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発達に特性のある子どもへの対応…保護者、先生、専門職が一緒に支えるために必要なことは?|子どもを中心とした支援の輪をつくり、広げていく工夫を話し合いました

発達に特性のある子どもへの対応…保護者、先生、専門職が一緒に支えるために必要なことは?|子どもを中心とした支援の輪をつくり、広げていく工夫を話し合いました

発達に特性のある子どもを支えるために必要なのが、保護者、園や学校の先生、病院や福祉事業所などの専門職との連携ですが、思うように進まないこともあるそうです。

子どもを中心とした支援の輪をつくり、広げていくために必要なこととは?

高知市内で開かれたシンポジウム「繋がる・ひろがる はじめの一歩~発達凸凹よっといで~」から、保護者、先生、専門職の発言を紹介します。

視覚支援、ストレス解消、デジタル機器…発達に特性のある人を支えるグッズが展示されました

ココハレ編集部が今回取材したのは、発達に特性のある人への支援を考えるイベント「発達凸凹よっといで」。2025 年 11 月 30 日に高知市帯屋町 2 丁目の帯屋町チャコールで開かれました。

主催したのは「TOMOはうす」の皆さん。自閉スペクトラム症(ASD)など特性のある子どもや保護者を支援しています。

会場には、家庭や学校で使われている視覚支援グッズやストレス解消グッズ、デジタル機器のほか、特性のある子どもたちの作品も展示され、訪れた人が理解を深めていました。

「発達凸凹よっといで」の会場
「発達凸凹よっといで」の会場
ストレス解消グッズ。じっとしているのが苦手な人が握ったり眺めたりすると、集中が他に向くそうです
ストレス解消グッズ。じっとしているのが苦手な人が握ったり眺めたりすると、集中が他に向くそうです
やることリスト。終わったらカードを箱にしまうことで、順序や見通しが視覚的に伝わります
やることリスト。終わったらカードを箱にしまうことで、順序や見通しが視覚的に伝わります
こちらは相手に気持ちを伝える「言葉変身ボード」。「疲れた」難しい」といった気持ちを全部「寒い」で表す子どもと一緒に作ったそうです
こちらは相手に気持ちを伝える「言葉変身ボード」。「疲れた」難しい」といった気持ちを全部「寒い」で表す子どもと一緒に作ったそうです
お弁当を包むのって実は難しい!手先の細かい動きが苦手な子どものために作られました。薄手の生地を使い、布の結び目の色を変えて視覚的にも分かりやすくしたそうです
お弁当を包むのって実は難しい!手先の細かい動きが苦手な子どものために作られました。薄手の生地を使い、布の結び目の色を変えて視覚的にも分かりやすくしたそうです
「ちゃんと定規を使いなさい」と言いがちですが、実は定規が使いづらいのかも
「ちゃんと定規を使いなさい」と言いがちですが、実は定規が使いづらいのかも
小学4年生の作品。カミキリ虫は2年生の時に描いたそうで、細かい!
小学4年生の作品。カミキリ虫は2年生の時に描いたそうで、細かい!

【アーリーバードプラス】「保護者と先生」「保護者と専門職」が一緒に子ども理解を進めています

TOMOはうすでは支援の一つとして、イギリス自閉症協会が開発したプログラム「アーリーバードプラス」の講習を 2019 年から続けています。

アーリーバードプラスは保護者や支援者向けのプログラム。発達障害の特性を理解し、よりよいコミュニケーションを図り、問題行動を未然に防いだり、対処したりする方法が学べます。2025 年までに 15 グループ、148 人が受講しました。

シンポジウムにはこのうち 5 人が登壇。TOMOはうす代表の久武夕希子さんが司会を務めました。

  • 坂本智香さん…保護者。特別支援学級で学ぶ小学 5 年生の男の子のお母さん。
  • 上村啓太さん…一宮東小(高知市)の教諭。特別支援コーディネーターとして通級指導教室を担当。1 歳と 0 歳のお父さん。
  • 山口恵梨さん…ふたば保育所(仁淀川町)の所長。
  • 吉本文香さん…多機能型児童発達支援事業所「アルカラ」(高知市)の児童発達支援管理責任者、訪問支援員。
  • 岡林美由紀さん…もみのき病院(高知市)の児童発達支援事業所「もみのきっず」の作業療法士。
シンポジウムに登壇した皆さん
シンポジウムに登壇した皆さん

アーリーバードプラスを受講したきっかけはそれぞれ違いますが、保護者は園の先生と、専門職は担当する子どもの保護者と一緒に受講していました。「保護者と先生」「保護者と専門職」という組み合わせで一緒に学べるのがメリットだそうです。

