ずっと、ぎゅっと!第2部・高知のエコチル調査より③|「おやつ」「食物アレルギー」「好き嫌い」「花粉症」
高知のエコチル調査の基礎データから見えてくる子どもたちの姿と、子育てのアドバイスを紹介します
環境省の「エコチル調査」(子どもの健康と環境に関する全国調査)が今年で 10 年目を迎えました。
化学物質が子どもの成長に及ぼす影響などを調べる調査で、生まれた子どもが 13 歳になるまで追跡調査が行われます。全国から 10 万組、高知県からは約 7000 組の親子が参加し、半年ごとに質問に答えています。
連載「ずっと、ぎゅっと!」では、高知の子どもたちの生活に関する基礎データを紹介しています。今回は 2017 年の掲載に続く第 2 部。エコチル調査高知ユニットセンター(高知大学医学部内)からのアドバイスを交えてお届けします。(高知新聞 2020 年 10 月 5 、6 、10 、19 日掲載)
※高知県内の調査から 2020 年 3 月時点の暫定値を紹介します。データは四捨五入しており、加算値が 100 %にならない場合があります。
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【おやつ】栄養を取る大切な機会
甘いお菓子やスナック菓子を食べる頻度を聞きました。4 歳 6 カ月のお子さんでは、どちらも「週 2 ~ 3 回食べている」という回答が最も多く、次いで「週 1 回」「週 1 回未満」という結果でした。
厚生労働省の乳幼児栄養調査では、子どもへの間食の与え方として「時間を決めてあげる」「甘いものは少なくしている」という回答が多く、保護者が気を付けていることがうかがえます。
おやつは食事とは違う「食べる楽しさ」を味わうひとときであり、消化吸収が未熟な子どもにとっては食事と同じように栄養を取る大切な機会です。果物、乳製品、穀類、芋類などを中心に補食として適切なものを提供したいですが、お子さんがお菓子を欲しがるときは次の食事に影響しない量をあげましょう。
幼児期のお子さんの 1 日のおやつは、1 日に必要なエネルギー摂取量( 3 ~ 5 歳児では 1250 ~ 1300 キロカロリー)の 10 ~ 20 %を目安にしましょう。50 キロカロリーのおやつの目安はバナナ半分、一口おにぎり 1 個、ロールパン半分などです。塩味、甘味、香辛料の強いお菓子は避け、栄養成分表示を見て量を決めてあげるとよいでしょう。
回数の目安は 1 日 1 ~ 2 回。次の食事まで 2 ~ 3 時間空くように時間を決めておくといいでしょう。
飲み物は、水やお茶、牛乳がおすすめです。ジュースや乳酸菌飲料などは糖分が多く、エネルギーの取り過ぎや虫歯の原因になります。親子でコミュニケーションをとりながら楽しいおやつの時間を持てるといいですね。
【食物アレルギー】食品の除去は必要最小限に
食物アレルギーについて、お子さんが一部の食品を食べないようにしているかを聞きました。3 歳児では鶏卵、牛乳、小麦を「普通に食べている」が最も多く 9 割以上、5 歳になるとその割合はさらに多くなっていました。
食物アレルギーは乳児期に発症し、年齢とともに緩解していく(症状が改善していく)ケースがほとんどです。子どもの食物アレルギーの有症率は、乳児が約 10 %、3 歳児が約 5 %、学童期以降で 1.3 ~ 4.5 %とされています。
食物アレルギーとは、特定の食物を食べた後に体にさまざまな症状を起こすものです。皮膚に湿疹やかゆみが出たり、呼吸が苦しくなったり、嘔吐(おうと)や下痢をしたりします。そのほとんどは食物に含まれるタンパク質が原因で生じます。症状は、食べ物を食べたときだけでなく、触ったり、吸い込んだりして現れることもあります。
食物アレルギーの原因として、日本では「 3 大原因食品」と言われる鶏卵、牛乳、小麦が圧倒的に多く、全体の3分の2を占めています。
