子育て
アイコン:子育て

無料で食事付きの「ステップアップ塾高知はりまや教室」。大学生、高校生のボランティアが小中学生の学習を支援しています

無料で食事付きの「ステップアップ塾高知はりまや教室」。大学生、高校生のボランティアが小中学生の学習を支援しています
高知ユネスコ協会理事長の和田栄治さん(右)。子どもたちの教育格差をなくそうと、「ステップアップ塾」などを運営しています(写真はいずれも高知市はりまや町3丁目の土佐塾予備校)

「ステップアップ塾高知はりまや教室」は高知市はりまや町 3 丁目で土曜日の夕方だけ開かれる学習塾。家庭の事情で塾に通えなかったり、家や学校に居場所がなかったりする小中学生を支援しようと、高知ユネスコ協会が開設しています。

大学生や高校生のボランティア講師が勉強を教えていて、温かい食事も振る舞われます。

高知ユネスコ協会は平日の自習室カフェ「STUDY CAMP(スタディ・キャンプ)」なども運営しています。理事長の和田栄治さんは「いい人しかいない場所を子どもたちに経験させてあげたい」「教育格差をなくしたい」と語り、支援を募るためクラウドファンディングにも挑戦しています。

子どもたちに「いい人しかいない居場所」を 高知市の「ステップアップ塾」 無料、食事付きで学習支援 ―EINEE高知

(高知新聞PLUS 2025 年 1 月 24 日掲載)

高知市に土曜日の夕方だけ開かれる塾があります。「ステップアップ塾高知はりまや教室」(高知市はりまや町3丁目)。小中学生の学習を、学生や高校生のボランティア講師が支援。食事も付いています。子どもたちに「いい人しかいない居場所をつくりたい」と取り組む高知ユネスコ協会理事長の和田栄治さんに聞きました。

「宿題やってない」「分数が苦手」マンツーマンで支え

3 学期が始まり、最初の土曜日。教室に次々とやってくる小中学生を、ボランティア講師が明るく迎えました。午後 4 時、みんなそろったところで、塾がスタート。「宿題、やって来た人?」という呼びかけに、「やったよ」「やってない」と次々に声が上がりました。

「ステップアップ塾」は全員そろってのあいさつからスタート
「ステップアップ塾」は全員そろってのあいさつからスタート

あいさつが終わると、それぞれの課題に取りかかります。支援はマンツーマン。「プリント、32までやったよ!」「すごいじゃん!」という会話が聞こえてきたかと思えば、「分数、苦手」というつぶやきも。あちこちで、小中学生と学生らが顔を寄せ合っていました。

ステップアップ塾は、家庭の事情で塾に通えなかったり、家や学校に居場所がなかったりする子どもたちを支援しようと、東京のNPO法人「維新隊ユネスコクラブ」が運営しています。全国に 5 カ所あり、高知はりまや教室は 2023 年 9 月、土佐塾予備校の教室を借りて始まりました。

学習支援はマンツーマンで行われます
学習支援はマンツーマンで行われます

高知はりまや教室を開設するために発足したのが高知ユネスコ協会。理事長の和田さんは土佐塾中高の教員で、教室のある日は午後から在室しています。入塾を希望する親子と面談したり、ボランティアが持ち込んでくれる食材を受け取ったり。「迎えに来てくれたら、行く」と連絡をくれた子どもを迎えにも行きました。

「お忙しいですね」と記者が声をかけると、「全く!」と即答。

「僕が楽しいので。僕の笑顔のためにやってます」

経済困窮、不登校、生きづらさ…

高知はりまや教室の定員は 20 人。現在は小学 4 年~中学 3 年の 18 人が通っています。「多くはシングル世帯です」と和田さん。子どもたちの様子からは伺えませんが、親と暮らせない子どもや、経済的に困窮する子どもがいます。不登校の子どもや、発達のでこぼこなど生きづらさを抱える子どももいます。

学習を支援するボランティア講師は、学生や高校生ら約 60 人。プライバシーに配慮するため、子どもたちの家庭事情などはボランティア講師には知らされず、学習面での注意点のみ共有されています。子どもたちをどう教えていくかは学生らに任されています。

そんな方針の下で生まれるのは、「お兄さん、お姉さんに勉強を教えてもらう」という、シンプルな人間関係。勉強の合間にはおしゃべりも弾みます。

集中力が切れちゃった?おしゃべりで気分転換も
集中力が切れちゃった?おしゃべりで気分転換も

ちなみに、和田さんは塾に通う子どもたちやボランティアで関わる人々に、一つだけ条件を設けています。それは「いい人であること」。「今はいい人でなくても、いい人になろうと努力している人ならOK。悪い人は速やかに退場させます」と笑います。

その真意は「いい人しかいない場所を子どもたちに経験させてあげたい」という思い。

「職場でも学校でも、楽しかったら笑顔になりますよね。ここに来たら面白い先生がいる、楽しい仲間がいる、おいしいご飯が食べられる。そんな安心できる居場所をつくりたいんです」

教育格差をなくしていきたい

学習が終わった午後 6 時、子どもたちが笑顔で食事スペースに移動してきました。テーブルにはボランティアが作った出来たての夕食が並び、思い思いに着席します。湯気が立ち、いい香りが漂っています。

食事はボランティアの手作り。学習スペースにいい香りが漂ってきます
食事はボランティアの手作り。学習スペースにいい香りが漂ってきます

全員での「いただきます」の前に、和田さんが調理したボランティアを紹介しました。企業などから提供を受けた食材も、一つ一つ掲げて披露。教室の運営にたくさんの大人たちが関わっていることも、子どもたちの支えになっています。

高知ユネスコ協会では土曜日のステップアップ塾に加えて、月~金曜日には自習室カフェ「STUDY CAMP(スタディ・キャンプ)」を運営。平和学習や大学訪問を行う県外研修や、一般向けの教育シンポジウムも含め、全て無料で開催しています。

これらの活動予算は年間で計約 250 万円。これまでも寄付を募ってきましたが、より多くの人に活動を支えてもらおうと、クラウドファンディングに挑戦しています。

食材を提供した企業も紹介。たくさんの大人たちが支援していることを子どもたちに伝えています
食材を提供した企業も紹介。たくさんの大人たちが支援していることを子どもたちに伝えています

「学習意欲があるのに、学力が高いのに、お金や環境のせいで夢を諦める、笑顔を失っていく子どもたちが高知にもいます。だから、教育格差をなくしていきたいと真剣に考えて、日々行動しています」と、和田さんは語ります。

「子どもたちは高知の宝。自分の将来に不安を抱えながらも頑張っている子どもたちを、助けてあげてください」(門田朋三)

 

高知ユネスコ協会は活動資金をクラウドファンディングで募っています。目標金額は 250 万円で、3 月 24 日まで。

 

「EINEE高知」は高知県内の地域振興の取り組みを支援するクラウドファンディングです。四国銀行、READYFOR、高知新聞社の 3 社が運営しています。

この記事の著者

ココハレ編集部

ココハレ編集部

部員は高知新聞の社員 6 人。合言葉は「仕事は楽しく、おもしろく」。親子の笑顔に出合うことを楽しみに、高知県内を取材しています。

関連するキーワード

LINE公式アカウントで
最新情報をチェック!

  • 週に2回程度、ココハレ編集部のおすすめ情報をLINEでお知らせします。

上に戻る