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見立て作家・田中達也さん×絵本作家・柴田ケイコさんスペシャル対談が実現!|「おすしがふくをかいにきた」「パンどろぼう」…人気アーティストの制作の裏側は?悩みは?たっぷり語りました!

見立て作家・田中達也さん×絵本作家・柴田ケイコさんスペシャル対談が実現!|「おすしがふくをかいにきた」「パンどろぼう」…人気アーティストの制作の裏側は?悩みは?たっぷり語りました!
田中達也さんと柴田ケイコさんが対談しました(撮影=ニュニュ編集部・楠瀬健太)

「MINIATURE LIFE展2」の高知開催を記念!田中達也さんと柴田ケイコさんが対談しました

高知県立美術館(高知市高須)で開催中の「MINIATURE LIFE(ミニチュアライフ)展 2」。

開幕を記念して、数々の作品を手掛けたミニチュア写真家、見立て作家の田中達也さんと、絵本作家の柴田ケイコさんによるスペシャル対談が実現しました。

2 人の出会いは「MOE絵本屋さん大賞 2023」の授賞式ですが、柴田さんは以前から田中さんのファンだったそう。

人気アーティストの 2 人が語ったのは、アイデアや制作の裏側、地方で制作を続ける思い、そして肩こり…?!ココハレでたっぷりお届けします。

【出会い】初対面は「第16回MOE絵本屋さん大賞2023 」の授賞式でした

今回の対談は 2024 年 7 月 12 日、「MINIATURE LIFE展 2」の会場で行われました。

田中さん、柴田さんの経歴がこちら。

田中達也】1981年、熊本生まれ。2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDER」を開始。以来、インターネット上で毎日発表し続けている。著書に「MINIATURE LIFE」(水曜社)、「おすしが ふくを かいにきた」(白泉社)、「あーっとかたづけ」(福音館書店)など。鹿児島市在住。

田中達也さん
田中達也さん

柴田ケイコ】1973 年、高知市生まれ。印刷会社でグラフィックデザインなどの仕事を経て、2002 年に独立。イラストレーターとして活躍する。2016 年に「めがねこ」(手紙社)で絵本作家デビュー。「おいしそうなしろくま」(PHP研究所)、「パンどろぼう」(KADOKAWA)などの人気シリーズ手掛けている。高知市在住。

柴田ケイコさん
柴田ケイコさん

そんな 2 人の出会いは 2024 年 1 月、都内で開かれた「第 16 回MOE絵本屋さん大賞 2023 」の授賞式でした。

柴田さんは「パンどろぼうとほっかほっカー」(KADOKAWA)で大賞、「パンダのおさじと フライパンダ」(ポプラ社)で第 3 位を受賞。田中さんは「おすしが ふくを かいにきた」(白泉社)で第 4 位を受賞しました。

出会いは2024年1月、絵本の授賞式でした
出会いは2024年1月、絵本の授賞式でした

実は授賞式の前から、お互いの作品を楽しんでいたそうです。

――お互いの印象から教えてください。

柴田:田中さんの作品を知ったのはインスタからです。

田中:そうそう、フォローしていただいてて。僕は絵本を作ることになって、絵本業界について調べていたら、「『パンどろぼう』というすごい絵本があるぞ」と。作者を調べてインスタを見たら、「あれ?フォローされてる」(笑)。

柴田:フォローはずいぶん前からです。大人気ですから。2021年の高知の「MINIATURE LIFE展」も見に来ました。

田中:プライベートで来られたんですか?

柴田:そうです、そうです。全てにおいて、どうやって作ってるんだろう。あと、どうしてこう、アイデアが湧くように出てくるんだろう。

田中:それは僕も聞きたいです。「なんであんなキャラが出てくるんだ?」という(笑)。

柴田:いやぁ、もうカラカラなんですけど(笑)。

【アイデア】田中さんは「見立て」に縛られてる?!

――田中さん、「見立て」のアイデアはどのように湧いてくるのでしょうか。

田中:これはもう、慣れでしかないです。よく例えるのが料理のレパートリー。ジャガイモ、肉、玉ねぎ、ニンジンだと基本、肉じゃがかカレーじゃないですか。でも、すごいプロの人は「○○風」とか作ってくれる。同じ食材でどれだけレパートリーを増やせるかと一緒で、同じモチーフを何回も考えるうちにレシピが増える。抽象的に言うと、そんな感じです。単純に、毎日考えて引き出しが増えていくという。最近、「見立て」の考え方を本にまとめまして、今度出ます。

柴田:ぜひ読ませていただきたい!

