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学力は「基盤力」と「強み」。子どもの「強み」を幼児期から育てるには?|花まる学習会・高浜正伸さんが家庭での関わり方を語りました

学力は「基盤力」と「強み」。子どもの「強み」を幼児期から育てるには?|花まる学習会・高浜正伸さんが家庭での関わり方を語りました

お父さん、お母さん、「言葉」を大切にしていますか?「メシが食える大人」とは?花まる学習会・高浜正伸さんのオンライン講演からご紹介します

子育てのゴールの一つに「子どもの自立」があります。学校を卒業し、社会に出て、自分の人生を楽しく歩んでほしいですよね。

さいたま市を拠点に教室やオンライン教室を展開する学習塾「花まる学習会」では、「メシが食える大人」を目指し、子どもたちと関わっています。代表の高浜正伸さんは学力を「自己肯定感」「基盤力」「強み」と紹介しています。

学力を伸ばすには「このドリルをやらせる」よりも、子どもの「好き」を幼い頃から大事にしていく方がいいそうです。高浜さんのオンライン講演から、家庭で実践できる関わり方を紹介します。

 

オンライン講演「『探究力』のある子どもを育てる!高浜流“親子の学び習慣”とは」は日本新聞協会と小学館「HugKum」が主催。2023 年 2 月 26 日に配信されました。

講師の高浜さんは 1959 年、熊本県で生まれました。東京大学、東京大学大学院修士課程を修了し、1993 年に学習塾「花まる学習会」を設立しました。

花まる学習会は、年中児から小学生が対象。「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視しながら、子どもたちの意欲を伸ばしています。

花まる学習会代表の高浜正伸さん(高浜さんの写真はいずれも主催者の提供です)
花まる学習会代表の高浜正伸さん(高浜さんの写真はいずれも主催者の提供です)

「やらされ感」のない人生を歩むには?

オンライン講演は高浜さんの熱い語り口で進みました。

花まる学習会が目指すのは「メシが食える大人」。この目標には、単なる自立ではなく、「やらされ感のない人生を歩んでほしい」という思いが込められているそうです。

「日本では、中学生になるとほぼ 100 %、偏差値教育。『中間、期末がよくないと、いい高校行けないよ』となります。偏差値は外側の価値。外側基準での評価がまかり通っていて、子どもが自分の心を見落としていく構図になっています」

「勉強ができて、定職にも就いたけれど、やりたいことが見つからない」といった未来を避けるには、子ども自身が幼い頃から「自分が何にワクワク、ドキドキするか」を知っていくことが大切です。

練り消し、泥んこ、水びちゃ…子どもの「好き」を大切に

高浜さんは「学力には 2 種類ある」と語りました。「基盤力」と「強み」です。

【学力とは】

  • 基盤力…平仮名、漢字、計算など、「やりなさい」というもの
  • 強み…思考力、体力、感性、集中力、やり抜く力、人間力、専門性など。「没頭」「好き」がキーワード

「基盤力」は将来、自分が好きな道を歩む際の基礎となります。

「強み」は「その子の『好き』でしか伸びない。関心はその子の中にしかないから」と高浜さん。ここで注意したいのが「子どもの『好き』はご立派じゃないことが多い」という点。こんな事例を紹介しました。

【小学 1 年男子のお母さんの悩み】

先生、うちの子、大丈夫でしょうか。消しゴムのかすをずっと集めてるんですが…

男の子が大事にしている四角い缶には、消しゴムのかすがぎっしり詰まっていました。「緑系、赤系…と分かれていました。お母さんには『おめでとうございます!』と伝えました」

男の子は「練り消し、すっげー!!!」と、消しかす集めに没頭していました。この「すっげー!!!」が子どもの「好き」。親が「そんなの捨てなさい!」と止める、つまり「好き」を取り上げる関わりを続けると、「やらされ感」につながっていきます。

「昆虫、泥んこ、水びちゃ…お母さんが『やめて』と思うものもありますが、子どもは好き。年齢が上がっていくと、『好き』の方向性が決まっていきます

子どもの「好き」、大事にしていきたいですね
子どもの「好き」、大事にしていきたいですね

「基盤力」と「強み」を下支えするのが「自己肯定感」です。

学力は、結局は自己肯定感。へこんだボールがぽーんと戻るように、嫌なことを乗り越える力が必要です」

子どもの「好き」を大事に、自己肯定感を育んでいくと、「中 3 になると、子どもたちは急に大人になりますよ」。自分に足りないものを認識し、自ら学んでいくそうです。

「幼い頃からの『好き』は勉強、部活、恋にどんどん発展していきます。子どもの『後伸び』を考え、その時その時の『好き』を大事にしていってください」

ちなみに、子どもの「好き」をどこまで尊重するかという問題があります。講演ではこんな質問が出ました。

5 歳の息子がブロックに熱中しています。ご飯も食べないし、保育園にも行こうとしません。親はどう対応したらいいですか?

