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子育ては誰でもつまづき、悩むもの…「親が全てを背負わなくていい、一人にならないで」|困った時は「つながってほしい」。児童家庭支援センター「高知みその」センター長の武樋保恵さんが語りました

子育ては誰でもつまづき、悩むもの…「親が全てを背負わなくていい、一人にならないで」|困った時は「つながってほしい」。児童家庭支援センター「高知みその」センター長の武樋保恵さんが語りました

子どもの発達段階を理解して関われていますか?はまゆう教育相談所の研修会から子育てのヒントをお届けします

「子どもが生まれる=幸せ」というイメージがあります。でも想像通りにうまくはいかないのが子育て。理想と現実とのギャップに悩んだり、孤独を感じたり…。

「子育ては誰でもつまづき、悩むもの」「親が全てを背負わなくていい。一人にはならないで」

児童家庭支援センター「高知みその」センター長の武樋保恵さんは、さまざまな事情を抱える家庭を支援してきた経験からそう呼びかけています。

「はまゆう教育相談所」の第 2 回子育て応援セミナーでは、困ったり悩んだりした時は「つながってほしい」と親子にメッセージを送りました。支援者として大切にしている思いや、子どもへの向き合い方のヒントを紹介します。

「はまゆう教育相談所」では不登校や子育ての相談に乗っています

「はまゆう教育相談所」は高知市小津町の高知県立塩見記念青少年プラザにあります。小学校の元校長先生らがボランティアで運営していて、無料で相談できます。

子どもの不登校、子育てに悩んだ時は?|高知市の「はまゆう教育相談所」に相談できます

はまゆう教育相談所は高知県立塩見記念青少年プラザの3階にあります
はまゆう教育相談所は高知県立塩見記念青少年プラザの3階にあります

活動の一つに「研究」があり、毎年テーマを決めて研修会や教育座談会を企画しています。

2026 年度のテーマは「子どもの笑顔を育むために、私たち大人は?~子育てとは、大人がともに育つこと~」で全 7 回開かれます。

第 2 回は「子どもが自分らしくいられるために~みんなで子どもを育む~」と題して 6 月 20 日に開かれました。

毎年テーマを決めて、研修会を開いています
毎年テーマを決めて、研修会を開いています

児童家庭支援センターって?高知県内には6カ所…「親子にとって安心できる存在に」

今回講師を務めた武樋さんは、高知市で生まれ育ち、保育士として高知市の乳児院「高知聖園(みその)ベビーホーム」で働き始めました。

やがて「高知聖園ベビーホーム」施設長を務め、今は同じ社会福祉法人が運営する児童家庭支援センター「高知みその」センター長として、さまざまな保護者や子どもと関わりを築いてきました。私生活では 4 人の子を持つお母さんです。

乳児院の施設長だったころの武樋さんのインタビュー記事がこちら▼
【ココハレインタビュー】高知聖園ベビーホーム施設長・武樋保恵さん|「この人になら話してもいいかな」と思ってもらえる関係に

社会福祉士の資格も持ち、2025 年 4 月からは全国児童家庭支援センター協議会の副会長を務めています。

「『あなたは大事な存在だよ』と思いを込めて関わっています」
「『あなたは大事な存在だよ』と思いを込めて関わっています」

「高知みその」のような児童家庭支援センターは、全国にある子育て支援の専門機関です。育児の悩み相談に乗ったり、市町村などの関係機関と連携したりして、専門的支援が必要な家庭や子どもへのサポートを行っています。

高知県内には、児童家庭支援センターが「高知みその」を含めて現在 6 カ所あります。行政から委託を受けた民間団体が運営しています。

相談は無料で、秘密厳守です。どんな相談ができるか、ココハレで紹介しています▼
「児童家庭支援センター」を知っていますか?|「わが子を叱ってばかり」「毎日イライラする」…子育ての悩みを受け止め、支えてくれる施設です

