親子で過ごす時間、楽しい会話…オリジナル絵本でつくりたい|高知のひとり出版社「有記出版」が絵本制作に挑戦しています
親子で過ごす時間を増やし、子どもが紙の本に親しむきっかけをつくりたい――。そんな思いを胸に、高知で新しい絵本作りが進んでいます。
企画したのは有記出版の山本仁さん。高知の“ひとり出版社”として、書籍制作から販売までを 1 人で手がけています。
絵本の主人公はアルマジロ。ころころ転がるアルマジロに合わせてページをめくると、物語が進む楽しい仕掛けです。絵はココハレでおなじみのデザイナー・岡崎紗和さんが担当します。
「高知から全国に、親子で楽しめる絵本を届けたい」と挑戦する山本さんにお話を聞きました。
本の編集とは?その人の思いを文章で形にするお手伝い
山本さんは大学院卒業後、高知新聞社で記者として勤務。その後、県内の出版社で編集経験を積み、2024 年 4 月に有記出版を立ち上げました。
本の編集という仕事は「その人の思いを文章で表現し、本という形にするお手伝い」と山本さんは語ります。出版社勤務でその面白さを知り、「文章に一生携われる仕事」と選びました。
自治体の広報紙の編集、制作やライターの仕事と並行し、2025 年 3 月には初めての自社書籍を出版しました。
今回の絵本は自社書籍の第 3 弾です。
ページをめくって、驚いて…絵は「うちのこザウルス」の岡崎紗和さんが担当します
山本さんが絵本作りを志した背景には、昨今の「本離れ」「活字離れ」があります。
「子どものころに本との楽しい“出会い”を経験できれば、大人になっても本に親しめるのでは」と考え、制作を決めました。
絵はデザイナーの岡崎紗和さんに依頼。岡崎さんは高知新聞社でデザインを担当し、2022年に独立しました。冊子などのグラフィックデザインやウェブデザインを制作し、ココハレでは「うちのこザウルス」や子育て記事のイラストなどでおなじみです。
絵本との“出会い”を楽しいものにするため、山本さんが大事にしたのが「ページをめくる面白さ、楽しさ」です。
「ページをめくるという動きって、アナログで面白いですよね。めくって、驚いて、『次のページも見たい!』と思ってもらいたいなと」
山本さんの思いに、岡崎さんは「形の変化」で応えました。主人公に選んだのは、絵本の世界では珍しいアルマジロ。丸まったり、広がったり、かわいい動きとともにストーリーを展開させることにしました。
タイトルは「ころころ アルマジロ」(仮題)。アルマジロがころころ転がり、仲間に出会います。
途中には「絵探し」のページも加える予定。「読み聞かせをしながら、親子で『これは何?』と会話も楽しめる絵本にしたい」とアイデアを練っています。
“雑多なもの”を大事にしていきたい
初めてのオリジナル絵本制作にあたり、有記出版では現在、クラウドファンディングに取り組んでいます。
「本を作るには時間もお金もかかりますが、本という形にするからこそ、今を生きる人たちの思いや営みが未来に残せると考えています」と山本さん。
今回のクラウドファンディングは、絵本作りをきっかけに出版社の活動を知ってもらい、地域で本を作り続けることを目指す挑戦でもあります。
「有記」という出版社の名前は、山本さんが大学時代から学んできた有機農業からもらいました。
「有機農業は虫や微生物の力を借りて営む農業。邪魔なものを排除するのではなく、“雑多なもの”を認めて受け入れるという考え方が好きで、多様性にも通じるかなと思っています」
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