ずっと、ぎゅっと!第2部・高知のエコチル調査より⑤|「パートナーとの関係」「褒める」「コミュニケーション」「視力」
高知のエコチル調査の基礎データから見えてくる子どもたちの姿と、子育てのアドバイスを紹介します
環境省の「エコチル調査」(子どもの健康と環境に関する全国調査)が今年で 10 年目を迎えました。
化学物質が子どもの成長に及ぼす影響などを調べる調査で、生まれた子どもが 13 歳になるまで追跡調査が行われます。全国から 10 万組、高知県からは約 7000 組の親子が参加し、半年ごとに質問に答えています。
連載「ずっと、ぎゅっと!」では、高知の子どもたちの生活に関する基礎データを紹介しています。今回は 2017 年の掲載に続く第 2 部。エコチル調査高知ユニットセンター(高知大学医学部内)からのアドバイスを交えてお届けします。(高知新聞 2020 年 11 月 22 、26 、30 日、12 月 10 日掲載)
※高知県内の調査から 2020 年 3 月時点の暫定値を紹介します。データは四捨五入しており、加算値が 100 %にならない場合があります。
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【パートナーとの関係】子育てのストレスは話すと軽くなります
3 歳児のお母さんの約 8 割が、子育ての相談をする相手として「パートナー」や「両親」と回答しました。「友人」という回答も約 6 割でした。
お母さんがパートナーとお子さんの話をする機会については、「週 5 回以上」が最も多く 72.8 %。お子さんについて、よく話をされているご家庭が多いことが分かります。一方で、週 1 回に満たないというお母さんは 5.3 %でした。
子育てには、「理解」と「サポート」が身近にあることが大切です。パートナーや両親、友人、保育士や地域の子育て支援サービスも含めて、その人を囲む社会全体の理解があり、自分のことを尊重してくれるようなサポートが欠かせません。
子育てについて悩まない親はいません。子育てのストレスは周りの人に話を聞いてもらうだけでも軽減することが知られています。身近な人に相談をし、地域の子育て相談・サービスなども利用して、1 人で抱え込み過ぎないことが大切です。1 人に育児、家事の負担が偏る「孤育て」になっていないか、周囲の人も気を付けてあげてください。
家族が笑顔でいる姿を見ることで、子どもは安心して伸び伸びと自分の思いを育むことができます。支援が充実し、親子が笑顔で過ごせる高知県になればと思っています。
【褒める】行動を言葉で伝えてみましょう
3 歳 6 カ月児の調査で、「お子さんを抱きしめたり、優しい言葉をかけて愛情を示しますか」と聞きました。96.9 %と、ほとんどのお母さんが子どもに直接「愛情」を示していました。
子どもが小さい時は褒めることが多かったのに、大きくなると叱ることが増え、褒めることができなくなったという話をよく聞きます。お母さん自身が褒めることに慣れていない人も多いです。
「褒める」には「高く評価する」という意味があり、難しく感じるかもしれません。まず、子どもをよく観察して、行動を言葉で伝えてみましょう。乳児の時には、「おしっこ出たね」「おなかすいたね」「眠いね」など言葉にしていたと思います。少し大きくなると減りますが、あえて言ってみましょう。
例えば、夕食前に「ゲームをやめる」という約束をしたとします。約束通りにやめたからといって、「いちいち褒めていられない」と思うことが多いでしょう。そんなとき、子どもの「できた」行動を伝えてみましょう。「ゲームをやめることができたね」。褒める言葉が見つからなくても、ここまでで大丈夫です。
子どもは「お母さんが自分を見て、認めてくれた」と思います。これは褒めていることと同等の意味があります。「褒めて育てる」は「認めて育てる」なのです。子どもを観察して、その行動を伝える。これならできそうだと思いませんか。
【コミュニケーション】「繰り返し」には意味があります
お子さんとのコミュニケーションについて、3 歳 6 カ月児の調査で聞きました。「友達が使っているおもちゃを無理やり取ってしまった時はそれを返させる」「約束を守らない時、その約束をもう一度教える」という質問に対し、9 割のお母さんが「当てはまる」と答えました。「子ども同士のやりとり」や「大人との約束」など、子どもに必要な社会性を丁寧に教えていることが分かります。
子どもは間違いながら成長しますが、何度も同じことを繰り返すため、大人はつい叱ってしまいます。子どもの失敗には、「こうしたらいいよ」と正しい方法を教えることが大切です。叱られるだけではどうしたらいいか分からないからです。
しかし、子どもにいろいろなことを教えるのには忍耐を必要とします。同じことを何度も何度も言い続けていることにうんざりしていませんか。でも、実は、同じことを同じように伝えることが、この時期にとても大切なのです。大人からいつも同じ態度で同じ説明があると、子どもの心の奥は安心します。
もちろん、子どもの機嫌が悪くなることもあるでしょう。文句を言うかもしれません。でも、それと同時に、心の奥で、大人の変わらない態度に安心するのです。同じことをやっても、ある時は怒られ、ある時は怒られないとなると、子どもは不安定になります。
同じことをやったらいつも同じ結果が返ってくる、同じように怒られることは大切なのです。同じことの繰り返しには意味があるのです。
【視力】「弱視」を見逃さないで
4 歳 6 カ月児の調査で、視力や斜視について眼科で問題を指摘されたことがあるお子さんは 3.9 %、 このうち眼鏡が必要なお子さんの割合は約 40 %でした。
生まれたばかりの赤ちゃんは明かりがぼんやり分かるくらいの視力しかありませんが、1 歳の平均視力は 0.2 程度、3 歳で 0.8 前後、4 ~ 6 歳で 1.0 と徐々に発達し、8 歳くらいで成人と同じ視力に達するとされています。特に 5 歳までが視力発達に最も重要な時期です。
8 歳までの発達の途中に、遠視や乱視、斜視、けがなどの原因により「物をくっきり見る」ことが妨げられると、視力の発達が止まってしまうことがあります。このように、視力の発達が妨げられることで起きた低視力を「弱視」といいます。眼鏡を掛けても、視力が上がらないことを指します。
8 歳以降に治療を開始しても視力の発達は難しいため、遠視や乱視、斜視などの異常は、視力の発達が止まる 8 歳くらいまでに眼鏡や手術などで治療を行うことが必要です。
乳幼児は見えにくさを自覚することが少ないため、視力の異常は家族も気付かないことがあり、小学校入学後の学校健診で視力が悪いことが初めて分かることもあります。入学後は「平日に学校を休みづらい」「夕方からの受診が大変」などの理由で眼科への定期的な通院が難しくなります。弱視の治療である一定期間のアイパッチ装着なども夜の短い時間だけでは難しいことから、治療を中断してしまう子どもも増えます。早期に発見し、入学前までに治療を行うことができれば、弱視を防ぐことができます。
治療が可能な弱視を見逃さないことが大切です。3 歳児健診には視力検査がありますし、眼科で視力検査を受けることもできます。早期発見、早期治療につなげることが大切です。
高知県内のエコチル調査は高知大学医学部内にあるエコチル調査高知ユニットセンターが行っています。
「こうちエコチル調査」のウェブサイトはこちら