「高知みその」の様子(2024年11月撮影)
「高知みその」の様子(2024年11月撮影)

「高知みその」には保育士や社会福祉士、臨床心理士などの専門家がいて、さまざまな角度からサポートを受けられます。

武樋さんは、支援で大事にしていることについてこう語ります。

保護者の方や子どもの“ありのまま”を大切にすること。『あなた自身が大事な存在なんだよ』と思いを込めて関わり、安心できる存在になりたいなと思っています」

「怒る自分を止められない」「子どものかんしゃくがひどい」…親の悩みを相談できます

武樋さんは研修会で、保護者から寄せられる相談について語りました。例えば次のような内容があるといいます。

  • 子どもをしかりすぎてしまった
  • 分かっているけど子どもを怒る自分を止められない
  • ついカッとして子どもに手が出てしまった
  • 子どもが言うことを聞かなくて困っている、しかっても分かってもらえない
  • 子どもの非行行動に対してどうすればいいか分からない
  • 子どものかんしゃくがひどい

イメージしていたより身近な悩みもあり、相談のハードルは低いように感じました。こうした経験がある、という人は実は少なくないのではないでしょうか?

本人から相談を受けるほか、関係機関とも連携しています
本人から相談を受けるほか、関係機関とも連携しています

「高知みその」では来所や電話、メールなどでこうした悩み相談を受けています。外出が難しい人には訪問も行います。

他に、妊娠期からのサポートや、通院や公的手続きの同行支援など、「必要なことは保護者や行政の方と相談しながら何でも行っています」といいます。

武樋さん
子どもが育つ過程には、いろんな大人や仲間が関わることが必要。助けてくれる場所・人はたくさんいます。頼ることは悪いことじゃなくて、一緒に育てていくことです。

 

支援で大切にしていることは、「何より親子を孤立させないようにすること」。

困っている部分や、自分がしんどい部分を人に見せることは、誰でも勇気の要ることだと語ります。「相談してくれると『本当に偉かったね、ありがとう』という気持ちです」

虐待相談は25年前の19倍…「特別な親子だけに起こるものではありません」

「子育てでつまづいたり、悩んだりすることは誰にでもあること」と武樋さんは語ります。

武樋さん
一緒に暮らす家族とはいえ、別々の人間。葛藤が生まれたり悩んだりすることは普通にあることです。

 

経済的な問題や、育てづらさ、ワンオペ育児、精神疾患、望まない妊娠…。

「さまざまな状況が絡み合えば誰でも追い詰められます。虐待や不適切な養育は、特別な親子だけではなく、誰の身にも起こり得ます

さらに、現代の子どもを取り巻く虐待の状況を説明しました。

2024 年の出生数は約 68 万 6 千人で過去最少を記録。一方 2024 年度の児童虐待相談は約 22 万件で、1999 年度の約 19 倍に増加しています。

 

「生まれる子どもたちがどんどん減っているのに、虐待の相談がむしろ増えています」。武樋さんは「虐待相談があって終わりではない。そこからがスタート」と語りました。

「虐待はどこか別の世界で起きているものではありません」
「虐待はどこか別の世界で起きているものではありません」

虐待の相談があった子どもたちは、その後どうなったのでしょうか?

  • 全相談のおよそ 85 % の子どもが、一時保護されずに地域で生活しています。
  • 一時保護された約 3 万件中、約 87 %の子どもが再び家庭や地域に戻って生活しています。

 

「相談があったということは、一定数は虐待や不適切な養育、家庭の問題があった可能性が高い。でもほとんどの子どもたちは、そのまま家庭で養育され、地域で生活を送っています

高知市でも、子どもの数は大幅に減少する一方、虐待相談は高止まりが続いています。また「不登校」や「発達に気がかりのある」児童生徒も増加傾向で、「コミュニケーションに課題などがあり、生きづらさを抱えている子が多い」と武樋さんは指摘します。

