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発熱、咳、嘔吐、下痢…子どもの症状の見極め、対応は?どの時点で受診すればいい?

発熱、咳、嘔吐、下痢…子どもの症状の見極め、対応は?どの時点で受診すればいい?

子育ての心配ごとの一つ「子どもの病気」。高知県立大学看護学部の先生が解説します

乳幼児を育てるお父さん、お母さんの心配事の一つが「子どもの病気」です。熱が出た時、咳(せき)や下痢が続く時、「家でどんな対応をすればいい?」「どの時点で病院に行けばいい?」と困ることもあると思います。

子どもの症状の見極め方、対応の仕方について、高知県立大学看護学部准教授の佐東美緒さん、高谷恭子さんが解説します。

(高知新聞 2018 年 10 月 12 日朝刊に掲載された内容を再構成しました)

 

 

子どもの病気についてお話してくれたのは次の先生方です。

  • 佐東美緒さん…高知県立大学看護学部准教授。専門は小児看護学。病院で看護師、助産師として働いた経験を生かし、NICU(新生児集中治療室)を退院した子どもと家族を支える看護について研究しています
  • 高谷恭子さん…高知県立大学看護学部准教授。専門は小児看護学。先天性心疾患の子どもと家族の看護に携わってきました。さまざまな疾患や状況にある子どもと親、家族について研究しています

【発熱】「熱の上がり始め」と「熱が上がりきった時」で対応が変わります

発熱は体を守るという正常な反応であり、体がウイルスなどと闘っている証拠です。落ち着いて対応しましょう。

体温を測って「 38 度」だった場合、「熱の上がり始めの38度」と「上がりきった時の38度」は体の状態が違います。まずはお子さんの体に触れてみましょう。

熱の上がり始めは手足が冷たく、震えが出ることもあります。熱が上がりきると、ぽかぽかして汗をかきます。「 熱が38 度だから体を冷やそう」ではなく、「熱の上がり始めは寒いので、掛け物で保温する」「熱が上がりきったら掛け物を外して体を冷やしてみる」など対応を変えてみましょう。

座薬は一時的に熱を下げて体を楽にする薬で、熱の原因を取り除く薬ではありません。体重で処方が変わるので、必ず本人に出された薬を使ってください。発熱以外に発疹や嘔吐(おうと)、下痢などがあり、ぐったりして元気がない時は迷わず受診しましょう。

熱性けいれん

「熱性けいれん」は熱が上がっていく途中で起こる発作性の疾患で、生後 6 カ月から 6 歳に起こりやすいです。突然白目をむいたり、ぴくぴくしたりします。1 ~ 2 分続くことがありますので、すごくびっくりすると思いますが、体を揺らしたり、口の中に物を詰めたりしないで見守り、子どもの様子(白目をむく、ピクピクする、左右対称の動きがあるなど)と、発作の持続時間を観察してください。初めての場合は必ず受診しましょう。

【咳】回数、出やすい時間、痰が絡んでいるかどうか、観察を

咳は、回数や、どのくらい続くのか、乾いた咳なのか、痰(たん)が絡んだ咳なのか、咳が出やすい時間帯はいつかなどをしっかり観察しましょう。

乳児期前期は鼻が詰まると呼吸がしづらくなります。鼻水を取ってあげましょう。寝かせて呼吸が苦しそうな場合は、抱っこしてあげましょう。

子どもは、身体的な特徴から呼吸困難になりやすいです。呼吸の回数が極端に増えたり、減ったりした時は注意が必要です。小鼻が膨らむ、肩で息をする、胸の一部がぺこぺこへこむような異常な呼吸も受診の目安になります。

お子さんをいつも見ていると、「ちょっとおかしいな」という咳はすぐ分かると思います。痰が切れずに咳き込むことを繰り返す、声がかすれて犬がほえるような咳をする、呼吸に合わせて「ヒューッ」という音が聞こえる、顔や手足の色が悪い時は急いで受診しましょう。

一気に悪くなることもあるので、躊躇(ちゅうちょ)しないでください。

【嘔吐】いつ、どのように、どれくらい、どんな物を吐いた?

嘔吐の場合は、いつ、どのように、どれくらい、どんな物を吐いたのかが観察のポイントです。赤や茶色っぽい血液や、黄色や緑色の物が混じっていませんか。吐いた物をビニール袋に入れて受診すると、診断につながります。

「吐く必要があるから吐く」ということも知っておいてください。吐いた後にすっきりして、普段と変わらない様子で吐き気が起こらなければ、 30 分ほど時間を置いて水分から取ってみましょう。

吐くと喉が渇くのでぐびぐび飲みたがりますが、少しずつ飲ませてみましょう。水かイオン飲料をコップに 4 分の 1 ほど入れて飲ませましょう。柑橘(かんきつ)系の飲み物や牛乳は吐き気が増すことがあるので、注意しましょう。

続けて何回も吐く、おなかを痛がって泣く様子があれば、急いで受診しましょう。

【下痢】「水のよう」「泥のよう」「血が混じっている」…いつものうんちとの違いは?

