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SNSで知り合った人に会いに行くのはなぜ?性的な画像を送ってしまうのはなぜ?|子どもへの性暴力を防ぐために親が知っておきたいこと…思春期保健相談士の中谷奈央子さんが語りました

SNSで知り合った人に会いに行くのはなぜ?性的な画像を送ってしまうのはなぜ?|子どもへの性暴力を防ぐために親が知っておきたいこと…思春期保健相談士の中谷奈央子さんが語りました

インターネット、SNS、性の話…タブー視する大人になっていませんか?「にんしんSOS高知みそのらんぷ」のセミナーから紹介します

インターネットやSNSを利用した性被害の報道を見聞きし、こんな疑問や思いを抱いたことはありませんか?

「SNSで知り合った人にリアルで会いに行くのはなぜ?危険だって考えたら分かるでしょ」

「性的な画像や動画は、自撮りして送信する方にも落ち度があるのでは…」

性暴力のない学校や社会を目指そうと、「にんしんSOS高知みそのらんぷセミナー」が開かれ、元養護教諭で思春期保健相談士の中谷奈央子さんが講演しました。

性暴力の被害や加害を防ぐには、子どもの世界を知ることが大切。中谷さんは「ネットやSNS、性の話をタブー視しない大人になりましょう」と呼びかけました。子育て中の親が知っておきたい知識や心構えを紹介します。

中谷さんは「にじいろ」の名前で活動しています

「にんしんSOS高知みそのらんぷセミナー」は 2026 年 1 月 25 日、みその児童福祉会複合棟(高知市新本町 1 丁目)の地域交流ホールで開かれました。

主催したのは「にんしんSOS高知みそのらんぷ」。思いがけない妊娠に悩む人に向けた相談窓口で、児童家庭支援センター「高知みその」が運営しています。

講師の中谷奈央子さんと「にんしんSOS高知みそのらんぷ」の皆さん
講師の中谷奈央子さんと「にんしんSOS高知みそのらんぷ」の皆さん

講師の中谷奈央子さんは養護教諭として三重県内の小学校や高校で勤務し、現在は性教育認定講師、思春期保健相談士として活動しています。「にじいろ」の名前で執筆活動を行い、SNSでも発信しています。

著書に『10 代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル』(合同出版)、共著に中学生向け包括的性教育教材『コロカラBOOK』(正進社)などがあります。

家庭では中学生と小学生のママです
家庭では中学生と小学生のママです

セミナーは参加者から事前に寄せられた質問に答える形で進められました。

【ネット、SNS、性の話が苦手】子どもの「好き」「推し」「大事」を否定しない

今回のテーマは「性暴力のない学校・社会を作る~デジタル時代に知っておきたいこと~」。中谷さんはまず、参加者から寄せられた声を紹介しました。

参加者
無意識にタブー視してしまい、思考がストップしそうになります。
参加者
デジタルに弱い大人は、子どもについていけません。

 

ネットやSNS、性の話にどうしても苦手意識を抱いてしまう大人に対し、中谷さんは次の心構えを持つように呼びかけました。

  • 子どもの「好き」「推し」「大事」を否定しない
  • 子どもの世界を「分からない」「理解できない」「興味がない」と否定せず、「知りたい」「教えて」と聞いてみる

 

こども家庭庁の 2024 年度の調査では、ネットの平均利用時間が小学生( 10 歳以上)は 3.44 時間、中学生は 5.02 時間、高校生は 6.19 時間でした。これは「平日 1 日当たり」の時間だそうで、思っていたよりずっと長い!

中谷さんによると、「勉強に使う時間は意外と少なく、動画を見たり、SNSで交流したりしている」そう。

「今の子どもたちにとって、スマホは生活の中心と言っても過言ではないくらい大切なものです」

子どもたちの世界や価値観を頭ごなしに否定したり、「分からない」と拒否したりすると、子どもは「この人は分かってくれない大人」と判断し、心のシャッターを下ろしてしまいかねません。

「ネットやSNSのことを否定せずに聞いてくれる大人」「自分や自分の大切なものに関心を持ってくれる大人」「性をタブー視しない大人」になることが、性暴力のない学校や社会をつくるための、大事なスタート地点となります。

【性暴力とは】同意のない性的な行為は性暴力であり、人権侵害です

性暴力の現状を理解するため、中谷さんは次の文章を紹介しました。

【性犯罪・性暴力とは】

あなたのからだとこころは、あなた自身のものです。

いつ、どこで、だれと、どのような性的な関係を持つかは、あなたが決めることができます。

同意のない性的な行為は、性暴力であり、重大な人権侵害です。

 

