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人は笑うために生きている|病気、障害、発達支援、不登校…子どもたちに寄り添う小児科医・小沢浩さんが「いのちの授業」を行いました

人は笑うために生きている|病気、障害、発達支援、不登校…子どもたちに寄り添う小児科医・小沢浩さんが「いのちの授業」を行いました

命の大切さ、子どもたちにどう伝える?島田療育センターはちおうじ所長・小沢浩さんの講演から紹介します

「命」について、お子さんと話したことはありますか?命の大切さは親から子へ伝えたいメッセージですが、抽象的で難しい…とも感じます。

命の大切さを子どもたちに語り続ける小児科医・小沢浩さんが高知市内で講演しました。東京・八王子市の島田療育センターはちおうじで、重い障害のある子どもたちや、発達障害や不登校の子どもたちに関わっています。

「人は笑うために生きている」と呼び掛けた小沢さん。「いのちの授業」には、私たち親への励ましやヒントがたくさんありました。

 

小沢さんの講演会は 2023 年 7 月 1 日、高知県立ふくし交流プラザ(高知市朝倉戊)で開かれた「キッズ☆バリアフリーフェスティバル 2023」のセミナーとして開かれました。

小沢さんは静岡県出身で、高知医科大学医学部(現在の高知大学医学部)を卒業。島田療育センターはちおうじ(東京都八王子市)の所長を務めています。

小児科医の小沢浩さん
小児科医の小沢浩さん

講演では「小児科医として、重症心身障害児の摂食嚥下(えんげ)から、不登校、発達支援まで担当している」と紹介されました。

著書に「奇跡がくれた宝物 『いのちの授業』」(クリエイツかもがわ刊)があります。小沢さんが学校で行った「いのちの授業」が記録されています。

今回の講演は、授業を体験する形で行われました。

小沢さんの著書「奇跡がくれた宝物 『いのちの授業』」
小沢さんの著書「奇跡がくれた宝物 『いのちの授業』」

命って何?自分が生まれた時のことを、家族にインタビュー

小沢さんが初めて「いのちの授業」を行ったのは、母校の天城中学校でした。

不登校の子どもや、自ら命を断つ子どもの存在。小沢さんは「命とは」を考えてもらうため、次のような授業を考えました。

  1. 自分が生まれた時のことを家族 1 人にインタビューする
  2. インタビューの内容を作文にまとめる
  3. 「いのちの授業」で作文を紹介する
  4. 障害児の紹介や体験から、障害について考える
  5. 授業後、自宅で家族に作文を読み、返す
  6. 授業の感想を書く
母校からの講演依頼がきっかけで、「いのちの授業」は生まれました
母校からの講演依頼がきっかけで、「いのちの授業」は生まれました

講演では、子どもたちの作文が紹介されました。

僕がお母さんのおなかから出てきた時、お母さんは泣いたらしい。

僕は、こぶりだったらしい。

僕の重さは、1770 グラムだったらしい。

僕が泣いた時、お母さんは、やっと生まれたんだなとか、くろうしたかいがあったななどと思ったらしい。とにかくかわいかったらしい。( 1 年男子、抜粋)

 

お母さんはぼくについてのことをたくさん話してくれました。長男できょうだいの中で一番最初に生まれたから、よっぽどうれしかったといっていました。

ひごろぼくは、そんなお母さんの経験を何にも知らず「ババア」とか「早くしろよ」とかたくさんの悪口を毎日いっているから、たまにはお母さんに対しての言葉づかいやたいどなどをしっかりして、少しでも産んでくれたお母さんのためにも何かやってあげたいなと思いました( 2 年男子、抜粋)

 

私が生まれてすぐ、父はへその緒を切る時に「これ切ったら痛くない?大丈夫?」ととても心配しながら切ったそうです。

わたしが顔を真っ赤にして生まれてきた時も、父は「なんで赤いの?大丈夫?これって血なの?タオルもってこようか?」とずっとオドオドしてたみたいです。

とてもういういしいなあと思いました( 3 年女子、抜粋)

