赤ちゃんの抱っこ、遊び…ちょっと見直してみませんか?|“不自由”と“体の中心”を意識してみて…助産師・森木由美子さんが「赤ちゃんのトリセツ」で解説しました
抱っこに授乳、おむつ替え。第 1 子の誕生とともに始まる初めての子育てでは、戸惑うことが多々あります。でも、退院して自宅に帰ると、専門家からちゃんと教わる機会はなかなかありません。
最近では地域の助産師さんがお母さんたちを集めて、子育て講座を開いています。芸西村で開かれた講座「赤ちゃんのトリセツ」に行ってみました。
講師はココハレのコラム「ゆるりとHappy子育て」でおなじみの助産師・森木由美子さん。赤ちゃんのお世話では“不自由”と“体の中心”を少し意識してみるといいそう。抱っこやうつぶせ遊びなどのこつを紹介します。
目次
講師は助産師の森木由美子さん。助産院「はぐはぐ」を開業し、産後ケアや子育て講座などに取り組んでいます。
ココハレでは授乳や抱っこの記事に登場。コラム「ゆるりとHappy子育て」を連載しています。
参加者は赤ちゃんを子育て中の人もいれば、「自分の子どもは大きくなったけれど、新たに学び直したい」という人も。ゆったりとした雰囲気で始まりました。
子どもの体の使い方が変わった?「便利グッズ」で気をつけたいこと
今回の「赤ちゃんのトリセツ」では、低月齢の赤ちゃんのお話を中心に進められました。
実は今、子どもの体にちょっとした異変が起きているのだそうです。森木さんが挙げたのがこちら。
- バンザイができない
- ハイハイができない
- 体育座りができない
- 転んでも手をつかない
- 手首をひねる動作ができない
要因として考えられるのが、生活の中にあるさまざまな便利グッズや便利機能です。
例えば、手首をひねる動作は、水道の蛇口をひねることで自然と身に付いてきました。今はレバーを上下させたり、手を差し出したらセンサーで流れるタイプが主流。便利な機能のおかげで、日常の動作から消えつつあります。
便利グッズが普及した要因の一つが核家族化です。赤ちゃんの安全を確保して家事ができるように、室内にベビーサークルを設けたり、お座り用の椅子を使ったりが日常となりました。
便利グッズで気をつけたいのが「赤ちゃんの動きが制限される」という点です。
「早くからお座りをさせると、首や肩がすくんだままになってしまう可能性があります」と森木さん。「バンザイができない」という要因の一つになり得るのだそうです。
また、親としては「早く一人遊びができるようになってほしい」と思いますが、「赤ちゃんは特に、働きかけてもらわないと遊べない」とのこと。「赤ちゃんが成長するためのヒント」として次の三つが紹介されました。
【赤ちゃんが成長するためのヒント】
- 自由に動き回れるスペースを作る
- いろんな物を触らせる…「何だろう?」という気持ちを引き出す
- 「声がけ+動作」を心がける…「抱っこするよ」と声をかけてから抱っこすることで、赤ちゃんは体の準備と心の準備ができます
便利グッズは「使ったらダメ」というものでは決してありません。家庭では便利グッズを上手に使いながら、「赤ちゃんにとって少し不自由な状態も意識してつくってみる」といいそうです。
「うつぶせ」は赤ちゃんが生まれたらすぐ、毎日行ってOK
生まれたばかりの赤ちゃんは首が据わらず、ふにゃふにゃ。特に慎重な扱いが求められます。
森木さんのおすすめは「うつぶせ遊び」。「赤ちゃんが生まれてすぐから、毎日してほしい」と呼びかけました。
うつぶせには「SIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクが高まる」というイメージがありますが、リスクが高まるのは「うつぶせ寝」。うつぶせ遊びは首が据わっていない時期からOKとのことです。
最初は大人の胸の上でうつぶせになる「カンガルー抱っこ」がいいそうです。
