子育て
アイコン:子育て

「発達障害あるある」をカルタに。ASDのアーティスト・内園明日美さんが制作、全国販売を目指しています

「発達障害あるある」をカルタに。ASDのアーティスト・内園明日美さんが制作、全国販売を目指しています

「あれ、これ、それ、どれ 苦手です。」「空気読め!必死に空中、文字探す。」

「あいまいな指示が苦手」など、発達障害の特性を知ってもらおうと、高知市のアーティスト・内園明日美さんが「発達障害あるあるカルタ」を制作しました。

カラフルでポップな動物アートを描くことで知られる内園さんは、大学卒業後にASD(自閉スペクトラム症)と診断されました。カルタは高知県内で開かれた展覧会で注目を集め、全国の書店で販売していこうと、費用を募るクラウドファンディングが行われています。

ユーモアがあり、障害のある・なしに関わらず「あるある」と感じるカルタの言葉から、自閉症への理解と共感が広がりそうです。

「空気読め!必死に空中、文字探す」 カラフルな動物アートの「発達障害あるあるカルタ」 全国販売を目指す ―EINEE高知

(高知新聞Plus 2023年 7 月 18 日掲載)

ASD(自閉症スペクトラム障害)でありつつカラフルでポップな動物アートを描く高知市のアーティスト、内園明日美(うちぞの・あすみ)さんの「発達障害あるあるカルタ」を、障害がある人たちの芸術活動をサポートしている同市の「アートセンター画楽」が、全国の書店で販売する計画をしています。クラウドファンディングで、カルタの製作費用を募っています。

内園明日美さんの作品「発達障害あるあるカルタ」
内園明日美さんの作品「発達障害あるあるカルタ」

内園さんは大阪市出身。幼い頃から絵を描くことが好きで、独創的な色使いでカラフルな動物たちの絵を描き続けています。海洋生物の研究者になる道を夢見て高知大学に進学、卒業しますが、心の不調をきたして精神科の病院に入院。ASDと診断されます。

内園明日美さん(アートセンター画楽提供)
内園明日美さん(アートセンター画楽提供)

その当時のことを内園さんはこう振り返ります。

「大学に進学したものの、学校生活も人間関係も上手くいかず、みんなの『普通』ができない自分・みんなの『普通』が理解できない自分に疑問を持ちながらも、6年かけてやっと卒業」

「そんなわたしと、ゆっくりじっくり向き合ってくれた主治医の先生に『あなたには、ASD(自閉症スペクトラム障害)っていう特性があるんだよ』って教えてもらったところから。いちばん近くで寄り添って支えてくれた担当の作業療法士さんに『これ(わたしがメモしてたASDによる自分の特性)、カルタにしたら絶対面白いやん』って言ってもらったところから。この物語は始まったの」(カルタの「まえがき」より)

内園さんは26歳の時から、本格的に作品として絵の制作を開始。2021年から「アートセンター画楽」が、内園さんの作品制作と発表をサポートしています。これまで、スピリットアート(高知県障害者美術展)に入選したり、カラーマーカーの「コピック」を使用した作品を審査する「コピックアワード」で2021年に審査員賞を受賞したりするなど、作品は高く評価されています。

独創的な色使いで描かれた内園さんの作品(アートセンター画楽提供)
独創的な色使いで描かれた内園さんの作品(アートセンター画楽提供)

内園さんのカルタには、アミメキリンやグリーンイグアナ、ザトウクジラなど、動物や海の生きものたちが絵札に描かれています。読み札は「あれ、これ、それ、どれ 苦手です。」「空気読め!必死に空中、文字探す。」「さぼってません。時間が来たので、終わりです。」など発達障害の特性やエピソードを書いており、それぞれに解説文もついています。

例えば「あ」のアミメキリンの解説文では「『これするの、なんかあれやから、それでもいいし、どれでもいいよ』とか、たまに言われる。わたしは、その文字の羅列を一生懸命文章にして、意味を理解しようとしてみる」など、自分の特性を詳しく紹介しています。

カルタの「あ」、アミメキリンの絵札、読み札の原画と解説文(アートセンター画楽提供)
カルタの「あ」、アミメキリンの絵札、読み札の原画と解説文(アートセンター画楽提供)

内園さんはカルタに込めた思いを、自身の言葉でこう語っています。

「このカルタをつくる時、わたしがいちばん大切にしたのは『発達障害を理解してもらうんじゃなくって、発達特性を知ってもらおう』ってことだったのね。なぜなら。“障害”って言葉は、なぜか“できない”に結びついちゃうことがいっぱいあるけど、“特性”って言葉は、ちょびっとだけども“できる”に繋がっていくんじゃないかなって思ったから」(カルタの「まえがき」より)

「障害の特性を伝える」と言うと、真面目な感じを想像してしまいますが、読み札や解説文など内園さんの言葉からはユーモアも感じられます。障害の有無にかかわらず、思わず自分にも「あるある」と感じさせられるものも。

カルタの「さ」、ザトウクジラの絵札、読み札の原画と解説文(アートセンター画楽提供)
カルタの「さ」、ザトウクジラの絵札、読み札の原画と解説文(アートセンター画楽提供)

内園さんを見守り続けている画楽の代表、上田祐嗣さん(59)は内園さんについて「大阪のおばちゃんのようなノリを持ち、少女のようなかわいらしさもあって、アンバランスな面白さがある」と話し、その作品については「一個一個の色は独立しているけど、並び合っていることで別の色を感じさせる。それが彼女の人となりを現しているし、人の興味関心を引ける力を持っている」と魅力を語ります。

ASDで悩んだり、苦しんだりする人たちへの理解が進むのではないかと考え、カルタを全国の書店で販売するという考えに至りました。集まった費用はカルタ5千部を印刷する初期費用の一部に充て、全国の書店への配本を目指します。

昨秋には、高知県内のスターバックスコーヒー6店舗でカルタの展覧会を開催。約3万人が来場し、50人以上が画楽のネットショップでカルタの購入予約をしたそうです。上田さんは、展覧会で内園さんの言葉に触れた人は障害者、健常者を問わず「いや、私もあるわ」と言っていたといいます。

「障害者、健常者関係なく部分部分の特性を見ていたら『確かにこういうところって私にもあるわ』というような共感が生まれる」と語り、「障害があるって特別なことじゃないんだと、みんなに気付いてもらえたら。そうしたら内園さんみたいな自閉症の人たちに対する理解が深まり、彼女たちが過ごしやすい暮らしやすい社会になる」

カルタの言葉に共感する人が全国に増えてほしい。そう願っています。(楠瀬健太)

クラウドファンディングの目標額は200万円。8月31日まで募っています。詳しくはこちら

この記事の著者

ココハレ編集部

ココハレ編集部

部員は高知新聞の社員 6 人。合言葉は「仕事は楽しく、おもしろく」。親子の笑顔に出合うことを楽しみに、高知県内を取材しています。

関連するキーワード

LINE公式アカウントで
最新情報をチェック!

  • 週に2回程度、ココハレ編集部のおすすめ情報をLINEでお知らせします。

上に戻る