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失敗は子どもの力を伸ばすために欠かせないもの|AI時代の親の役割とは?スタディサプリ・小宮山利恵子さんが語りました

失敗は子どもの力を伸ばすために欠かせないもの|AI時代の親の役割とは?スタディサプリ・小宮山利恵子さんが語りました

GIGAスクール構想、AI、ChatGPT…「分からない」で済ませていませんか?小宮山利恵子さんのオンライン講演から紹介します

最近、毎日のようにニュースに登場する「ChatGPT」。皆さん、使ったことはありますか?

学校ではタブレットなどの学習用端末が子どもに 1 台ずつ配られ、読書感想文の宿題には「生成系AIを使わないように」とお達しが出る現代。学校教育は、私たち親世代が子どもの頃とは大きく変わっています。

これからますます進むAI時代を生きるわが子たちに、親はどんな関わりをしていけばいいのでしょうか。スタディサプリ教育AI研究所の所長・小宮山利恵子さんは、親の役割を「子どもの世界を広げていくこと」と語っています。

小宮山さんによると、失敗は「子どもの力を伸ばすために欠かせないもの」。オンライン講演から紹介します。

 

オンライン講演「AI時代の社会、人材、学び~子どもの「生き抜く力」を引き出す親の学びの姿勢とは~」は日本新聞協会と小学館「HugKum」が主催。2023 年 7 月 8 日に配信されました。

講師の小宮山利恵子さんは、国会議員秘書などを務め、2015 年にリクルートに入社。オンライン学習サービス「スタディサプリ」を手掛けました。デジタル教育を研究し、現在はスタディサプリ教育AI研究所の所長、東京学芸大学大学院の准教授を務めています。

小宮山利恵子さん(小宮山さんの写真は主催者の提供です)
小宮山利恵子さん(小宮山さんの写真は主催者の提供です)

家庭では、高校 1 年の男の子のお母さん。自身の子育て経験も交えながら講演しました。

2045年にシンギュラリティー…人間の仕事がなくなってしまう?

講演の冒頭で、小宮山さんは世界の動きを知る大切さを呼び掛けました。

「北に行きたいのに南に行くと、結果が全く違ってしまいます。親は『世界の動きという地図』を持つことが大事です」

その上で、今の子どもたちを取り巻く環境の変化から講演が始まりました。

新型コロナウイルスの影響で、2020 年度に前倒しされて始まった「GIGAスクール構想」。現在は国内の 99 %の自治体で、子ども1人に1台、パソコンやタブレットなどの端末が配られ、ICT教育が進められています。スマートフォンを所持する小学生の割合も 6 割を超えているそうです。

タブレットの宿題も当たり前になってきました
タブレットの宿題も当たり前になってきました

「テクノロジーとの共存は避けて通れない」と小宮山さん。世界ではこう予測されています。

2045 年に「シンギュラリティー」が起きる

 

「シンギュラリティー」とは、人工知能(AI)が人間の知能を超えること。起きると予測されている年には諸説ありますが、近い将来であるのは間違いないそうです。

AIが進化すると、「現在の仕事の 3 分の 2 が影響を受ける」と言われています。より大きく影響を受けそうなのが「ホワイトカラー」の仕事だそうです。

「AIは事務作業、司法関係が得意ですね。逆に、介護事業や建築に関わる方は影響を受けないと言われています」

仕事とAIの付き合い方で考えたいのが、「共感力」と「クリエイティビティー(創造力、創造性)」です。

「クリエイティビティーも共感力も必要ない仕事は、AIに取って代わられると言われています。皆さんの仕事はどうでしょうか」「率直に言うと、私の仕事も半分弱くらいはAIに取って代わられるのでは…と危機感があります」

「AIの経済へのインパクトは大きい。仕事の3分の2が影響を受けます」
「AIの経済へのインパクトは大きい。仕事の3分の2が影響を受けます」

「まさか、そんなことは…」と思いたいところですが、新しいテクノロジーが既存の仕事が取って代わるという現象はこれまでに何度もありました。小宮山さんは船のコンテナを例に説明しました。

コンテナによる海上輸送は 1956 年に始まりました。積み荷を運ぶなど、港で働いていた人々は失業し、社会問題となりました。

しかし、「輸送コストがかからなくなり、価格が安くなった」「グローバリゼーションが進んだ」など、人々が「便利だ」と感じたことが失業者の問題を上回り、コンテナは世界中に普及しました。

