子育て
アイコン:子育て
HOME子育て特集つむサポ【つむサポ講座】「手」がうまく使えるようになるには?|赤ちゃんの発達から、病気や障害のある子どもへの支援を考えました

【つむサポ講座】「手」がうまく使えるようになるには?|赤ちゃんの発達から、病気や障害のある子どもへの支援を考えました

【つむサポ講座】「手」がうまく使えるようになるには?|赤ちゃんの発達から、病気や障害のある子どもへの支援を考えました

高知の新しい子育て支援「みんなでつむサポ」から、「スマイル・サポートこうち」の第3回講座を紹介します

高知県の子育て支援「みんなでつむサポ」。2022 年度も県内各地で「つむサポ講座」が開かれています。

「Smile Support Kochi(スマイル・サポートこうち)」は「心をそだてる・生きる力をはぐくむ講座」を 5 回シリーズで開催しています。3 回目は「手」について考えました。

私たちが当たり前にしている手の動作も、赤ちゃんの頃からの発達段階を経て完成しています。病気や障害のある子どもへの関わり、支援では手の感覚を育てていくことも大切です。

 

スマイル・サポートこうちは、病気や障害のある子どもを育てる家族のサークルです。つむサポ講座「心をそだてる・生きる力をはぐくむ講座」は、体からのメッセージをテーマにした 5 回連続のオンライン講座です。

【心をそだてる・生きる力をはぐくむ講座】

 

講師は、訪問看護ステーション「おたすけまん」(高知市)の理学療法士・川上英里さん。「ボバース概念」というリハビリのアプローチ方法を用いて、患者の要望を取り入れながら、姿勢や動きを改善させています。

また、先天性の筋疾患で医療的ケアを受けている小学 6 年生・中越菫太(ぎんた)君の母・文枝さんがトークセッションパートナーとして参加しています。

理学療法士の川上英里さん(右)と中越文枝さん
理学療法士の川上英里さん(右)と中越文枝さん

第 3 回のテーマは「座る」から「手で感じる」に変更されました。

体の安定性、運動性は足先から頭までつながっています

川上さんは「全ての子どもは赤ちゃんの頃から『自分で起きたい』『自分で動きたい』と望んでいる」という「抗重力性欲求」をリハビリで大事にしています。これは障害の重い子どもも同じように望んでいて、講座でも毎回、紹介しています。

姿勢や運動において体を安定させることを「コアスタビリティ」と呼びます。コアスタビリティの考え方では、人間の体は足の先から頭の先まで全部つながっています。

「体の安定性と運動性は連鎖して、足から頭までつながっています」と川上さん。障害の重い場合、頭の動きがうまくコントロールできていないため、呼吸が苦しくなるといった例があるそうです。

手の動作を獲得していく過程でも、体の安定やコントロールが土台となっていきます。

複雑な手の動きの獲得は?体の安定性が大きく関係しています

先天性の筋疾患のある菫太君は現在、タブレットや電動車いすを自分の手で操作しています。複雑な手の動きをどうやって得ていったのでしょうか。川上さんは赤ちゃんの発達から説明しました。

【3~4カ月】「体の真ん中」を理解します

こちらは 3~4 カ月の赤ちゃん。手やおもちゃを口に持っていっています。かわいいですね。

かわいい赤ちゃんのしぐさ。実は目まぐるしく発達しています
かわいい赤ちゃんのしぐさ。実は目まぐるしく発達しています

この時期の赤ちゃんは「頭頸部(とうけいぶ)コントロール」と「正中位コントロール」を獲得していきます。体の真ん中を理解し、頭が左右に倒れることがなくなり、左右の対称性も理解していきます。

「赤ちゃんは手を自分の真ん中に持っていって、口に持っていって、自己鎮静します。3~4 カ月頃は自分でおしゃぶりをして落ち着く時間が長くなります」と川上さん。「おもちゃの硬さなどから、手の感覚がどんどん養われていく」そうです。

この頃にお座りをさせても、まだ上手に座れません。「おなかの筋肉を動かす準備ができていないので、お尻がぐしゃっとなります。体を後ろに引いた状態で座り、手でも支えられません」

【5カ月】腹ばいから、手の指も発達します

こちらは 5 カ月頃。腹ばいをしています。

腹ばいでは、手の動きも発達しています
腹ばいでは、手の動きも発達しています

「うつぶせになり、肘で自分の体を支えられるようになると、頭を上げたり、下げたりができるようになります。前腕部で体を支えることで、親指と人さし指がどんどん発達していきます」

頭を上げる力がつくと、床と顔の空間が広がります。赤ちゃんの世界も広がっていきます。

【6カ月】「飛行機姿勢」で人生最大の伸展活動

6 カ月頃の赤ちゃんです。上の写真は「飛行機姿勢」と呼ばれます。床をぐーっと押して遊ぶ姿は、この時期ならではですね。

上は「飛行機姿勢」。下の写真では、手で床をぐっと押しています
上は「飛行機姿勢」。下の写真では、手で床をぐっと押しています

飛行機姿勢は「人生最大の身体伸展活動」だそう。体が二足直立に向かう準備になります。

体を手で支えられるようになると、床との間の空間がさらに広がり、バランスが取れるようになります。

「いろんな動きをしていく中で、『右手で体を支えたら、左手が上がる!』と気付きます。ここから四つんばいの姿勢が始まります」

【7~8カ月】手の形を対象物と同じ形に変化させていきます

7~8カ月になると、自分で移動し、欲しい物を取りに行くようになります。

上手に座っています。3~4カ月頃のお座りと比べると、お尻がべちゃっとならず、しっかり丸くなりました
上手に座っています。3~4カ月頃のお座りと比べると、お尻がべちゃっとならず、しっかり丸くなりました

