【イチ押しニュース】「薄毛は悪いことでも恥ずかしいことでもない」薄毛女子・やまもとありささんが漫画で発信しています
高知市出身の漫画家・やまもとありささんが“薄毛女子”として発信しています。自らの薄毛治療を「おんなの薄毛道」というタイトルで連載し、男女問わず共感を呼びました。
現在は「薄毛は悪いことでも恥ずかしいことでもない」と考え、ウィッグの適切な選び方や楽しみ方を発信しています。薄毛や白髪などが気になってくる子育て世代。「(自分の容姿を)無理に愛さず、私は普通でいいかな」という言葉にほっとします。
“薄毛女子”の生き方は?漫画家・やまもとありささん(高知市出身)ウィッグの楽しみ方、ネットマガジンで発信
(高知新聞 2022 年 2 月 23 日掲載)
自分の価値観大事に
“薄毛女子”としてウィッグの楽しみ方を発信している高知市出身の漫画家がいる。やまもとありささん(35)=東京都。2016年から自身の薄毛治療を漫画にしてきたが、約2年後に治療をやめ、方針転換した。その背景には「薄毛は悪いことでも恥ずかしいことでもない」との気付きがあったという。ウィッグを手に帰高したやまもとさんに話を聞いた。
やまもとさんが友人に薄毛を指摘されたのは21歳。「さほど気にしてなかった」が自分から薄毛を話題にした時、周囲の空気が凍りついた。「男性の薄毛はいじるのに女性の薄毛はタブー?」。違和感を抱き、16年にネットマガジンでエッセー漫画「おんな薄毛道」の連載を始めた。
自らを“薄毛女子=すげじょ”と呼び、「髪の毛を生やすこと」を目的に育毛サロンに潜入したり、食生活を改善したりと髪にいいことを全て試して漫画のネタに。読者の反響は大きく、「人知れず悩んでいた」「元気をもらえた」と男女問わず共感の声が届いた。
だが連載から2年たっても髪の毛は増えなかった。そんな中、全身型の円形脱毛症で髪がない社会学者、吉村さやかさん=東京都=と出会った。髪のない女性の生きづらさを社会学的に考察し、カツラをせずに生きる吉村さんは「薄毛を治すべきという社会があるから生きづらい。踊らされないで生きるのも対処法の一つ」と指摘。
薄毛を「自分の物差し」で考えることを説かれたやまもとさん。「私は最初は薄毛を気にしてなかった。周囲の価値観に合わせてただけ」と気付き、18年春に治療をやめた。「ハゲ」「ヅラ」と表現してきた自虐ネタも「当事者をも傷つけてた」と封印。「薄毛でどう生きるかが大事」と考えを改め、「治すも治さないも自由。薄毛を気にする社会にそもそも問題があることは伝えていきたい」。
「おんな薄毛道」の連載は20年夏に終了。今は薄毛をファッションとして楽しもうと漫画「ウィッグの日常」などで適切な選び方を指南し、ウィッグモデルとしても活躍している。それは「コンプレックスにつけ込まれ、高額なウィッグを買わされる人がいる。安すぎる商品も人毛の不正取引の実態がある」との懸念があるからだ。
「容姿いじり」の世間の反応は昨今、厳しくなり、お笑い芸人の世界でも薄毛男性はネタにしづらくなった。
「自分の容姿をポジティブに受け入れる考えもありますが…無理に愛さず、私は普通でいいかな。見た目にさして意味付けしたくない。価値観を強制しない社会であってほしい」
漫画はやまもとさんのサイト「すげじょのやまもと」で無料公開している。(村瀬佐保)