シンポジウムは「アーリーバードを受講してよかったこと」から始まりました。

坂本さんは、息子が 3 歳の時に園から「集団行動ができない」と報告を受けました。息子は感覚過敏や偏食、好きなことを延々と繰り返すという特性に加えて、「身支度の途中でいとんなものが気になって止まる」「激しく怒る」などの「好ましくない行動」も見られました。

担任の先生、園長先生と一緒に受講した坂本さんは、受講してよかったことをこう語りました。

「やり方さえ間違えなければ、好ましくない行動を減らし、好ましい行動を増やすことができると聞き、その即効性に驚きました。小学校に入るのが心配でしたが、子どもがスムーズに適応できました」

保護者の坂本さん。子どもが4歳の時にアーリーバードプラスを受講しました
保護者の坂本さん。子どもが4歳の時にアーリーバードプラスを受講しました

日常生活では、気持ちや言葉を数字で見える化する「気持ちの温度計」を使ったり、準備の途中で気が散らないように関係のない物を布で隠したり。

「子どもに選んでもらって、自分の意思でやってもらうこともしています。子どもとは良い関係を築き、維持できていると思っています」

「気持ちの温度計」は「ちょっと」が分かりづらい人のために開発されました
「気持ちの温度計」は「ちょっと」が分かりづらい人のために開発されました

【先生が学ぶ】子どものしんどさを想像し、支援の方法を考えるようになりました

アーリーバードプラスのようなプログラムを保護者が受講する意義は分かりますが、先生や専門職の皆さんにとっては?

小学校教諭の上村さんは「保護者と一緒に支援し、成長の喜びをシェアできた」と振り返りました。

「教員として『僕が何とかする』と思ってやってきましたが、保護者と支え合うことで、普段の学校教育でできる以上のことができたと思います」

小学校教諭の上村さん。「特性の理解から具体的な支援まで学べました」
小学校教諭の上村さん。「特性の理解から具体的な支援まで学べました」

保育所長の山口さんも、保護者との「共通理解」と「喜びの共有」を挙げました。

「例えば、子どもがパニックを起こした時には、これまでの経験を元にやり過ごしていましたが、ASDの子どもの行動を理解し、子どもにとってすごく不安なことだと分かりました。子どものしんどさを想像しながら、支援の方法を変え、試すようになりました」

保育所長の山口さんは「保育士の成長にもつながりました」
保育所長の山口さんは「保育士の成長にもつながりました」

発達障害の特性や特性の度合いは、一人一人異なります。園や学校の先生や専門職の皆さんはプロですが、一人一人に合った支援を考える際には、保護者との協力が必要なんですね。

上村さんは「保護者と一緒に特性を学んで、理解して、家庭や学校で実践して、うまくいかなければ一緒に考えました。家庭のパワーは絶大でした」と語りました。

【学んだことを生かす】小学校の「理解学習」って必要?先生と話し合い、やり方を変えました

登壇者の 5 人は、アーリーバードプラスで学んだことをそれぞれのやり方で生かしています。

坂本さんが挙げたのが、小学校の「理解学習」。小学校では特別支援学級の子どもたちが全校児童の前に立ち、自己紹介をする時間があるそうです。

「本人が自分の名前と好きな物を言うのですが、どうして壇上で言う必要があるのかと疑問にを感じました」

坂本さんは「通常学級の児童が特別支援学級の児童を理解する」という理解学習を、「学級の区分を越えて多様性を理解する学習」に変えられないか、学校と協議しました。

全校児童に向けて、当時の校長先生と一緒につくったメッセージがこちらです。

「『あれ、どうしたのかな?』とおもったときは、『もしかしたらSOSかな?』とかんがえてみよう!」

アーリーバードプラスで学んだことを、それぞれの立場で生かしています
アーリーバードプラスで学んだことを、それぞれの立場で生かしています

このメッセージは、特性のある人が取った言動を「あの子、おかしい」「あの子、腹が立つ」と否定的に捉えるのではなく、「もしかしたらSOSかな」と想像する力を養ってほしいという思いから生まれました。

保護者の疑問から始まった新しい理解学習は、他の小学校にも広がっているそうです。坂本さんは「学校がやってくださっていることが適切かどうか、支援の目的を問い、対話し続ける保護者でいたい」と語りました。

「対話」もつながるきっかけになります
「対話」もつながるきっかけになります

多様性について、山口さんは園児にも伝わるように、園生活に取り入れています。

特性のある子どもの中には、鬼ごっこの鬼になるのが苦手な子どもがいます。周りの子どもには「ずるい」と捉えられがちですが…?

