体を上手に使う力を伸ばす「コーディネーショントレーニング」って?|子どもの「運動神経」はおうちで育てられる!ポイントは「多様な動き×反復」!高知リハビリテーション専門職大学の柏智之さんが紹介しました
体を上手に使うためのポイントとは?

「うちの子、運動が苦手かも」「あの人は運動神経がいいね」。遊びやスポーツの中でよく使う言葉ですが、「運動神経」ってそもそも何なのか、何歳くらいまでに決まるのか、気になったことはありませんか?
「運動神経は生まれつきだけで決まるものではなく、育てることができます」。高知リハビリテーション専門職大学講師の柏智之さんはそう語ります。
体を上手に使う能力を伸ばすために勧めるのが、「コーディネーショントレーニング」と呼ばれる運動。ポイントは「多様な動きを、繰り返し反復すること」だそうです。
高知リハビリテーション専門職大学の公開講座で、おうちで楽しくできるコーディネーショントレーニングを紹介しました。
目次
高知リハビリテーション専門職大学は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を養成しています。
2026 年 6~9 月の間、「令和 8 年度公開講座」を 3 部に分けて高知市追手筋 2 丁目のオーテピアで開催。
7 月開催の第 2 部が子どもに関係する講座で、脱水症状や遊び、運動神経をテーマに 3 回開かれました。各講座をココハレでレポートします。
- 7 月 5 日(日)…「脱水になるのは夏だけ?-身体の脱水が運動パフォーマンスに与える影響とその予防-」
- 7 月 19 日(日)…「身近なもので遊んでみよう!」
- 7 月 26 日(日)…「子どもの運動神経を高めるコーディネーショントレーニング」
第 3 回の講座「子どもの運動神経を高めるコーディネーショントレーニング」は、高知リハビリテーション専門職大学講師の柏智之さんが講師を務めました。
「運動神経」は遺伝する?「動作の巧みさ」は成長の中で育まれます
「あの子は運動神経がいいね」―。よく聞く言葉ですが、具体的にどんな姿を想像しますか?
「足が速い」「球技が上手」「動きが軽やか」…。いろいろな能力をイメージしますが、柏さんは「いわゆる『運動神経がいい人』というのは、体を思い通りに動かせることが共通しています」と説明します。
「例えば映像や、人がやっている姿を見てすぐに自分でも再現できる、というようなことですね」
「運動神経」とは言いますが、そういった名前の神経が実際にあるわけではなく、「脳と体をつなぐ仕組み全体の働き」のことだそうです。
親としてちょっと気になるのは、「運動神経って遺伝するの?」というところ。
柏さんによると、「筋肉の性質や体格、持久力などは遺伝の影響を受けやすい」一方で、「動作の巧みさ(上手さ)や素早さ、器用さなどは、遺伝の影響が少ない」といいます。
「つまり『運動神経の良さ』につながる動作の巧みさは、先天的なものではなく、後天的に決まるというふうに言われています」
運動神経は、成長の過程で育むことができるんですね!
「ゴールデンエイジ」の9~12歳は発達しやすい時期ですが…「あくまで目安」です
子どもの運動の発達について、「ゴールデンエイジ」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
柏さんによると「生涯の中で最も速く運動技能を学習する時期」を指す用語で、9~12 歳ごろのこと。この時期に「多様な運動経験をすることによって、効率よく運動神経が高められる」などと言われているそうです。
この考えに基づくと、12~15 歳ごろは「ポストゴールデンエイジ」と呼ばれ、「15 歳くらいまでに運動神経が決まる、とするのがゴールデンエイジの考え方」だと言います。
ただ柏さんによると、この「ゴールデンエイジ」は、約 100 年前に行われた実験や研究を基にした考え方だそうです。
柏さんは「ゴールデンエイジは間違いなく急速に神経が発達する時期ですが、それ以降でも運動神経が発達する可能性は十分あると考えています」と語ります。
「『15 歳以上だからもう運動神経が良くならないんですか?』と聞かれると、私は疑問に思います。ゴールデンエイジはあくまで目安だと思ってください」
コーディネーショントレーニングって?ポイントは「多様な動き」と「反復」
さて今回の講演のタイトルは、「子どもの運動神経を高めるコーディネーショントレーニング」です。「コーディネーション」って一体どういうことなのでしょうか?
コーディネーションには、「調整する」や「協調する」という意味があります。
柏さんが最初に説明したように、運動神経の良さとは、「自分の体を自在にコントロールできる」ということ。
そしてコーディネーショントレーニングは、「脳と体の動きを協調させて、自分の体を自在にコントロールできることを目的とした運動」を指すそうです。
柏さんによると、日常の遊びの中で実践できる七つの「コーディネーション能力」があるそうです。七つの能力と、例を紹介しました。
- リズム能力…リズムに合わせて動く
- バランス能力…姿勢を保ったり、立て直したりする
- 変換能力…状況に合わせて動きを切り替える
- 反応能力…「よーいどん!」に反応してすぐに飛び出す
- 連結能力…体をスムーズに動かす
- 定位能力…決められた目印に体を持っていく
- 識別能力…野球のバットなど、道具をうまく使う
一口に「運動」と言っても、いろいろな動作とそれぞれに必要な能力が組み合わさっているんですね。
柏さんは「七つのうちどれか一つが特化しているから運動ができる、というわけではなく、全部が上手に協調することでさまざまな運動ができるようになる」と説明します。

