「里親」を知っていますか?|家族と離れて暮らす子どもは高知県内に約450人。家庭に迎え入れて養育する「里親」について聞きました
里親に登録しているのはどんな人?里親家庭サポートセンター「結いの実」の説明会で聞いてみました
さまざまな事情で家族と一緒に暮らせない子どもたちがいます。その数は全国で約 4 万 5000 人、高知県内に約 450 人といわれています。
そんな子どもたちを自分の家庭に迎え入れ、養育しているのが「里親」の皆さんです。
里親の役割は何となく知っているけれど、実際はどんな感じなんだろう。高知ではどんな人が里親をしているんだろう。
疑問に思ったココハレ編集部員が、南国市で開かれた「里親制度説明会」に行ってみました。高知県内の里親さんは、私たち子育て世代が増えているそうです。
里親説明会は 2024 年 3 月 2 日、南国市大埇甲の市地域交流センター「MIARE!(みあーれ)」で開かれました。
企画したのは里親家庭サポートセンター「結いの実」です。
「結いの実」は高知聖園ベビーホーム(高知市新本町 1 丁目)内にあります。高知県から委託を受け、里親制度に関する問い合わせ対応から、里親さんが子どもを家庭に迎え入れた後のサポートまでを手掛けています。
この日は 2 組が参加。里親リクルーターの戸梶佳香さんが説明しました。
里親家庭、ファミリーホームで暮らす子どもは約30%です
戸梶さんは子どもたちが置かれている現状から説明を始めました。
児童虐待の相談対応件数は年々増え、2022 年度は全国で 21 万件を超えました。「子どもの人口は減っているのに、虐待の相談は増えている」という状況です。
虐待のほかにもさまざまな理由で家族と一緒に暮らせない子どもは全国で約 4 万 5000 人います。高知県内には 2024 年 3 月現在で約 450 人います。
家族と一緒に暮らせない子どもは、公的責任で社会的に養育し、保護します。同時に、養育に大きな困難を抱える家庭も支援します。これを「社会的養護」といい、「施設養護」「家庭養護」の二つがあります。
高知県では社会的養護を必要とする 約 450 人のうち、児童福祉施設や里親家庭などで暮らす子どもが約 350 人。このうち約 70 %が施設で暮らし、約 30 %が里親家庭やファミリーホーム(小規模住居型養育事業)で暮らしています。
全国で見ても、里親への委託率は約 20 %で、多くの子どもが施設で暮らしています。戸梶さんによると、「文化の違いもありますが、日本は先進国の中でも里親委託率が低い」とのことです。
「養育里親」とは?里親には4種類あります
里親制度とは、さまざまな事情で家族と離れて暮らす子ども、つまり「社会的養護」を必要とする子どもを、里親が自分の家庭に迎え入れる制度です。
戸梶さんは「里親制度は、温かい愛情と正しい理解を持って養育する、児童福祉法に基づく『子どものための福祉』の制度です」と説明しました。
具体的には次の四つです。
【里親の種類】
- 養育里親…社会的養護が必要な原則 18 歳未満の子どもを一定期間、家庭で養育します。
- 専門里親…虐待によって心身に有害な影響を受けた子どもや非行のある子ども、障害のある子どもを養育します。
- 養子縁組里親…子どもと実親側との法律上の親子関係を消滅させ、安定した新たな親子関係を家庭裁判所が成立させます。原則 15 歳未満の子どもが対象で、戸籍上の親子になります。
- 親族里親…実親が死亡などによって養育できない場合に、祖父母や成人したきょうだいが養育します。
養育里親と専門里親は「子どもを預かって養育する」という形で、子どもの戸籍は変わりません。養子縁組里親は「戸籍上の親子になって育てる」という形です。
里親として子どもを養育する間は、生活費など児童福祉法で定められた経費が公費で支給されます。養育里親と専門里親には里親手当も支給されます。
里親になる要件は?資格は特に要りません
日本では「社会的養護」を必要とする子どもを「施設養護」から「家庭養護」に変えていこうという動きが進んでいます。
施設では集団生活のため、1 日のスケジュールや食事などで一定の制約があります。里親家庭では子どもが自主的に考えて行動する機会や、地域の人と交流する機会が増えます。「里親さんでの受け入れを進め、子ども時代をすこやかに過ごしてもらいたい」と戸梶さんは語りました。
里親からの発信も行われています。最近話題になったのが俳優の佐藤浩市さん。妻の亜矢子さんと一緒に、乳児院や児童養護施設の子どもたちを週末や休み期間に預かる「フレンドホーム」という活動を続けています。
「フレンドホーム」は東京都の制度の名称で、「週末里親」と呼ばれています。高知県内にも週末里親をしている人がいるそうです。
では、里親になるための条件とは?
【里親になるための条件】
- 心身ともに健康であること
- 要保護児童の養育に対する理解及び熱意並びに児童に対して愛情を有していること
- 経済的に困窮していないこと(親族里親は除く)
- 国が定めた研修を受講すること
- 里親となることを希望する者およびその同居人が欠格事由に該当しないこと
加えて、都道府県によって年齢制限などが加わります。高知県は年齢制限はなく、戸梶さんは「健康であることを大事にしています」。
「里親になるために資格は要りませんが、公的な立場で、私的な環境で養育していただくので、養育の質を高めていくための研修を行っています」
養育里親は 5 年ごとの更新で、研修が行われています。
30~40代の子育て世代も養育里親に登録しています
高知県では現在、150 組ほどが里親に登録しています。このうち、70 組ほどが子どもたちを受け入れています。
戸梶さんによると、養育里親は 30~40 代の子育て世代が増えているそう。
「共働き家庭の方もいます。自分の子どもが少し手がかからなくなったからと登録する方もいますし、赤ちゃんを育てながら登録する方もいます」
子育て中で登録を希望する人は「自分の子どもと同じように、分け隔てなく養育したい」と話すそうです。
最近は数日間、数週間という短期の養育も増えているそうです。
「例えば『家族が病気で、子どもを見てもらえる人がいない』といった場合に、養育里親さんに子どもをお願いする場合があります。里親さんにお願いするというのはどの家庭でもあり得ることではないでしょうか」
里親制度は、子どものための制度です。「『私がこの子の里親になりたい』という制度ではなく、この子の里親さんは誰がいいかを児童相談所が決めていきます」と戸梶さん。
「たくさんの里親さんがいれば、その子に合った里親さんを選べます。温かい家庭で子どもが幸せに、すこやかに育つことにつながります」
高知で子育てをする私たちにできることは何でしょうか。戸梶さんは最後にこう呼び掛けました。
「里親に登録するというところまではいかなくても、社会的養護を必要とする子どもたちに関心を寄せていただければ。みんなが温かく子育てできる環境になればと思っています」
里親家庭サポートセンター「結いの実」では、里親に関する相談などに対応しています。
【里親家庭サポートセンター結いの実】
- 住所:高知県高知市新本町 1 丁目 7-30
- 電話:088-872-1012
- メール:info@satooya-yuinomi.jp
- ウェブサイト:https://satooya-yuinomi.jp/