体を動かしながら交通安全を学ぼう|比島交通公園で「元気力をアップ!教室」が開かれました
交通安全教室と運動教室がコラボ!楽しみながら交通安全を学ぶこつを紹介します
高知市比島町 4 丁目の比島交通公園(高知県立交通安全こどもセンター)で、交通安全教室と運動教室をコラボさせたイベントが開かれました。
高齢者と子どもの交通安全、運動力アップをテーマに、理学療法士さん、作業療法士さんが企画。赤、黄、青の信号カラーに合わせて体を動かすなど、親子で楽しみました。
また、2022 年 5 月 13 日から、一定の交通違反歴がある 75 歳以上のドライバーを対象にした「運転技能検査」が始まりました。高齢ドライバーの運転機能チェックについても紹介します。
目次
「元気力をアップ!教室」は 2022 年 5 月 1 日、比島交通公園で開かれました。子ども、高齢者向けの交通安全教室と、子ども向けの運動教室をコラボさせたイベントで、講師は次の皆さんです。
- 高齢者の自動車運転機能チェック:沖田学さん(理学療法士、愛宕病院脳神経センター)
- 子どもの運動力アップ:稲富惇一さん(作業療法士、土佐リハビリテーションカレッジ)
- 子どもの運動力アップ:橋本貴紘さん(理学療法士、運動教室&保育所等訪問支援事業「ワクトレ」)
- 子どもの交通安全教室:山崎勇人さん(比島交通公園園長)
- ボランティア:岩井萌さん(作業療法士)
【子どもの交通安全教室】合言葉「とまる・みる・まつ」を覚えましょう
子ども向けの交通安全教室は、「山ちゃん」でおなじみの交通公園園長・山崎勇人さんが行いました。交通公園で伝えている交通安全の合言葉は「とまる・みる・まつ」。この日もボードを見ながら、しっかりと覚えました。
- とまる…建物から道路に出る時、道路を渡る時など、まずは止まりましょう
- みる…右、左、右の順番で、車やバイクが来ていないかを確認します。誰かに見てもらうのではなく、必ず自分の目で確認しましょう
- まつ…「危ない」と思ったら、渡らずに待ちましょう
合言葉をしっかり覚えても、急いでいる時などは忘れがちです。散歩などの機会に、繰り返し伝えていきましょう。
【子どもの運動力アップ】信号カラーを使ってジャンプ!目と耳で判断する力を養いましょう
子どもの運動力アップは、理学療法士の橋本貴紘さん、作業療法士の稲富惇一さんが担当しました。楽しく体を動かしながら、交通安全についても学べる運動ということで考案したのがこちら。
【信号ゲーム】
子どもは横一線に並ぶ。離れた所に親が立ち、信号カラーを素早く提示。子どもはその色に合わせて動きながら、親のいる所まで進む。
- 青:前に大きくジャンプ
- 黄:後ろに小さくジャンプ
- 赤:動かない
コーンがない場合でも、信号カラーのおもちゃを出したり、色画用紙や折り紙を使ったりして代用できます。橋本さんは笛の音を鳴らしながら、上手に注目させていました。
もう一つは「イン・アウトゲーム」。足元に置かれた輪から出たり、入ったりします。
【イン・アウトゲーム】
- 子どもの前に、中に入れる大きさの輪(フラフープなど)を置く
- 「イン」で前にジャンプし、輪の中に入る
- 「アウト」では後ろにジャンプし、輪の外に出る
- 間違ったら終わり
教室では、大人と子どもが大きな円になって行いました。「イン」「アウト」の掛け声に慣れてきたら、「入る」「出る」の掛け声も追加されました。
単純なゲームですが、橋本さんが掛け声のテンポを速めたり、少しじらしたりしながら進めるので、案外難く、そしてちょっと笑ってしまいます。バランスを崩してしまう人もいました。
橋本さんは「車が来ているかどうか、目で見るだけでなく、耳でも判断します。信号の色に合わせた運動や、音に集中する運動をしながら、親子で楽しく交通安全を身に付けてください」と話していました。
【高齢者の運転機能】一定の違反歴のある75歳以上の人に「運転機能検査」が義務化されました