「『集中』という課題と『しつけ』という課題がぶつかっています。自由に何をやってもいいですが、枠組みは教えていかないといけない」と高浜さん。この場合は、こう答えるといいそうです。

「あなたの好きなことは応援するけど、今日はおしまいね」

お母さんが「おしまい」と言ったら、おしまい。きっぱりと対応していいそうです。

子どもの自己肯定感を高めるのは「お母さんの笑顔」です

子どもの自己肯定感を高めていくには?「子どもを認める」「子どもを褒める」など、さまざまなアプローチが言われていますね。

教育の世界で 40 年、親子を見てきた高浜さんが感じているのは「子どもの自己肯定感を高める一番の関数は、お母さんの笑顔」だそうです。

「子どもはお父さんも大好き。でも、幼少期はやっぱりお母さんなんです」

「学力を支えるのは自己肯定感です」
「学力を支えるのは自己肯定感です」

これは「母親は家庭に入って子育てをすべき」というものではありません。

「昔は近所に先輩お母さんがいて、ねぎらって、共感してくれた。今、お母さんが閉じた家で、不安をいっぱい抱えながら孤独な子育てをしているのが心配なんです」

そんなお母さんたちに呼び掛けたのがこちら。

【お母さんへ】

外につながりを求め、お母さんが心から笑顔になれることを探してください。実家のお母さんに話を聞いてもらう、バリバリ仕事をする、ジャニーズや韓流に夢中になる。何でもいいです

そして、お父さんにはこう呼び掛けました。

【お父さんへ】

子どもたちが笑顔になるには、妻の笑顔が欠かせません。妻の好きなものに関心を寄せ、応援してください

「妻を笑顔にするぞ!」と心から思っていると、言動が違ってくるそうです。高浜さんは「いかに妻を笑顔にするか」を「自由研究」として、毎日実践しているそうです。

「後伸び」する子どもの家庭は、言葉がしっかりしています

たくさんの親子と接する中で、高浜さんが「この子は伸びるな」と感じているポイントがあります。それは「言葉がしっかりした家」だそうです。事例を二つ紹介しました。

【お迎えの場面】

子ども:あのね、今日ね、お友達と○○で遊んだの。すっごいうれしかった

親:よかったねぇ。でも、それは「うれしい」よりも「楽しい」かな

もう一つがこちら。

【お迎えの場面】

親:今日はちゃんとお勉強した?

子ども:したよ

親:分かんないところ、あった?

子ども:こことここ

一方で、「これはちょっと…」と感じる事例がこちら。

【お迎えの場面】

親:今日ちゃんとお勉強した?

子ども:おなかすいた!

親:そうだ、買い物に行かなきゃ。あれ買って、これ買って…

 

ポイントは二つです。

  • 親がその場面に合った正しい言葉を使おうとしている
  • 会話の中で、相手から聞かれたことに、親も子もちゃんと答えている
正しい言葉を、家庭で使っていますか?
正しい言葉を、家庭で使っていますか?

「言葉の力は全ての学力の土台となる」と高浜さん。次のような点を家庭で心掛けていくといいそうです。

【言葉の力を育てるには?】

  • 正しい言葉を使う
  • 分からない言葉はすぐに調べる…「言葉ノート」を作り、調べた意味を書き留めておくと、一生の財産になります
  • 語彙(ごい)力を高める…しりとりがおすすめ。「 3 文字縛り」「 4 文字縛り」や「食べ物縛り」にもチャレンジを
  • 豊かな言葉遣い、表現力を育てる
  • 相手が聞いたことに答える
  • 相手にとって分かりやすく、気持ちのいい言葉を選ぶ…難しい言葉を子どもに分かりやすく、伝えてみてください

「豊かな言葉遣い、表現力を育てる」で取り入れていきたいのが「親が感動を表現する」です。

「自転車に子どもを乗せて走っていて、『新緑がきれいだな』と思ったら、止まって、『うわー、新緑がきれいだねー』と子どもに話し掛けてください。親の感動、気持ちをちゃんと言葉にして伝えると、子どもの中に豊かな言葉が増えていきます

大人の本音、子どもに語っていますか?

年齢が上がってくると、言葉の力を育てる際に、新聞が活用できます。

ある中学生の女の子が、高浜さんの所にやってきました。「先生、学校で『公民』を学ぶ意味が分からない」

高浜さんは「気になった記事を一つ持っておいで」と伝えました。「京都議定書」に関する記事を持ってきた女の子に、高浜さんは一人の大人として本音を語り、彼女の意見を求めました。

「本音ですから、他国の悪口も言うし、言いたいことをばーっと伝えました。女の子は『えーっ?!』とびっくりしながら書き留めていましたね」

年齢が上がると、言葉の力を育む際に新聞も活用できます
年齢が上がると、言葉の力を育む際に新聞も活用できます

そんな取り組みを繰り返していると、女の子はある日、こう言いました。

「先生、ニュースでやってることって、全部私につながっているんですね」

高浜さんは「正解、不正解じゃないんですね。子どもが信頼している大人が本音を語り、揺さぶること、子どもが自分の気持ちを言語化していくことが大事なんです」

言語化には「今日、学校であったことを教えて」「学校で習った勉強のポイントを教えて」といった質問もいいそうです。

 

家庭で実践できるさまざまな関わりを伝えた高浜さんは、最後にこう呼び掛けました。

「子どもの学力を伸ばしたい時、大事なのは『子どもに何をさせるか』ではなく、『親がどう生きるか』です。『知らない言葉を知りたい、理解したい』という親の生き方は、子どもに伝わります。言葉を大切にしていってください」

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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