※ココハレ編集部注:「みたてのくみたて 見るだけでひらめくアイデアの本」(ダイヤモンド社)が 2024 年 7 月 17 日発売です。

対談前に作品を鑑賞する柴田さん。「すごいなぁ!」がたくさん飛び出しました
対談前に作品を鑑賞する柴田さん。「すごいなぁ!」がたくさん飛び出しました

柴田:MOEの授賞式で「見立て」というのを聞いて、何を見ても脳が見立ててるのかなと思って。田中さんの脳は常に稼働しているイメージなんですけど。

田中:あぁ、そうですね。そういうふうに考えちゃうのはちょっとつらいんですね。

柴田:あっ、そうですか。

田中:そっちに行っちゃうんで、他の絵本を見ても、自分は結構、「見立て」に縛られているというか。

柴田:職業ですもんね。

田中:そう、職業病。だから、柴田さんのキャラクターを見ていると、すごいのびのびしてて。作風が。

柴田:いえいえ(笑)。

田中:なんかこう、理屈じゃない面白さがあるじゃないですか。「なんでここでこうなるんだ?」「でも、面白い」みたいな。そういうのが作れないのが悩みというか。

柴田:いやいや、ないものねだりですよ(笑)。

田中:お互いですかね(笑)。

田中さんが作品解説。「一緒に見てると、僕はどんどん話しちゃうので…」
田中さんが作品解説。「一緒に見てると、僕はどんどん話しちゃうので…」

田中:柴田さんの絵本は「理論」じゃないと感じます。僕はどうしても理屈で考え過ぎて、そこを抜け出せないのがね。例えば、「ここを見開きにするか?」とか、見開きが 2 回来たりとか。普通の絵本だとこうなるよね、というパターンじゃない。あれはどういうふうに決めてるんですか?

柴田:私は多分、理屈で考えられない脳みそで。頭が悪いんですよ(笑)。

田中:いやいや。人に伝わっているのは、やっぱり頭がいいからですよ。

柴田:どうですかねぇ。イラストのお仕事は注文ありきで来るのでちょっと理屈っぽくなってしまうんですけど、絵本は物語なのでどうにでもできるというか。理屈っぽくなると、面白みが減ってくるし、子どもは理屈で見てないので。

田中:分かります。ノリでね。

柴田:ノリで見てるんで、そこになるだけ寄っていくというか。

「僕、やってみたかったことがあって…」と田中さんが取り出したのは?
「僕、やってみたかったことがあって…」と田中さんが取り出したのは?
私物の「パンどろぼう」と「にせパンどろぼう」を作品へ。「夢がかないました!」
私物の「パンどろぼう」と「にせパンどろぼう」を作品へ。「夢がかないました!」

田中:ノリはどうやって探るんですか?お子さんに見せるんですか?

柴田:見せないです(笑)。自分の感覚で「こうしたら面白いだろうな」というのを探りつつやってるという感じですかね。感情的に、みたいな感じかな。

田中:編集の方には見せたりとか。

柴田:もちろんです。

田中:「これはノリ的に面白い」とかなるんですか。

柴田:そうですね。私も理屈っぽい時もあるんです。「こうすると、もっと子どもはこう考えるんじゃないか」と。基本的なルールは外れないようにしつつ、ちょっと頭が固い時は、編集者から「もっとはじけてください!」と。

田中:あぁ、編集の方が言うんですね。

柴田:編集者さんがアイデアを出したりもするので、それを兼ね合いながら。一緒に料理する感じですね。でも、「見立て」って頭が柔らかくないとできないと思うんですよ。そこがすごいなと思って。

田中:うーん、何か最近は変なふうに、変な方向に行ってる気がして(笑)。変な方向に柔らかくて、そういう意味で固い気がする。分かります?

柴田:でも、ちゃんと面白い!

