10代から始めたい「プレコンセプションケア」|生理の記録を付ける、生理痛対策、病気の予防…全ての女性に必要なケアについて、産婦人科医の毛山薫さんが語りました
「プレコンセプションケア」を知っていますか?「妊娠前からの健康管理」という意味で、適切な時期に性や健康に関する正しい知識を持ち、健康を考えることが大切だそうです。
「プレコンセプションケア」について考える講演会が高知市内で開かれ、産婦人科医の毛山薫さんが登壇しました。
毛山さんによると、プレコンセプションケアは「妊娠する・しないに関わらず、全ての女性にとって大切なこと」。講演では「生理」「生理痛対策」「病気の予防」について解説しました。
この記事では生理が始まる 10 代から知っておきたいことを紹介します。親子でぜひご覧ください。
目次
ココハレ編集部が今回取材した講演会は「未来につながるからだとこころ~プレコンセプションケア~」。2025 年 11 月 30 日に高知市知寄町 2 丁目のちより街テラスで開かれました。
企画したのは、高知県内で親子向けの性教育に取り組む「いのちのおはなしキャラバン隊!土佐姉妹」。2024 年 8 月に毛山さんとコラボし、「おしえて薫先生」シリーズをスタート。今回は第 2 弾です。
毛山さんは土佐高校、川崎医科大学を卒業。京都第二赤十字病院、徳島大学病院、高知赤十字病院などを経て、けやまクリニック(高知市知寄町 1 丁目)で診療しています。
【プレコンセプションケアとは】自分の体を知り、大切にすることです
講演は「プレコンセプションケア」の説明から始まりました。
「プレ」は「~前の」、「コンセプション」は「受胎」、「ケア」は「配慮」「注意」という意味。日本語訳は「妊娠前からの健康管理」となります。
「妊娠前からの」となると妊娠を望む女性に限られるイメージですが、こども家庭庁は次のように定義しています。
性別を問わず、適切な時期に、性や健康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行うこと
毛山さんはさらに分かりやすく、こう説明しました。

なるほど、とてもシンプル!
プレコンセプションケアとは、妊娠したい人のためだけのものではないそう。毛山さんは「全ての女性にとって大切なことですので、全ての人に知っておいてほしい」と呼びかけました。
【生理について】記録を付けていますか?3カ月以上ない場合は受診を
「生理」の話は、「皆さん、生理の記録を付けていますか?」という質問から始まりました。
ちなみにですが、産婦人科を受診すると、次の三つを必ず聞かれるそうです。
- 初経(初めての生理)は何歳でしたか?
- 最終月経はいつからいつまで、何日間でしたか?
- 月経周期はだいたい何日間ですか?
会場でアンケートを取ると、「バッチリ付けています」という人は 77 %でした。
生理の記録は「始まった日」と「終わった日」を付けるのが基本。「少量の出血も記録する」など、自分でルールを決めるといいそうです。
手帳に書く人もいれば、アプリを利用する人もいます。アプリを使うと、月経周期がすぐに分かり、次の生理の予測も立てられます。
生理とは、受精卵を迎えるために準備した「子宮内膜」がはがれ落ちる現象のこと。医学的には「月経」という名前です。生理の時に出る血は「経血」と呼ばれていて、子宮内膜や血液などが混ざっています。
「正常な月経」とは次のように定義されています。
- 初経…平均 12 歳
- 月経周期… 25~38 日
- 持続日数… 3~7 日
- 閉経(生理が終わること)…平均 50 歳
特に 10 代は生理が不順ですので、月経周期や日数が平均から外れていたとしても、すぐに治療が必要なわけではないそうです。
すぐに受診が必要なのがこちら。

毛山さんによると、中高生で生理が来なくなる原因の多くが「ダイエット」。続いて「過食」「環境などのストレス」「過度のスポーツ」です。
ダイエットで痩せた状態が長く続くと、卵巣機能が低下して回復しなくなり、将来不妊症になる可能性があります。
さらに、「思春期は骨をつくることが大切」とのこと。女性ホルモンは骨とも密接な関係があり、生理が来なくなると、将来の骨粗しょう症のリスクも高まります。
「ダイエットをしたい中高生の気持ちは分かりますが、実は危険なことなんです。骨は 20 歳までにつくられて、あとは維持するだけ。中高生で骨を強くしておくことは一生に関わると知っておいてください」
自分の適正体重はBMIで確認できます。18.5~25 未満が「普通体重」です。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
【月経困難症について】生理で「学校を休む」「保健室で休む」…ためらわずに治療の相談を
「月経困難症」とは、生理の時に起こるさまざまな症状によって、日常生活に支障が出ること。
よく見られる症状がこちらです。当てはまる症状はありますか?
- 下腹痛
- 腹痛
- 腹部膨満感(おなかが張る)
- 嘔気(吐き気)
- 頭痛
- 疲労・脱力感
- 食欲不振
- イライラ
- 下痢
- 憂うつ
毛山さん、「日常生活に支障が出る」の判断が難しいですが…?