「子どもたちには『キノコが嫌いだったら、キノコを食べないよね』と話してみます。『鬼になったら鬼ごっこをやめるのは、もしかしたら鬼が怖いのかもしれないよ』と伝え、『この子が鬼になった時、どうしたら一緒に楽しく遊べるか考えてみよう』と促します」

その子が苦手とすることを説明すると、「子どもは案外、素直に考えてくれるんです」と山口さん。「もしかしたらSOSかな」という気づきを、幼い頃から育てていきたいと語りました。

【支援チームをつくる】「私が何とかする」ではなく、大変になる前に連携を

シンポジウムでは「自分が何とかしよう」と 1 人で頑張るのではなく、チームづくりが必要だという声が何度も上がりました。

児童発達支援管理責任者の吉本さんも「『私が何とかしよう』ではなく、困りごとが大変なことになる前に連携に向けて動くことが大事」。支援の輪を広げるため、「子どもと保護者を中心とした支援チームづくり」を挙げました。

児童発達支援管理責任者の吉本さん。支援の輪を広げるために、子どもと保護者を中心とした支援チームづくりを心がけています
児童発達支援管理責任者の吉本さん。支援の輪を広げるために、子どもと保護者を中心とした支援チームづくりを心がけています

吉本さんがチームづくりの大切さを実感するきっかけになった子どもがいます。

発達の特性に対応した支援は、子どもの成長とともにうまくいかなくなる場合があるそうです。吉本さん担当した子どもも、これまでのように見通しを示しても不安が強くなり、他の子どもに被害が及ぶ「他害」が出るようになりました。

修学旅行を控えた時期だったため、参加の見送りも検討されましたが、「子どもの活動の幅が狭くなる」と考えた吉本さん。事業所のスタッフが修学旅行のルートを事前に巡って資料を作りました。

空港内を動画で撮影したり、バイキング体験のやり方を説明したり。子どもは無事に修学旅行を終え、保護者の自信にもつながったそうです。

「修学旅行の対策を学校の先生が全部行うのは難しい。子ども本人と保護者の思いを軸に、関係機関が同じ方向で支援に取り組める体制をつくっていきたいです」

【考え方を変える】発達障害の診断は「ラベル」ではなく、支援の方向性を考える「道具」です

支援の輪を広げるため、考え方を少し変える提案をしたのは、作業療法士の岡林さんです。

もみのき病院には小児科の発達外来があり、診断を求める保護者が訪れます。中には、診断されることに不安を抱く保護者もいるそうです。

「世間の目がやはり気になるから心配なのだと思います」と岡林さん。「診断は『ラベル』ではなく、支援の方向性を考え、子どもの可能性を広げるための『道具』として活用していきたい」と語りました。

作業療法士の岡林さんは考え方を変えることを提案しました
作業療法士の岡林さんは考え方を変えることを提案しました

岡林さんは、当事者と支援者を「支援する側」「支援される側」と分けるのではなく、「互いに調整し合う関係」と捉え直すことも提案しました。

「ASDは『特別』ではなく『少数派』。周囲に理解があり、環境調整ができれば、多数派に合わせたソーシャルスキルトレーニングは必要ないのではないかと、もやもやすることがあります」

支援の輪の中心は、やはり子ども本人です。

「経験できる支援や可能性を子どもにも分かる形で見せながら、保護者や先生を支える仕組み、ネットワークをつくりたい。病院の垣根を低くし、楽しく協力できたらと思います」

シンポジウムでは意見交換も行われました
シンポジウムでは意見交換も行われました

意見交換では、会場からこんな声が上がりました。

  • 保護者にとって、先生や専門職とつながることは、子どもを理解する上で大事なこと。
  • 園や学校の先生にも分からないことがあり、「保護者と一緒に知りたい」と思っているんだと分かりました。
  • 支援者も 1 人で考える難しさを感じている。子どもを中心としたチームをつくりたい。
  • 先生方も「この子のために」と頑張ってくれているんですね。

最後に「つながる時に心がけていることは?」という質問に、保護者の坂本さんがこう答えました。

「先生の見立ても尊重すること。『私にはこの子はこう見えてるんですが、先生はいかがでしょうか』と聞くようにしています」

目の前の子どもの幸せを願っているのは、保護者も先生も専門職も同じ。子どもの得意なこと、苦手なことを一緒に学び、理解していくことが、それぞれの立場を越えてチームをつくるきっかけになると感じたシンポジウムでした。

 

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この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小学生ママです。長女は思春期の入り口にさしかかった4年生、次女はピカピカの1年生です。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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