 

小沢さんは続いて、動画を見せました。2 歳くらいに見える男の子がおむつ姿で寝そべっています。障害があるようで、起き上がれません。

理学療法や言語聴覚療法を行い、1 年後の動画では、トランポリンで遊んでいました。

この男の子は、大学病院で「目が見えていない」と診断され、小沢さんのもとを訪れました。男の子の様子を見た小沢さんが「よく見えてるねー」と声を掛けると、お母さんは「そうでしょ?先生、見えてますよね!」と答えました。

「医療はともすれば、検査結果や画像を見て、その人自身を見ないことがあります。この子の場合も、医師は所見だけ見て、この子自身を見ていなかった。お母さんは『医療で初めてポジティブなことを言われた』と話していました」

障害とは?「多数派」と「少数派」の違い

障害のある人の気持ちを想像するため、「いのちの授業」では体験を取り入れています。小沢さんは会場でこう呼び掛けました。

「皆さん、天井を見てください。天井を見たまま、顔を左右に動かしてください」

会場の天井。顔を左右に動かしても、天井が続きます
会場の天井。顔を左右に動かしても、天井が続きます

「寝たきりの人は、ずっとこの世界です。味気ないし、つまらないですよね。だから、ベッドを起こしたり、車いすで散歩したりすることが大事なんです」

続いて、参加者は立ち上がり、両腕を後ろ手にして上げました。「そのまま動かないで」と小沢さん。腕がプルプルします。

「腕を後ろに上げ続けたらしんどいですよね。下ろしたいですよね。ADHDの人はずっとこの状態。動きたいのに動けない。姿勢をしっかりさせて集中するという二つのことを同時にするのが大変な子どもがいます」

障害のある人の気持ちを想像する体験を授業に取り入れています
障害のある人の気持ちを想像する体験を授業に取り入れています

「障害」を「障害」としているのは多数派と少数派の論理だと、小沢さんは説明しました。

「夜、私たちは明かりがないと生活できない。一方で、目の見えない人は真っ暗でも生活できます。立場が逆転し、私たちが少数派となった時、『暗くて見えないから街灯をつけて』が受け入れられるでしょうか

 

「産んだ責任」とは?障害は母親の責任なのでしょうか

講演では、障害のある子どもを育てる親の気持ちも紹介されました。事例の中に、ある新聞記事がありました。

障害もつ娘殺害容疑で母親逮捕

無職のC容疑者を殺人の疑いで逮捕した。調べによると、自宅和室で長女の首を絞めるなどして殺害した疑い。娘さんには知的障害があり、市内の施設に入所していたが、一時帰宅していた。

C容疑者は「私には産んだ責任があるから殺した」などと供述している。(「奇跡がくれた宝物 『いのちの授業』」より抜粋)

 

小沢さんが関わるお母さんたちは、障害のあるわが子を「本当にかわいい」と語ります。しかし、どのお母さんも「産んだ責任」を必ず考えるのだそうです。

逮捕された母親は 50 代、長女は 30 代でした。「このお母さんが 30 年間、産んだ責任を考え続けないといけなかったのは、社会の責任でもあるのかな。『この子は宝』と言ってもらえるような関わりを、地域で考えていかないといけません」

発達障害とは?一つの型に当てはまらない子どもに居場所を

小沢さんは発達障害の子どもにも関わっています。ある日、自閉スペクトラム症の子どもを育てるお母さんが泣きながら話してくれました。お兄ちゃんが自閉症で、その下に弟がいます。