「AIもコンテナと似たような感じになるでしょう。『便利さ』が上回り、また新しい仕事が生まれていきます」

「アメリカでは『レジがないスーパー』が実用化されています。最初は万引しているみたいな違和感がありますが、慣れてしまうと、レジに並ぶのが億劫(おっくう)になっていきます」

ChatGPTは「やってみて、自分の目で確かめる」

話題の「ChatGPT」は生成系AIの一つです。生成系AIとは、学習した膨大なデータを使いながら、新しいコンテンツやアイデアを作るAIのこと。ChatGPTは人間のように自然な対話ができるAIチャットサービスです。

アメリカの教育は「日本より 5 年早く進んでいる」と言われていて、日本の将来を予測する上で参考になるそうです。現在は「ロボットと議論する」「ロボットを相手に語学学習をする」「声を出して検索する」など、学習の風景が変わっています。

日本ではChatGPTの活用が始まりました。

【ChatGPTが教育で利用されている主なシーン】

  • チュータリングおよび学習サポート…生徒が質問すると、回答や解説が即座に提供されます
  • プログラミング教育
  • 言語学習…ChatGPTとの対話を通して、新しい単語や表現を学び、文法や表現の正確さをチェックします。音声でのやりとりもできます
  • オンライン授業のサポート

 

ChatGPTの使い方については、文部科学省が 7 月にガイドラインを公表しました。

「文科省は『柔軟に使っていきましょう』『ただし、子どもたちはまだ使い方が分からないので限定的に使いましょう』と言っています。先生向けのチェックリストがあって、親御さんも使えると思うのでぜひ読んでみてください」

Chat GPTに「Chat GPTって何?」と質問してみました。日本語が自然です。チャットなので、続けて対話ができます
Chat GPTに「Chat GPTって何?」と質問してみました。日本語が自然です。チャットなので、続けて対話ができます

生成系AIについては、大学も独自に声明を出しています。武蔵野美術大学の学長は学生へのメッセージとして、「『ChatGPTって何だろう』で終わらせないで、自分でまず使ってみましょう。AIの精度がどの程度上がっているのか、情報を更新していきましょう」という発信をしていると、小宮山さんは解説しました。

小宮山さんが「私の解釈ですが」と前置きして紹介した「ChatGPTとは」がこちらです。

【小宮山さんが紹介した「ChatGPTとは」】

  • 2021 年 9 月までのデータを使っている(ChatGPT単独の場合)
  • 回答として「中央値」を出すことはできる
  • しかし、「外れ値」を出すことはできない

 

「皮肉なことに、今の社会は『外れ値』に価値があったりするんですよね。ご家庭では、お子さんに基礎学力をつけた上で、ChatGPTが回答できないような答えを出す能力を養うことを考えないといけないかなと思います」

「外れ値」とは?

例えば、ある問題が起こってネットでバズったとします。「ネット上の情報や意見を集めることはChat GPTにもできる」と小宮山さん。一方で、その問題を確かめるため、人々から直接話を聞くために現地に行き、見聞きしたことをまとめて発信するということは、ChatGPTにはできません。これが「外れ値」です。

では、AIが教育に入ってきたことで必要になる能力とは?

【AIが教育に入ってきたことで必要になる能力】

  • 問いを立てる
  • その問いを言語化して、AIとコミュニケーションを取る
  • AIから返ってきた答えを評価できる
  • 返ってきた選択肢から意思決定を行い、実行できる

 

なるほど…。AIとコミュニケーションを取ったり、答えが正しいかどうか見極めたり。親世代の学校教育には存在すらしなかった能力です。

 

 

これからは「デジタルに覆われた中にリアルがある社会」。情報は常にアップデートしていきましょう

親に求められる役割として、小宮山さんは「頭の中の情報を常にアップデートする」を挙げました。

なぜアップデートしていく必要があるのでしょうか。小宮山さんは二つの質問をしました。3 択問題です。

【質問①】現在、発展途上国に暮らす女子の何割が初等教育を終了するでしょうか?

A: 20 % B: 40 % C: 60 %

 

うーん、Bくらいでしょうか。

【質問②】世界の平均寿命はおよそ何歳でしょうか?

A: 50 歳 B: 60 歳 C: 70 歳

 

これも迷いますが、B?