この文章は内閣府男女共同参画局のウェブサイトに掲載されています。性暴力は年齢や性別にかかわらず、夫婦や恋人間でも起こることや、相手と対等な関係でない状況や断れない状況での性的な行為は性的同意があったことにはならないと記されています。

「性暴力はレイプだけだと思っている人もいます。『これが性暴力』と全員にインプットしてほしい内容です」と語りました。

「性暴力とはどういうものか、全ての人に理解してもらいたい」
「性暴力とはどういうものか、全ての人に理解してもらいたい」

参加者からはこちらの疑問が寄せられました。

参加者
性的欲求は人間の基本的欲求と考えます。理性で欲求を制御することは可能ですか?制御できないのはなぜですか?

 

性犯罪のニュースでよく報道されるのが「性欲を抑えきれなかった」という加害者のコメント。ですが、「性欲を性犯罪の原因としている時点で本質を見誤っています」と中谷さん。

「性暴力は性を手段にした支配や攻撃です。加害者は自分より弱い者を攻撃することで、傷つき、失ったものを取り戻そうとしているんです」

内閣府の 2022 年の調査では、若年層( 16~24 歳)の 4 人に 1 人が何らかの性暴力被害に遭っていました。デジタルなどの情報ツールを用いた性暴力被害も含まれます。

【デジタル性暴力】性的な画像、メッセージ、スクショの拡散…子ども同士でも起こっています

デジタルを使った性暴力の一つが児童ポルノ事犯です。子どもが自分の性的な画像を自撮りさせられ、送信させられるという被害は小学生にも起こっているそうです。

セミナーでは「セクストーション」という言葉が紹介されました。「sex(性)」と「extortion(脅迫)」を組み合わせた造語で、次のような被害が当てはまります。

  • 「○○しないとネット上に裸の写真を拡散する」と脅される
  • 「別れるなら、これまでの写真、動画をばらまく」と脅される
  • 「拡散されたくないなら、代わりに○万円払って」と脅される

相手はSNSで知り合った人や、恋人や同級生など身近な人。女性だけでなく男性も被害に遭っています。

造語には「脅迫」という言葉が使われていますが、実際は強要や脅迫をされた例はそれほど多くないそうです。

「優しく言われたり、いつもと同じテンションで『送ってよ』と気軽に言われたり、加害者が先に送ることで『私も送らないと悪いかな』と思わせたり。関係性をつくってからの流れですね」

グルーミングでは、性的な目的を隠して被害者に近づきます
グルーミングでは、性的な目的を隠して被害者に近づきます

性的な目的を隠して子どもに近づき、関係性をコントロールすることを「グルーミング」と呼びます。教員や習い事の先生らによる性暴力でよく使われる手口で、SNSなどオンラインでも起きやすいそうです。

「最初は『相談に乗るよ』『君の味方だよ』から始まり、徐々に『 2 人だけの秘密』『君は特別な存在』と錯覚させます。グルーミングの被害者は危険なサイトを利用したと思われがちですが、インスタやX、TikTokのプロフィールや日常の投稿に目を付け、近づいてきます」

私たち親が性暴力の話を聴くと、「被害者にならないように」と願いますが、今は子どもの加害も問題になっています。児童ポルノ事犯では加害者の半数が 10 代です。

子ども同士で起こった事例がこちら。

  • DMに性器の画像や自慰行為の動画が送りつけられる。
  • DMに「やらせて」などの性的なメッセージが届く。
  • アダルトサイトを見せられる。リンクが送られてくる。
  • 性的な通話やビデオチャットを求められる。
  • 性行為の様子を動画に撮ろうと誘われる。
  • LINEなどの個人的なやりとりのスクリーンショットを拡散される。
  • 写真をAIで性的な写真に合成する(ディープフェイク)。
  • トイレや着替えなどの写真を撮影し、仲間内で共有する。

聞いていると気分が悪くなりますが、現実に起こっていることだそうです。中谷さんは事例を挙げた上で、こう呼びかけました。

中谷さん
皆さんは、これらを「性暴力」と認識できますか?

 

残念ながら、「直接危害を加えていないから」「子ども同士のことだから」「ふざけていただけだから」などと矮小(わいしょう)化されることがあるそうです。

「男子同士は特に軽く見られがちです。『これは性暴力であり、絶対に許されないことだ』と捉え、きちんと対応することで、その後が変わります」

【SNSで出会った人】「知らない人」から「信頼できる人」になります

参加者からの質問は続きます。

参加者
SNSで知り合い、名前や連絡先、本名も知らない人に会うことに怖さを感じないのはなぜですか?

