ノロウイルスの症状は?嘔吐・下痢への対応は?|「教えて!吉川先生」感染性胃腸炎
子どもの病気やけがについて、ココハレかかりつけ小児科医・吉川清志先生が解説します
子どもの急な発熱に「さっきまで元気だったのに…」と焦ったり、病気やけがについて「本当に正しい情報なの?」と迷ったりした経験はありませんか?
「教えて!吉川先生」では、高知県内でたくさんの子どもたちを診察してきた小児科医、吉川清志(きっかわ・きよし)さんが「ココハレかかりつけ小児科医」として、子どもの病気やけがについて解説します。
今回は「感染性胃腸炎」。ノロウイルス、ロタウイルスなどが原因で起こる嘔吐(おうと)、下痢について聞きました。
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目次
「感染性胃腸炎」とは?
「感染性胃腸炎」は胃の症状として嘔吐し、腸の症状として下痢します。腹痛や発熱など他の症状は、ウイルスや細菌の種類によってある場合とない場合があります。
【子どもに多い感染性胃腸炎】
- ウイルス…ノロウイルス、ロタウイルス
- 細菌…カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌
ウイルスによる胃腸炎は嘔吐から始まり、下痢が起こります。嘔吐だけで半日くらいでおさまる場合もあります。下痢はさらさらとした水様性で、通常血液は混じりません。強い腹痛はないことが多いです。
細菌による胃腸炎は、嘔吐は少なく腹痛が強いです。血便となることがあり、発熱も見られることが多いです。
どうやって感染しますか?
「経口感染」といって、ウイルスや細菌を含む食べ物が口の中に入る、ウイルスや細菌が付いた物を触った手を介して口に入ることで感染します。
流行する時期は?
ノロウイルスは 12 月から 2 月、ロタウイルスは 2 月から 4 月、細菌は夏場が多いですが、最近は季節性がなくなってきています。
治療方法は?
症状を和らげる対症療法を行いながら、自分の力で治るのを待ちます。脱水が強い場合は点滴をします。吐き気に対しては吐き気止めの座薬や内服薬を、下痢には整腸剤を処方しますが、一番大切なことは水分摂取です。
吐いた後にすっきりして、水分が取れていていれば問題はありません。水分は、塩分と糖分が取れる経口補水液やスポーツドリンクを飲ませてください。コップに 5 分の 1 程度の量から始め、飲ませた後は 30 分様子を見てください。嘔吐がなければ少しずつ増やし、嘔吐が見られたら、水分を欲しがっても 30 分くらい待ってから再度飲ませてください。何度も繰り返す嘔吐や下痢がなければ、脱水にはならないので安心してください。
「嘔吐の回数が多い」と感じる時は注意が必要です。例えば数時間に 5 ~ 10 回以上吐いたり、嘔吐後も顔色が白い、しんどくて動けないという時には急いで受診が必要です。
急がない場合でも、嘔吐、下痢が半日以上続くようなら受診しましょう。脱水の目安に、体重の減少があります。10 キロの子どもが 9.5 キロになっていたら、「5 %の脱水」と判断しますので、普段の体重も知っておいてください。
診察の際、医師に伝えた方がいい情報は?
嘔吐、下痢をした時間と量を記録しておいてください。回数や間隔を把握でき、脱水の程度の判断に役立ちます。体重が減少しているか、水分が取れているかも教えてください。
便の色、状態(さらさら、ねばねば、泥のような状態など)、血が混じっているかどうかなども記録が必要です。以前は便が出たおむつを持ってきてもらっていましたが、今は感染リスクがあるのでスマホの写真でも大丈夫です。かかりつけの先生に聞いてみてください。
何を食べさせたらいいですか?
はじめは、経口補水液やスポーツドリンクなどの水分から。食欲が出てきたら、おかゆなど炭水化物主体の食事を取ります。食欲に合わせて、火を通したものを食べさせてください。油ものや生ものは元気になってからにしましょう。
「便が軟らかいから」とおかゆを続けると、ずっと軟らかいままです。「元気になったら下痢であっても食事を元に戻す」ということを覚えておいてください。
ミルクは薄めなくてもいいですが、ミルクに含まれる乳糖の影響で下痢が続くことがあります。この場合は受診してください。
予防方法はありますか?
感染症の予防は「感染源の除去」「感染経路の遮断」「免疫力」の三つです。
- 感染源の除去…食べ物に火を通す。肉を切ったまな板や包丁をそのまま野菜などの生ものに使わない
- 感染経路の遮断…調理・食事前、トイレの後にしっかり手を洗う
- 免疫力…しっかりと休養を取り、体力をつける
感染を広げないため、感染した人の便や嘔吐物には直接触れないでください。使い捨て手袋やマスク、エプロンを着け、次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤を使い、キッチンペーパーで拭き取りましょう。
ロタウイルスにはワクチンができ、重い症状で入院する子どもが減りました。現在は定期接種になり、生後 6 週から接種できます。注射ではなく、飲むワクチンです。
吉川先生より「恐れ過ぎたり、自分を責めたりしないで」
ノロウイルス、ロタウイルスが家族内で広がり、全員に症状が出て大変だったということはよくあります。感染性胃腸炎は新型コロナウイルスと違い、症状が出てから他の人に感染します。家族内で誰かに症状が出たら、全員で防御態勢を取ってください。
便や嘔吐物に直接手を触れてはいけません。使い捨て手袋などを普段から準備しておいてほしいですが、とっさの時には間に合わないこともあると思います。その場合は処理後にしっかり手を洗えば大丈夫です。
どんなに気を付けていても、子どもは感染症にかかります。恐れ過ぎたり、自分を責めたりせずに対応してくださいね。小学校に入学する頃にはほとんどかからなくなりますので、それまで待ってください。