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「うちの子、不器用?」「運動が苦手かも…」「発達を促す遊びは?」リハビリの専門家おすすめの本を紹介します

「うちの子、不器用?」「運動が苦手かも…」「発達を促す遊びは?」リハビリの専門家おすすめの本を紹介します

土佐リハビリテーションカレッジの先生おすすめ!子どもの発達、運動、感覚遊びをテーマにした本をオーテピアで紹介しています

「うちの子、ちょっと不器用なのかな」「運動が苦手かも…」と感じた経験はありませんか?これまで「不器用」「運動音痴」とされてきた子どもたちに対して、楽しい運動や感覚遊びを通して発達を促していく取り組みが今、注目されています。

高知市追手筋 2 丁目のオーテピア高知図書館では、理学療法士、作業療法士を養成する「土佐リハビリテーションカレッジ」の先生たちが選んだ本を紹介する「教員オススメ 100 冊」というコーナーを設けています。リハビリの視点で書かれた本の中には、子どもの発達や運動、遊びをテーマにした本もあります。

中でも特におすすめの 3 冊を、作業療法学科講師で作業療法士の稲富惇一さんに聞きました。

「教員オススメ100冊」オーテピアで展示中

リハビリ関連の書籍を紹介するコーナー「教員オススメ 100 冊」は、新型コロナウイルスの影響でリハビリを必要としているのに十分に受けられなくなっている人たちに役立ててもらおうと企画されました。

オーテピア 2 階の図書館案内カウンター横にあり、2 階の「こどもコーナー」を利用する際に手に取りやすいです。一般向けの実用書と、学生や医療従事者向けの専門書が紹介されていて、実用書では赤ちゃんから高齢者まで、あらゆる年代に対応した本が並んでいます。

「教員オススメ100冊」は2階の案内カウンター横で紹介しています
「教員オススメ100冊」は2階の案内カウンター横で紹介しています

今回おすすめするのは次の 3 冊です。

  • 「0 歳~ 6 歳 子どもの発達と保育の本 第 2 版」(学研プラス)
  • 「発達が気になる子の脳と体をそだてる感覚あそび」(合同出版)
  • 「発達性協調運動障害〔DCD〕 不器用さのある子どもの理解と支援」(金子書房)

おすすめのポイントを教えてくれた稲富さんは、脳性まひの子どものリハビリなど、子どもの作業療法を専門にしています。6 歳、4 歳、11 カ月の 3 人の子どものお父さんで、「自分の子育てでも参考にしている本です」と語ります。

稲富惇一さん。3児のパパです
稲富惇一さん。3児のパパです

発達の目安や子どもへの関わり方を学べます

まずおすすめするのが「0 歳~ 6 歳 子どもの発達と保育の本」。乳児(0 ~ 5 カ月ごろ、6 ~ 11 カ月ごろ)から 6 歳までの子どもの発達の様子や保育のポイントを解説した保育士向けの本ですが、「保護者が読んでも分かりやすく、子どもへの理解につながります」と稲富さんは話します。

イラストや写真がふんだんに使われていて、保育の知識がなくてもすんなり読めます。「2 歳ころ( 2 ~ 3 歳)」では「歩く、走る、跳ぶなどの運動機能が発達し、自己主張が強くなる時期」と説明。「動物まねっこ」でいろいろな動きをしたり、「シール貼り、シールはがし」で指先を使った細かい動作を楽しんだり。自己主張や好き嫌いへの対応の仕方なども紹介されています。

稲富さんは「子どもの年齢に応じてどんな声掛けや遊びをしてあげたらいいのか。うまくいかない時にどうすればいいのか。子育てのヒントが得られる一冊です」。ただし、紹介されている発達段階は「あくまでも目安」。例えば、ハイハイをしないまま歩き始める子どもがいるように、「発達の順序やスピードには個人差があります」。目安から大きく遅れていたり、不安を感じたりする場合は、定期健診などで相談するといいそうです。

 

縄跳び、自転車、折り紙…“苦手”に楽しく取り組む方法は?

