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働きながら子育てしやすい職場環境とは?「高知家 出会い・結婚・子育て応援フォーラム2021」が開かれました

働きながら子育てしやすい職場環境とは?「高知家 出会い・結婚・子育て応援フォーラム2021」が開かれました

男性の育休や復帰後の働き方について、企業担当者や学生が意見を交わしました

働きながら子育てしやすい職場環境づくりを考える「高知家 出会い・結婚・子育て応援フォーラム2021」が高知市で開かれました。

高知県内や徳島県の企業の担当者らが育休の取得推進などの取り組みを紹介。大学生も参加し、若い世代が「働きたい」と考える職場について語りました。

「働きながら子育てしやすい職場」と聞くと「出産後の女性の働き方」というイメージがありますが、フォーラムで主に語られたのは「男性の育休」について。男女関係なく、多様な働き方が選べる職場が求められています。

「男性の1カ月以上の育休」を当たり前に

フォーラムは高知県の主催で 2021 年 12 月 2 日に開かれました。

2022 年 10 月には「男性版産休」が改正育児・介護休業法で新設されます。妻の出産後、8 週間は夫が育休を柔軟に取得できるようになり、企業には取得の働き掛けが義務付けられます。

フォーラムでは浜田省司知事があいさつしました。県内の企業の男性の育休について、県は 2024 年の取得目標を「 30 %」と設定しています。

2020 年は「女性の 97.6 %に対し、男性は 15.8 %だった」そう。浜田知事は「育休は中身の充実も必要。男性が 1 カ月以上育休を取り、妻のサポートをすることを当たり前の世の中にしたい」と語りました。

「出産後も社会で活躍したい」という社員が辞めなくていい職場に

「育休を取得したくても取れない、取りづらい」という人は少なくありません。フォーラムでは、子育てと仕事の両立支援に力を入れている企業の取り組みを学びました。

基調講演を行ったのは徳島県の「ネオビエント」の代表取締役・藍原理津子さん。ネオビエントは「あすたむらんど」「渦の道」などの施設運営、コンテンツ制作、イベント事業などに取り組んでいる企業です。2005 年に藍原さんら 3 人で設立し、社員は現在 110 人となりました。

ネオビエントの藍原理津子さん
ネオビエントの藍原理津子さん

「男性も女性も子育てしやすい職場」を目指すきっかけになったのが、契約社員だった女性Aさん。妊娠後、夫から退職を促されていましたが、「出産後も社会で活躍したい」と考え、「退職せずに働きたい」と藍原さんに相談しました。

「Aさんは申し訳なさそうに伝えてきました。社員の出産は初めてで、会社でサポートすることを決意しました」と藍原さん。助成金を活用して代替要員のパート社員を雇用し、乗り切りました。

Aさんはその後 2 回出産し、その都度、育休を取得。現在はAさんもパート社員も正社員となり、管理職として活躍しています。

業務の平準化、連絡体制の確立…管理職の男性も育休取得

ネオビエントは 2019 年、働きながら子育てを応援する企業として厚生労働省が認定する「プラチナくるみんマーク」を取得しました。

取り組みを進める中で、男性社員のBさんが育休の取得を希望しました。男性では初めてで、しかも期間は 6カ月間。「Bさんは科学館の展示グループ長。専門性が高く、1 人でも欠けるとダメージが大きい部署の責任者です。社内では『応援したいけど、6 カ月はないだろう』という意見も出ましたが、申し出が早かった。準備期間もあり、本人の意思を尊重しようということになりました」

責任者であるBさんの仕事は、他の人に振り分けられる業務と、そうはできない業務があります。ネオビエントでは次のような対策を取りました。

  • 業務の平準化や業務効率の見直し…業務を 1 人担当制にすると属人化するので、複数担当制にする
  • 連絡体制の確立…メールやSNSを活用する。Bさんの希望もあり、週 1 回 4 時間勤務して部下の困りごとを聞く
  • グループ内で相互協力する
  • 他部署に任せられる仕事は他部署へ
  • 権限を移譲する

Bさんの育休によって、「男性が長期間休んでも職場がうまく回り、評価されている」という姿を見た他の男性社員の意識が変わりました。「育児休業できる機会は貴重で、体験したい」と考える社員が増えました。

ネオビエントでは育休の取得を進めるだけでなく、就学前の子どもを養育する社員向けの短時間勤務制度やフレックスタイム制度を導入しています。「短時間勤務の場合も、給与の減額や賞与査定には影響させない。あくまで『社員がどれだけ頑張ったか』で判断しています」。「育児や私的な用事で気軽に使えるように」と、2 時間単位で有休が取得できるようにもしました。

男性も女性も子育てしやすい職場づくりを目指す背景には、自身の妊活での経験があります。「社員には仕事とプライベートの選択に苦しんでほしくない」「社員みんなに、自分が望んだ時、望んだ通りに妊活や育児をしてほしい」と願う藍原さんは、最後にこう語りました。

「男女に能力の差があるわけではない。『男性らしさ』『女性らしさ』ではなく、『その人らしさ』です」

「誰もが休め、誰もが補える環境を、ハードである仕組みとソフトである社風の両面でつくることが、最終的には強い経営体質をつくります」

育休を取得した男性は「24時間子どもと一緒に過ごせた」「妻の大変さが分かった」

男性の育休では「同僚に負担がかかる」「給与面が心配」「復帰後の働き方はどうなる?」という不安や疑問がまだまだ根強いのが現状です。パネルディスカッションでは、男性の育休取得に力を入れている技研製作所(高知市)、井上石灰工業(南国市)の担当者らが事例報告を行いました。

両社では取得を進めるため、社員への説明を行った上で、該当する社員には「育休を取るの?」ではなく、「育休をいつ取るの?」と声を掛けています。取得者からは「妻の大変さが分かった」「出産後に疲弊した妻をサポートできた」などの声が上がっています。

9 カ月間の育休を取得した技研の男性社員は「 24 時間子どもと一緒に過ごせた。写真もたくさん残せたし、寝返りする瞬間も見れた」と、育児に 100 %集中できた経験を振り返りました。復帰後は「時間感覚が変わった」そう。「今は共働きで、時間の貴重性を感じています。育児や家事での時間管理や『何を優先してどう対処するか』ということは仕事にも生かしています」と話していました。

パネルディスカッションでは「『前例がない』とやめるのではなく、一歩踏み込める勇気が必要」という意見が印象的でした。

育休の取得や、仕事と子育ての両立には職場の理解と環境づくりが不可欠です。さらに、「育休を取得したい」「今は子育て中だから、こういう働き方をしたい」という意思を職場に伝えることが、多様な働き方を生み出す一歩になります。

多様な働き方は、病気の人や介護をしている人など子育て中の人に限らず必要としています。男性・女性、子育てをしている・していないに関わらず、誰もが生き生きと働ける環境になればとあらためて感じたフォーラムでした。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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