個性、ジェンダー、家族の形…絵本で「多様性」を伝えてみませんか?|こうち男女共同参画センター「ソーレ」で「ブックカフェ」が開かれました
最近、さまざまな場面で耳にする「多様性」。集団の中に異なる特徴や特性を持つ人がともに存在することを指すそうです。
身近なところでは国籍や性別、年齢、障害の有無など。わが子には「『男の子だから』『女の子だから』ととらわれず、自分の道を進んでほしい」「他者を尊重する人であってほしい」と思います。
幼いうちから「多様性」の考え方を伝える助けになるのが絵本だそうです。こうち男女共同参画センター「ソーレ」(高知市旭町 3 丁目)で開かれた「ブックカフェ」を取材しました。
親子で「絵本のじかん」。子どもが読み聞かせをします
ココハレ編集部が取材したのは「ジェンダーカフェ・絵本といっしょにBOOK CAFE」。2024 年 9 月 28 日にソーレで開かれました。
「ジェンダー」とは社会的、文化的に割り当てられた性差のこと。その社会によってつくられた「男らしさ」「女らしさ」などを指します。
ソーレが主催する「ジェンダーカフェ」では講師を招き、身近なジェンダー問題について、参加者同士で気軽に話し合っています。
今回の講師は金香百合さん。大阪府の堺市立男女共同参画センターの館長を務め、女性や子ども、障害者、海外にルーツのある若者ら社会的弱者に関わる活動を続けています。
金さんは「eトコプロジェクト」の代表も務め、居場所づくりの活動もしています。親子向けに「絵本のじかん」というプログラムがあり、子どもたちが好きな絵本を選んで読み聞かせをしています。
今回のブックカフェではこの「絵本のじかん」を体験。3 歳から小学 3 年生までの親子 3 組が参加しました。
好きな絵本を持って集まった子どもたち。金さんに「みんなに読んであげて」と促され、5 歳の女の子が前に出ました。
選んだのは「いじわるブーのハロウィーン」(潮出版社)という絵本。5 歳児さんが読むには文字量が多く、読みにくい言葉もありながら、一生懸命読んでいきます。金さんはさりげなく、助けていきます。
大人が読むほどすらすらとはもちろん読めませんが、「私はこれが好き」という気持ちが伝わってきます。
続いて前に出た小学 3 年生と 5 歳の兄弟は「ふりかけのかぜ」(福音館書店・こどものとも年少版)を紹介しました。恥ずかしくて全部は読めませんでしたが、「くびが もくもく」「おしりが ばんばん」など、言葉の響きがお気に入りだそう。
自分が好きなものを相手に伝える。相手が好きなものに耳を傾け、知ろうとする。
「絵本のじかん」は単なる読み聞かせのようで、実は相互理解の大事な一歩なのだと感じました。
母子・父子家庭、お父さんが2人いる家庭…絵本の力を借りて伝えてみましょう
子どもたちが好きな絵本を楽しんだ後、金さんは「ぼくのかぞくを しょうかいするね」(文芸社)という絵本を紹介しました。
多様な家族の形を伝える絵本で、 5 組の家族が登場します。
「おかあさん、おとうさん、おにいちゃん、わたし」
「おとうさん、わたし」
「ぼくをうんでくれたおかあさん、そだててくれたおとうさん、つきに 1 かいあそんでくれるおとうさん、ぼく」
大人が読むと、「離婚した家庭なんだな」などと想像したり、ちょっとドキッとしたり。
一方で、子どもたちは他の絵本と同じように、一つのお話として聞いているのが印象的でした。
読み終わった金さんは絵本について特に解説することはなく、「あなたの家族は何人?」と子どもたちに尋ねていきました。
「 5 人!」「おじいちゃん、おばあちゃんも入れたら、もっと!」とテンションが上がる子どもたち。「どの家族も、ステキだよね」と金さんが受け止めました。
家族の形や性自認など、幼い子どもへの説明に迷う「多様性」については、絵本の力を借りるのがいいそう。「偏見が出来上がってしまう前に読んであげると、子どもは『ふーん、そうなんだ』と受け入れていきますよ」と金さん。
確かに、親が言葉を選びながら説明するより、絵本の方がストレートに伝わりそうです。
「あなたはそのままでいい」も絵本で伝えたいメッセージ
最後に金さんが紹介したのは「ええやんそのままで」(エルくらぶ)。歯が抜けても、体の色がいろいろでも、髪の毛がなくても、「ええやんそのままで」「あんたはあんた」と大阪弁で肯定してくれます。
金さんによると、こういった絵本にも幼いうちに出合っていくと、偏見や差別意識を抱くのを防げるとのこと。
「『○○だから』と自分に対しても決めつけず、『私は私』で自分らしく考えて行動していったらいいんだと感じてもらえたらと思います」
金さんは大学で「今の学生におすすめの絵本」という課題レポートを学生に出しているそうです。子どもの頃に読んだ絵本を思い出して挙げる学生が多いそうで、「絵本は心のとても大事なところをつくっている」と感じています。
「読み聞かせの時間って、スキンシップの時間でもあるんです。お父さんやお母さんの温かさ、柔らかさ、声、優しさで全身が包まれ、子どもにとってのセーフティスペースになります」
「子どもたちの価値観を広げ、広い世界に出合わせてくれるような絵本を、大人が少し意識して選んでみてください」