災害時、赤ちゃんの離乳食はどうする?家庭内備蓄の目安や、手軽にできる「パッククッキング」を紹介します
おかゆは無洗米、水、ポリ袋があれば、湯せんでできる!高知県栄養士会の講演から紹介します
災害に備え、備蓄しておきたい食料品。大人と同じ食事ができない赤ちゃんや幼児がいる家庭では、離乳食の準備も必要ですね。
「災害時のおいしい離乳食教室」が高知市内で開かれ、高知県栄養士会の皆さんが被災直後の離乳食としておすすめの食品や、限られた環境でも作れるレシピを紹介しました。
高知市では、食料の公的な備蓄は 1 日分だそうです。家庭内備蓄の目安も紹介します。
目次
災害時、支援物資はどのように届けられる?
「災害時のおいしい離乳食教室」は 2022 年 9 月 24 日、高知市高須 1 丁目の高知新聞住宅総合展示場「ライム」で開かれました。
講師は高知県栄養士会の皆さんです。
食料品の公的備蓄は1日分!米、水、乳児用ミルクのみ
はじめに、管理栄養士の西村浩代さんが「災害時の食のおはなし」をテーマに講演しました。西村さんは防災士の資格も持ち、高知市の職員として災害対応に携わってきました。
家庭での備蓄を考える前に大事なのが、公的な支援物資の中身や配送の流れを知っておくことだそうです。西村さんは高知市の備蓄計画を例に説明しました。
食料品の家庭内備蓄の目安は「最低 3 日間分、できれば 7 日間分」と言われます。その理由は、高知市の場合、公的な備蓄は 1 日分しかないから。用意されている食料品は次の通りです。
【食料品の備蓄・高知市の場合…高知市備蓄計画第 2 期から】
- アルファ化米
- 幼児・高齢者用アルファ化米(おかゆ)… 1~2 歳の幼児と 75 歳以上の高齢者が対象
- アルファ化米用の水
- 乳児用ミルク(粉、液体)… 0 歳児が対象
- 飲料水
米と水と赤ちゃん用のミルクが 1 日分のみ。「それだけ?」と感じますが、高知市は対象者数が 8 万 9000 人余りいるため、備蓄自体はかなりの量です。
国からの支援物資が届き始めるのは「災害発生から 4~7 日後」と想定されています。あくまで想定なので、避難所によってはさらに先になる可能性もあるそうです。
7日分の食料って、どれくらい?
家庭内備蓄の大切さは、新型コロナウイルス感染症の療養生活でも言われるようになりました。目安として、西村さんは「大人 1 人当たりの 1 週間分の食品」のリストを紹介しました。
【主食】
- パックご飯… 15 パック
- 白がゆ… 1 個
- 梅がゆ… 1 個
- 卵がゆ… 1 個
- カップうどん… 2 個
- カップそうめんミニ… 2 個
- カップラーメン… 1 個
【主菜・副菜】
- カレー(レトルト)… 1 袋
- ハヤシライス(レトルト)… 1 袋
- 中華丼(レトルト)… 1 袋
- 牛丼(レトルト)… 1 袋
- 親子丼(レトルト)… 1 袋
- サバのしょうゆ煮(缶詰かレトルト)… 1 個
- サバのみそ煮(缶詰かレトルト)… 1 個
- イワシのしょうゆ煮(缶詰かレトルト)… 1 個
- イワシのみそ煮(缶詰かレトルト)… 1 個
- チキンのトマト煮(レトルト)… 1 袋
- ハンバーグ(レトルト)… 1 袋
- チキンのクリーム煮(レトルト)… 1 袋
- 肉じゃが(レトルト)… 1 袋
- おでん(レトルト)… 1 袋
- ぶり大根(レトルト)… 1 袋
- 筑前煮(レトルト)… 1 袋
【汁物】
- クラムチャウダー(レトルト)… 1 袋
- かぼちゃのスープ(レトルト)… 1 袋
- 豚汁(レトルト)… 1 袋
- きのこ汁(レトルト)… 1 袋
- けんちん汁(レトルト)… 1 袋
- 即席みそ汁… 1 袋( 10 食入り)
- 卵スープ(フリーズドライ)… 1 袋( 5 食入り)
- コーンクリームスープ(粉末)… 1 箱( 3 袋入り)
【その他】
- 果物の缶詰… 2 個
- ミックスナッツ… 1 袋
- ミニようかん… 2 個
- 大豆プロテインバー… 1 本
- カルシウムウエハース… 1 袋
- ふりかけ… 1 袋
【飲料、水】
- 野菜ジュース( 200 ミリリットル)… 3 本
- イオン飲料(液体またはゼリー)… 2 個
- 飲料水… 1 日 1 リットル
- 調理等に使用する水… 1 日 2 リットル