 

これはココハレ編集部員も同じように抱いていた疑問です。「そもそもなんで会うの?」と思いがち…。

中谷さんは「時代が変わると、感覚が違うのは当然」と説明しました。

私たち大人はネットやスマホ、SNSを「後から登場した新しいもの」と思っていますが、今の子どもたちにとっては「自然で、身近なもの」です。

また、大人は過去の経験や失敗から「これはなんとなく危ないな」と危険を察知できますが、子どもはまだまだ経験不足。危険を察知する力も未熟です。

さらに、思春期特有の「寂しさ」や「依存しやすさ」も影響します。

「日常に居場所を感じられない子は特にはまりやすいです。SNSでやり取りを続けるうちに、『知らない人』から『信頼できる人』になります。SNSでつながっている人の方がその子にとってはリアルになるので、『知らない人に会わないようにしよう』では通じません」

私たち大人が察知できる「危険」を子どもが察知できるとは限りません
私たち大人が察知できる「危険」を子どもが察知できるとは限りません

「性暴力は『被害者にも落ち度があった』と思われやすい上に、ネットやSNSがきっかけとなった場合は特に『被害者が自ら進んで被害に遭った』と見られやすい」と中谷さん。参加者にこう呼びかけました。

中谷さん
被害者は悪くありません。悪いのは被害者の寂しさ、未熟さ、弱み、信頼感につけ込んだ加害者です!

 

被害者は「自分が悪かった」「あの時、こうしなければよかった」と後悔し、自分を責めているので、私たち大人は「悪いのは加害者」でぶれないことが大事です。

子どもを守るため、インスタやTikTokなど、多くの子どもや若者が使っているアプリは自分が発信しなくても使ってみることも大事だそうです。

【からだの権利】加害者にならないために「性的同意」をしっかり教えましょう

中谷さんにはこんな質問がよく寄せられています。

参加者
子どもが性被害に遭わないためにはどうしたらいいですか?

 

確かに、子育て中の親として最も知りたいこと。中谷さんは「被害に遭わないように」よりも、「加害そのものをなくす視点」と「傍観者にならない教育」が大事だと訴えています。

誰もが性暴力の被害者にも加害者にも傍観者にもならないため、進めたいのが「包括的性教育」です。ユネスコなどがまとめた「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」が性教育の国際的な指針となっています。

ガイダンスが定めるキーコンセプトの一つが「暴力と安全確保」。全ての人に「からだの権利」があることを、5 歳から発達段階に応じて教えていきます。

「体には、目には見えないけれど透明なバリアがあります。入る時には『入っていい?』と聞くし、入られるのが嫌なら『嫌だ』と言っていい」と中谷さん。この考えが「性的同意」につながります。

加害者にならないためには性的同意をしっかり教える必要がありますが、大人でも正しく理解できてない人は少なくないそうです。

ある調査では高校生の約8割が「性的同意」について「学校で学びたい」と答えたそうです
ある調査では高校生の約8割が「性的同意」について「学校で学びたい」と答えたそうです

「からだの権利」について、「なぜ、裸の写真を取ったらダメなの?」「本人が同意してればよくない?」「直接危害を加えたわけじゃない」という声も上がります。

中谷さんは授業を受けたある小学 4 年生の感想を紹介しました。盗撮について、こう記したそうです。

4年生
いつ、どこで、誰が見るか分からないから、自分ではどうすることもできないから、そう思うだけで怖いから、裸の画像を撮るのはダメなんですね。

 

こうした考えを子どもに持ってもらうには、「あなたの体はあなただけのもの」という「からだの権利」を小さい頃から意識づけていく必要があります。

中谷さんは、私たち親が普段の関わりでできることも紹介しました。

子どもが何歳であっても、次のような時には一声かけることを意識してください。

  • 体に触れる時
  • けがの手当てをする時
  • 持ち物や机の中身を確認する時
  • 写真や動画を撮る時

同意を取ってもらう経験や、嫌だと感じた時に「嫌だ」と言う経験、さらに「嫌だ」を相手に受け止めてもらえる経験を積み重ねると、子どもたちの中で適切な「境界線」と「同意」の意識が育まれていくそうです。

 

中谷さんのお話には、子どもを育てる親として「できれば聞きたくない」「わが子で想像したくない」という話題もありました。メモを取りながら、ここで親が“見ないふり”や“知らないふり”をするのではなく、現実を知っておくことが大事だと痛感しました。

まずは「子どもの世界や価値観を否定しない大人」「分からないことは『知りたい』『教えて』と言える大人」を目指したいと思います。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小学生ママです。長女は思春期の入り口にさしかかった4年生、次女はピカピカの1年生です。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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