被災者と支援者を演じる?!ロールプレイから、防災力を高めるコミュニティーを考えました|「女性防災プロジェクト」講座を受けてみた③
「災害に備えなきゃ」と思うだけでは…。こうち男女共同参画センター「ソーレ」の5回講座をココハレ編集部員がレポートします
南海トラフ地震、台風、豪雨…ご家庭で災害への備えはできていますか?子育て中は毎日忙しく、「しなきゃいけない」と思いつつ十分にできていないという人もいるのではないでしょうか。
こうち男女共同参画センター「ソーレ」で毎年開催されている「女性防災プロジェクト」講座。備えたい気持ちに行動が伴っていないココハレ編集部員で 2 児の母・門田が全 5 回を受講し、感じたこと、学んだことをレポートします。
第 3 回講座は 2022 年 7 月 30 日に開かれました。「防災力を高めるコミュニティー作り」というテーマで考えたのは、「地図や事例の向こうにある生活」。過去の災害で報告された困りごとの事例集から脚本を考え、ロールプレイで演じました。「演じるの?!」と戸惑いながら取り組む中で、見えてきたこととは?
「ハザードマップの向こうにある生活」とは?
第 2 回講座では避難所運営ゲーム「HUG(ハグ)」に挑戦。次々と避難してくる被災者に対応しながら、安全・安心な避難所を作る難しさを体験しました。
今回はさらに一歩進み、「ハザードマップの向こうにある生活を考えましょう」と講師の神原咲子さん(神戸市看護大学教授)。「ロールプレイで寸劇をやっていただきます」との言葉に、受講生がどよめきました。
受講生に配られたのは高知市潮江地区の津波ハザードマップ・緊急避難場所編(自然地形の高台)。潮江防災士会の皆さんが今年 5 月に発行した冊子で、緊急避難場所までの道のりを防災士が調査し、場所や入り口、通路などを写真とともに紹介しています。
神原さんからは避難所と避難場所の違いが説明されました。
- 避難場所…一時的に逃げて、命を守る場所
- 避難所…被災後に少しの間、生活をする場所。高台などにない場合があり、発災直後に逃げると命を落とす可能性があります
神原さんから出されたお題は「潮江地区のハザードマップ上で 72 時間生き残るためにどうする?」。潮江地区の住民と、津波で浸水しない他の地区の住民とに役割を分け、必要な情報や、必要とされる支援を考えました。
私は潮江地区住民のチームに入りました。ひとまず、全員でハザードマップを眺めました。
ほとんどの避難場所が浸水地域にあります。「これは…何から手を付けましょうか…」と皆で考え込みました。
生き残るために必要な情報は?
これまでは「ここは水につかる」「ここはつからない」という視点で見ていたハザードマップ。「72 時間生き残る」というミッションを与えられると、見方が変わりました。チーム内ではこんな意見が出ました。
【浸水地区で 72 時間生き残るために欲しい情報】
- 平面地図だとイメージがわかない。立体的に見ておきたい
- 各避難場所の高さが知りたい
- 津波避難ビルって勝手に入って大丈夫なの?
- 津波避難場所に水や食料、トイレなどの備蓄はあるの?ないの?
- 津波が来てからどれぐらいで水が引いて、外に出られるの?
- 最寄りの避難所はどこ?
出し合った意見をまとめて発表しました。浸水地域外の住民役のチームからは次の意見が出ました。
【浸水地域で避難した人たちのために必要な支援】
- りょうまスタジアムが広いので、炊き出しや自衛隊による支援が展開できる
- 水が引いた後の小学校をサテライトとして、支援物資を運び込む
- 利用できるスーパー、薬局を調べて情報を整理しておく
- 保育園などを活用して託児所や託老所を設置すれば、子どもや高齢者を預けて片付け作業に取りかかれる
- 女性専用の場所を設け、ナプキンや下着を用意しておく
役割を与えられたことで、浸水地域外のチームの支援も具体的になりました。
「同じハザードマップでも、目的によって必要な情報が違うので、地図自体が変わります」と神原さん。仮設トイレの設置など、刻一刻と変わる支援情報を整理するため、地図アプリなどを利用するといいそうです。講座では「まちケア」が紹介されました。
災害時の困りごと、具体的に想像できてる?演じることで考えました
国内では毎年のように災害が起こり、被災者が経験を語っています。「過去の災害に学ぶ」と言われますが、私たちは本当に学んでいるのでしょうか。
「事例に書かれた文字情報をどこまで理解できているのかを考えてほしい」と神原さん。講座の後半は東日本大震災での困りごとをつづった事例集を使い、グループでロールプレイに取り組みました。
配布された事例は八つ。自由に選び、「被災者」「支援者」などの役を決め、脚本を考えます。
私は被災者役に決まりました。選んだ事例がこちら。乳児や障害のある子どもを抱え、孤立しているお母さんです。
確かに、事例集の文章を読めば「困っている」ということは分かりますが、きれいにまとまっているので「困っている」で終わってしまいます。例えば記事を書くならば、具体的なエピソードが必要なところです。
私は過去に取材したお母さんたちの話を思い出しながら、「子どもは中学生」「避難所で落ち着けず、他の被災者に『うるさい』と怒られてパニックになった」「迷惑を掛けたので、避難所を出ざるを得なかった」などの設定を考えました。
グループ内では「子どもをちょっと預かってくれる場があればいいね」「しんどい思いをしたお母さんの話をしっかり聞く人も必要」「中学生の子どもがどうしたいかも確認しないと。専門家が付き添って、安心して過ごせる場所があればいいけど」と話し合いました。
「大変でしたね。○○しましょう」の「○○」を準備する
発表では各チームがさまざまな場面を演じました。
被災して困っている人への対応は「多種多様」だと神原さんは語ります。
「寒い中、避難してきた人に『あったかいものを持ってきますね』と声を掛けたのなら、あったかいものが必要です。ないのならば、事前に準備しておかないといけない。この場面に対してどう備えるかを考えることが大事だし、『こうすればいい』という方法が分からなければ、勉強が必要です」
HUGが机上での避難所運営だったのに対し、今回のロールプレイでは演じることで体も使いながら、災害後の生活をイメージできました。自分や家族の状態に合わせて具体的に備えなければ…とあらためて感じた講座でした。
「女性防災プロジェクト」の第 4 回は「災害時の自立の重要性」をテーマに 8 月 27 日に開かれます。引き続き、ココハレで詳しくレポートしていきます!
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