高齢者の運転機能については、理学療法士の沖田学さんが解説しました。「アクセルとブレーキの踏み間違い」など高齢ドライバーによる事故が増える中、「何歳まで運転するか」は車社会である高知県内では切実な問題。子育て世代としては、おじいちゃん、おばあちゃんの生活に関わってきますね。
沖田さんによると、高知県の運転免許証の自主返納率は全国でも低いそう。車がないと生活が不便になることに加え、運転する楽しみが失われるのも、自主返納をためらう理由になっています。
5 月 13 日からは 75 歳以上の高齢運転対策として、道路交通法が改正されました。
【道路交通法改正・高齢者運転対策】
- 75 歳以上で一定の違反歴がある人に、「運転技能検査」の受検が義務化されます
- 安全運転サポート車(サポカー)が条件の「限定免許」が導入されます
- 認知機能検査の分類が「認知症のおそれあり」「認知症のおそれなし」の 2 分類に変わります
運転技能検査は自動車教習所などのコースで行われ、100 点満点中 70 点以上で合格です。期間は半年間あり、合格するまで何度でも受検できます。沖田さんは「指導を受け、練習することで運転機能が上がるという考え方」と説明しました。
運転技能検査に合格した人、そして一定の違反歴がない 75 歳以上の人は「認知機能検査」を受けます。ここで「認知症のおそれあり」「認知症のおそれなし」を判断します。
「認知症のおそれなし」と判断された人は、70歳以上が対象の「高齢者講習」を受けると、免許が更新されます。
「認知症のおそれあり」と判断された人は、医師の診断などを受けます。ここで「認知症でない」と判断されると「高齢者講習」へ。「認知症である」と判断されると、免許の更新はできないとのことです。
【認知トレーニング】ナンバープレートで足し算、連想ゲーム
認知機能の衰えには段階があります。
【認知機能の段階】
- 健常者:物忘れなし。仕事、家事に支障なし
- SCD(主観的認知機能低下):物忘れを自覚するが、周囲には気付かれない
- MCI(軽度認知障害):物忘れを自覚し、周囲が気付き始める
- 軽度認知症:周囲が気付く。仕事、家事に支障が出てくる
- 中度認知症
- 重度認知症
認知機能の低下によって、運転にも特徴が現れます。
【認知機能の低下による運転の特徴】
- SCD(主観的認知低下):柔軟な対応ができなくなる。「車の鍵を置き忘れる」「他の車が突然現れるように感じる」「歩行者、障害物などを見落とす」などの運転行動に注意
- MCI(軽度認知障害):運転能力の大幅な低下はないが、タイミングを合わせること、複雑な操作が苦手になる
- 認知症:脳が変化した部位によって、「抑制が効かなくなり、信号無視や脇見運転をする」「空間認識ができなくなる」などの影響が出る
MCI(軽度認知障害)までは「非認知症」とされていて、認知症に移行せずに回復する場合もあるそうです。沖田さんは「体力と一緒で、認知機能は誰でも低下していきます。でも、鍛えれば低下が緩やかになることが分かってきました」と説明。「軽度認知症の段階で、周囲が気付くことが大事」と語り掛けました。
認知機能を高めていくには、有酸素運動と認知トレーニングを一緒に行う「 2 重課題」がおすすめとのこと。さまざまな方法がある中で、沖田さんが紹介したのがこちら。
【散歩中に車のナンバーで認知トレーニング】
- 散歩中、出合った車のナンバープレートをチェック
- 歩きながら、ナンバーの数字を足し算する(「12-34」なら一つずつ足して「10」、もしくは「12 足す 34」で「48」)
- 歩きながら、ナンバープレートの地名から連想ゲーム(「横浜」なら「中華街」「赤レンガ倉庫」など)
ポイントは、歩きながら行うこと。これなら手軽ですし、数字を覚えたお子さん、お孫さんと散歩中に楽しくできそうですね。
認知機能だけでなく、体の柔軟性や転倒リスクも運転機能に影響してくるそうです。「自分の親も、自分自身も、いつかは免許の返納を考える時期が来ます」と沖田さん。「認知機能と運転の特徴を家族ぐるみで把握し、高齢者の尊厳も守りながら、安全運転寿命を延ばしていってくださいね」