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「あなたが大切」と伝えたい・16年目のポッケ①|「自分を大事にする」は自分の体を知ることから

「あなたが大切」と伝えたい・16年目のポッケ①|「自分を大事にする」は自分の体を知ることから

四万十町認定こども園「たのの」で16年続く命の学習「カンガルーのポッケ」に密着。命の大切さを伝え、自己肯定感を高めていくヒントを紹介します

性教育は近年、性の知識を伝えるだけでなく、自分を大切にし、相手も大切にする「命の教育」として進められています。しかし、日本では教える内容が海外に比べて遅れている、学校での継続的な取り組みが難しいといった課題があります。

高知県四万十町大正の認定こども園「たのの」では「カンガルーのポッケ」という命の学習を続けています。地域の小児科医と園の先生、住民が協力して進める珍しい取り組みで、2021 年度で 16 年目を迎えました。

ココハレ編集部では 1 年間、カンガルーのポッケに密着。子どもに命の大切さを伝え、自己肯定感を高めていくヒントを探りました。5 回の連載で紹介します。

第 1 回は「『自分を大事にする』は自分の体を知ることから」。自分の命も友達の命も、大切な一つの命です。

認定こども園「たのの」は四万十町の山あいにある小さな園です

認定こども園「たのの」は田野々幼稚園と田野々保育所を統合し、2012 年 4 月に開所しました。0~5 歳児クラスがあり、園児は 50 人。山あいにある小さな園です。

カンガルーポッケは 2006 年度にスタート。年 7 回の計画で、にじ組(年少)、そら組(年中)、たいよう組(年長)が一緒に参加します。

四万十町大正の山あいにある認定こども園「たのの」
四万十町大正の山あいにある認定こども園「たのの」

2021 年度の第 1 回は 6 月 3 日。「大切な命・いのちの音」をテーマに行われました。

心臓の音はどんな音?聴診器やドップラーで実際に聞いてみました

カンガルーのポッケは毎回、テーマに合った絵本の読み聞かせと、体験やお話を組み合わせて行われます。この日の絵本は「からだのなかで ドゥン ドゥン ドゥン」。読み聞かせボランティアの田辺留里子さんが絵本を読み、中脇由美さんが絵本をスクリーンに映してめくっていきます。

絵本が終わると、小児科医の沢田由紀子さんが子どもたちに語り掛けました。

「ドゥンドゥンって音がするのはどこやった?」

「しんぞう!」

子どもたちが元気よく答えました。

「そうやね。大人は音がゆっくりで、子どもは速いです。今日は自分の心臓の音を聞いてみます。お友達と比べっこしてみよう。どんな音やったか、先生に教えてよ」

聴診器が登場すると、子どもたちが「わぁ!」「もしもしのやつや!」と目を輝かせました。

聴診器が登場。子どもたち全員が本物を使って体験します
聴診器が登場。子どもたち全員が本物を使って体験します

年中児、年長児には聴診器が渡されました。年少児はドップラーと呼ばれる超音波心音計を使い、一人一人の音をみんなで聞いていきます。

聴診器で友達の心臓の音を聞いてみます
聴診器で友達の心臓の音を聞いてみます
年少児はドップラーを使って、みんなで聞きました
年少児はドップラーを使って、みんなで聞きました

カンガルーのポッケでは小規模園ならではの特性を生かし、全員が同じ体験をすることを心掛けています。聴診器も代表の子どもだけではなく、全員が耳に着けて聞きました。

実際に体験してみることと、体験している友達の様子を見ることとでは、やはり反応が違うそう。「ほんまや、ドゥンドゥンって言いゆう!」「○○ちゃんの音とおんなじ!」と子どもたちは気付いたことを口々に話していきます。

心音の速さは成長によって変化します。赤ちゃんの音は自分の音よりも速い
心音の速さは成長によって変化します。赤ちゃんの音は自分の音よりも速い
大人の音はゆっくり。不思議ですね
大人の音はゆっくり。不思議ですね

自分の心臓の音と友達の心臓の音は同じ。どちらも大切だと実感していきます

心臓の音を聞くことは、自分の体を知る一歩。沢田さんは「心臓は 1 人に 1 個しかない大切なものだよ」と伝えます。さらに「自分の音とお友達の音が同じ」と気付くことで、「お友達の心臓も 1 個しかない大切なもの」と実感していきます。

左手をグーの形にして胸に置いて心臓の場所も確認し、沢田さんはこう語り掛けました。

「心臓は何をしたらいかんかった?去年のカンガルーのポッケでも勉強したけん、たいようさんとそらさんは覚えちょうかな?」

「たたいたり、なぐったりしたらだめ!」「心臓がびっくりするけん!」「ドッジでも心臓は狙ったらいかん」

「そうやね。そしたら、もしボールが心臓に当たって、お友達が倒れてしもうたら、どうする?」

「先生に言う!」「あそこにある機械を使うがで!」

「あそこにある機械」とは玄関に置いているAED(自動体外式除細動器)のこと。カンガルーのポッケで学んだことが 4 歳児、5 歳児の生きた知識として残っていることに驚きました。

学習の後、AEDの場所を再度確認しました
学習の後、AEDの場所を再度確認しました

心臓の次はおへそについて。お母さんとつながっていた大事な印です

7 月は「おへそ」について学びました。絵本「おへそに きいてごらん」を読んだ後、胎盤と赤ちゃんがへその緒でつながった人形を見ながら、学習は進みます。

へその緒と胎盤。人形を使って学んでいきます
へその緒と胎盤。人形を使って学んでいきます

「なぜおへそがあるのか」という子どもの素朴な疑問に対し、沢田さんは次のように説明しました。

「みんながおなかの中におる時、お母さんとはへその緒でつながっていました」「みんなはへその緒から、お母さんに栄養と空気と生きる力をもらいよったんよ」「生まれたら、みんなは自分で空気を吸うし、栄養はおっぱいを飲むようになるね」

園児のお母さんが持ってきたへその緒を、みんなで見ました。「おへそあるなしクイズ」では、ほ乳類とそれ以外の動物との違いも学びました。

へその緒を眺める子どもたち。色も形も違います
へその緒を眺める子どもたち。色も形も違います
ネズミにはおへそある?カエルは?おへそあるなしクイズも楽しみました
ネズミにはおへそある?カエルは?おへそあるなしクイズも楽しみました

沢田さんは、カンガルーのポッケを「性教育の前提になる大切な命の学習」と位置付けています。幼児が相手ですが、「医師として科学的に本当のことを伝えていく」ということを心掛けています。

「この年代なら、照れもなく、素直にワクワクし、『すごい!』『面白い!』と命に向き合うことができます。命の大切さを伝えることで、『あなたは大切な存在なんだよ』と繰り返し伝えていきたいと思います」

カンガルーのポッケで使った絵本はこちら

最後に、カンガルーのポッケで読み聞かせをした絵本を紹介します。

【第 1 回 大切な命・いのちの音】

からだのなかで ドゥン ドゥン ドゥン」(文:木坂涼、絵:あべ弘士、福音館書店)…命の音である鼓動を取り上げた絵本。家庭で聴診器を使うことは難しいですが、絵本を使えば親子で体験できます

【第 2 回 大切な命・命の絆】

おへそに きいてごらん」(作:七尾純、絵:長谷川知子、あかね書房)…「おへそって何であるの?」という疑問に答える絵本。読んだ後、へその緒を見せて生まれた時のことを話してみるのもいいですね

 

連載「『あなたが大切』と伝えたい・16年目のポッケ」の第 2 回はこちらから

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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