答えは①がCの「 60 %」、②もCの「 70 歳」でした。「私もBとAにしていて間違いました」と小宮山さん。

常に頭の中の情報を更新していないと、更新されてない情報を基に議論してしまいます。すると、全然違った結論になってしまうんですね」

「過去の情報」で考えてしまっていませんか?
「過去の情報」で考えてしまっていませんか?

現在は「リアルとデジタルがくっついた社会」だと小宮山さんは説明します。そして、これから訪れるのが「デジタルに覆われた中にリアルが入ってくる社会」です。

これまで買い物は、お店でのリアルな買い物と、アマゾンなどネットでの買い物が両立していました。デジタル化がどんどん進むと、リアルの経験もデジタル化されていくそうです。小宮山さんは、2015年に訪れた中国での経験を例に出しました。

「 ホームレスの方が近寄ってきました。私はコインを持っていなかったので『(あげるものは)ない』というしぐさをしました。すると、ホームレスの方がスマホを出して、私にQRコードを見せて『ここに送金してくれ』と言ったんです。生活にデジタルが浸透するスピードが、中国は特に速いと感じました」

正解が一つではない時代…家庭では「一見無駄」「失敗が多い」経験を大切に

急激に変化する社会で、「働く」はどう変化していくのでしょうか。

「平均寿命が延びて働く期間が長くなる一方で、企業の平均寿命は短くなっています。皆さんのお子さんが大人になる頃には、『終身雇用』という言葉は完全に死語になっていると思います」

代わりに増えていくのが「起業」や「兼業」「副業」です。日本では、起業家の割合が現在 5 %ほどですが、これから増えると予想されています。

さらに、「 2011 年に小学校に入学した子どもたちの 65 %は、今存在しない職に就く」とも言われているそうです。今の高校生の年代です。

五感を使った経験も学びにつながります
五感を使った経験も学びにつながります

これまでの日本の教育では「一つの正解がある問題をいかに速く解くか」が重要でした。今は「正解が一つではない」「正解がそもそも分からない」という時代です。

「これからの社会に必要なのは、一つの正解に速くたどり着く『情報処理力』よりも、自分が好きなものを見つけ、その情報を探し出して分析して、発信する『情報編集力』です」

一つの正解に速くたどり着くことが求められる学校教育では、「失敗が少ない」「効率的」という面がどうしても重要視されます。だからこそ、「家庭では『失敗が多い』『一見無駄』という『知の探索』の機会を増やしていくことが大事」なのだそうです。

「失敗」との付き合い方は?親も恐れず、チャレンジを!

日本の起業家の割合は現在、 5 %ほど。なぜ日本には起業家が少ないのでしょうか。小宮山さんは「日本は失敗に対する恐れが大きいのではないか」と推測します。

「一つの正解に速くたどり着く」という教育は、裏返せば「失敗をできるだけ少なくする」という教育です。

「これからは『いい失敗』をどれだけするかが重要になってきます。実は大学入試も昨年トレンドが変わって、一般入試より推薦・AO入試が多くなりました。偏差値重視から、探求・探索をやっているかどうか、小論文が書けるかどうかというところですね」

日本人は失敗を恐れがち…
日本人は失敗を恐れがち…

「失敗から学ぶ」ということは、どういうことなのでしょうか。

小宮山さんがバイブルにしているのが「失敗の本質 日本軍の組織論的研究」(中央文庫)という本です。この本で紹介されている旧日本軍の失敗は「現代にも通じる」と言います。

「軍の上司が何も情報を持たずに独断と偏見で突っ走り、部下が全員亡くなったということがありました。家庭に置き換えると、親が自分が持っている過去の情報だけで判断して、子どもたちがさんざんな目に遭う。子どもには合わない勉強方法をさせて、子どものメンタルがやられたというのは実際に起きています」

「失敗から学ぶ」とは、正しい知識を得た上で挑戦し、失敗による実感を元にして使える知識を獲得していくことだそうです。

親自身にも「失敗したくない」という気持ちがありますが、「子どもは親の姿勢を見ています。親自身が失敗を恐れず、一歩踏み出さないといけません」

「失敗から学ぶ」とは?
「失敗から学ぶ」とは?