虐待相談のあった子どもの多くは地域で生活し続けています
虐待相談のあった子どもの多くは地域で生活し続けています

児童虐待には、さまざまな背景があります。「虐待した親がダメということではなく、家庭で何かがうまく行っていない、歯車がかみ合っていない、困った状況を抱えている様子があります」

武樋さんは、さまざまな事情で乳児院に入所した子どもたちと出会ってきました。「けがをした子も、おむつがパンパンで全身汚物だらけで来た子もいた」そうです。

親子を地域で支援する場所があれば、ここまで追い詰められずに済んだのでは。子どもを家に帰した後もサポートしなければ、親子の歯車がうまくいかないのでは―。そんな思いから「高知みその」は立ち上げられ、支援を続けています。

子どもに対して…「受け入れる」ことが難しければ「受け止める」でいい

今回の研修会には、ママパパ以外に、福祉や教育現場などで保護者や子どもと関わる人も多く参加しました。皆さん、それぞれに深く悩んだり葛藤したりしながら、親子に熱心に向き合っている姿が伝わってきました。

ある支援者は、武樋さんにこんな悩みを相談しました。

支援者
Q
自分も人間なので相手に振り回されたり、腹が立ったりしてしまうこともあります。支援者としてどう折り合いを付けていますか?
武樋さん
A
受け入れるのは難しいですよね。受け入れなくていい。「受け止める」でいいんです。全部分かろうとしても無理なんです。

 

「受け入れられない自分を責めるんじゃなくて、まずは受け止めることがいいと思います」と武樋さんは話します。

「自分にできることは限られているので、何とかしようとしすぎないこと。自分を助けてくれる人を探すことも大事だと思っています」

「受け入れる」ことができなくても「受け止める」
「受け入れる」ことができなくても「受け止める」

別の支援者は、こんな胸の内を明かしました。

支援者
Q
相手が困っているであろうことに手を差し伸べたい。でもこちらから言い出すのはおかしいと思い、まずは関係性をつくろうと頑張っています。人間関係をもう一段階深めるヒントをいただきたいです。
武樋さん
A
その人が安心できる状況がそろって、言える時が来たら相談してくれると思います。今はそばにいてあげるだけでいいと思います。

 

武樋さんには、あるお母さんに悩みながら関わった経験がありあす。その時、そのお母さんに「ずっと私のことを考えてくれているだけで、もう半分救われています」と言われました。

「相談するかしないかは相手に委ねられています。相手の準備が整ったら相手がきっと発信してくれる。今はそばにいてあげることが、一番その人にとってありがたい状況ではないでしょうか」

子育てでも、親が解決を焦ってしまう時があるかもしれません。「でも『今が全てじゃない』という言葉も胸にとどめておくといいかなと思います」

そばにいてあげるだけでいい時があります
そばにいてあげるだけでいい時があります

研修会では参加したお母さんからも質問が上がりました。

お母さん
Q
子どものことで悩むことがあります。親は子どもに対してどんな関係性でいればいいでしょうか?
武樋さん
A
相手の気持ちは分からなくて当たり前。「分かろうとしているんだよ」と感じてもらうことが大事だと思います。

 

「赤ちゃんのころから、お子さんが泣けば、親御さんは『ああかな?こうかな?』と想像すると思います。でも、お子さんとは別の人間なので、気持ちは分からなくていいんです」と武樋さん。

だからこそ、「気持ちを想像したりいろんな手だてをする過程で、子どもは親が大事にしてくれていることを感じるのではないでしょうか」と語りかけました。

「親だから子どもの全てが分かる」と思わなくていい…自分を助ける人を見つけて

今の子どもたちは、どんな思いで生活しているのでしょうか?武樋さんはあるアンケート結果を紹介しました。高知市の小中高生それぞれ約千人に 2025 年に聞いたものです。

  • 「あなたは家族や一緒に暮らしている人など、周りから大切にされていると感じますか?」…「あまり感じない」「感じない」「分からない」が 1 割以上
  • 「自分は孤独と思うことがある」…「ときどきある」「いつもある」が 2 割以上

