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「吃音外来」ってどんな所?どんな治療をするの?|小児から成人まで対応している細木病院小児外来リハビリで言語聴覚士さんに聞きました

「吃音外来」ってどんな所?どんな治療をするの?|小児から成人まで対応している細木病院小児外来リハビリで言語聴覚士さんに聞きました

「吃音(きつおん)」は話す時のタイミングが合わない障害です。「話す時に言葉の始めの音を繰り返す」「音を引き伸ばす」「言葉に詰まる」が主な症状で、発達障害の一つとして発達障害者支援法に含まれています。

吃音を診てもらえるのが「吃音外来」です。高知県内を調べてみると、細木病院(高知市大膳町)がその機能を備え、小児から成人まで対応していました。

吃音の 3 歳児健診での罹患(りかん)率は 8 %ほどと決して少なくありませんが、7~8 割が自然に治るため、「様子を見ましょう」と判断される場合が多いそうです。

いつ受診したらいいのか、どんな治療方法があるのか、細木病院で小児外来リハビリを担当する言語聴覚士・川村立さんに聞きました。

吃音は3種類。幼児期には「10人に1人」と言われています

吃音は話し言葉がスムーズに出ない発話障害の一つで、「どもり」とも言われてきました。話し方には次の 3 種類があります。

【吃音の種類】

  • 連発:同じ音を繰り返す(例「な、な、なつやすみ」)
  • 伸発:最初の音を伸ばす(例「なーーつやすみ」)
  • 難発:言葉が出てこない(例「……なつやすみ」)

 

吃音は幼児期にはよく見られ、その割合は軽いものを含めると「10人に1人ほど」と言われています。自然に治る場合が多く、吃音のある大人の割合は「100 人に 1 人」と言われています。

ココハレ編集部は今回、細木病院の小児外来リハビリを訪ねました。

「吃音外来」の役割とは?細木病院を訪ねました
「吃音外来」の役割とは?細木病院を訪ねました

【吃音外来にかかるには】小児は小児科、成人は耳鼻咽喉科で診察を受けてから

出迎えてくれたのは言語療法士の川村立さん。吃音をはじめ、自閉スペクトラム症、学習障害、言語発達遅滞、構音障害など、さまざまな発達特性のある人へのリハビリに取り組んでいます。

小児科の外来でも、吃音の評価や訓練などを担当しています。小児から成人まで対応する言語聴覚士は、高知県内では珍しいそうです。

言語聴覚士の川村立さん。小学4年生、3年生、年長児の男の子のパパです
言語聴覚士の川村立さん。小学4年生、3年生、年長児の男の子のパパです

吃音外来でリハビリを受けるには、まず外来で医師の診察が必要です。

  • 小児…小児科で発達専門の医師の診察を受けます。高校生( 18 歳まで)にも対応しています。
  • 成人…耳鼻咽喉科で診察を受けます。

医師が「吃音」と診断し、リハビリが必要と判断した患者がリハビリの外来に通っています。

吃音の判定は検査で行われます
吃音の判定は検査で行われます

【幼児期のリハビリ】「リッカムプログラム」を取り入れています

川村さんによると、吃音がよく見られるのは「 2~4 歳」ですが、吃音外来を受診するのは「 6 歳以降、小学生になってからが多い」そうです。

3 歳児健診で指摘されることが多く、その際によく言われるのが「様子を見ましょう」。でも、親からすると、「いつまで様子を見ればいいのか」が分かりづらいという悩みも。

「自然治癒すればいいのですが、困ってる期間が延ばされるだけというご家庭も実際にあります」

吃音外来の室内。リハビリなどが行われます
吃音外来の室内。リハビリなどが行われます

吃音のリハビリには、幼児向けの訓練があります。「リッカムプログラム」と呼ばれ、細木病院でも取り入れられています。

リッカムプログラムは行動療法の一つで、家庭で取り組みます。講習を受けた言語聴覚士の説明を聞いた上で、1 日 15 分、親子で話したり、ゲームを通して会話したりします。この時、吃音が出なかったら、保護者が子どもを褒めます。明らかな吃音に対しては、子ども本人に知らせたり、自分で直す「自己修正」を促したりしていきます。

家庭で独自で行うものではなく、「専門的な資格を持った言語聴覚士による訓練や、指導、監督が必要不可欠」と定められています。川村さんも資格を持っており、外来では主に保護者に関わり、吃音の評価やアドバイスを行っています。