失敗から学べる人と学べない人とでは、失敗の捉え方が違うそうです。

  • 失敗から学べる人…失敗を「自分の力を伸ばす上で欠かせないもの」と捉える
  • 失敗から学べない人…失敗を「自分に才能がない証拠」と考える

 

さらに、小宮山さんは有名な実験を紹介しました。「失敗は質と量、どちらが大事?」というテーマです。

【陶芸クラスの実験】陶芸クラスを二つのグループに分けて、課題を出しました

①作品を「量」で評価します…作品の総重量が大きいほど評価が高くなります

②作品を「質」で評価します

制限時間は 1 時間です。果たしてどちらのグループから、最も質の良い作品が出されたでしょうか

 

答えは①の「量」のグループでした。①のグループはたくさんの作品を作らなければいけなかったので、最初から 1 時間、粘土をこねました。②のグループは一点勝負。「最高の作品とは何か」を 50 分間話し合ってから、10 分間で粘土をこねました。

「量からしか、いいものは生まれない。バッターボックスに立たないとヒットは打てないということです。ぜひいろいろチャレンジしていただけたらと思います」

親は子どもに何ができる?「好き」を見つける機会を増やしましょう

小宮山さんが“プチバズり”したツイートがあります。「親は子どもに何ができますか?」という質問に答えました。

Q
親は子どもに何ができますか?
小宮山さん
A
基本的にアドバイスできないです。社会の変化のスピードが早く、子どもたちと親が使っていた道具が違うため、価値観が異なります

 

このツイートで、小宮山さんはさらにこう答えました。

小宮山さん
親ができることは、子ども自身が自分の「好き」を見つける機会を増やし、それを育てる環境を準備すること

 

親が子どもにしてあげられることとして、講演では次の四つを繰り返すことを挙げました。

  • 子どもの存在を認める
  • コンフォートゾーン(日常)を抜ける体験をさせる
  • 小さな選択肢を持たせる機会を多くつくる
  • 自分で選択させる

 

選択肢は「日常のちょっとしたことでいい」そうです。

「ランドセルは『女の子だから赤』じゃなくて、『何色がいい?』と聞きます。『パンがいい?ご飯がいい?』でもいい。子どもたちに選ばせて、その理由を言わせることが重要です」

「子どもが勉強しません」…あなたは勉強していますか?

講演では、保護者から「子どもが勉強をしません」「子どもが本を読みません」と相談を受けるそうです。そんな時、小宮山さんが問い掛けるのがこちら。

小宮山さん
あなたは学習していますか?

 

コロナ前の調査では、日本では「社会人は 1 日平均 6 分しか学習していない」という結果でした。「毎日数時間勉強する人と、0 分の人。その中央値が 6 分なんです」。コロナ以降はオンライン学習が進んでいます。

社会人が学ぶ機会や時間をつくるのは難しそうですが、自分の価値を高めるのに必要とのことです。小宮山さんが勧めた「自分の価値を高める方法」がこちら。

【自分の価値を高める方法】

  1. 自分を棚卸しする…好きなもの、興味があるものが将来、何につながるか分かりません。自分は何が好き?何が得意?どういう時に幸せ?半年、1 年ごとに確認しましょう
  2. 人材における自分のポジションを確認する…一つのプロジェクトを成功させるには「起・承・転・結」の人材が必要です。あなたはどのタイプ?優劣はありません
  3. オンラインで学ぶ…無料で学べるプログラム、日本語で学べるプロフラムがたくさんあります
  4. 足で稼ぐ…五感を使って、足を使って情報収集しましょう。リアルでもオンラインでも、興味があるものにはどんどん参加しましょう
  5. 発信する…ネットで発信すると、情報が集まります

 

「好きなことを仕事にして成功できるほど、世の中は甘くない」とよく言われます。小宮山さんは最後に、こう呼び掛けました。

小宮山さん
好きでもないことを嫌々やって成功できるほど、世の中は甘くない

 

小宮山さんの講演は内容が盛りだくさん!ココハレ編集部員は小宮山さんと同世代ですが、ついていくのに必死でした。

印象的だったのが「テクノロジーの進化は速い。考えてから動いていたのでは間に合わないので、考えながら動く、失敗しながら改善していくことが大切」という言葉です。

大人になってからの学びはハードルが高いですが、「分からないから、やらない」ではなく、「分からないから、調べてみよう、ちょっとやってみよう」。そんな親の変化が、子どもにいい影響を与えそうです。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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