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男の子の100人に1人に起こる「停留精巣」を知っていますか?|おちんちんの下にある袋に精巣が入っていない疾患について、小児泌尿器科医・波越朋也さんに聞きました

男の子の100人に1人に起こる「停留精巣」を知っていますか?|おちんちんの下にある袋に精巣が入っていない疾患について、小児泌尿器科医・波越朋也さんに聞きました

「停留精巣(ていりゅうせいそう)」という疾患をご存じでしょうか。

男の子の先天的な疾患で、おちんちんの下にある袋(陰嚢=いんのう)に精巣が入っていない状態のこと。男の子の 100 人に 1 人の割合で起こり、決して珍しくないそうです。

高知大学医学部付属病院では、小児泌尿器科医の波越(なお)朋也さんが専門医として診療に当たっています。治療法は?家庭で親が気づく方法は?詳しく聞きました。

小児泌尿器科では15歳以下の泌尿器疾患を扱っています

波越さんは 2010 年に高知大学医学部を卒業し、付属病院で勤務。高知県立幡多けんみん病院、兵庫県立こども病院を経て、現在は高知大で助教を務めています。

専門の小児泌尿器科では、15 歳以下の子どもの泌尿器疾患(腎臓、膀胱、生殖器など)を診断、治療しています。高知県内の小児泌尿器科医は波越さんを含めて 2 人だそうです。

小児泌尿器科医の波越さん。家庭では9歳と6歳のパパです
小児泌尿器科医の波越さん。家庭では9歳と6歳のパパです

波越さんは大学での診療のほか、南国市と香南市の乳幼児健診で小児泌尿器科健診にも取り組んでいます。

小児泌尿器科健診で発見される疾患の一つが「停留精巣」です。

【停留精巣とは】精巣が陰嚢の中に移動してこない疾患です

波越さんによると、停留精巣とは「精巣が陰嚢(いんのう)の中に移動してこない疾患」です。陰嚢とは、いわゆる「おちんちんの下の袋」です。

男の子の精巣は、胎児の時に形成されます。最初はおなかの中にあり、妊娠 8~9 カ月頃に陰嚢に移動します。

イラスト・岡崎紗和
イラスト・岡崎紗和

この時、おなかの中にとどまったままだったり、陰嚢まで降りてくる過程である足の付け根(鼠径部、そけいぶ)や陰嚢の上部などで突っ張って止まったりしている状態が「停留精巣」です。

「停留精巣は意外に多くて、男児の 100 人に 1 人に起こると言われています」と波越さん。

精巣が降りてこない状態が片側のみに起こる場合(片側性)と、両側に起こる場合(両側性)があります。

【確認する方法】リラックスしている時に陰嚢を優しく触ります

発見されるタイミングで最も多いのが乳幼児健診です。診察で医師が生殖器をチェックしているのを覚えている方もいるのでは。この時、医師は「精巣が陰嚢に入っているかどうか」も確認しているそうです。

波越さんによると、陰嚢に精巣が入っていない状態が即、「停留精巣」とは限らないそう。精巣が上がったり下がったりする「移動性精巣(遊走精巣)」という疾患もあるからです。

「赤ちゃんの精巣はまだ小さいので、実はよく動くんです。泣いたり、元気に活動している時は上がっていることもあります」

家庭でチェックする際は、寝ている時やお風呂上がりなどがおすすめ。

「赤ちゃんがリラックスしている時に、陰嚢に優しく触れてみてください。何回触れても精巣が確認できないという時は、停留精巣の可能性があります」

【治療法】生後6カ月を過ぎても降りてこない場合は、手術で治療します

精巣は生後 6 カ月までは自然に陰嚢まで降りてくる可能性があるそうです。

6 カ月を過ぎると、「自然に降りてくる可能性は低い」と判断され、1 歳前後で手術をして治療します。

「手術では、精巣が陰嚢に降りてくるのをじゃましているつっぱりなどを取り、陰嚢の中に精巣を糸で固定します。糸は溶けてなくなります。その頃には精巣が陰嚢の中でくっつくので、上に上がることはなくなります」

【なぜ治療が必要?】将来の生殖機能に影響が出るのを防ぎます

停留精巣の手術は、以前は小学校に上がる前に行われていました。1 歳前後に早まったのは、将来の生殖機能に影響が出るのを防ぐためです。

「1 歳から 1 歳半を過ぎると、精子をつくる過程で影響が出ると言われています。停留精巣を放っておくと、精巣が小さくなってしまい、精子をつくる機能が失われてしまうこともあります」

波越さんは現在、南国市、香南市の乳幼児健診で 10 カ月の赤ちゃんを対象に小児泌尿器科健診を行っています。小児泌尿器科疾患の早期発見、治療を目指す、全国的にも珍しい取り組みです。

「小児泌尿器科健診を始めたきっかけは、停留精巣のお子さんの治療を経験したことでした。5~6 歳で紹介されたお子さんは残念ながら精巣が小さくなっており、残すことができず、取らざるを得ませんでした。そのようなお子さんをできるだけ少なくしたいと思っています」

南国市、香南市で小児泌尿器科健診に取り組んでいます(提供写真)
南国市、香南市で小児泌尿器科健診に取り組んでいます(提供写真)

停留精巣は子育て中のお父さん、お母さんにはあまりなじみのない疾患です。

「ご家庭でリラックスしている時に何回触っても精巣が確認できない場合や、おちんちんで気になること、心配なことがある場合は、ぜひお近くの小児科や泌尿器科に相談してみてください」

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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