1冊で125冊読める!新しい世界文学全集「小学館世界J文学館」|中脇初枝さんが再話した「日本の昔話」も収録されています
「重い」「かさばる」「とっつきにくい」を電子書籍で解消!世界の物語を楽しむきっかけに
「文学全集」と聞いて、どんなイメージをお持ちですか?「重い」「かさばる」「とっつきにくい」と感じる方もいると思います。
これまでのイメージを覆す新しい文学全集を小学館が作りました。タイトルは「小学館世界J文学館」。1 冊のリアル本を購入すると、125 冊の名作が電子書籍で読めるという、時代に合わせた仕組みを取り入れています。
四万十市出身の作家・中脇初枝さんが再話を手掛けた日本の昔話も収録されています。新しい文学全集について、小学館の担当者と中脇さんにお話を聞きました。
目次
「今の時代にふさわしい名作全集を」。小学館の創立100周年を機に誕生しました
「小学館世界J文学館」は小学館が創立 100 周年を迎えた 2022 年に発売されました。「創立以来、子どもの本作りを手掛けてきた小学館が今の時代にふさわしい名作全集を」と考え、電子書籍が採用されたそうです。
購入するのは 1 冊の紙の本です。紙の本にシリアルナンバーが付いていて、スマホやタブレット、パソコンでアクセスしてアカウントを作ると、世界の名作 125 冊が電子書籍として楽しめます。
文学全集といえば、本棚に分厚い本がずらっと並んでいる光景が思い浮かびます。「かさばる、重い、とっつきにくい」という特徴を、電子書籍で「かさばらない、軽い、手に取りやすい」に変えました。
ふりがなは年齢に合わせて3段階に設定できます
収録されている作品は、「シェイクスピア物語」「赤毛のアン」「宝島」など読み継がれてきた名作から、「魔女の宅急便」など現代の名作まで。さらにルーマニアやベルギーのお話など初めて日本語訳された作品もあります。
作品の選定は小学校中学年から中学生以上が対象です。文学史的な立場ではなく、「現代の子どもたちに今一番分かりやすい小説を届けたい」という視点で選んだそうです。
紙の本は「名作図鑑」です。「今日は何を読もうかな」とページをめくると、あらすじや登場人物が一目で分かります。各ページにQRコードが付いていて、気になったらすぐに読めます。
作者の紹介や時代背景、関連作品の紹介もあり、名作図鑑も読み応えがあります。
ふりがなは 3 段階、文字の大きさは 5 段階で表示を変えられます。音声読み上げ機能も付いていて、視覚障害や読字障害のある人も読書を楽しめます。
翻訳も現代の子どもたちに合わせた言葉のリズムに
翻訳は、現代の子どもたちに合わせて「言葉のリズムを大切にした」そうです。例えば 1972 年に出版された「若草物語」のせりふがこちら。
昭和生まれのココハレ編集部員が読んだことのあるせりふです。そして、今回新たに翻訳された同じせりふがこちら。
「いないじゃん?!」と驚きますが、令和の子どもたちが「とっつきやすい」のはこちらですね。
イラストも「第一線で活躍する画家が描き下ろした」そうです。「注文の多い料理店」の絵は「パンどろぼう」でおなじみ、高知市在住の絵本作家・柴田ケイコさんが手掛けています。
「日本の昔話」は中脇さんが再話した昔話を50話収録
作家の中脇初枝さんが再話した昔話は「日本の昔話」として 50 話収録されています。「一寸法師」「うらしま太郎」など、よく知られた昔話に加えて、「おかねのはなし」「泰作さん」など高知の昔話も楽しめます。
中脇さんは今回、主人公の性別に偏りがないように気を付けながら、お話を選びました。
「これまでの日本の昔話集では、男性が主人公のお話が圧倒的に多く、女性の主人公はとても少なかった。これからの世界に生きる子どもたちに読んでもらうため、偏りをなくしたラインナップになっています」
お話の終わりでは、その昔話の由来や読み取れるメッセージなどを中脇さんが解説しています。巻末には参考資料も紹介されています。
小学館によると、「全国版の昔話集で、再話する際に元とした昔話の出典まで明示して網羅した本は、あるようで実はほとんどない」そう。「現代に合わせたオリジナルの再話集」という貴重な一冊になっています。
今回の文学全集について、中脇さんが注目するのはデジタルならではの機能です。
「ふりがなのレベルが選べて、音声読み上げ機能もあります。視覚障害や読字障害などで、これまで本を読むことが困難だった人が読書を楽しめるようになったのは素晴らしいですね」
「スマホだと暗い所でも読めるので、寝る前に明かりを消してからでも子どもに読むことができますよね。長い年月にわたって伝えられてきた多様な昔話を楽しみ、お話の面白さを知って、物語を読んでいくきっかけにしていただけたらと思います」
小学館によると、「小学館世界J文学館」の「J」は「児童」「ジュニア」「次世代」を意味しているそうです。「大人にも読み応えがのある作品が数多く収録されています。まるで図書館が家に来たかのような『次世代の読書体験』を老若男女問わず、楽しんでください」
【小学館世界J文学館】
- 編集委員:浅田次郎、角野栄子、金原瑞人、さくまゆみこ、沼野充義
- 編集顧問:野上暁
- サイズ:A4 判変形、オールカラー、268 ページ、ケース入り
- 定価:5500 円(税込み)
- 発行所:小学館
金高堂書店などで販売しています。収録作品は小学館のウェブサイトでご確認ください。