産婦人科の外来では「こんなに生理痛がひどいなんて、病気が隠れているんじゃないかと思って来ました」という患者さんがいるそうですが、「ひどい生理痛は、月経困難症という病気」「ためらわずに相談してほしい」とのこと。
月経困難症は「子宮内膜症」が原因となっている可能性もあります。子宮内膜症は、子宮内膜のような組織が子宮の内側以外の場所にできる病気。生理の回数を重ねるごとに悪化するため、治療が必要です。
月経困難症の治療は主に三つあります。
- 鎮痛剤を服用する
- ホルモン剤を服用する…低容量ピルなど
- 漢方を服用する
私たち母親世代は「生理痛は我慢するものだ」「鎮痛剤はなるべく飲まない方がいい」と言われて育ちましたが、今は「鎮痛剤は痛みが出る前に飲む」のが基本だそうです。
ホルモン剤の代表が低容量ピル。1 日 1 回服用すると、生理の量や痛みが抑えられます。初経から 50 歳まで服用できるので、中高生の生理痛対策にも有効です。
「ピルを飲むと、将来妊娠しにくくなるのでは」「生理の回数を減らすと、体に悪いのでは」と心配されていますが、「科学的根拠はない」とのこと。
「私たち大人の女性は生理にもう慣れてますが、中高生にとってはわずらわしいもの。学校は休み時間に教室の移動が多いからトイレに行くのが大変ですし、汚れた下着で過ごすのはしんどいですよね。毎月ある生理だからこそ、振り回されるのはもったいない!我慢せずに、治療の相談をしてください」
【病気の予防】子宮頸がん予防は「10代のワクチン」と「20歳以降の検診」がセットです
最後に、プレコンセプションケアで押さえておきたい病気を紹介します。
風疹と麻疹(はしか)は妊娠中に感染すると、赤ちゃんに次のような病気を引き起こす可能性があります。
- 先天性風疹症候群…先天性心疾患、難聴、白内障など
- 麻疹(はしか)…流産や早産、胎児発育不全など
麻疹風疹のワクチンは、今の子どもたちは 2 回の「MRワクチン」が定期接種の対象となっています。
風疹のワクチンは接種時期の切り替えに伴い、1979~1987 年生まれの男女は未接種となっています。また、1995~1998 年生まれの男女は 1 回接種だったため、風疹にかかりやすくなっています。
風疹ての抗体検査は公費で受けられますので、妊娠を考える際には抗体を確認しておきましょう。
毛山さんがもう一つ挙げた病気が子宮頸(けい)がん。子宮の入り口(子宮頸部)にできるがんです。
「AYA世代」と呼ばれる若年世代に多く、ココハレでは 23 歳で子宮頸がんと診断された女性の講演を紹介しています。
子宮頸がん検診、受けていますか?|20代から増え、30~40代に多い子宮頸がん。HPVワクチンの定期接種は小学6年~高校1年の女の子が対象です

子宮頸がんの原因は「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスへの感染。主に性的接触で感染し、性経験のある人の 80 %以上が一生に一度は感染します。
毛山さんが講演で繰り返し伝えているのがこちら。

HPVワクチンは小学 6 年生~高校 1 年生の女子が定期接種の対象です。種類がいくつかありますが、15 歳になるまでに 1 回目を接種した人は接種回数が全部で 2 回、15 歳になってから 1 回目を接種した人は接種回数が全部で 3 回になります。
「先日、16 歳までにワクチンを接種した女性は、接種していない女性に比べて子宮頸がんになる確率が約 80 %低くなると報道されました。10 代でワクチンを接種し、20 歳になったら子宮頸がん検診を受けください」
子宮頸がん検診は症状がなくても 2 年に 1 度は受けることが勧められています。
「卵巣腫瘍や卵巣のう腫も年齢を問わずある疾患です。子宮頸がん検査を受けるタイミングで、オプションで受けるのがおすすめです」
プレコンセプションケアについて、いかがでしたか?毛山さんのお話を聞き、「妊娠をするためのケア」ではなく、「健康に長生きするためのケア」だということがよく分かりました。
毛山さんは「中高生は夢や希望が広がる幸せな時期。自分が選んだ道を歩めるように、自分を大切にしてほしい」とも語っていました。子どもたちが幸せに歩めるように、私たち親も性の話や妊娠の話をタブー視せず、人生において必要なこととして伝えていきたいですね。
この記事の著者