次にすすめるのが「発達が気になる子の脳と体をそだてる感覚あそび」。作業療法士がたくさんの“遊びの工夫”を紹介しています。この本が出版された背景には、「うまく遊べない子どもたち」の存在があります。

例えば、縄跳び。前跳びでは、縄の持ち手を両手で持ち、腕を後ろから前に回して縄を体の前に持ってきて、縄が地面に付いた瞬間に両足でジャンプして飛び越え、再び腕を後ろから前に回して…と、実はとても複雑な動きを瞬時に、リズミカルに行っています。できるようになると、一つ一つの動きを細かく意識しなくなりますが、うまくできない子にとってはハードルが高い遊びです。

「縄跳びが苦手な子に対して、ひたすら『頑張って』と励ましたり、『こうやって跳ぶんだよ』とやって見せるだけでは、実はうまくいかないんですよ」と稲富さん。ただ一生懸命繰り返すだけでは、嫌になったり、苦手意識が高まったりするだけだそう。では、どうすればいいのでしょうか。

「まず、その子が縄跳びの動作の中で何を苦手としているのかを見極めます。次に、その子が好きな遊びや動きを見付けます。苦手な動きができるようになるために必要な体の感覚をつかめて、その子が楽しめる遊びを取り入れていくと、次第にできるようになります」。これはリハビリの基本的なアプローチ方法だそうです。

縄跳びでは、「縄をうまく回せない」のか、「うまくジャンプができない」のかで、取り入れる遊びが変わります。この本では、縄をうまく回せない場合は、玉結びしたタオルをヌンチャクのように回して的に当てる遊び、ジャンプができない場合は転がってくる棒をジャンプでよける遊びなどが紹介されています。

ほかにも「ブランコを自分でこげない」「マットで前転ができない」「跳び箱でジャンプするタイミングが分からない」といった運動や、「粘土を触るのを嫌がる」「ブロックや積み木をお手本通りに作れない」「折り紙の角と角を合わせられない」など指先の感覚や動きに関するものまで、苦手な場面とその原因、対応が細かく紹介されています。「どうも上手にできるようにならないな」ということがあれば、参考にしてみてください。

「不器用さのある子ども」を深く理解したい人に

最後に紹介する「発達性協調運動障害〔DCD〕」は、不器用さのある子どもへの理解と支援に必要な最新の知識や研究成果が紹介されています。「他の2冊と比べるとかなり専門的です。保育や教育の現場向けの本ですが、悩んでいる保護者にもぜひ読んでもらいたい」と稲富さんは語ります。

「協調運動」とは、タイミングに合わせた運動のこと。縄跳びはいきなり跳べるようになるわけではありません。日常生活の中でさまざまな経験をしながら、腕を回す、ジャンプするといった必要な動きや感覚を身に付け、タイミングを合わせることができるようになると、上手に跳べるようになります。

「一定の年齢になっても、経験して身に付くべきものが身に付かない、右肩上がりになるはずの成長が平たんになっている場合に、発達性協調運動障害と診断されることがあります。子どもの 5 ~ 6 %にあると言われていて、決して珍しいものではありません」

片足跳びが連続でできない、お遊戯の動きについていけない、自転車に乗れない、はさみを使って紙を上手に切れない…。そんな子どもたちは、これまで「運動音痴」「不器用」とされてきました。苦手とする原因を探り、適切な支援をすることが必要だと言われ始めたのはつい最近のことだそうです。

「バラエティー番組では運動が苦手な芸人さんが笑いを取る場面が見られますが、運動に苦手意識を持ったり、からかわれたりした経験から、不登校になる子どももいます。実は深刻な問題なんです」と稲富さん。「子どもの発達や運動、体の感覚といったことに興味を持ってもらえるきっかけになれば」と話しています。

展示は9月30日まで

オーテピアの書籍紹介コーナーは 9 月 30 日(水)までです。紹介した 3 冊はオーテピアの蔵書で、 10 月以降も貸し出ししています。子どもの発達や運動について知りたいことがある、困っていることがある人はヒントにしてみてください。

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小 3 と年長児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

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