【見立てとは】ルールは「日常にある組み合わせ以外は組み合わせない」

アイデアの話はまだまだ続きます。

――柴田さん、「MINIATURE LIFE展 2」をご覧になっての「ここが推し!」をぜひ教えてください。

柴田:全部いいけど…やっぱり、このおすしかな。おすしの街(「おスシティー」)。

田中:ありがとうございます。

柴田:田中さんの食べ物系は全部好きです。

田中:最近、おすしブームが来てる気がして。おすしの絵本も増えてるなと。

――おすしが来ている。回転ずし、子ども好きですもんね。

柴田:好きですねー、子どもも大人も。

田中:特別感があるから、読みたいのかも。

柴田さんのイチ押し「おスシティー」
柴田さんのイチ押し「おスシティー」

――「特にここが好き」ってありますか?

柴田:全部好きですけど、おすしに付いてるタイヤ(笑)。

田中:これはぶっきらぼうに付いてる(笑)。

柴田:これがかわいくて。街になってる世界観もいいなと思って。

――田中さんがおっしゃった「おすしのお皿の高さを競って食べる」から「都市のビル開発」というアイデア。確かにそうだと思いました。

田中:「おスシティー」のカウンターに座ると、回転ずしの風景に見えるでしょう?どっちにも見えるのが大事だなと思っていて。

柴田:そうですよね。

田中:「何でも見立てていい」と思ってる方もいるんですけど、そうじゃないんです。例えば「靴を走らせたらいい」と考えたとして、靴は回転ずしでは流れない。基本的に、日常にある組み合わせ以外の組み合わせはないというのが大前提。「見立て」のルールです。

――そうなんですね。

田中:例えば、「未完の船でもなんとかなるさ」という作品があります。こちらは「ミカンだけで仕上げる」という縛り。

「未完の船でもなんとかなるさ」(©Tatsuya Tanaka)
「未完の船でもなんとかなるさ」(©Tatsuya Tanaka)

――ここにレモンの皮を入れたりはしない。

田中:そうそう。もちろん、組み合わせとしては「果物でまとめる」というのはあり。でも、ここに野菜を入れ始めると、バラバラになっちゃう。

柴田:なるほど。だから一つの絵としてのまとまりができるんですね。

田中:だから、絵本を考える時に苦しい。すしの街には、すしに関係する物しか使えない。野菜の森を作るんだったら、野菜に関係する物だけ。そういうふうに考えてしまう。

――そこにも縛りがあるんですね。

田中:そう、縛りが(笑)。だから、柴田さんの絵本を読んでいると、うらやましい。「パンどろぼうとほっかほっカー」にブタの人が出てきたり。

――パンと、人間と、動物が。

田中:共存してるじゃないですか(笑)。共存がうらやましいんですよ。あと、スケールがめちゃめちゃ変わるじゃないですか。

柴田:あっ、そうですね。

田中:パンどろぼうのサイズってどんぐらいなんだと(笑)。

柴田:そうそう(笑)。

「パンどろぼう」を「おスシティー」にも置いてみました。「これはちょっと、スケール感が合わなかったですね(笑)」と田中さん
「パンどろぼう」を「おスシティー」にも置いてみました。「これはちょっと、スケール感が合わなかったですね(笑)」と田中さん

田中:ある場面ではめちゃめちゃ小さいし、ネコがめちゃめちゃでっかくなったりするし。あの自由さがいい。子どもに伝わりますよね。実際に物を作ってるとサイズは変えられない。めりはりが付けられないので、ずっと同じ絵になっちゃう。結構引きの絵になっちゃうので、そこはやっぱり脱却しないといけない。どかーんと来るときはどかーんと来るような。柴田さんの絵本を読みながら、「やっぱ、めりはりだな」と。

柴田:いやいや。絵本だとそうなりますけど。私は逆に、田中さんの作品のような絵は描けないし、「これをこういうふうに使うのか」と勉強になります。

――田中さんの作品展に来ると、「自分もちょっとものの見方を変えてみようかな」とか、「ちょっとしたことを面白がりたいな」と考えます。

柴田:本当にそうです。

田中:「見立て」は続けることが大事だと思います。意識しながら暮らすには、きっかけが必要。なので、毎日投稿して、思い出してもらう。人は忘れちゃうんで。トークショーでも「作品展を見て 3 日たったら、100 %忘れてます」って(笑)。

柴田:(笑)。

田中:だから、インスタをフォローしてください(笑)。

【悩み】つまようじに針…精密な作業は肩がこる!