 

「自分が大事にされていると感じられない、孤独を感じている子どもが一定数いることは、大切に受け止めないといけないと思います」と武樋さん。

一方で、「周りの大人に大事にされている」と感じている子どもは、自己肯定感が高く「自分のことが好きだ」と答えた子どもが多いとのこと。

「保護者に大事にされることが一番。でも保護者とうまくいかなくても、周りの大人といい関係が築けて自分を大事に思ってくれていれば、孤独ではなくなるのではないでしょうか」。そう問いかけました。

周りの大人といい関係が築ければ、子どもは孤独ではなくなるのでは?
周りの大人といい関係が築ければ、子どもは孤独ではなくなるのでは?

周りのサポートが大切なのは、お母さん、お父さんも同じ。「子どもの全てを背負わなくていい、一人にならないでほしい」と武樋さんは呼びかけます。

「『子どものことは全部分かる』と思わなくていい。保護者自身がちゃんと癒やされることが大事。『頑張りすぎないこと』を頑張ってほしいです」。自分を助けてくれる人を見つける大切さを、あらためて伝えました。

「親が自分のパワーをためて、子どもに関わることが大切だと思います」
「親が自分のパワーをためて、子どもに関わることが大切だと思います」

「つながっていますように」―。武樋さんはそんな思いで支援に取り組んでいるといいます。

「関係機関につないでも、どうしても人と関わることを拒む方も一定数います。けれど私たちは諦めていなくて、『いつかまた思い出して声をかけてくれないか』という思いで待っています」。そうメッセージを送りました。

「つながれますように」という思いで活動しています
「つながれますように」という思いで活動しています

ココハレ編集部員も子育てをしていて、子どもと 1 対 1 のワンオペ育児中に「つい怒りすぎてしまった」と落ち込んだことがあります。

「親が全部背負わなくていい」「『受け入れる』ではなく『受け止める』でいい」という武樋さんの温かい言葉はとても印象的で、心強く感じました。これから心にとどめておこうと思います。

困ったら親だけで頑張り続けるのではなく、誰かを頼っていいし、いろいろな大人に大切にされることが子どものためにもなるんですね。

 

「高知みその」は子育てに困った時や悩んだ時に相談に乗ってくれる施設です。妊婦さんも利用できます。

児童家庭支援センター高知みその

2026年度の研修会日程はこちら

2026 年度のテーマは「子どもの笑顔を育むために、私たち大人は?~子育てとは、大人がともに育つこと~」。2027 年 2 月 20 日(土)まで 7 回開かれます。

研修会の様子をココハレでレポートしていきます。

  • 6 月 20 日(土)…「高知の子育て事情から学ぶ 自立することは依存すること」(講師:児童家庭支援センター「高知みその」センター長・武樋保恵さん)
  • 7 月 4 日(土)…ココトーク「どうして?子どもの気持ちが分からなくなったら 」(講師:瀬戸内ナーシング学院学校長・岡田倫代さん)。ココハレの子育てセミナー「ココトーク第 4 弾として開催します。
  • 9 月 12 日(土)…「子育ての楽しみ方あれこれ ワイワイガヤガヤ子育て井戸端会議」(ココハレサポーターズの皆さんが登壇します!)
  • 11 月 14 日(土)…創立 65 周年記念 教育相談研究発表会(講師:土佐希望の家医療福祉センター長・吉川清志さん)
  • 1 月 16 日(土)…「大人のための絵本の世界」(講師:はまゆう教育相談所部員)
  • 2 月 20 日(土)…「 1 年間のふり返り 私の成長」(体験発表 2 名)

この記事の著者

徳澄裕子

徳澄裕子

小学4年生の男の子の母です。「一緒に遊ぼう」と言ってくれるうちは、体力を振り絞って頑張りたいと思います。1986年生まれ。

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