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不登校は「問題」「失敗」「絶望」ではなく「自分を大切にする選択」…1人で悩まず、つながりませんか?|高知の不登校経験者が「不登校カフェ高知」で活動しています

不登校は「問題」「失敗」「絶望」ではなく「自分を大切にする選択」…1人で悩まず、つながりませんか?|高知の不登校経験者が「不登校カフェ高知」で活動しています

不登校で苦しんでいる子どもやその家族に、不登校経験者として何かできることはないか――。

高知で暮らす 20~30 代の 4 人が 2025 年 5 月、「不登校cafe(カフェ)高知」を立ち上げました。不登校の子どもや家族、経験者らが集まれる場を設けたり、インスタライブを行ったりしながら、「元不登校の声」を発信しています。

4 人に共通するのは「不登校は問題でもなければ、失敗でも絶望でもない」という思い。自らの経験を語ることで、「不登校という選択ができる自分を誇りに思ってほしい」と願っています。代表の井上紗織さんにお話を聞きました。

不登校の子ども、家族、経験者、支援者…「不登校cafe」で思いを語りました

高知市追手筋2丁目のオーテピアで 2025 年 9 月 27 日、「不登校cafe」が開かれました。「不登校cafe高知」が初めて企画した集まりの場です。

20 人ほどの参加を想定しましたが、参加者はなんと 69 人。不登校の子どもや家族、経験者、教員や支援者らが思いを語りました。

初めての「不登校cafe」ではグループトークが行われました
初めての「不登校cafe」ではグループトークが行われました

グループトークでは、さまざまな声が上がりました。

「学校に行きたくないのに、親に『行け』と引っ張り出された。家族が不登校にさせてくれなかった」

「『不登校になっていい』と許される環境があれば癒やされる。自分が安心できる場所がないと、将来のことは考えられない」

「子どもが不登校になって、全てが手探り。誰かに聞こうにも、わが子の不登校を経験してない人には気持ちは分からない」

これまでの経験や気持ちを打ち明けました
これまでの経験や気持ちを打ち明けました

グループトークは「話したい人は話していいし、話したくない人は話さなくていい」というスタンス。

これまでの経験や気持ちを安心して打ち明け、共感し合える場となっている様子が伝わってきました。

中学1年で不登校に…「休憩するという選択」でした

「不登校cafe高知」は 2025 年 5 月 25 日に活動を始めました。メンバーは岡本楓生さん、井上紗織さん、中島匠一さんら 4 人。人権を考える集いで知り合い、「元不登校として何かやりたいよね」と意気投合しました。

元不登校の4人が「自分の経験を役立てたい」と意気投合しました(提供写真)
元不登校の4人が「自分の経験を役立てたい」と意気投合しました(提供写真)

代表を務める井上さんは社会福祉士、精神保健福祉士として働いています。不登校になったのは中学 1 年の 2 学期から。幼い頃から家庭環境などで困難を抱え、「心が限界になった」と振り返ります。

中学 3 年になると、担任の先生や不登校の生徒を支援する先生らのサポートを受け、少しずつ人を信じられるようになりました。大人のサポートの大切さを実感し、「自分と同じ境遇の子どもを助けたい。自分が受けた恩を返したい」と考え、高校に進みました。

代表を務める井上紗織さん。5歳と3歳のママです
代表を務める井上紗織さん。5歳と3歳のママです

井上さんにとって、不登校は「休憩するという選択」であり、「心を整えるために必要な時間」でした。

この「選択」という考えは、メンバーに共通しています。岡本さんは「不登校で環境が変わったことで、再び前に進むことができた」、中島さんは「不登校は挫折ではなく、新しい挑戦の出発点」と語ります。

活動を始めるにあたり、4 人は「不登校という選択ができる自分を誇りに思ってほしい」と話し合いました。

「不登校の子どもが増えて社会問題化していますが、私たちは『問題』ではなく『選択肢』だと捉えています。不登校は挫折でも絶望でもない。生き方の一つと捉えられる社会になればと考えています」

家から出られない子にも聞いてほしい…インスタで「不登校LIVE」

団体名に「カフェ」を入れたのは「柔らかい雰囲気を大事にしたいから」。「気軽に気楽に、出入り自由な場にしたい」と考えました。

リアルな集まりの場を実現していくため、県の子育て講座に応募。2025 年度は「不登校cafe」を 3 回開催します。

さらに、「家から出られない子に元不登校の声を届けたい」と考え、インスタライブを定期的に開催しています。「不登校LIVE」と名付け、メンバーが経験を語っています。

インスタライブは「不登校LIVE」と名付けました
インスタライブは「不登校LIVE」と名付けました

「今後、ゲストも呼びます。アーカイブを残していくので、『不登校ラジオ』的な感じで暇つぶしに聞いてもらえたらうれしい」と井上さん。

「不登校LIVE」の開催は公式インスタグラムで告知されます。「これを聞いてみたい」「この人の話を聞きたい」などのリクエストはDMで受け付けています。

「なんで学校に行けないの?」と詰めないで…不登校の経験から伝えていきたい

「不登校cafe高知」の活動は始まったばかりですが、第 1 回の「不登校cafe」を経て、求められていることが見えてきました。

「参加者のアンケートに『不登校児の今を見て、安心した』『漠然と不安だったけれど、見通しが持てた』という感想がありました。『親としてどう接したらいいか、ヒントが欲しい』という声もあり、私たち経験者がその後を語る大切さを感じました」

インスタグラムでは「親の接し方」について、メンバーの思いをこう伝えています。

  • 「なんで学校に行けないの?」と詰めないこと
  • 「大丈夫だよ」と受け止めること
  • まず、親自身が安心できる環境を持つこと
  • 学校に戻すことだけをゴールとせず、子どもの未来を一緒に考えて
リアルな集まりの場を設けて、求められていることが見えてきました
リアルな集まりの場を設けて、求められていることが見えてきました

「不登校になり、『お先真っ暗』という人もいると思います」。井上さんは子どもや親の気持ちをくみ取り、こう語りました。

「私たちはつらかった不登校時代を経て、自分らしく生きています。今、苦しんでいるお子さんや保護者に、『大丈夫だよ』『不登校は絶望じゃないよ』『自分を大切にする選択ができるあなたはすごいんだよ』と伝えていきたいです」

今後は「不登校cafe」「不登校LIVE」を軸に、不登校の子どもの居場所づくりなどにも取り組んでいく予定です。

 

第 2 回の「不登校cafe」が 11 月 3 日(月・祝)に開かれます。不登校の子どもや保護者、不登校に関心のある人が対象で、はまゆう教育相談所の横田隆所長が「自立することは、依存すること」と題し、講演します。

第2回不登校cafe 不登校を考える

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小学生ママです。長女は思春期の入り口にさしかかった4年生、次女はピカピカの1年生です。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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