こちらは高知市の健康増進課が作成したリストだそうですが、かなりの量!こうした食料品はコロナ療養者への支援物資としても送られました。
レパートリーは豊富に見えますが、「管理栄養士の視点で見ると、栄養バランスは大丈夫かな…と思います」と西村さん。「支援物資で生ものは送れないので、例えば冷凍食品の野菜を足すなど、工夫が必要です」と話していました。
被災地ではおにぎりを食べ続けるなど、偏った食生活が長期化した場合の健康問題が指摘されてきました。家庭内備蓄、あらためて考えたいですね。
離乳食の備蓄は、ベビーフードで
離乳食の備蓄では、ベビーフードが紹介されました。主食とおかずがセットになった商品をストックしておくと、普段のおでかけにも便利ですね。「普段は手作り」という人も、試しに食べさせておくと、いざという時に役立つそうです。
ミルクの備蓄は粉ミルクが基本でしたが、液体ミルクの登場で変わりつつあるそうです。消毒や湯冷ましに必要な水を節約できるという点からも、液体ミルクが便利です。
哺乳瓶が手に入らない場合に備え、紙コップやスプーンなどを使って授乳する「カップフィーディング」も試しておくと安心です。
ただ、母乳で育てている場合は、災害時でも母乳育児を続けることが大切です。「お母さんが安心して授乳できるプライベート空間を作ることがまず大事」と西村さん。
「一時的に母乳が出なくなっても、吸わせ続けることでまた出ます。ミルクは赤ちゃんとお母さんの状態に応じて適宜使ってください」
災害時にはパッククッキング!時短料理としても使えます!
災害時の調理法として注目されているのが「パッククッキング」。耐熱性のポリ袋に食材と調味料を入れ、袋のまま鍋で湯せんする調理方法です。「一つの鍋で複数の料理を調理できる」「鍋の水を再利用でき、袋のまま食器によそうことで節水できる」のが利点。時短料理として普段から取り組めます。
教室では、高知県立大学健康栄養学部の島田郁子さんらがご飯、軟飯、おかゆの作り方や、蒸しパンの作り方を紹介しました。
おかゆの作り方は、とても簡単!ポリ袋に無洗米と水を入れ、空気を抜いて口を結び、浸水させてから湯せんするだけ。1 時間ほどで完成します。
【パッククッキング・おかゆの作り方】材料…無洗米 40 グラム、水 200 ミリリットル
- 米と水をポリ袋に入れ、空気を抜いて口を結ぶ
- 30 分ほど浸水させる
- 沸騰したお湯にポリ袋を入れ、再沸騰してから 25 分加熱する
- 火を止めて、そのまま 10 分ほど蒸らす
袋の中の空気を抜く際は、水圧を利用します。ボールやたらいに水を張り、袋をしごきながらねじり、上の方で縛るといいそうです。加熱すると袋が膨らむので、しっかりと結びましょう。
米と水の量は、ご飯の軟らかさで変わります。
- ご飯…米 80 グラム、水 120 ミリリットル(水は米重量の 1.5 倍)
- 軟飯…米 60 グラム、水 150 ミリリットル( 2.5 倍)
- おかゆ…米 40 グラム、水 200 ミリリットル( 5 倍)
蒸しパンの材料はこちら。袋に材料を全て入れて、混ぜ合わせます。
【蒸しパンの材料・1 人分】
- ホットケーキミックス… 40 グラム
- 豆乳… 30 グラム
- フルーツ缶(固形部分)… 10 グラム
沸騰させたお湯の中で 5 分程度加熱したら出来上がり。電気ポットや電気ケトルでお湯を沸騰させておき、袋を入れて放置してもOK。10 分放置して生の部分があれば、再沸騰させましょう。
災害時、栄養・食生活での相談は「JDA-DAT」へ
島田さんは講演で、熊本地震や西日本豪雨での被災支援について紹介しました。避難所では、離乳食や食物アレルギー対応食品、介護食などを提供する「特殊栄養食品ステーション」が設けられ、在宅避難の人にも配布されたそうです。
東日本大震災をきっかけに、日本栄養士会では大規模災害時に被災地で栄養・食生活支援活動を行う「日本栄養士会災害支援チーム」が設立されました。頭文字を取って「JDA-DAT(ジェイディーエーダット)」と呼ばれています。
「JDA-DAT」「日本栄養士会」の文字が入った赤いベストが目印です。
被災直後の命を守るため、その後の健康を守るため、食事はとても大切です。日本栄養士会では「赤ちゃん防災プロジェクト」として、災害時に乳幼児を守るための栄養ハンドブックや、乳児用液体ミルクを用いたレシピ集などをウェブサイトで公開しています。参考にしてください。