「仲良くしていた弟のママ友が、お兄ちゃんを見て、急によそよそしくなったんです」

小沢さんはこのお母さんに、「自閉症のお子さんを見て、去っていく人もいれば、なぐさめてくれる人もいますよね。この子は人の心を映す鏡なんですよ」と声を掛けました。

傷ついたお母さんの心に寄り添いながら、小沢さんは一方で、離れていったというママ友の心も気遣いました。

「よそよそしくなったというママ友のお母さんは、どう声を掛けていいのか分からなかったのではないでしょうか」

障害って何?たくさんの事例から考えていきました
障害って何?たくさんの事例から考えていきました

「いのちの授業」では、生徒から「障害者って恐い人だと思っていた」という感想が寄せられます。

「知らないことは『恐れ』につながります。『障害』という個性に子どものうちから触れていくのが大事なんです」

発達障害の話では、現在放送中の朝ドラ「らんまん」にも触れました。「診断は抜きにして、主人公の槙野万太郎は発想も行動力も、いい意味で変。でも、こういう人が社会をつくっていくんですよね」

万太郎は小学校になじめず、中退します。

「今の学校教育を否定するものではありませんが、学校に合わない子はいます。一つの型に当てはめると、合わない子は出てきます。そういう子の居場所を考えていかないといけないし、万太郎のように輝く個性にしてあげたい、そういう社会をつくりたいと思います

人間は平等?「幸せのかたち」をつくるお手伝いをしています

たくさんの親子のエピソードを紹介した小沢さんは、次にこう問い掛けました。

「『幸せのかたち』って何でしょうか」「人間は平等でしょうか」

「人間は平等でしょうか」
「人間は平等でしょうか」

それぞれの能力や環境を考えると、「人間は平等ではない」と小沢さんは語ります。

「僕はどう頑張っても大谷翔平さんのようなメジャーリーガーにはなれません。でも、毎日を笑って過ごすことはできます。目が見えなくても、耳が聞こえなくても、寝たきりでも、『幸せのかたち』はつくれる。そのお手伝いをするのが自分の仕事です」

「『幸せのかたち』をつくるお手伝いをしています」
「『幸せのかたち』をつくるお手伝いをしています」

講演では、小沢さんのマジックが披露されました。ネタは 50 種類以上あり、外来に取り入れているそうです。

「不登校や暴力に悩む親子と接していると、笑いがないんですね。外来では、子どもにマジックを教えて、お母さんに見せています。すると、笑いが生まれます。笑いを重ねていくと、家族が変わっていくんですよ

外来のマジックを披露。作った結び目が…
外来のマジックを披露。作った結び目が…
飛んだ!
飛んだ!

「専門家はともすれば、指導ばかりしている」と小沢さんは語ります。

「よかれと思ってしたアドバイスも、お母さんは『私がそういう関わりをしなかったから、わが子がこうなった』と受け止め、自分を責めます。子どもを見ていたら、お母さんが頑張って子育てしてることは分かります。『この子、お母さんが大好きだよね』『お母さん、いい子育てしてるよね』と声を掛けてほしい」

小沢さんは子ども自身を見て、保護者の頑張りを認め、「今の環境でこの子が最大限伸びる方法を考えていこう、社会とつながるように考えていこう」と声を掛け、診療を続けています。

「ヒンズー教の笑いの神様の銅像が、僕そっくりだったんです」(講演のスライドより)
「ヒンズー教の笑いの神様の銅像が、僕そっくりだったんです」(講演のスライドより)

「『愛とは笑いだ』と最近思います。人は笑うために生きています。周りと比べず、笑って楽しく過ごすことが一番の幸せだし、そういう意味で人間は平等です。外来という舞台で、僕はエンターティナーを目指していきます」

 

親はわが子に「幸せになってほしい」と考えます。「幸せは周囲と比べるものではない」「人は笑うために生きている」という小沢さんの言葉が印象に残りました。

わが子が生まれた時の話をするのは照れくさいですが、子どもに命の大切さを考えてもらうきっかけになります。「生まれてくれてありがとう」と折々で伝えていきたいですね。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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