対談はアイデアから技法へ。柴田さん、気になることが満載でした!

柴田:作品は最初に絵が浮かぶんですか?最初に場面が浮かんで、後でタイトル?

田中:タイトルは後ですね。先に写真を撮るんですけど、結構順序立てて考えます。例えば、「気球を表現したい」「気球は丸いものにかごが付いている」「丸い物を探そう」という感じで、集中して丸い物を探す。それを頭に入れておいて日頃暮らすと、丸い物が見つかりやすい。でも、それも何か理屈っぽいなぁって。もうちょっと、そこの域を外れた見立てを考えていきたいんですけど。

柴田:私もオリジナルでイラストを描く時は見立てで描いたりしたこともあって。「パンの引き出し」とか面白いなと思って。

田中:そうですよね。柴田さんの絵本には見立てが出てきますよね。新作でハイヒールをベッドにされていて、「僕だったらスリッパにするな」とか、いろいろ想像しながら。

柴田:そうそう(笑)。だから、すごくアイデアがいっぱいあってうらやましいなと思います。

※編集部注:ハイヒールをベッドにする描写が出てくる柴田さんの絵本は「くまたのびっくりだいさくせん」(白泉社)です

「めちゃめちゃ細かい。どうやって描いてるんだろう…」
「めちゃめちゃ細かい。どうやって描いてるんだろう…」

柴田:技法をお聞きしてもいいですか?

田中:技法?

柴田:ちっちゃいフィギュアに色を付けてるのは、田中さんが付けてるんですか?

田中:僕も付けるし、アシスタントも付けます。あとは、もともと色が塗られているものもあります。

柴田:何で塗ってるんですか?

田中:ベースは筆です。最初は肌色をエアブラシで。

柴田:へーっ!

田中:ベースを塗ったら、服はアクリル絵の具で塗って、顔や服の模様はつまようじです。

柴田:つまようじ!やっぱり!

田中:あとは、針とか。

柴田:針で!なるほどー!

田中:そういう手作業が一番早いですよね。

柴田:私だったら絶対目がしょぼしょぼして塗れないとか思っちゃうんですけど(笑)、肉眼で塗ってるんですか?

田中:肉眼で塗ってますね。

柴田:えーっ、すごいですねー!

田中:幸い、目がいいんですよ。ただ、焦点が合う位置が最近ちょっと遠くなって。だんだんつらくなってくるなぁ。もうちょっと年を取ったら、老眼鏡を掛けるかもしれないですけど。

柴田:私はルーペとか使わないと無理なんだろうなと思うくらい、細かい!

細かい作業に毎日向き合うお二人。体調管理は?
細かい作業に毎日向き合うお二人。体調管理は?

田中:でも、柴田さんも細かい絵を描かれてますよね。原画を見ました。

柴田:田中さんに比べたら大きいと思うんですけど(笑)。拡大鏡でやってます。もう、拡大鏡じゃないと全然ダメ。

田中:あれ、拡大鏡なんですか。じゃあ、結構、老眼来てます?

柴田:来てます、来てます。

田中:老眼問題、ありますよね。体調管理をどうされてるかとか気になります。

柴田:ありますよ、年を取るほどに。肩こりはひどいので、パーソナルに行ってます(笑)。

田中:分かります、肩こり。肩こりから頭痛とか。

柴田:頭痛は割と頻繁にあるので、頭痛薬とか。

田中:飲むと治るし。

柴田:田中さんは手先が器用で細かい作業をされてるから、すごいんだろうなと思います。

【経歴】グラフィックデザイナーからの転身でした

対談では、経歴にも共通点があることが分かりました。

――お二人とも好きなことがお仕事になっています。お仕事をする前と今とで、制作への向き合い方は何か変わりましたか?

田中:柴田さんとは経歴が似てるなと思っていました。もともと、グラフィックデザイナーでしたよね?僕も 12 年間。

柴田:そうなんですね!

