年齢、性別、国籍、障害…「心のバリアを外す」とは?|ユニバーサルスポーツイベント「ノーバリアゲームズ」が高知市で開かれました
松岡修造さんが丸ノ内緑地に登場!ユニバーサルスポーツイベント「ノーバリアゲームズ」をレポートします
「バリアフリー」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。車いすの人が通りやすいように段差をなくすといった物理的なことから、全ての人が生活しやすいように制度を変えていくことまで、広い意味で使われる言葉です。
バリアのない「ノーバリア」を掲げた「ノーバリアゲームズ ~#みんなちがってみんないい~」が 3 月 10 日、高知市の丸ノ内緑地で開かれました。
ノーバリアゲームズは、参加者の年齢、性別、国籍、障害の有無を問わないユニバーサルスポーツイベント。MCの松岡修造さんは「自分の心にあるバリアが外されていく瞬間がある」と開催前に語りました。
ユニバーサルなスポーツとは?「心のバリアを外す」とは?ココハレ編集部がレポートします。
目次
「ノーバリアゲームズ」はWOWOWのパラリンピック・ドキュメンタリーから生まれました
ノーバリアゲームズは、WOWOWのパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM」から生まれたイベントです。「WHO I AM」はIPC(国際パラリンピック委員会)との共同プロジェクトで、パラリンピック選手らに密着した作品などがオンデマンドで無料配信されています。
WHO I AMプロジェクトのウェブサイト:https://corporate.wowow.co.jp/whoiam/
ノーバリアゲームズは今回の高知開催で 4 回目。初の地方開催となりました。
ノーバリアゲームズのテーマは「みんなちがってみんないい」。「性別も年齢も国籍も障害の有無も問わない多様な出場者たちがスポーツの楽しさを感じながら、みんなで体を動かすことができるイベント」とうたわれています。
一般の参加者に加えて、スポーツ選手、パラスポーツ選手らが登場。MCを松岡修造さんが務めています。
松岡さんは開催前日のインタビューで、「ノーバリアゲームズ」のMCを務める理由を「僕の心のバリアを外してくれる感覚があるから」と語りました。
「僕は自分で『ノーバリアゲームズ!』って言っときながら、最もバリアを張ってる人間。本当の意味でバリアを外すってどういうことなんだろう。年齢も性別も国籍も障害の有無も問わずっていう中で参加している姿を見て、心がその瞬間、ノーバリアになっていくんです。すごくピュアな気持ちっていうか」
心がノーバリアになる?どういうことでしょうか。百聞は一見に如かずということで、会場に行ってきました。
「障害」はひとくくりではない、という当たり前のこと
ノーバリアゲームズでは、ピンク、ブルー、グリーン、イエローの 4 チームで競います。各チームは 20 人です。
「ユニバーサル」の名の通り、参加者は子どもから大人まで。車いすの人もいれば、会場を動き回っている人、反対にじっと固まっている人もいます。「障害」とはひとくくりではないという当たり前のことを、肌で感じたココハレ編集部員です。
開会式に登場した松岡さんは、いきなりテンションマックス。合言葉の「ノーバリアゲームズ!」を宣言し、参加者を盛り上げます。
高知開催でも、ゲスト参加者は豪華!総合格闘家の高阪剛さん、プロゴルファーの東尾理子さん、元ラグビー日本代表の大西将太郎さんらが登場しました。
高知からは車いすラグビー日本代表の池透暢さん、パラカヌー日本代表の小松沙季さんが参加しました。
カオスな借り物競走!参加者も巻き込まれました
最初の競技は「みんなで借りよう!借りもの競争」。4 人 1 組になり、お題に書かれた借り物を見つけて、持っている人と一緒にゴールを目指すチーム対抗リレーです。
「ノーバリアゲームズは作戦会議が大事だよ」と松岡さん。多様な参加者がいる中で、誰と誰が組むのか。どう補い合っていけば上位を目指せるのか。ゲームを通してお互いへの理解が自然と進みます。
作戦会議中、松岡さんはというと、観客のもとへ。いきなり話しかける姿もノーバリア。これには「参加者だけでなく、その場にいる人も巻き込み、ノーバリアを伝えていきたい」という思いがあったようです。
いよいよ、競技スタート。会場はいきなりカオスです。
お題は「 10 月生まれの人」という単純なものから、「芋けんぴを持っている人」という難易度の高いものまで。観客を早速巻き込み、ゲームは進みます。
参加者はもちろん大盛り上がり。観客も「私たちも参加しているんだ」という気持ちに切り替わったように感じました。
難易度の高い大玉転がし。手を貸せばいいし、待てばいい
「みんなで乗り越えよう!障害物リレー」は大玉転がしです。身長 188 センチの松岡さんが押して、このくらいの大きさ。
2 人 1 組で大玉を転がしながら、S字クランクやシーソーのような「ギッタンバッコン」を通り、ネットをくぐります。子どもや車いすの人は前が見えません。思ったよりハード。大丈夫?危なくない?
実際にはやっぱりハードで、「ギッタンバッコン」では車いすをぐっと押したり、ちゅうちょする人を励ましたり。車いすもネットに引っ掛かります。
松岡さんによると、「ノーバリアゲームズはルールがあってないようなもの」。
2 人 1 組の決まりですが、難しい場合はチームから手助けが入ります。タイムで順位は競いますが、「楽しい」が大前提。
そうか、その人ができないことがあれば、その場にいる人が手を貸せばいいし、本人が「自分でゴールしたい」というのであれば、時間がかかっても見守ればいいんだ。
またまた、当たり前のことを肌で感じたココハレ編集部員でした。
心のバリアを外してくれたのは、誰かの心でした
終了後、ゲストの皆さんが一人ずつ、感想を話しました。
第 1 回からフル参加の高阪さんは「涙が出ない回がない。この涙がなんなのか、いまだにつかめない」。
サッカー元日本代表の坪井慶介さんも感極まり、「何なんでしょうか、この感動は」と話していました。
松岡さんは最後にこう語りました。
「今日は車いすとか障害とか、途中から感じなくなりました。『生きてるぞ!』と感じました。その力をくれたのは皆さんです」
「(参加した子どものスピーチでは)知的という部分ではなく、その子自身を見れた。1 人の人間のピュアな心を感じ、自分の心がぎゅっと動いた。それがノーバリアなんだろうと思います」
「ノーバリアゲームズ」では身体や特性がそれぞれ異なる参加者たちが、一つのことを一緒に楽しんでいました。
会場で取材しながら、「多様な人たちが一緒に楽しめる場」とともに、「みんなで一緒に楽しみたい」という気持ちが必要なのだと感じました。
それは「配慮」というよりも、松岡さんの言う「ピュア」に近い気持ちのように思います。
池さんは「パラリンピックが東京で開催されて教育が広まりましたが、地方には届いていなかった。その風が今日、高知にすっと届きました」と話していました。
「多様性」を子どもたちにどう伝えていくのか。授業などでの学びは大事ですが、体験に勝るものはありません。「ノーバリアゲームズ」のようなみんながフラットに参加でき、一緒に楽しめる場がこれからも高知にあればと思います。
松岡修造さんにココハレ編集部がインタビュー。子育てを熱く語っていただきました。