これまではおしゃぶりで満足していましたが、この頃になると、どんどん手で触っていきます。

手の形を対象物の形とほぼ同じ形状に変化させられるようになります」。物の確認も「口に持っていってなめる」から「手で触って認識する」へと変わっていきます。

菫太君の手の発達は?感覚を育てていきました

赤ちゃんは自分の体を動かし、感覚を養いながら、新しい動作を獲得していきます。

手の場合は、手を動かして偶然物に当たる経験を繰り返しながら、物に触る、つかむ、欲しい物に手を伸ばす、自分の方に持ってくる、欲しい物を取りに行くといった動作を獲得していきます。

病気や障害があり、体を動かすことが難しい子どもの場合は、この「偶然」を支援者がつくっていく必要があります。

菫太君も「物に対して自分の手を伸ばす力」がありませんでした。講座では菫太君に幼い頃から関わってきた作業療法士さんも加わり、支援を振り返りました。

2歳の菫太君。川上さんと出会った頃です
2歳の菫太君。川上さんと出会った頃です

「自分から物に手を伸ばす」という動作を育てるため、手を使って何かをすると、楽しい結果が得られる遊びの装置を車いすに取り付けました。作業療法では「風船を使ったり、自販機のような物を作ったりして、『手を物に近づけると面白いよ、楽しいよ』という経験を繰り返した」そうです。

母親の中越さんは「物を触り、感覚を育てるのは小さい頃から意識しました」。軽い物はどんな形状でもつかみ、バランスを保てるようになり、菫太君なりのスタイルで手を使うようになっていきました。

「今は軽いペンを自分で持ち、ペン先の感覚を意識しながら動かし、字を書いています」

体全体を見て、関わっていくことが大事です

講座では、川上さんが菫太君に続けている手のリハビリを実演しました。

左手でタブレットや電動車いすを操る菫太君。頑張って使うので、硬くなるそうです。

リハビリを受ける菫太君。手が硬くなっています
リハビリを受ける菫太君。手が硬くなっています

川上さんがリハビリで意識するのは「長い手」。手を押したり、伸ばしたりしながら、硬くなった指をほぐし、手の形をつくっていきます。

リハビリを終えた菫太君の手は確かに長くなり、血色も良くなりました。

手を伸ばしながら、「感覚も入れていく」そうです。硬くなっていた指が伸びました
手を伸ばしながら、「感覚も入れていく」そうです。硬くなっていた指が伸びました

電動車いすの操作には、小さい頃から養ってきた手の感覚が生かされています。

電動車いすに乗る菫太君
電動車いすに乗る菫太君

川上さんによると、菫太君は車いすを動かすジョイスティックに指先を引っ掛けて動かしています。「手と肘と肩でうまくコントロールし、指で少しの圧を感じ取りながら操作しています。マンホールや段差を避けるなど、細かい動きもできています」。足をしっかり床に付けられるというのも、欠かせないそうです。

菫太君の発達や動きの過程を見ていると、「体の安定性、運動性は足の先から頭の先までつながっている」という川上さんの説明が分かります。病気や障害のある子どもの支援では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士ら支援者が子どもの体全体を見た上で、それぞれの役割を考えていくことが大事だそうです。

就園、就学、地域で暮らす…実生活での「つながり」で大切にしたいこと

講座では、「手」から連想される「つながり」についても語り合いました。

中越さんと、スマイル・サポートこうち代表の山下君江さんが、わが子の就園、就学時をエピソードを振り返りました。

スマイルサポートこうち代表の山下君江さん。重い障害のある次男の皓義さんの経験を振り返りました
スマイルサポートこうち代表の山下君江さん。重い障害のある次男の皓義さんの経験を振り返りました

人工呼吸器などの医療的ケアが必要な子どもの場合、希望通りに就園・就学ができるか、登園・登校に親の付き添いが必要かどうかなど、クリアする課題がたくさんあります。

「支援される側もする側も、その子の支援は初めて。親が支援者に『伝えなきゃ』でいっぱいになると、相手のことが見えなくなる

「(支援が得られず)感情的になり、相手を責める口調になってしまった。相手からしたら、私は困った母親だったかも

菫太君は年長の5カ月間、保育園に通えました。「保育園は子どもたちが純粋に関わり合える場所。行かせるメリットしかないと感じました」
菫太君は年長の5カ月間、保育園に通えました。「保育園は子どもたちが純粋に関わり合える場所。行かせるメリットしかないと感じました」

地域で暮らしていくためには、地域とのつながりが欠かせません。相手に自分の気持ちを上手に伝えるこつは確かにあります。その前提として、どんな立場や状況であっても、誰かとつながることが高いハードルにならない社会が求められていると感じた講座でした。

次回のテーマは「座る」です。引き続きココハレでご紹介します。

 

「心をそだてる・生きる力をはぐくむ講座」の記事はこちら

病気や障害のある子どもの生きる力を育むには?「重力」から考えました

体の「バランス」はどう取っている?病気や障害のある子どもの関わり、支援から考えました

この記事の著者

門田朋三

門田朋三

小1と年少児の娘がいます。「仲良し」と「けんか」の繰り返しで毎日にぎやかです。あだなは「ともぞう」。1978年生まれ。

関連するキーワード

LINE公式アカウントで
最新情報をチェック!

  • 毎週木曜日にお届けする「ココハレ通信」で、ココハレ編集部のおすすめ情報をお知らせしています。