田中:鹿児島の制作会社で働いていました。グラフィックデザイナー兼アートディレクターで、コピーも自分で。あの頃の制約を考えると、もう、何が来ても自由。絵本を作るにしても、本当に皆さん、作りたい物を作らせてくださってる。

柴田:デザイナーの時は…一番しんどかったですよね(笑)。

田中:そうですね(笑)。だって、どんなに自分が正しいと思っても、お客さんの言うことが第一なので。「この文字に影付けるんか…」とか(笑)。

柴田:あります、あります。

田中:今は「こちらの世界観とは合わないです」とデザイナーさんに言えるし。

「グラフィックデザイナー」という共通点もありました
「グラフィックデザイナー」という共通点もありました

――ということは、今はお二人とも、純粋に仕事に向き合えていらっしゃる。

柴田:そうですね、好きなことをさせていただいてるなと(笑)。

田中:そうそう、こっちがやりたいことに付き合っていただいてる(笑)。昔は「お客さんのやりたいことに付き合わされてる」という感じで仕事をしていたのが、ちょっとありました。作風とかは関係なく、お客さんに合わせてデザインを変えないといけなかったり。それはそれで、テクニックとしては楽しいし、やりがいもあるかもしれないですけど。

【地方在住】アイデアは「土地に関係なく生まれます」

田中さんは鹿児島、柴田さんは高知が拠点。「地方在住で制作している」というのも大きな共通点です。

柴田:田中さん、最初は東京の方なのかなと思ってました。「鹿児島だったんだ!」という。

――田中さん、東京感がありますよね。

柴田:東京感!あるある!何なら海外かなと。だから、「鹿児島在住」と聞いてうれしくなっちゃって。こういうお仕事をしてるとよく聞かれるのが、地方にいると文化的なものが、刺激があまりないじゃないですか(笑)。

田中:ないですね(笑)。

柴田:でも、こんなにたくさんアイデアが浮かんでいる田中さんを見てると、「地方でも全然いける。私だって」と。アイデアは土地関係なく出ますよね。

「わっ、カツオ!」。会場には高知をモチーフにした作品も展示されています。
「わっ、カツオ!」。会場には高知をモチーフにした作品も展示されています。

柴田:私は都会にいると、心がやさぐれてダメです。

田中:僕も結構近いですね。東京に行くと、誘惑が多いんです。楽しくて、そっちに時間を使っちゃうので。鹿児島県民には申し訳ないんですけど、鹿児島くらい暇だと(笑)。

柴田:(笑)。

田中:鹿児島みたいに「何もないけど、ほどよく何かある」という方が、自分の作りたい物に専念できると思います。東京はたまに出張に行っても、見たい物が多過ぎて。

柴田:ものが多すぎて疲れちゃいますよね。心がフラットにならないので。

田中:やっぱり、「なんで高知なんですか?」って聞かれます?

柴田:聞かれます!

田中:高知で生まれ育ったから、ずっと高知?

柴田:そうですね。東京に住む理由がないというか(笑)。

田中:分かります(笑)。

柴田:こういうお仕事はオンラインでも打ち合わせができるし、高知で作って送ればいいわけで。東京じゃないと作れないというものがあるのかと言われると、ないような気がして。刺激はいっぱいありますけど。

「アイデアは土地関係なく生まれますよね」
「アイデアは土地関係なく生まれますよね」

田中:たまに行って、刺激を受けるのは楽しいんですけど。

柴田:そうそう。逆に毎日、たくさん刺激をインプットしていいものが作れるかというと、そうでもないような。

田中:インプットだけしそうな気がします(笑)。東京って人の時間の取り合いだと思っていて。時間を取られちゃう。取る側に回らないと。絵本を作って、人に時間を費やしてもらいたいですよね。

柴田:田中さんは作品展などで割と出張が多いと思うんですけど、どうやって制作とのバランスを取っていますか?

田中:出張は多い時で月 3 回くらいかな。作品展の準備でだいたい 2~3 日は取って、トークショーして。毎日発表する作品は事前に撮るので、そこはなかなかつらいですよね。それも縛られ(笑)。

柴田:(笑)。

田中:この縛りをやめれば楽になるんだろうと思うんですけど。

会場には田中さんのアトリエが再現されています
会場には田中さんのアトリエが再現されています

柴田:毎日の投稿は日課として習慣付いてる?