「反復練習」も大切です
コーディネーショントレーニングでは、さまざまな運動を経験することに加えて、「繰り返すこと」も大切だと話します。
「反復練習」によって、脳ではその動きに関わる新しい神経回路が作られていくことが、近年の研究で確認されているそうです。「脳の“入力”を反復することで、自分で体を動かせる“出力”の回路ができていくんです」
「一度やって終わり」ではなく、何度も続けることがポイントなんですね。
でも家庭でさせてあげられる運動経験には限界があるのでは?そう思ってしまいますが、「体を自由に動かす能力を高めるコーディネーショントレーニングは、特別な器具がなくても遊びの中で実践できます」と柏さんは話します。
「『これがコーディネーショントレーニングだ』という運動はなく、むしろ日常生活で行っているさまざまな動作が、コーディネーショントレーニングの一環になりますよ」とのこと。
柏さんが子ども向けにお勧めする遊びの例を見ていきましょう。
【コーディネーショントレーニング①】新聞紙、雑巾、ティッシュ…身近な物で体を動かそう!
新聞紙ジャンプ
身近な物を使ったコーディネーショントレーニングとして、最初に紹介されたのは「新聞紙ジャンプ」です。
新聞紙を棒のように丸めて、一人が床に座って新聞紙の端を持ち、左右に動かします。
子どもは、当たらないようにタイミングを合わせてジャンプします。
慣れてきたら、両足跳びから片足跳びに挑戦!右足、左足と代えてみましょう。
「見る」「タイミングを取る」「ジャンプする」という動きを組み合わせることで、目で捉えた動きに合わせて素早く体を動かす力を養います。
新聞紙のほか、100 円ショップで人気の「プールスティック」などでも代用できますよ。
雑巾奪い
続いては「雑巾奪い」という遊びです。
2 人で向かい合って立ち、間に雑巾やタオルなどを置きます。合図が聞こえたら、素早く片足で雑巾を取り合います!

右足で挑戦したら、次は左足でもやってみましょう。「左右を同じように使うことが大切」だそうです。
合図を受けて素早く行動に移す「反応能力」や、自分の動きを切り替える「変換能力」、姿勢を保ちながら足を動かす「バランス能力」などを養うことができるそうです。
ココハレ編集部員も小学 4 年生の息子とやってみましたが、子どものスピードには全く勝てませんでした…。子どもは「もう 1 回!」と何度もやりたがるほど気に入っていました。
小さいお子さんは「ティッシュつかみ」から
小さいお子さんには、ティッシュを上から落として片手でつかむ遊びがお勧めです。
自身の左手で落として床に着くまでに左手でつかむ、右手で落としたら右手でつかむ―というふうに簡単なルールで挑戦してみましょう!
【コーディネーショントレーニング②】実は優秀な「けんけんぱ」…音楽に合わせてジャンプ!
柏さんが「めちゃくちゃいいんですよ!」と太鼓判を押したのが、意外にも昔ながらの「けんけんぱ」です。
輪っかなどを置き、「けん、けん、ぱ」のリズムに乗って、片足跳びと両足跳びを繰り返す動作は、優れたコーディネーショントレーニングなのだそう。
バランス能力やリズム能力、動きを素早く切り替える変換能力、位置を把握する定位能力など、さまざまな力を使うそうです。
けんけんぱができるようになるのは、一般的に「4~5 歳ごろが目安」。
ただ柏さんが、とある小学校で 1~6 年生の児童にけんけんぱをしてもらったところ、スムーズにできない子どもが少なくなかったといいます。
「今はけんけんぱをしたことのない小学生が結構います。やればすぐ上手にできるようになりますので、小さいお子さんとぜひ一緒にやってみてくださいね」
リズムで楽しい!現代版けんけんぱ
柏さんがおうちで気軽にできる“現代版けんけんぱ”としてお勧めしたのが、音楽を使うリズムトレーニングです。
床に養生テープを貼ったり、ひもを 1 本置いたりしてラインを作り、好きな音楽に合わせてラインの前後左右にジャンプします。
音楽の「1、2、3、4、5、6、7、8」という 8 拍を基本に、同じ動きを 4 回、8 回と繰り返してみましょう。
「その場でジャンプ」「足をそろえてラインの左右にジャンプ」「ジャンプして、かかと同士をタッチ」「横向きで線をまたぐように交互に片足を踏み出す」などと跳び方を変えれば、さまざまな運動ができます。子どもの年齢や発達に合わせて、難易度も調整できます。
ジャンプでは、つま先から着地することもポイント。つま先から着地すると、ふくらはぎの筋肉がいったん伸ばされ、その反動を利用して次の動きにつなげやすくなります。
何より大切なのが「楽しく続けること」と柏さん。お子さんが盛り上がる好きな音楽をかけて、いろいろな動きを提案してあげながら挑戦してみてください!
講演で紹介された運動神経を高めるポイント
最後に、今回の講演のポイントを柏さんがまとめました。
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