊び方があると学びました。講座で学んだ遊びを『ネタ』にするんじゃなくて、『種』として自分で新しい遊び方を考え、広げていく。それがとても面白かったです」
遊びの「種」を育てていくプロは、やはり子どもだそう。
「積み木があったら、大人は子どもに積み方を教えます。でも、子どもは積み木を倒す瞬間の音を楽しんだり、車にしたり、食べ物にしたり。遊びを展開していく力がすごいんですね」
大人が狙った通りではない遊び方を見ると、「わくわくする」と浜田さん。この想像力や「わくわく」を大人は忘れかけているのでは…と気付きました。
皿回しに夢中になるお父さん…これは狙い通り!
「おもちゃコンサルタント」の資格を取ると、全国のおもちゃ美術館に展示されているおもちゃを借りて、地域で「おもちゃの広場」を開催できます。
「お父さんの参加」と「おもちゃ」がつながったのが「おもちゃの広場 in あさくら」の日曜日開催でした。
お父さんたちは最初は緊張している様子でしたが、徐々にくつろいでいったそうです。
2 歳ぐらいのわが子を見守っていたお父さんとお母さんが、こんな会話をしていました。
父:(わが子が積み木を積むのを見て)「へー、こんなことできるんや」
母:「そうよ。知らんかった?」
「お父さんの多くは、普段の子どもの様子をおうちでしか見る機会がないんですよね」と浜田さん。おもちゃを通して、わが子の知らない面を見られる場にもなりました。
子どもたちが「狙い通り」ではない遊びをする一方で、「狙い通り」になったおもちゃがありました。それは「皿回し」。
部屋の隅に何げなく置いておくと、あるお父さんが手に取り、回し始めました。うまくいかず、何度も何度も挑戦する様子を、子どもが見ていました。
おもちゃを通して、親が夢中になる姿を子どもに見せる機会にもなったようです。
子どもと上手に遊ぶこつは?「してあげよう」ではなく、「一緒に」
「忙しくて、子どもと遊ぶ時間が取れない」「赤ちゃんとの遊び方が分からない」。子育て中の保護者から、そんな声が寄せられるそうです。
一緒に遊ぶ際、「大人が子どもに何かしてあげよう」ではなく、「一緒に楽しもう」という気持ちが大事だと、浜田さんは語ります。
「子どもが携帯やリモコンを好きなのは、大人がそれを使って楽しんでいるから。大人が楽しかったら、子どもはもう楽しいんですよ。おもちゃで遊ぶ時も、まずはお父さん、お母さんに楽しんでもらいたいです」
子どもに「遊んで」とせがまれても、時間がない!子どもはぐずり、親はイライラ…。“子育てあるある”ですね。そんな時は「10 分でも 5 分でもいい」そう。
「『この時間は遊ぶ時間』と決めて向き合ってみると、子どもの心が満たされます。『後でね』も受け入れてくれると思います」
「おもちゃを通して、親子の心の響き合いが豊かになるような場所をつくっていきたい」という「こうちあそびマルシェ」。
今後は数カ月ごとに「おもちゃの広場」を企画していく予定です。開催情報はココハレでご紹介します。