田中:そうです。どうしてもやめられないというか。1 回やめたら後悔しそうなので、まだやめ時じゃないのかな。

柴田:絵本作りだと、入稿がゴール。締め切りに向かって制作するので、ある意味、「やらされ感」があるんですけど、田中さんのように自分発信で、依頼されている仕事じゃないのに続けるのはすごいなと。

田中:何か、締め切りにはなっちゃってますね。外から頼まれる仕事の締め切りと同じ。

柴田:自分で、自分に。

田中:逆に締め切りを破っても、毎日の投稿は続ける。まぁ、締め切りを破ったことはないですけど(笑)。投稿だけは死守する、みたいな。

インスタの投稿は「まだやめ時じゃない」
インスタの投稿は「まだやめ時じゃない」

田中:柴田さんは締め切りが多いんじゃないですか?

柴田:多いです。

田中:ペースがすごい。よくこれだけ作れるなと思ってます。

柴田:お声がけいただくのはありがたいんですけど、アイデアはそんなに出ないんですよ(笑)。でも、描きたいから描いちゃってる。

田中:作ってる途中で「これは仕上がらないから、いったんストップしよう」とかあるんですか?

柴田:あります、あります。私の場合はどうしても、物語のプロットが最初できないんです。

田中:あー、そうですか。

柴田:キャラクターは割とすぐ浮かぶんですけど、「この子をどうやって動かそうか」というストーリーに割と時間がかかって。でも、次のプロット出しの日は決まってるので、ちょっと延ばしてもらったりとか、ちょっと 1 回置いておいて、別のお仕事をしたりとか。

田中:先にキャラなんですね。

柴田:キャラだったり。ほんとは同時なんですけどね。ある程度、出版社から「今度はこれで行きたい」という提案があるので、そこから考えたり。「パンどろぼう」は「パンでやってほしい」というお話でした。

【これから】お互い、ないものねだり?!刺激し合いながら

――最後に、今回の「MINIATURE LIFE展 2 」のおすすめを柴田さん、お願いできますか?

田中:柴田さんが宣伝してくれるんですか!お金払わないといけないじゃないですか!

柴田:(笑)。もう、全部見てほしいです。お子さんとだったら、フォトスポットがいいですよね。あと、作品のこだわりが一つ一つあるので、じっくり見てほしいです。タイトルも読んでほしい。

田中:タイトルはあえて隠して見て、自分で考えてほしいなと思ってます。

柴田:それもいいかも!

サインも交換しました!
サインも交換しました!

――今回、初めてじっくりお話されてみて、いかがでしたか?

田中:柴田さんはもう、絵本通りのお人柄で(笑)。

柴田:何も考えていない(笑)。

田中:話しやすい方でした。同じ地方在住で、グラフィックデザイナー出身で、肩こりで(笑)。すごく共通点があるなと思いました。

柴田:今日はどうやって精密に作ってるのか、制作の裏側のお話をすごく聞けてうれしかったです。アイデアの引き出しが多いのは本当にうらやましくて。

田中:精密に作る上では、人の手を借りる。最初は自分で作らなきゃと思ってたんですけど、現代アートをさかのぼると、既製品を使った物って結構たくさんあるんです。そういう意味では、そこは枠を外れたなと。自分が作ったものでなくても、うまく組み合わせれば作品になるんだ。それに気づいて、作るスピードやアイデアの幅がよくなりましたね。

柴田:なるほど。

田中:それが弱点でもあり、よくもあり…。キャラができにくい。

柴田:お互い、ないものねだりになっちゃいますね(笑)。

田中:はい。自分にないところがうらやましいです(笑)。

――そうやって高め合っていただけたら、私たちファンはとってもうれしいです。これからも楽しませてください!

田中:頑張りましょう。

柴田:そうですね、頑張りましょう。田中さんのファンとして、これからも応援させてくださいね。

 

田中さんと柴田さんの対談、いかがでしたか?和やかで笑いの絶えないおしゃべりの中に、アーティストならではの視点が満載で、作品を楽しむ上でとても勉強になりました。ありがとうございました。

「MINIATURE LIFE展 2 」は高知県立美術館で 8 月 25 日(日)まで開かれています。

MINIATURE LIFE展 2 田中達也 見立ての世界

  • 開催期間:2024 年7 月 13 日(土)~8 月 25 日(日)
  • 場所:高知県立美術館・県民ギャラリー(高知県高知市高須 353-2)
  • 時間:9:00~17:00(最終入場は 16:30)
  • 料金:一般 1200 円(前売り 1000 円)、高校生以下 600 円(前売り 500 円)、未就学児は無料
  • 駐車場:あり

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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