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災害時、赤ちゃんの命をどう守る?|助産師が伝える、母乳育児と防災の切っても切れない関係 |「ゆるりとHappy子育て」⑬助産師・森木由美子さんが子育てを楽しめる知識、技術を紹介します

災害時、赤ちゃんの命をどう守る?|助産師が伝える、母乳育児と防災の切っても切れない関係 |「ゆるりとHappy子育て」⑬助産師・森木由美子さんが子育てを楽しめる知識、技術を紹介します

「子育てを楽しみたいけれど、うまくいかない」「かわいいはずのわが子が、かわいく思えない」。そんな思いを抱えていませんか?

コラム「ゆるりとHappy子育て」では助産師の森木由美子さんが「これを知っておくと子育てがもっと楽しめる」という知識や技術を紹介していきます。

乳児を抱えるパパ、ママは万一の災害にどう備えておくべきでしょうか。特に母乳、ミルクを与えられるかどうかは死活問題となります。

森木さんは、母乳育児がスムーズに継続できる環境を守ることが「限られたミルクを本当にミルクを必要とする赤ちゃんへ届けることができる」と訴えます。

「ゆるりとHappy子育て」はこちらから

 

 

熊本地震の現場で見た「命の力」

「母乳でもミルクでもいい」

子育てをしていると、よく耳にする言葉です。母乳でもミルクでも、赤ちゃんが元気に育つことが一番大切。お母さんだけに負担をかけず、家族みんなで子育てをすることも同様に大切です。私自身も、その考えには大賛成です。

でも、助産師として、もう一つ伝えたいことがあります。

それは、「母乳育児を守ることは、実は大切な防災の一つになる」ということです。

高知県では、南海トラフ巨大地震への備えが常に求められています。

先日、熊本のクリニックに勤務する助産師の友人と話す機会がありました。この夏の熊本地震を振り返る中で、彼女が改めて「母乳ってすごい」と感じた出来事を聞きました。

地震が起きたとき、彼女は分娩室にいました。2~3分おきに陣痛が来て、間もなく赤ちゃんが産まれそうな産婦さんをケアしていると、大きな揺れが襲いました。

すると、その瞬間、陣痛がピタリと止まったそうです。揺れが収まり、産婦さんが「もう産めるね」と安心すると、再び陣痛が始まり、赤ちゃんは無事に産まれました。

パパ、ママと触れ合うことが赤ちゃんの安心につながります(写真は森木さんによるベビーマッサージ教室より。本文とは関係ありません)
パパ、ママと触れ合うことが赤ちゃんの安心につながります(写真は森木さんによるベビーマッサージ教室より。本文とは関係ありません)

偶然だったのかもしれません。けれど、その出来事は、命が誕生する瞬間に立ち会う助産師だからこそ感じる、人の身体の不思議さと力強さを教えてくれたそうです。

さらに彼女が実感したのが、お産の後のことでした。大きな余震が続く不安な状況でも、お母さんと赤ちゃんが離れることなく一緒に過ごし、安心できる環境が保たれたことで、おっぱいがとてもよく出たのだそうです。

「安心・安全」を感じられることは、出産だけでなく、産後の授乳にも大きく関わります。

「安心・安全」が授乳の力を引き出す

「災害時の強いストレスで母乳が止まってしまう」と言われることがあります。母乳が出なくなったように感じても、実際には母乳そのものが作られなくなったわけではありません。

一時的に、母乳が外に出にくくなっている状態と考えられています。

大きな緊張や恐怖を感じると交感神経が優位になり、母乳を外に押し出す「射乳反射」に関わるオキシトシンの働きが抑えられるためです。

お母さんと赤ちゃんが一緒にいて、肌を触れ合わせたり、赤ちゃんが欲しがるときに授乳を試みたりすること。

そして、周囲の支えによって「ここは安全だ」と安心して過ごせる環境が整うことで、母乳は出やすくなります。だからこそ、災害時も「安心して授乳できる環境」を守ることが重要なのです。

おっぱいやミルクを飲んで少しずつ成長していきます
おっぱいやミルクを飲んで少しずつ成長していきます

災害が起きれば、断水や停電、物流のストップなど、普段当たり前にできていることができなくなります。

その中で母乳には、「水や電気、消毒、物流に左右されにくい」という大きな強みがあります。だからこそ、災害が起きてから焦って母乳を守るのではなく、普段から母乳育児を支える環境をつくっておくことが、そのまま災害への備えになるのです。

母乳育児を守ることが、ミルクで育つ赤ちゃんを守る

非常時に母乳で育つ赤ちゃんが、そのまま母乳を飲み続けられる環境を整えることは、ミルクを必要とする赤ちゃんを守ることにもつながります。

災害時、水や電気、粉ミルクや液体ミルクなどの支援物資には限りがあります。母乳育児がスムーズに継続できれば、限られたミルクや貴重な水を、本当にミルクを必要とする赤ちゃんへ届けることができます。

「母乳かミルクか」ではなく、どちらの赤ちゃんも守るために、避難所などでも母子が一緒に安心して過ごせる場所を確保し、平時から母乳育児を支える仕組みが必要なのです。

周囲やSNSに流されず

お父さんやご家族ができる育児支援は、ミルクをあげることだけではありません。お母さんが安心して授乳できる環境を一緒につくることも、大切な育児参加です。

今、ネットやSNSには授乳に関するさまざまな情報があふれています。だからこそ、周囲の意見やSNSの情報に流されるのではなく、まずは母乳や授乳について正しい知識を知ってほしいと思います。

その上で、「自分はどう育てたいか」を、お母さんやご家族が納得して選択できること。そして、「母乳で育てたい」と願う人が、安心してその選択を続けられる環境があること。

そうした選択が尊重されることが何より大切です。

 

ママの笑顔が一番の心の栄養です
ママの笑顔が一番の心の栄養です

「母乳でもミルクでもいい」。

その言葉の先に、正しい知識を持ち、周囲に振り回されず、自分がどうしたいのかを安心して選べること。

そして、母子が一緒に安心して過ごせる環境を守り、母乳育児を支えることが、いざというときに地域の赤ちゃんみんなを守る防災にもつながること。子育て中のご家族や周りの方に、そんな視点も知っていただけたらうれしいです。

 

 

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この記事の著者

ココハレ編集部

森木由美子

鹿児島市生まれ。総合病院や個人病院で助産師、看護師として勤務。結婚後、高知県へ移住しました。
自分自身の出産、子育てを通して、産前産後のケアの重要性を痛感し、2015 年に助産院はぐはぐを開業。出張での産後ケアに取り組んでいます。
2 児の母。趣味はピアノ、クラリネット演奏。

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