食物アレルギーかもしれないと思う症状が現れたときは、直前の食事や症状をメモで記録に残し、かかりつけの医療機関を受診しましょう。食事療法の基本は、正しい診断に基づいた必要最小限の食品の除去です。成長期である乳幼児期に過度に食事制限をすることは、子どもの体や心の発達に悪影響を及ぼすおそれがあります。
食品を除去することの目的は、食べられるようになること。安全においしく食事ができるよう、家族や周囲の人みんなに協力してもらいましょう。
【好き嫌い】食事を楽しみながら、見守りましょう
4 歳 6 カ月のお子さんの野菜摂取について聞きました。「好んで食べる」「食べる方」という回答は計 48.2 %、「食べない」「食べない方」は計 24.2 %でした。
厚生労働省の行う乳幼児栄養調査では、子どもの野菜摂取について「毎日 2 回以上は食べている」という回答が最も多く、子どもの食事で最も気を付けていることとして「食事バランス」が挙げられましたが、大人と同じく、子どもも野菜摂取が不足している状況です。
子どもの好き嫌いには、「本能的に受け付けない」「アレルギーがある」「初めて食べるものには警戒心があり、『嫌い』と思い込む」「以前食べた時に嫌な経験をした」「食感やにおいが好きでない」「親が偏食」など、いくつか原因があります。
人間は苦味や酸味を有毒な味として本能的に拒否します。子どもが嫌いな緑の野菜には苦味成分が含まれており、本能的に危険を感じているのかもしれません。
大人に食欲の波があるように、子どもにも食べない時はあります。無理強いはせず、おなかがすいた次の食事で補えば大丈夫です。一口大の大きさにしたり、彩りや盛り付けを工夫したりして、食べることができた時にはしっかり褒めてあげましょう。
嫌いな食材は、好奇心が芽生えたり、大人や友達が食べるのを見たりしたことをきっかけに食べられるようになります。楽しい食事の時間は食べる意欲につながります。家族でいろんな食材を食べ、食事を楽しみながら、気長に見守ることができるといいですね。
【花粉症】年齢が上がるとともに増えています
3 歳児、4 歳児、5 歳児の調査で、これまでに花粉症になったことがあるかどうかを聞きました。3 歳児で 4.0 %、4 歳児で 7.7 %、5 歳児で 13.9 %と、年齢が上がるとともに花粉症のお子さんは増えています。
2019 年の全国調査によると、花粉症の全世代の有病率は 42.5 %。20 年前に比べて 2 倍以上に増加し、最も多いスギの花粉症は 10 ~ 59 歳のどの年代でも半数近くとなっています。
増加の一番の要因は、日本の国土の 12 分の 1 を占める植林のスギが成木になり、原因となる花粉が大量に飛散するようになったためと考えられています。有病率には地域差があることも分かっています。
花粉症は自然に治ることはほとんどありません。小さい子どもの花粉症は薬の使用が限られるため、症状を軽減する治療と花粉をなるべく避けることが基本です。花粉を完全に除去することは難しいですが、花粉の時期には飛散情報に注意し、症状が出る前から気を付けることで症状の軽減が期待できます。花粉飛散が多い日の外出はなるべく避けて、家の中に花粉を入れないように気を付け、帰宅後は洗顔とうがいをしましょう。
マスクには、吸い込む花粉をおよそ 3 分の 1 から 6 分の 1 に減らし、鼻の症状を軽くする効果があります。メガネは普通のメガネでも眼に入る花粉が 40 %減少し、花粉症用のメガネなら 65 %減少します。花粉症の症状がある場合は、医療機関で早めに相談しましょう。予防のポイントを知っておくと安心ですね。
高知県内のエコチル調査は高知大学医学部内にあるエコチル調査高知ユニットセンターが行っています。
「こうちエコチル調査」のウェブサイトはこちら