うんちは健康のバロメーターです。「水のよう」「泥のよう」「血が混じっている」など、いつもと違うところをよく見てください。発熱や嘔吐、発疹がないかも確認しましょう。下痢のうんちはビニール袋に入れて受診時に持参しましょう。

お尻がかぶれやすくなります。お尻拭きでごしごしと落とすのではなく、ぬるま湯で洗い流すと、痛みがなく、きれいに取れます。せっけんで何度も洗うと皮膚の保湿ができなくなるので、1 日 1 回にしましょう。

冬になると、ロタウイルスやノロウイルスが流行します。感染力が強く、「家族全員が感染」という話はよく聞きます。うんちや嘔吐物を処理する時はビニール手袋やマスクを使い、手洗いをしてタオルや食器を分ける、適切な消毒薬を用いるなどして感染を防いでください。

【発疹】熱が出た時は発疹も出るかも。アレルギーにも注意!

子どもの感染症は発疹が出る病気が多いです。発疹の大きさや形、水ぶくれができているか、広がっていないか、出たり消えたりするかなどを観察します。発熱を伴って出る発疹もありますので、熱が出た時は「発疹が出るかも」と思って全身の皮膚の観察も行いましょう

自分の住む地域でどんな感染症が流行しているかを知ることが、感染予防につながります。メディアや保育園、幼稚園からの情報にアンテナを張ってみてください。

高知県の感染症情報はこちらから

 

発疹はウイルス性に限らず、植物・動物アレルギー、食物アレルギー、じんましんなどさまざまな原因が考えられます。砂遊びや洗剤がきっかけになることもあります。「いつもと違うことをしたか」を振り返ることも大事です。

発疹が出ている状況で、呼吸が苦しい(子どもが「喉がいがいがする」と言う)、顔色が悪いなどの症状があれば、急いで受診しましょう。

病院に上手にかかるポイント

受診の際、「心配や焦りで、うまく症状を伝えられなかった」といった経験はありませんか?病院に上手にかかるポイントはこちら。

【病院に上手にかかるポイント】

  • 受診時に慌てないように、伝えたいことはメモしておきましょう
  • 受診時の対話はあいさつから始まります。かかりつけ医も決めておきましょう
  • 自覚症状と病歴は大切な情報です。しっかり伝えましょう
  • いつもの子どもの様子を伝えましょう。「いつもと違う」と感じることが大事で、そばにいる家族が一番よく分かっています
  • 症状のこれからの見通しを聞きましょう。「食事はどうしたらいいか」「保育園に行ってもいいか」など生活についても質問しましょう
  • 大事なことはメモを取って確認しましょう
  • 納得できない時は何度でも質問しましょう
  • 検査、治療方法について説明してもらいましょう
  • 知らないことは「知らない」と伝えましょう

上手に伝えられるように、時系列でメモを取っておくと便利です。こちらを参考にしてください。

子どもが家庭に帰り、元気になるのが医療者にとっての最終目標です。「ちょっと気になるな」ということは遠慮せず質問してください。

夜間に困った時の問い合わせ先

子どもは夜間に具合が悪くなることが多いです。「急いで受診するほどの症状ではないんだけど…」「病院に電話していいのかな」と困った時には、「こうちこども救急ダイヤル」「高知県救急医療情報センター」を活用してください。

こうちこども救急ダイヤル

  • 電話:#8000 または 088-873-3090
  • 時間:午後 8 時~翌日午前 1 時まで。年中無休

 

高知県救急医療情報センター

  • 電話:088-825-1299
  • 時間:24時間体制で年中無休

お父さん、お母さんへ

「完璧に育児をこなそう」「失敗したらいけない」と考えている人もいるかもしれません。でも、風邪をひかない子どもはいませんし、下痢をしない子どももいません。子どもはお母さんからもらった免疫の力が落ちた後、病気をする中で抗体を得ながら成長していきます。

ご家族は看病を繰り返しながら、「この症状ならおうちで大丈夫」「これは病院に連れて行こう」と判断できるようになります。子どもと一緒に成長していくのです。

初めての経験で、分からないことがあるのは当たり前です。困った時はぜひ医療者を活用してください。健診や風邪での受診はいい機会です。病気のことだけでなく、成長や発達の疑問、育児の困り事をどんどん聞いてください。

私たち医療者も、育児の楽しいことやうれしいこと、大変なことをご家族と共有しながら、地域で一緒に子どもたちを見守り、育てていきたいと思っています。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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