赤ちゃんを膝に乗せるという方法もあります。ゆらゆら揺れたりしてみると、抱っこからも少し開放されそうです。
時間の目安は「月齢× 10 分」。頭を持ち上げられるようになる生後 2~3 カ月ぐらいからは、床で行います。
生後 4 カ月くらいになると、赤ちゃんの体はむちむちに。「胸がつかえてやりたがらない子どもも出てくるので、早いうちからがおすすめ」とのことです。
うつぶせ遊びはやがて、腹ばいやハイハイにつながっていきます。
「バウンサーに頼らずに育てるのは、すごく難しいと思います。でも、『泣かせたらいけない』と思って頼り過ぎてしまうと、うつぶせで遊ぶことができなくなったり、ハイハイせずにつかまり立ちをする可能性もあります。うつぶせ遊びをぜひ、取り入れてみてください」
正しい体の動かし方を伝える「ハンドリングテクニック」とは
赤ちゃんの発達を促すケアに「ハンドリングテクニック」があります。ハンドリングとは扱い方のこと。森木さんは「ゆっくりとした動作と声がけで、スムーズに体を動かす基礎をつくっていきます」と、抱っこで説明しました。
抱っこする場合は、「抱っこするよー」と声をかけ、赤ちゃんに体の準備と心の準備を促します。
抱っこする場合、通常は両腕を赤ちゃんの肩と腰の位置にそれぞれ差し込んで、ぐっと抱き上げます。この方法でもOKですが、森木さんは別の方法を実演しました。
まず、赤ちゃんの背中に腕を差し込みます。「横向くよー」と声をかけ、体を横向きにします。
そして、頭からゆっくり、自分の体に引き寄せます。
赤ちゃんを寝かせる時は抱っことは逆に、足から下ろします。
この方法で、体には左右があること、そして中心があることを少しずつ伝えていけるそうです。こつは「抱っこが楽な方法から安全に行うこと」。できるようになったら、反対側で試します。
おむつ替えでも左右を意識させることができます。
一般的には赤ちゃんの両足をそろえて、腰の部分を上げておむつを替えますが、横向きにして、左右を順番に拭いてあげるといいそうです。
首が据わっていない赤ちゃんの抱っこは横抱きだけ?「コリック抱き」も試してみて!
月齢が小さいうちの抱っこは横抱きが主流。「抱っこしすぎて、手首が痛い…」という人もいるのでは。
森木さんが「コリック抱き」という方法を教えてくれました。「コリック」とは「たそがれ泣き」という意味だそうです。
赤ちゃんをうつぶせの状態で抱っこし、腕で支えます。
赤ちゃんが泣きやまない原因の一つに、おなかにガスがたまっていることがあります。コリック抱きをすると、ガスが抜けやすくなるそう。抱っこで手首が痛くなった大人にとっても楽な抱き方で、うつぶせ遊びにもつながります。
発達を促す遊びで簡単なのが、体をくすぐる「こちょこちょ遊び」。赤ちゃんも笑うと腹筋を使い、左右のバランスを取るのだそう。
「わらべ歌の『ちょちちょちあわわ』も体の左右や中心を意識できる、楽しい遊びです。赤ちゃんが体の中心を意識できるように、たくさん触ってあげてくださいね」
赤ちゃんのトリセツ、いかがでしたか?うつぶせ遊びの大切さやコリック抱きなど、「自分が赤ちゃんを育てている時に知りたかったなぁ…」と感じたココハレ編集部員です。
森木さんによると、赤ちゃんの発達は「寝返り」「ハイハイ」などその項目ごとではなく、大きな流れで理解し、遊びにも取り入れていくのがいいそうです。うつぶせ遊びやこちょこちょ遊び、ぜひ取り入れてみてください!
森木さんは土佐市の助産院「はぐはぐ」を拠点に、訪問型の育児支援を行っています。母乳育児、抱っこやおんぶの仕方、沐浴指導など、メニューごとに料金が異なります。
産後ケアは訪問型、施設型の 2 種類があります。
相談したい場合は「助産院はぐはぐ」に問い合わせてください。
森木さんのコラム「ゆるりとHappy子育て」はこちらから