6 歳未満の幼児が受けることが前提とされていますが、「状況によってはそれ以上の年齢のお子さんに適用することもある」とのこと。川村さんは「お子さんの吃音が気になる場合は早めに、幼児期から受診してほしい」と呼びかけています。

【6歳以降】「環境調整」がメインに。学校とも連携し、「不安になる状況」を減らしていきます

6 歳以降の子どもでも、発話をコントロールし、吃音が出ないような話し方を練習するリハビリがあります。ですが、すぐに良くなるものではないそうで、「年単位で長くかかります」。

吃音外来でのメインとなるのは「環境調整」です。家庭だけでなく、学校とも連携し、子どもの生活にゆとりを持たせ、不安になる状況を減らしていきます。

「親御さんに 1 週間のスケジュールを聞くと、習い事をたくさん入れている場合が結構あります。『お子さんがゆっくりできる時間をつくりましょう』と考えていきます」

面接のイメージ。患者や家族にじっくり向き合います
面接のイメージ。患者や家族にじっくり向き合います

小学校に入ると、国語の時間の音読や日直の号令など、人前で話す機会が増えます。これらも「不安になる状況」の一つですが、「吃音のある子にさせなかったらいいというものではない」と川村さんは話します。

「吃音はとても不思議で、1 人で音読しようとすると言葉が出なくても、2 人で『せーの』で読むとすらすら読めます。その子の症状を学校に説明し、できることを伝え、学校でしてほしい配慮を一緒に考えていきます」

こうした「環境調整」や「合理的配慮」について、支援会を開いて説明するのも言語聴覚士の役割です。

学校や福祉とも連携し、必要な配慮を考えています
学校や福祉とも連携し、必要な配慮を考えています

学年が上がると、勉強も難しくなり、子どもの不安や必要な配慮も変わっていきます。中学生くらいになると、「特別扱いは嫌だ」と配慮に抵抗を感じ、我慢する子もいるそうです。

吃音で防いでいきたいのが、2 次障害である「社交不安症」です。人からどう見られているかが過度に気になり、人前で何かをする時に強い不安や恐怖、緊張を感じる疾患です。

「吃音患者の 50 %が社交不安症を発症し、このうち 75 %が 8~15 歳で発症するというデータがあります。20 %はうつ病も併発します。不登校の原因にもなるので、何とか防いでいかなきゃと思っています」

【医療にかかれない場合は?】自助グループ「高知言友会」で定期的に集まっています

川村さんが言語聴覚士として吃音への対応に取り組もうと考えたのは、吃音患者が自死したというニュースがきっかけでした。小児のみに対応していた吃音外来を、2023 年に成人にも広げました。

さらに、当事者が安心して悩みを語り合える場をつくろうと、同じ年に自助グループ「高知言友会(げんゆうかい)」を立ち上げました。川村さんら支援者のほか、当事者の家族が中心となり、例会などを定期的に開いています。

7月に開かれた「高知吃音のつどい」。川村さん(左端)らが運営を担いました
7月に開かれた「高知吃音のつどい」。川村さん(左端)らが運営を担いました

高知言友会の集まりには、医療にかかっていない人も参加できます。

「医療以外にもつながれる場をつくり、吃音の当事者や家族が 1 人で悩んだり、孤立したりしないよう活動しています。気になる方、話を聞いてみたい方は気軽に参加してくださいね」

吃音の当事者や家族を支える活動も続けていきます
吃音の当事者や家族を支える活動も続けていきます

 

細木病院の吃音外来を受診する場合は、先に医師の診察が必要です。子どもは小児科の「小児こころの外来」、成人は耳鼻咽喉科になります。予約は電話で受け付けています。

言語聴覚士による小児外来リハビリは 2 人で対応しています。「定期的に担当が変更になることがある」そうです。

細木病院

  • 住所:高知県高知市大膳町 37
  • 電話:088-822-7211(代表)、小児科の予約・問い合わせは088-820-6780
  • ウェブサイト:https://www.hosogi-hospital.jp/

 

高知言友会は偶数月に例会を開いています。特別講師を招く「高知吃音のつどい」も年に 1、2 回ほど企画しています。

活動はX(旧Twitter)インスタグラムで発信しています。

11 月 17 日(日)には 1 周年特別記念講演会が開かれます。高知大学医学部児童青年期精神医学の特任教授・高橋秀俊さんが「吃音の二次障害に対する理解と対応」と題し、講演します。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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